勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
え? 俺の『メテオ』弱くないか? 前に見たサーシャの『メテオ』の威力はあんなもんじゃなかった。それこそゴブリンなら1000体くらい纏めて倒してしまうくらいの暴力的な威力だった筈だ。
使用する人間が変わるだけでこんなに違うのか。これが才能の壁…。
「カイル、詠唱間違えてるわよ」
才能の違いに打ちひしがれていると、サーシャから指摘があった。詠唱を間違えた? どこを間違えたか正直分からないが、詠唱を間違えただけでこんなに威力に違いが出るものなのか?
「詠唱を間違えただけか?魔力が実は足りないとか?」
「魔法を使う際に必要な魔力は一定よ。多く使ってもそれで威力が上がる事はないの」
「俺は詠唱をどこで間違えたんだ?」
「『灼熱の炎を纏いし災いよ』の炎を火って言い間違えてたわ」
実際に言い間違えを指摘されると恥ずかしい気持ちはある。火属性の魔力の流し方を意識し過ぎて間違えたか? 間違えたのはたった1文字か。サーシャの言葉通りだとそれだけのようだが。
「たった1文字言い間違えただけでか?」
「詠唱が持つ言葉の意味は大きいわよ。今回の場合は魔法の核とも言える所を間違えたから大きく影響が出たわね」
「詠唱については分かっていたつもりでいたが…」
「魔法はね、カイルが思っている以上に奥深いのよ。たった1文字違うだけで魔法の威力や性能が異なるの。
その魔法に合った詠唱を見つける為に魔法使いは何十年何百年と研究しているのよ」
前にも述べたと思うが魔法は詠唱がなくても発動出来る。土台さえ整っていれば重要なのは魔力の流し方と魔法の名前だ。
魔力の流し方をしっかりと理解していれば、魔法の名前さえ知っていればどんな魔法も使える。
詠唱を行うのは魔法の威力や性能を上げる為だ。現代の魔法は全てに詠唱が見つかっている。これは魔法を神に授けられた時から詠唱について研究していた魔法使いがいたからだ。
「使える魔法なんかは教会で聞けば全て教えてくれるけど、詠唱までは教えてくれないでしょ?」
「そうだな。あくまでも分かるのは適正属性と使える魔法だけだ。詠唱なんかは全て調べないといけない」
「カイルが調べるっていう書物も全部、魔法使いが試行を繰り返して完成したものよ。魔法1つ1つに詠唱があるけど、それら全て適正の言葉が違う」
「そうなのか?」
「魔法使いがしてるのは地道な作業の繰り返しよ。ひたすら使用する魔法の適正の言葉を探すの。魔法を使った時に威力や性能に変化があった言葉をひたすらメモして、何度何度繰り返して最適な詠唱を探すわけ」
そこからの話しは非常に長かった。現代に残る魔法の詠唱は遙か昔から魔法の研究をする魔法使いの血と汗と涙とお酒の結晶だと。お酒は違うと思う。多分お前だけだ。
正直話を聞くまで甘く見ていたというより、認識自体が間違えていたと思う。
彼女に教えて貰ったメテオの詠唱はサーシャが見つけ出したものらしい。この詠唱を見つけるだけでも何千回と繰り返し魔法を使ったそうだ。
属性毎に適正の言葉は当然違うし、詠唱の長さも魔法によって異なる。詠唱が長すぎれば逆に威力が下がるものもあったらしい。逆もしかり。
魔法それぞれに適正の詠唱があってそれを手探りでひたすら探すらしい。言葉の辞書を開いて魔力が続く限り繰り返すそうだ。威力だったり性能の変化は些細なものでもメモするらしい。
───『ファイアボール』と呼ばれる『火』属性の魔法がある。これを例題に上げるとしよう。
『ファイアボール』の詠唱は『燃え盛る炎よ 我が意に従い敵を焼き尽くせ』だ。
この詠唱の炎の部分を火に変えて詠唱すると、本来バスケットボールくらいの大きさがゴルフボールくらいの大きさに変わる。分かりやすく弱体化している。
炎という言葉は『火』属性の魔法において詠唱の核となる言葉らしくそれを変えると大きく威力が落ちるそうだ。
何だったら詠唱しない方が威力が高いまである。燃え盛る炎よ、のフレーズを見つけ出すまでに何千何万と魔法を繰り返し使うそうだ。気が遠くなるような作業だな。
燃え盛る炎よの、『よ』を付けるかどうかでも微妙に威力が違うそうだ。たった1文字が持つ意味が非常に重いらしい。
詠唱を行わず発動した場合は掌サイズだった。これがデフォルトの威力らしい。
「1つ質問なんだが、何故詠唱すると魔法の威力が上がるんだ?」
「それについてもまだ研究中なのよね。これって答えはまだ出てないんだけど、言葉にも魔力があるとされているの」
「言葉に魔力?」
「何百年か前の魔法使いが立てた仮説なんだけど、言葉に宿る魔力。『言霊』って表現してたかしら?言霊が大気中のマナに干渉して魔法の威力を上げているそうよ」
「すまない、質問が増えた。マナとはなんだ?」
「世界樹が生み出しているとされる魔法の源ね。魔法が発動出来るのもこのマナのお陰と言われているわ。
大気中に空気と同じように漂っているそうよ。空気と同じで目には見えないけどね」
「なるほど」
「言霊によって大気中を漂うマナをかき集めて魔法の威力を上げているってのがその魔法使いが立てた説ね。
使用者の魔力に上乗せする形で大気中から魔力をかき集めている。それによって魔法の威力が向上していると見ているのね。
詠唱が合ってない場合は、言霊によっては逆に魔力を散らしてしまってるのかしら?
あたしもその説が合ってる気がするけど、どう思う?」
「俺に聞かれても分からないぞ。流石に専門的すぎる」
正直魔法の話はついていける気がしない。話を聞いていると魔法について研究しようという気にはならない。
なんというか、やってる事が苦行すぎる気がする。手探りで何百何千とひたすら魔法を繰り返すんだろ?言葉なんて無数にある。組み合わせも自在だろう。その中から正解を見つける? 無理だと言いたい。
それでも結果が出るまで試行を繰り返す。苦行だな。そこまでする理由はなんだろうか?
他の魔法使いや、後世の人の為って魔法使いも居るだろうが大多数は自身の名声の為だと思う。
詠唱を発見すればそれだけで称えられる。魔法の研究に力を入れている国からは褒美も与えられるようだ。
今まで詠唱が見つかっていない魔法の詠唱を見つけたなら世紀の発見として語り継がれる事になるだろう。
一種の承認欲求のようなものだろうか? あるいは仕事として認識しているのかも知れない。成果を出せばそれ相応の報酬は支払われている。
1つ言えるのは、俺は魔法使いに向いてないという事。体を動かしている方がまだ気楽だ。
「詠唱方法について聞きたいのだが、いいか?」
「好きなだけ聞きなさい。あたしが答えてあげるわ」
胸を張ってドヤ顔をしている。胸を見てしまったのは男の悲しい性だな。パーティーの中でも1番大きいくらいか? トラさんの方が大きいのか?
いや、今はそんな事を考えたらいけない。
「ノエルやサーシャがたまに使っていると思うが、魔法を発動した後に詠唱しているのは何でだ?」
「あれば強化詠唱ね。名前の通り魔法を発動した後に詠唱を行って強化しているのよ。詠唱を行う際の技術の1つね」
「なるほど?」
「理解してないわね。説明するから聞きなさい。
強化詠唱を行うのは周りに敵が多くいたり、詠唱時間をしっかり確保出来ない場合に使用するのよ」
「ふむ」
「詠唱を行わないで魔法を発動するだけなら時間もかからないし簡単なの。でも威力が期待出来ないから、後から詠唱して強化するわけ。
強化詠唱のメリットは詠唱を妨害されても、既に魔法は発動しているから最低限の効果は期待できる。
デメリットは詠唱中ずっと、発動前の状態で待機させてるから余分に魔力を消費するのよ」
「なるほど」
「本当に分かった?
まぁいいけど。魔法を発動する為の保険みたいなものよ。敵が多いとしっかり詠唱する時間を作れない事が多いからね。
頼れる前衛がいれば話しは別だけどー」
こちらを見て意味深に笑うサーシャを見て、察した。彼女が何を言って欲しいか。何時だったか、酒場でのやり取りを思い出す。
「サーシャは俺が守るから安心しろ」
「出来ればもう少し熱い言葉がいいわね」
「もう言わないぞ」
「君を愛してるとか言ってくれない? あたしの心もトキメクと思うわ」
「サーシャに言われた事を気を付けて『メテオ』を使ってみるよ」
「無視しないでよ」
俺の腰にしがみついてきたサーシャを無視して『メテオ』を使う為にデュランダルから魔力を引き出す。
魔力の流れは間違うな。冷静にいけ。詠唱は今度こそ間違えないようにしっかりと!
今度こそ発動しろ!
「『メテオ』!!」
先程と同じように右手に溜まっていた魔力が消え、上空に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がる。気の所為か少し大きい気がする。
赤い魔法陣が輝きを放ち、炎を纏った隕石が魔法陣から現れた。
その大きさ先程のモノと比べるのが馬鹿らしくなる。全長100mくらいあるか? ただデカイ。上空に現れた隕石によって辺りが暗くなっている気がする。
「カイル!座標!このままだとここに堕ちてくる!」
サーシャの慌てた声にハッと我に返る。目に魔力を込めて座標を指定する。魔法の標的を指定する場合は魔法の発動後に、目に魔力を込めて視線を向けるだけでいいとの事。
「近くない?」
ギュッと腰にしがみつくサーシャの一言に冷や汗が流れる。上空から飛来した『メテオ』が慌てて標的とした地点に堕ちた。その瞬間、凄まじい爆発音と共に身体に衝撃が走り気付いたら宙を待っていた。
全身が痛い。どうやら座標が近過ぎたようだ。俺の体が盾になったようでサーシャの方に目立った傷はない。念の為落下に備えよう。サーシャを守るように俺の体の方に抱き寄せる。
「『フライ』」
地面に落ちる少し手前で風が巻き起こり空中で停止した。サーシャの魔法のようだ。落下に備えたが必要なかったみたいだな。
「一応聞いておくわね。『メテオ』を発動できた感想は?」
「最高!」
体中が痛いけどそれ以上に達成感というか、喜びが強い。ずっと夢見てきた魔法が使えた感動を全身で味わってる感覚だ。
諦めていたからこそこの喜びは大きい。1回目の時は詠唱を間違えて心が折れかけて。才能がないんだなと。
今度はしっかりと発動した。サーシャが使った『メテオ』より小さかったか? それでも大軍相手には十分に仕事をしてくれる威力だった。
本当に最高な気分だ!
「それじゃあもう1個聞くわね」
「何をだ?」
「あたしのおっぱいを揉んだ感想は?」
サーシャの言葉に先程までの感情が一気に冷めていくのが分かる。自分の手が置いてある場所に視線を持っていく。彼女の胸に俺の手がある。鷲掴みにしてるな。ふむ、感想か。
「柔らかったです」
「そう。良かったわ。地面に着いたら襲うから覚悟してね」
───宣言通り襲われた。
さて、今更ですがカイル君がやたらと押しに弱いのは『女難』が影響してます。
肉体関係を持った方がトラブルになりやすいじゃろ?そういう事です。
『女難』がなければもう少し固い意思が持てたでしょう。股間と同じくらいには!