勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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69.出る杭は何とやら

 2人の視線が痛い。普段2人が俺に見せない表情をしている。それだけ俺がしてきた事が不味いという事だろう。

 

「僕が何点か質問するので義兄さんはしっかり答えてください」

「はい」

 

 セシルの声に有無を言わさない力がある。完全に尋問だ。いつの間にか俺は容疑者になっていたようだ。

 

「関係を持った相手はパーティーの仲間ですか?」

「仲間だな」

「我が知らぬ内に!」

 

 バンっとダルが机を叩いた。対照的にセシルは冷静だ。それが逆に怖い。エルフの性質を知っているとセシルもダルと同じようにもう少し怒るかと思っていたが。

 

「トラさんではないですよね? あの人が付けるにしてはキスマークが小さかったので」

「よく見てるな。そうだなトラさんではないよ」

「なぬ!我にも見せるのじゃ!」

 

 ダルが立ち上がり俺の傍まで寄ってきて確認している。服を引っ張ってまで首や胸元等隅々たで見ているのが分かる。されるがままだ。下手に抵抗すると隠し事をしていると見なされて余計にややこしくなりそうだ。ただでさえ味方がいないのだ。怪しまれる行動は止めよう。

 

「薄くなっておるが首元にあるぞ!カイル!」

「ダルさんは落ち着いてください。まだ聞きたい事があるので話を進めますね」

 

 いつの間にかセシルが紙とペンを準備している。何か書いているな。内容が気になるが俺の位置からだと微妙に読めない。

 ダルが何か言いたげな表情でセシルの隣に戻るのを確認すると、セシルはペンを置いてこちらを真っ直ぐに見ている。

 

「今の様子だとダルさんではなさそうなので、エクレアさんかサーシャさんですか?」

「いや、2人共だな。正確に言うならトラさんとも関係を持っている」

「我は仲間外れか!」

 

 ダルが机をバンバンと叩いて抗議している。彼女からの避難の視線が痛い。心にくるな。だが、同じように追求されればいずれ分かる事だ。言わされるよりは自分の口から伝えた方がまだ印象がいいだろう。

 セシルは先程から変わった様子はなく冷静に紙に何かを書いている。それが凄い怖い。

 

「婚約者ですから姉さんとも関係はありますよね?」

「そうだな、ノエルとも関係はあるよ。1番多いと思う」

「むむむ!我だけか!我だけ仲間外れか!酷いではないか!

カイルがそこまで節操がない男とは思わなかったぞ!」

「反論の余地がないな。その通りだと思う」

 

 冷静になればなるほど自分に嫌気がする。やっている事が完全に女の敵の行いだ。タケシさんの事を非難出来ないな。流されるまま仲間と関係を持ってしまっているのは良くないのは分かってる。

 特にノエルの婚約者として彼女を愛するのなら尚更だ。

 

「義兄さんに確認します。答え難いと思いますが嘘偽りなく答えてください」

「分かった」

「4人の中で義兄さんから関係を迫った人はいますか?あるいは義兄さん主導で行為を行った相手は?」

 

 セシルの言葉通り非常に答え難い質問だ。内容自体は難しいものではないが、質問している相手が女性だと思うと余計に答え難い。

 だが答えないという選択肢はないな。さて改めて思い出す。俺から肉体関係を迫った相手か…。トラさんは襲われたな。エクレアとサーシャと同じく襲われている。ノエルは俺からだな。婚約者と認識して俺から迫った筈だ。

 

「俺から迫ったのはノエルだけだ」

「後の3人は相手から迫ってきたと? 抵抗はしなかったのですか?」

「抵抗…しなかったな」

「最初からする気がなかったんですか?それとも抵抗しようとしたけど出来なかった?」

「ノエルの事を思って抵抗しようとはした。だが、結果から言えば抵抗出来ていない。俺の意思が弱いんだと思う」

「そうですか」

 

 セシルは何を聞こうとしている?それがイマイチ分からないから困惑している俺がいる。それはセシルの隣に座るダルも同じようだ。首を傾げて不思議そうな表情だ。

 ノエル以外の3人は相手から迫ってきてなし崩し的に関係を持ってしまった。抵抗は…出来なかった。何故? 俺が望んだから? いや、ノエルとと約束を思い出してからは彼女を優先しようと考えた筈だ。エクレアが迫ってきた時も思いに応えられないとはっきりと伝えた。

 その後は?迫られて…抵抗しようとして諦めた。諦めた?

 

「ダルさん、協力して貰っていいですか?」

「何をじゃ?」

「今から義兄さんに強引に迫ってキスしてください」

「なぬ!」

「何を言ってるんだ!?」

「義兄さんは黙っててください」

「はい」

 

 俺の意思は? 容疑者だからそんなものはないのか? そこまで人権は無視したらいけないと思うが。倫理観だったりが種族の違いから違うのか? エルフは人間に近かった覚えがあるが。

 2人に視線を向ければ顔を赤くしたダルにセシルが耳打ちしているのが見えた。ダルが大きく頷いて俺を見た。冷や汗が流れたのは何故だろうか?

 

「という訳で今からダルさんが義兄さんに強引に迫ります」

「おい!」

「だから抵抗してください。ダルさんにも既に伝えていますから気にしないで大丈夫です。姉さんの事を思って、抵抗してください」

 

 こちらを見るセシルの顔は真剣だ。ふざけている様子はない。それもあって彼女が何をしたいのかが俺には良く分からない。

 ダルがこちらに向かってくるのが分かる。顔が少し赤い。表情から彼女がご機嫌なのが分かる。セシルの言葉通りなら俺は多分ダルに押し倒される形になると思う。

 抵抗したらいいとセシルは言っていた。ダルにも伝えているから気にしなくていいと。なら抵抗するべきだ。

 

「こんな形でカイルと初接吻となるとは思わなかったぞ!」

「出来れば止めてくれないか?」

「フハハハ!抵抗してくれて構わないのじゃ!いくぞー」

 

 楽しそうだな。顔は赤いがダルは何時もの調子だ。この様子なら抵抗しても怒る事はないか。彼女も了承済みの行動のようだ。

 ダルが迫ってきた。抵抗しよう。だが俺の意思に反して体は動かない。

 

「は?」

 

 気付けばダルに押し倒されており、その体を押しのけようと思ったが体が俺のものではないかのように動かない。次第に抵抗しようという意思が薄れていくのが分かる。エクレアの時と同じように心が諦めた。

 されるがままにダルにキスをされた。視界の端でセシルがため息を吐いていた。

 

「ダルさん、もういいですよ」

「もう少し!」

「もう分かったので十分です。義兄さんなら離れてください!」

「せっかくいい所なのじゃ!もう少ししても良いと思うのじゃが?」

「無理矢理引き離しますよ」

「むむむ」

 

 仕方なくといった感じでダルが俺の上から離れた。その事すら今は気にならない。抵抗出来なかった。抵抗しようとしたのに体が動かなかった。同じだ。トラさんの時もエクレアの時もサーシャの時も、どれもされるがままだった。

 抵抗しようとする意思も気付いたら無くなっていた。まるで自分の体では無いような感覚に寒気がする。

 

「義兄さんは加護を与えられていますね、ミラベルという神に」

 

 セシルの口から出た言葉に驚き、体を起こせば彼女と目が合った。こちらを気遣うような優しい瞳だ。

 何故、セシルがミラベルを知っている?教会にとって邪神だからか? 神官なら知っているのは分かる。だが、彼女の口振りからすると俺とミラベルが関わっているのが分かっている様子だ。何故? ダメだ、色々と起こりすぎて頭が回っていないな。

 

「姉さんから聞きました。義兄さんの口からミラベルの名前が出た。ミラベルと関わっている可能性が高いと」

「ノエルから…」

「義兄さんに与えられた加護と呼ばれるモノは僕のご先祖さまがミラベルという神から与えられたものに酷似してきます」

「初代法皇ルドガーか」

「はい。義兄さんも調べていたなら知ってますよね。僕達はご先祖さまにミラベルについて教えられています。その神は決して存在を許してはいけない邪神です」

 

 ミラベルが邪神か。先生の話を聞いているとあながちそれは間違っていないのだろうな。

 転生者はみなミラベルに与えられた加護と呼ばれるものによって壮絶な死を遂げている。人の運命を歪める程の力を持つとされるのが加護。呪いだと先生は言っていた。

 俺にも加護が与えられているからそれが何か早く気付いた方がいいとも。俺の加護とやらはルドガーのものと似ているのか。

 

「加護は本人の意思すら歪めます。義兄さんが抵抗出来ないのは恐らく加護の力が働いているからかと」

「加護の力が」

「僕が思うに義兄さんに与えられた加護は早めに解除した方が良いと思います。詳しい理由は道中で説明しますので、一先ずテルマに向かいましょう」

「テルマに?何故だ」

「加護の解除が出来るとしたらテルマです。僕たちエルフが守護している世界樹の力を借ります!加護を解除する為に今すぐ出発しましょう!」

「はい?」

「どういう事じゃ?」

 

 ───急な事態についていけない俺たちを置き去りにセシルがテキパキと準備を進めその日のうちに俺たちはタングマリンを出発する事になった。

 それによって後の世にまで残る大騒動に巻き込まれる事になるとはこの時はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔ね、あの子」

 

 ───大切な仲間が亡くなるまで後■日。

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