勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
───『赤竜』のドレイク。その名前が知られるようになったのは初代魔王が反逆を起こしてから。魔族の中でも実力が飛び抜けた者が四天王と呼ばれるようになった時、種族は違ったがその1人に数えられたのが始まりだ。
始まりの四天王は『校長』のコバヤシ、『豪鬼』バージェス、『悪童』レオパルド、そして『赤竜』のドレイク。
四天王の中で唯一この時代まで生き残り、世界に勇名を馳せた英雄達を最も多く殺してきた怪物。人間とエルフによって種族ごと滅ぼされた竜人の数少ない生き残り。
体格は俺より少し大きいくらいか。竜を人の姿に落としたようなそんな見た目だ。竜人なんて呼ばれているが体のパーツの殆どはドラゴンだ。
人のように見えるのはその体格と二足歩行な点、手足の指が同じように5本ある事。その指すらも鋭利な刃物のように鋭く尖っている。
顔なんかはまんまドラゴンだな。『赤竜』の異名で知られるように赤い鱗や翼が印象的だ。赤い鱗に覆われたトカゲのような尻尾の先端が切り落とされているのか存在しない。書物通りならあの尻尾を切り落としたのはタケシさんだった筈だ。
竜人の鱗はそれだけで刃物を通さない程強固ではあるが、ドレイクは鎧を纏いその身を固めている。随分と用心深い。重たい鎧を着ていても空を飛ぶ事が出来る為機動力が落ちる事はないだろうが。
デュランダルの話では竜人はどちらかと言えば人間ベースと聞いていたが、ドレイクの場合は殆どドラゴンだな。
「いきなり来て上から目線でごちゃごちゃと!魔王様の命令を受けたのは俺様の筈だ!何故お前がここにいるドレイク!」
「それをお前が知る必要はない。知った所でお前では理解出来んよ」
「ふざけろ!前回の『聖地エデン』の襲撃といい独断行動が過ぎる!何故お前のような男が四天王なんだ!!」
「簡単な話だ。俺が四天王の誰よりも強いからだ」
空中に浮かんで腕を組み余裕がある表情でバージェスJrを見下ろすドレイク。視力が戻ったのかゆっくりした動作で立ち上がりバージェスJrがドレイクを睨み付ける。怒りに満ちた表情だ。仲は良くないようだなこの2人。
四天王のやり取りを聞きながら向かってくるサイクロプスを対処する。都合がいい事に2体が近い距離にいるな。少し多めにデュランダルに魔力を喰わせて『空牙一閃』で2体同時に真っ二つに両断する。蓄積で貯めた魔力は既に1日分使ってしまっている。普段ならこんな魔力を多用する戦い方をしない。
サイクロプスを倒す程度なら『空牙一閃』を使わなくても問題ない。その代わりに一体倒すのに時間がかかってしまう。
少なくともまだ50体近いサイクロプスの姿がある。騎士たちがサイクロプスを対処するとは言っていたがこの数を抑え込むのは不可能だろう。彼らの負担を少しでも減らす為に俺たちの手でサイクロプスを討伐した方がいい。
「認めんぞ!お前のような男が四天王なぞ!今回の襲撃は俺様1人で十分だ!お前の出る幕などない!」
「バカか。お前が今スムーズに攻め込めているのはこの俺が聖地エデンにエルフを引き付けたからだ。それがなければお前程度では国1つ落とせんよ」
「どこまで俺様を下に見るつもりだ!お前の助けがなくとも国1つ落とす事など容易いに決まっているだろうが!!」
「そんな単調な攻めで落とせる訳がないだろう。勇者パーティーまで出っ張ってきてるんだ、もう少し工夫をしろ」
「そんなものは必要ない!この俺様の筋肉と強さがあれば小細工せずとも余裕で攻め滅ぼす事が可能だ!軟弱なお前と一緒にするな!」
やれやれといった感じでドレイクが首を振る。
「俺の知らない内に随分と四天王の質も落ちたものだな。お前だけでは攻め落とせないと判断したから俺がこうして動いているんだ」
怒りのままに怒鳴り散らすバージェスJrと違い、ドレイクは話しながらも敵である俺たちを警戒するように視線を向けている。
攻撃したとしても避けられるだろうな。バージェスJrは逆に無防備過ぎて誘いに見えてくる。やり取りを見ると怒り心頭で文句を言っているようにしか見えないが。
それにしても聖地エデンを襲撃してから直ぐにハルジオまで来ているのか。空を飛べるとはいえとんでもない移動スピードだな。機動力ではまず勝てないだろう。
「カイル、集めてきたのじゃ!」
ダルの声に反応して視線を向ければ俺の方に駆け寄ってくるダルと彼女を追いかけるサイクロプスの群れ、数は15体って所か。興奮しているな。かなり怒っているように見える。何をしたのが知らないがヘイトを集めて俺の所まで連れてきたらしい。
1箇所に集まってくれている方が助かる。俺が対処し易い様にダルが集めてくれたんだ、俺もその思いに応えよう。
「後は任せたのじゃ!」
「分かってる!『空牙一閃』」
サイクロプスが俺の射程に入ると共にデュランダルに魔力を喰わせて横に振るう。確実に仕留める為に蓄積によって貯めた1日分の魔力を込めた。
剣を振るった一瞬だけ刀身が伸びる。最大まで伸ばしたの久しぶりだな。50mまで伸びた魔力の刃がダルを追ってきたサイクロプス全てを両断する。今ので15体、いや17体か。2体ほど巻き込まれて死んだな。
「流石なのじゃ!」
「引き付けてくれて助かったよ」
エクレアが聖剣を解放してビームを放っているのが見えた。だからどういう原理で剣からビームが出ているんだ?未だに謎だな。
だが威力は絶大だ。今の一撃だけで10体近いサイクロプスが跡形も残らず消し飛んだ。あれは魔族とか関係なく当たれば死ぬな。味方には当たらないとかそういう類の攻撃ではなかった筈だ。射程には絶対入らないようにしよう。
「ドレイクぅぅぅぅ!お前が無駄な話を俺様に振ったせいで手駒がやられたではないか!」
サイクロプスの数が半分まで減って漸く状況に気付いたらしい。バージェスJrが吠えている。バカだ。ドレイクとの会話に夢中で今の今まで気づかなかったらしい。これで四天王か。
強さはあるかも知れないが些かおつむが弱くないか?
流石のドレイクも呆れたような素振りを見せた。
「その有様で良くもまぁ国を落とせると豪語したな。まぁ安心しろ、尻拭いはしてやるさ」
ドレイクが動くかと身構えたが相変わらず腕を組んで余裕綽々だ。闘う気がないのか? ドレイクに見下ろされたバージェスJrがキレているがまるで相手にしていない。何かくる?
───ドレイクの遥か後方の空に複数の点のようなものが見えた。
「カイル、不味いのじゃ」
俺と同じ方向を見ていたダルの声が震えていた。恐怖からではないが、現実として受け入れられない。そんな言葉の響きがあった。
ダルに数秒遅れて俺もその正体を認識する事が出来た。点にしか見えなかったのはあまりに遠くにいたから。だが俺たちが見ていたモノの移動スピードは早く、既に俺の視界でも全容を捉えられる程近付いてきていた。
「冗談だろ」
思わず声が漏れた。
俺たちの遥か上空を悠々と飛ぶ空の王者と呼ばれる災害級指定の魔物───ドラゴン。
鱗の色からまだ若い個体である事は分かる。戦ったとしてもそこまで苦労しないだろう。
それが一体ならの話だ。
「30体はいるな」
「サーシャやトラさんがいないから流石に手が回らんのじゃ」
本当に勘弁してくれ。四天王一人と対峙するだけでも面倒なんだ。その四天王が2人。
その上災害級指定の魔物を引き連れて襲撃? 悪夢もいい所だ。
地上では
「今日、この日をもってエルフの国は滅びる。俺の手で滅ぼす」
ドレイクに従うように彼の周りをドラゴンが飛ぶ。地上にいるサイクロプスが呆けた様子で空を見上げていた。
同じ四天王であるバージェスJrも先程までの怒りを忘れたように感嘆の声を上げた。単純な奴だ。
「覚えていろバージェスJr。テスラと組んだお前の父バージェスが良くやっていた手ではあるが、戦略とはこうして行うのだ」
「なに?」
「敵戦力を分散し、圧倒的な力で踏み躙る!」
ドレイクの合図と共に周りを飛んでいたドラゴンが上空から王都を強襲する。呼応するように先程まで呆けた様子だったサイクロプスが雄叫びを上げる。動きが変わった。俺たちを無視するように崩れた外壁へと一直線に向かっていく。
「ただ攻めるだけでは無い。大事なのはその前準備だ。お前の父が出来た事だ、出来ないとは言わせないぞバージェスJr」
「親父に出来た事なら俺様も可能だ!」
高笑いするバージェスJrを見てドレイクが笑みを浮かべている。懐かしむように。
「脳みそまで筋肉ならしっかり頭も鍛えろ。テスラと組んだバージェスは我が君に次ぐ戦果を挙げていた。忌々しい人間ではあったが、その頭脳だけは認めてやる」
「テスラを悪く言うな!俺様の師匠だぞ!」
「テスラの教えを学んで何故そこまで脳筋に育った? アデル様同様に育っていたなら、こうはならなかった筈だが。やはり血筋か…」
テスラ…。どこか聞いた事がある名前だが。今は思い出している場合じゃない。
ドラゴンとサイクロプスが王都を襲っている。救援に向かいたいが対峙する2人が許してくれそうにない。
「まぁいい。よく見ていろ勇者パーティー。お前たちの目の前でエルフの国が滅びる様を!」