勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
黒い槍が真っ直ぐに俺に迫る。槍の軌道の先にあるのは俺の心臓。
最初から殺意が高いなと他人事のように思いながら、反射的にデュランダルで槍を弾く。思ったより抵抗があった。魔力の強化をミスったら死ぬな。
淀みない動きで再び迫ってくる槍を躱し、ドレイクの首を狙ってデュランダルを振るうが素早い身のこなしで躱された。流石に観察眼が良いな。剣の距離感を見極めて届かない範囲まで一歩で下がられた。安直すぎたな。
「ほら、踊れ!」
重力を感じさせない軽やかな動きで飛び上がり投擲の体勢を取っている。流れるような動きでドレイクが槍を投擲した。風を切り裂きながらドレイクが投じた槍が地面に突き刺さる。バチッと火花が散るような音を耳が認識した時には俺の体に雷が走っていた。
「…………っ!」
投擲の軌道から当たらないと軽く考えすぎたな。地面に突き刺さった槍を中心に緑色の雷が円状に広がっていった。そのスピードがあまりに早く回避する事が出来なかった。幸い魔力で肉体を強化していたからダメージはそれほどではないが、雷を食らった影響か手足が少し痺れている。
「……いたいのじゃ!」
横を見れば涙目のダルが手をプラプラと振っている。俺と同じで雷が直撃したらしい。魔法を詠唱をしていたと思うが、雷を喰らって中断させられたようだ。
「無事か?」
地面に突き刺さっていた槍がまるで意志を持つように勝手に浮かび上がりドレイクの元へ戻っていくのを見ながら、仲間に確認する。俺の場合は痺れはあるが動く分にはそれほど問題ない。
「僕は防御が間に合ったので大丈夫です」
「…………」
セシルとエクレアがドヤ顔をしている。どうやら先程の一撃を喰らったのは俺とダルだけらしい。セシルの方を見れば体を半透明の膜が包んでいるのが分かる。あれは確か『マジックバリア』か。
魔法に対する体制を上げる魔法だったな。エクレアも同様か。自分たちだけズルいな。そんな俺の非難の目から逃れるようにセシルが咳払いをしてこちらに近寄ってきた。
「ほら、治療してあげますから動かないでください」
「俺は動ける。ダルを頼む」
まだ少し痺れはあるが、悠長に回復を受ける時間はないだろう。ドレイクの方を見ると投擲の体勢を取っている。何発も喰らうのはごめんだな。妨害する為にデュランダルに魔力を喰わせる。喰わせた魔力は全体のおよそ8割程。
「『飛燕』」
横に振るったデュランダルから放たれた魔力の斬撃は今までの比ではないほど大きい。大きさはおよそ40mか。一直線にドレイクに向かって飛んでいくのを見ながら再びデュランダルに魔力を喰わせる。
「『飛燕』」
続け様にデュランダルを振るう。使った魔力は一呼吸で回復した。魔力の心配をする必要はない。ドレイクに攻撃の隙を与えないくらいに畳み掛けろ。
最初に放った飛燕を躱したドレイクが投擲しようと構えるが直ぐに次の飛燕が迫る。鬱陶しそうにドレイクが翼を広げて空へと逃げた。
「…………ちっ!」
ドレイクが逃げた先に待っているのは白い魔法陣。エクレアが逃げる方向を予測して準備していた魔法だ。
魔法陣が光を放ち神の裁きを連想させる極太の光がドレイク目掛けて飛来する。
「あれを躱すのか」
「…………!」
エクレアが驚いてる。俺も同様だ。ドレイクが魔法陣を認識してから魔法が放たれるまで要した時間は1秒程度だ。
魔法陣を見て直ぐさま回避行動を取ったのは分かったが、あの距離の『ジャッジメント』を躱されるとは思わなかった。思っていた以上にスピードがあるらしい。
上空まで飛び上がったドレイクが槍を構えている。
「『ライトニングボルト!』」
俺たちが居るちょうど中間地点目掛けて黒い槍が投擲される。同じで技を2度も喰らうのは癪なので迎撃しようとデュランダルに魔力を喰わせたタイミングで、足元に赤い魔法陣が浮かび上がっているのに気付く。
一言、言わせて貰うならふざけんなって所だな。
赤い魔法陣が光を放ち爆風を巻き起こした。爆発の衝撃で体が宙を舞うがダメージは殆どない。炎に対して耐性があるのもそうだが、この魔法はどちらかといえば俺たちの動きを阻害するのが目的のもので元々大した威力はない。
しっかりとエクレアも巻き込んでいる所を見ると本当に周到だと思う。受身を取って地面に着地すると同時に黒い槍が地面に突き刺さるのが見えた。
「『バリア』」
───バチッという音と共に雷光が辺りを包み込んだ。
「…………ん?」
槍を中心にドーム状に広がる紫電が自分に迫って来るのは見えた。回避は間に合わなかった筈だが、不思議とダメージはない。
セシルの声が聞こえたな。彼女の魔法のお陰か。聖属性の魔法はそれ程詳しくないが、魔法を1度だけ防ぐ事が出来る障壁を張る魔法だったか? バリアが間に合わなかったら直撃だったな。
地面に刺さった槍がまたドレイクの元へと戻っていく。
あの武器は恐らく魔武器だな。魔石か魔晶石に魔法を溜め込んで衝撃と共に解放している感じか。似たような武器をタングマリンで見た事があるな。手元に戻ってきた槍を構えるドレイクを見ると嫌気がする。
「『ファイアーボール』」
「『ホーリージャベリン』」
ダルとセシルの魔法が上空にいるドレイク目掛けて放たれるが、魔法のスピードよりもドレイクの動きの方が早い。
ファイアーボールは既にドレイクのいない明後日の方向へと飛んでいくが、ホーリージャベリンは追尾性能がある為ドレイクを追っていく。ダメだなスピード差がありすぎる。距離を取ったドレイクが魔法でホーリージャベリンを破壊しているのが見えた。
こうも空で居られると剣士の俺はやる事が限られるな。エクレアも魔法でドレイクを狙っているが、空を泳ぐように飛ぶドレイクに当たる気配がない。
聖剣を解放して放つビームもあれだけ素早いと当たらないだろうな。空から降りてこい卑怯者!って叫びたい気分だ。
「『狂乱飛燕』」
デュランダルに魔力を半分ほど喰わせて空に向かって剣を振る。続けてもう一度。
ドレイク目掛けてデュランダルの意思で動く2つの飛燕が迫る。スピードでは完全に負けているが、追い込み漁をするように動きを誘導するように動いてるのが分かる。
デュランダルに任せ切りだな。飛燕を適当に放っても躱されるのが目に見えている。俺が狙うなら魔法を使う瞬間だな。デュランダルに魔力を喰わせてタイミングを待つ。
巧みな動きで迫る2つの飛燕とダルとセシルが放つ魔法。炎の球体がドレイクが通った後を過ぎていく。空に浮かんだ魔法陣から無数の光の矢がドレイクに放たれるが、全てを空を切るだけに終わる。
ドレイクの進行方向予測した飛燕が迫るが、今まで加減していたと言わんばかりに急加速して回避した。
どうやって攻撃を当てたらいいんだあれ。遠距離攻撃は飛燕しか持っていないからどうしようもないぞ。
「……………」
ドレイクは一旦任すか。この瞬間も世界樹を護る結界を壊そうとドラゴンが炎を吐いたり、体当たりしているのが見える。それを止めようと騎士が魔法を放っているがあまり効果がないようだ。
ここまで来る道中で見たドラゴンと鱗の色が違う。若い個体を示す緑色ではない。赤色や黒色、金色も混じっている。金色の個体はエンシェントドラゴンか。
「『飛燕』」
結界に対して炎を吐くドラゴンに対して飛燕を放つ。向かってくる魔力の斬撃に気付いたドラゴンが避けようと翼を羽ばたかせたが、騎士が放った魔法が妨害した。思わずナイス!って思ってしまう。飛燕がドラゴンを真っ二つに切り裂くのを確認して、上空へと視線を移すと俺目掛けて降り注ぐ黒い槍が見えた。
───死んだな俺。