勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
同じ神である彼女なら可能だろう。だが精霊の守護を解除する動機が思いつかないな。アイリスを排除する為ならそんな回りくどい方法を取る必要もない。いや、アイリスではなく精霊自体が目的の可能性があるのか? それにしたって狙いが分からないな。考えるのは後だ、今重要なのはその事ではない。
「ジェイク殿」
「何でしょうか?」
「精霊の守護に関しては情報が足りず答えに辿り着けそうにはないです。ただ一つ信じて欲しいのは…」
「世界樹の巫女は亡くなった、という事ですね」
「はい」
アイリスの死因はクロヴィカスによる殺害だ。だが精霊の守護があれば殺される事はなかった。精霊の守護を解除したものがいる。あるいは力を与えた精霊に何か起きている。放置していい問題ではないだろうが、緊急性が高いのは世界樹の方だ。
今も呪詛によって世界樹に呪いが広がっている。解除出来る唯一の存在が亡くなった以上、他の対策を考えないといけない。
「世界樹の巫女が亡くなっているのなら、世界樹にかけられた呪いをどうやって解呪するか考えなくてはいけませんね」
「神官たちが解呪を試みていると聞きましたが結果の方は?」
「思わしくないですね。呪いの進行は多少遅らせる事は出来ていますが呪い自体を解呪出来てはいないようです」
世界樹が枯れれば世界が滅びる。それを阻止するために教会の神官たちが動いてはいるがその結果は言うまでもない。通常の呪いではない。禁忌の力か…。
「俺は呪詛について調べようかと思います。世界樹にかけられた呪いについて分かれば対策方法が見つかる筈なので」
「お願いします。私は教会に働きかけようと思います。世界樹の巫女が亡くなっている事は教会にとっても重要事項です。報告しなければいけないでしょう。それに、私達に伝えていない情報があるかも知れませんので」
2人して頷き合う。行動方針は決まった。正直に言って呪いについての知識は全くない。俺自身が能力によって呪いが効かない体質なので調べる事がなかった所為だ。ジェイクも呪詛については知らないようだったし、簡単に見つかる情報ではないだろう。
それでも動かなければ何も始まらない。今も世界樹は苦しんでいる。時間を無駄にする事は出来ない。不意に隣に座っていたジェイクが立ち上がった。こちらに対して微笑みかけている。仲の良い友達に向けるようなそんな笑みだ。
「私は屋敷に戻ります。やる事が出来ましたので色々と手配をしないといけませんからね」
「ジェイク殿、ありがとうございました。情報がなければ今も世界樹の巫女を探していたと思います。お陰で時間を無駄にせずに済みそうです」
「力になれて良かったです。世界樹の為、世界の為に共に頑張りましょう」
「ええ」
こちらに向かって何故かウインクしてから俺に背を向けて離れていく。少し歩いた所で魔道具を付けたのか光源が屋敷へと向かっていくのが見える。
「やたらとジェイクの好感度が高いな。何故だ?」
「
「それだけか?」
「ローウェン卿に恋焦がれ憧憬の念を抱いていたようですから、同列として扱われるマスターにも同じような思いを持っていた可能性も考えられます」
「ローウェン卿と比べられると幾分か見劣りする気もするがな」
「強さという面ならマスターが上ですね。社会的立場ならローウェン卿の圧勝です」
「分かっている事だが、出来れば言わないでくれ」
流石にそこを比べられると俺に勝ち目はない。ローウェン卿は騎士団のトップであり、国の政治にも関わっている人物だ。対して俺はフリーの傭兵。今は勇者パーティーの一人という肩書きはあるが、旅が終われば俺の地位はさほど高くない。
魔王討伐した後の事も追追考えないといけないな。倒した後か…ノエルと結婚する事になるんだな。そういう約束を彼女と交わした。
その事に不満はない。今回の旅のお陰で許容範囲が広がった俺ならノエルの好意を受け止められる。少しばかり感情が重たいし行き過ぎた愛ではあるが、一途に俺を思ってくれているその気持ちを俺を嬉しく思う。
問題があるとすれば彼女以外と体の関係を持ってしまった事だ。サーシャにエクレア、そして亡くなったトラさん。ノエルに何を言われても仕方ない事をしている。現状は問題を先送りしているような状況だ。ノエルと合流したら改めてエクレアとサーシャを交えて話し合わないといけない。その事を考えると胃がキリキリする。
サーシャはともかく、エクレアだな。ノエルとエクレアは意見がぶつかり合う事が予想される。どちら自分が一番じゃないと嫌、その主張のぶつかり合いが物理的にならない事を祈ろう。
他に考えるべき事があるにも関わらずまだ起こってもいない修羅場について考えているのは俺の直感が告げているからだろう。近い内にノエルに会う気がする。胃が痛い。
気分を変えよう。デュランダルなら呪詛について知っているだろうか? 彼女は俺よりも博識だ。もしかしたら知っているかもしれないな。
「デュランダルは呪詛について何か知っているか?」
「いえ、私も呪詛についての知識はありません。けど、一つマスターが知りたい事の情報源を知っています」
「どこにあるんだ?」
「前のマスターの家ですよ、マスター」
「タケシさんの家か」
色々な出来事が立て続けに起こった所為ですっかり忘れていた。タケシさんは俺たち転生者の為に様々な情報を残してくれている。魔法の事、魔族の事、歴代魔王の事、歴代勇者の事、そしてこの世界の神の事。それら全ての情報を纏め、テルマにあるタケシさんの家の隠しへ部屋に置いてくれているそうだ。
「タケシさんは呪詛や呪いについても調べていたのか?」
「いえ、前のマスターは呪詛や呪いについて調べてはいませんよ」
「なら俺の知りたい情報とはなんだ」
「『瘴気』と『浄化』その力の関係について前のマスターは調べていました。特に浄化の力の方ですね。世界樹の救う術がもしかしたら見つかるかも知れませんよ」
僅かではあるが希望が見えた。世界樹の巫女が亡くなった事実に崩れかけた道が、補強されていく感覚だ。タケシさんのお陰で前に進める。
───改めて思う。タケシさん、貴方は何を知ったんですか?
彼が
それだけなら瘴気や浄化について調べる必要はないと思うが…。いや、関係あるのか! ルドガーの加護を解除したのは世界樹の力…つまり浄化の力。タケシさんは浄化について調べ、彼に与えられた加護を消そうとしたのか。
瘴気について調べているのは浄化と近い関係性があるのかも知れない。
そうなると彼が調べている情報は全て転生者に向けてのものだ。前世のようにネットで調べれば一瞬で出てくるような事はない。情報は全て書物を調べ生き証人である長命種の者から聞かなければ手に入らない。中には長い歴史の中で葬りさられたモノもあるだろう。
真偽が定かではないものもある。どれが正しくどれが間違っているか、正しい情報だと判別するだけでも多くの時間が必要だ。そんな長い時間を費やしてまで、赤の他人に等しい転生者の為に情報を残した。
タケシさんがそこまでする理由はなんだろうか? ミラベルが関わっているのは分かるが、他にもある気がする。彼の残した情報の中から彼の思いを知る事が出来たらいいが…。
「まて、今回の騒動で多くの建物が倒壊したぞ。タケシさんの家も潰れたんじゃないか?」
「おそらく大丈夫だと思います。前のマスターの家は王宮の近くです。あの付近は比較的被害が少なかったので」
「あの付近に家なんかあったか?」
「家という概念にとらわれてはいけません。前のマスターの家は普通ではなかったので。変わった人でしたからねー」
王宮の付近にはそれらしい家はなかった。というより建物がなかった。王宮をより際立たせる為に建てていないのだろう。
正直タケシさんの残した地図だけでは場所は分からない。小学生のラクガキより絵心がない。タケシさんの家を知るデュランダルの道案内だけが頼りになるだろう。彼女が無事だと言うのならそれを信じよう。
「ダルたちと会うのは昼からの予定だ。朝のうちに行ってみるか」
「それならそろそろ寝ないといけませんね。思う事はあると思いますが、休むべきです。最近はろくに寝ていないですよ」
「分かっているさ」
色々と考えすぎてしまって寝付けないのが正しい。短い期間で色々な事がありすぎたからな。それでもデュランダルの言うように睡眠を取るべきだ。
「寝るか」
「はい、寝ましょう」
───焚き火の炎が先程より小さくなっている気がする。風に吹かれてユラユラと揺れる炎、まきの爆ぜる音を心地よい。とはいえ寝ると決めたのなら何時までもここにいる訳にはいかない。その場から立ち上がり焚き火の処理をしてから、屋敷へと向かう。
屋敷で俺を待っていたジェイクに一緒の部屋で寝ますかと誘われたが、流石に断った。即答だったと思う。
誰の個人エピソードが読みたいかというアンケート2
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1.エクレア
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2.サーシャ
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3.ダル
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4.トラさん
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5.ノエル
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6.セシル
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7.デュランダル
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8.テスラ
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9.マクスウェル
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10.シルヴィ
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11.ディアボロ
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12.ドレイク
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13.タケシ(無投票)
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14.とある衛兵