人は噂好きなものである。根も葉もなくとも面白ければ面白いほど良い。
潤滑油程度ならば。
大抵、尾鰭臀鰭がついて回り、ときには感冒のようにその流言が次々と人を伝い情報の混乱へつながる。それは認知と理知の不全と言っても良い。
だから、とは言わないが。
少なくとも、おやじの言うように憶測推測で物事を言うのはほめられたことではない。
猫猫も言いつけを守りつつ、そのように理解している。この思わぬ宮仕の身になってそれは確かに実感を伴うものとなった。
推測憶測で確たる証なしに話せば誰かが無辜の身を罰せられることにもなる、それがこの場所なのだ。
市井に流れる無責任な話の種程度ならばまだ良い方だが…まだ良い方、というだけで。
虚言流言となれば身に降りかかる雨あるいは火の粉に成り得るのだし。その規模が自分だけにとどまるか、広く迷惑あるいは実害を被るかは予測困難なこと。
だから噂は半笑いでへーと聞いておくに限る。その中に散財する真相に近い情報だけを必要ならば考えれば良いだけで。
「へー…。はっ?」
小蘭に点心を付け届けついでに、おしゃべりを始めたところであるが。
ああ、いかにも女が好きな噂だなぁ…という内容が聞こえてきて「へー」と流していたら。どうもへーが声に出ていたらしい。
幾人かがばらばらと仕事をしつつ話していただけの筈が、何故だか一人がこちらを指さした。
(私、関係ないぞ)
いや、たしかに上司の話はしていたようだが。あのきらきらの。
巻き込まないでくれよ、とは思ったが、指さされて反応してしまったからには何か言われるだろう。
「あなた、侍女に召し上げられた人よね。任氏様と連れ立って歩いているのを見たことがあるの」
洗濯場であるので当然尚服の下女であった。若い者の中に幾らか年嵩に見える者が一人。
あーあ、話しかけられちゃったよ。猫猫がびっくりした顔のまま面倒だなぁ逃げようかなーなど考えていると。
「そうだよ、猫猫は賢いから出世したの」
何故かずいと出てきて小蘭が胸を張り、猫猫はあははぁーと愛想笑いするしかなかった。絡んでしまわないうちに退散してしまおうと思ったのに話してしまっては、動きづらい。大盛りの点心を前に喋っていれば用事というのも通じぬだろうし。
「あー、時折ついて回ることもあります」
ついて回られている気もしないでもないが。
「つまらないことなんだけど、休憩の暇つぶしに聞いてくれない?」
(なんだ、単に世間話したいだけか?)
それくらいなら中身が多少下世話でも如何にも女な色恋の話にしても適当に付き合えばよいだけだ。
「はぁ」
頼みという頼みでもないなら、ご自由に。相変わらず愛想はないが…どうせ余るであろう点心をついでにあげるくらいの気配りはあった。
ほい、ほい、ほいとまだまだ熱い包子を直に渡されてみなあちちとやっている。暇を見て未だ桜花などがちょくちょく持ってくるものの横流し品であり、つまり上級妃の宮で食べられている程度のものであるので嫌な顔はしない。平たく言ってお高めで美味しいものであると思っているので、我慢がよくきく。ほいほい雑に渡されても。
文句も言わずもぐもぐ美味しい美味しいとやっている下女たちを見て、人間の脳みそとは現金なものだ、と軽く眉などあげてみる。
「ああ、ありがとういただくわ」
話しかけてきたこの少し年嵩の下女、猫猫のすぐ後の採用時期にきたらしい。適齢期の娘をよりによって売るくらいなので家はもちろん裕福でないのだろうが、もしかして落ちぶれただけで家柄は良いのかもしれない。
物腰と言葉遣いも柔らかく、姿勢も美しい。しかしよく働くのだろう少し荒れた手をしている。十人並みの美人、といった感じで侍女になれば程よく馴染んで目立たず波風に晒されにくそうな。
(私も売られた時に仮粧やめとけばよかったな)
そうすればもっと特徴がなくて…しかし今言ってもせんないことであり。
むしろ、あの時より数段中に食い込んでしまっている身分なのだ、好奇心とはやはり恐ろしい。猫猫は自重しないとなぁなどのんびりと考えた。
「それでね。ああほんとにくだらない話なのよ?」
どうやら見目麗しすぎる宦官のことで盛り上がっていたら、若い下女の一人が私に目をつけたらしい。任氏の執務室に大勢呼ばれた日に、肩を掴まれた雀斑の顔をしっかり覚えていた。
尚服の係は洗濯物の受け渡しで妃の宮に立ち寄ることがあるが、この少しばかり年嵩の下女も任氏に声をかけられているその顔を見たようで、噂の召し上げられた尚服の下女とはあのソバカスちゃんであり、しかも任氏様と話せる立場にあると。
「話せるというか、仕事の話ですね」
噂の薬師どの、と主上に言われるくらいなので思ったより話は広がっているのだろうか。顎に手をやり考えてみるが、結構派手に動き回っているといえば動き回っており。まぁ噂自体は仕方ないのかも知れないと思う。
(余計な尾鰭はつけないでくれよ…)
願わくばただの変わり者、で話が終わってくれると助かる。筋で言えばそうなるとは思うのだが。こちとら貧相な醜女なのだ、心配ないとは思うが、危機管理には敏感な年頃であった。
「任氏様の執務室にもよく出入りしてるというし」
「あー、仕事です」
そりゃ、仕事なんだから報告にも行くし必要があれば一緒に移動することだってあるのだ。しかし、仕事です仕事です、というとなんだか興味が増したようにも見える。これは言葉を間違えただろうか。
「でも、それだけ話す機会があるということよね?」
「まぁあると言えばあると言うか」
確かならくだらない世間話をしたり仕事の愚痴を聞いたり、たまに報告ついでに茶も飲んだりもする。ただ、猫猫から積極的に話すことはさほどなく、これは話せるといってよいのか疑問がある。聞き役というか。たまに意見・提言を求められることもあるにはあるものの。この間は感冒に良い処方を問われてつい喋りすぎてしまったが、そう頻繁にあることでもない。
「ちょっとだけ、聞いて欲しいことがあるの」
片目をつぶり首を傾げるという、適齢期にしてはやや幼さの残る仕草で手を合わされた。
はぁ。できれば断りたいが。
しかし拝む片手を残して懐から出されたものに、猫猫はつい手を伸ばしてしまった。好奇心とは恐ろしいものだ。
さて。
玉葉妃の宮に回って来るのを待つか、呼び出されるのを待つか、暇を見て執務室に行くか。まぁ六日七日も見ておけばまずどこかで会うのだろうが、できたらさっさと片付けてしまいたいのは仕事人間の性ではある。
お使いついでに一度は執務室をのぞいてみたのだが、留守を預かっている宦官に今日は帰ってこないからと返され、相変わらず表情に見合わない忙しさだなと感心した。
さてついでの用事がなければ待つ方をとるだけであるが、あまり長くなるならもう一度行かねばならないか?と思っていたところその翌日早速呼び出しがかかった。
「土産をもらったんだが、生でな」
どうやら非処理であるらしく、なんらか処理が必要ならば早めが良いだろうと思ったらしい。どれどれと覗き込んだ猫猫の瑠璃紺の瞳がきらきらと光った。
「これはかなり質が良い人参です、お高いのでは」
「東の小国が新しい交易品にと外交時に持たせて回っているらしい。医局に任せてきたのだが、お前も多分要るのではないかと」
「ありがとうございます」
少量だが栽培したらしい、棒槌には及ばぬが五加参は温の薬効が強く疲労、不眠などに良いものである。自生のものを探すしかないものもある中で、安定して品質の保たれたものが手に入るならばそれほど良い話はない。
思いがけず質の良い生薬に目を丸くした。医局に卸すものをこちらにも回してくれるとはありがたい。わざわざ残してくれていたようで素直にありがたい気遣いである。綺麗に拱手の礼を示し丁寧にお辞儀すると、麗人はどこか嬉しそうにした。
時折猫猫が嬉しさなどを表すと、この男はこういう顔をする。感謝されるから、ではなく多分喜ぶ姿が好きなのだろう。誰でも、かどうかは知らないが。
「お前の眼鏡に適うならば、いいものなのだろうな」
小躍りしたいのを堪えながら、ゴロゴロと何本かを一生懸命に懐にしまっていると、流石にそれでは運びにくいだろうと風呂敷をくれた。
(今日は気が利いているな、疲れているだろうに)
珍しい、と感心しながらくるくると人参を風呂敷に収める猫猫のその横で、任氏はふーと息を吐いてカウチに深く凭れている。
「だいぶお疲れのようで」
「遣いの話がどうも要領を得なくてな、緊張が酷かったようだ」
「任氏さまがお会いになったのならば、仕方ないかと」
「何故だ」
至極真っ当な疑問であると思う。貴人としては振る舞うが、別段偉ぶって権威を振り翳すようなことはしないのだし。
「いやあの、お顔が」
「それで仕方ないと言われてもな…」
自分で利用しているので美人麗人の評は否定するつもりはないようだが、それにしても顔で緊張されてはやりづらい、と任氏はげんなりとした表情をした。
担当が疲労で寝込んでしまったので急遽の代打であったらしい。代打といっても外交そものを扱うわけではなく、付随する交易の品の調整確認のためであったらしい。後宮にも多数の交易品が入ってくるので、そのあたりも管理管轄だろうからと引っ張り出された。都から東へ馬車半日ほどの町の迎賓の館までばたばたと。帰るにも遅くなるので泊まりとなった。挨拶をしてからまた半日人参と馬車に揺られきたのであろう。
遣いの人間ははまぁまぁの立場のようで助手のような側女を一人伴っていたが、任氏をみるや二人とともどももじもじとしてしまいやりとりが捗らなくなってしまったそうだ。
「仕事なのだからきちんとして欲しいのだが」
「まぁ、それはそうですね」
もう支度を終えてしまっていても良い時間であるが、任氏の様子からすぐには夕餉になるまいと見てか水蓮が茶を出してくれた。よく冷やされており、桃だろうか、白茶に甘い果実の匂いがつけられている。果実水を混ぜたのではなく、干した果肉を茶葉に忍ばせてあるのだろう。舌には甘くなく香りが強い。
二人して「はぁ…」と芳しい冷茶に癒されるような溜め息をついた。
息が揃ったのが面白いのか楽しいのか、くすぐったいような子供っぽい笑い顔でこちらを見てくる。
「そろそろ日が傾いてくるが、まだ良いのか?」
いつもなら落ち着かないのでと帰りたそうにする猫猫が腰を落ち着けた風にしているためか、任氏が大丈夫か?と言いたげに問うてくる。
「任氏さまの呼び出しの時にはさほど門限は厳しくありませんし、今日は茶会でつい食べすぎたからと夕餉も遅いのです」
「なるほど玉葉妃が」
意外な顔をしているが、時折あるのだ。どうも思わず盛り上がると食が進んでしまうらしい。
それにしても、まだ良いのかと聞くから事実を話しただけのに、何故この男はなんだか少し嬉しいような素振りをしているのだろうか。こちらも用事があるので、ついでにちょっとゆっくりしているに過ぎない。
「ならばゆっくりすると良い、呼んだのだから帰りは人をつけよう」
「ありがとうございます」
日も長くなっているので、そこまで長居とはいかないだろうが。
最近何気によく気を回してくれていると思う。下賎の生まれの鶏ガラにそんなに気を遣わなくても良さそうなものだ、と思うがありがたいことはありがたいので素直に言葉を受けておく猫猫である。
「そういえば高順さまは、最近あまり見ませんけど」
「ああ、別の仕事が少し忙しい」
いつも仏のような顔をしている副官殿は別件で動き回っているらしい。
「新しく補佐はつけたのだが、どうも慣れなくてな」
なるほど仕事も人も慣れないのでちょっと負担が増えているようだ。
「任氏さま、休息が疎かになっているようなことは?」
「ん?まぁ寝所には帰っているし、立て込む時に比べればまだまだ良い方だ」
よくうろうろしているので暇人かと思っていた時期もあったが、直属の下女をした時には思うよりずっと忙しい身であることは知っていた。
あの暇はわざわざ作っていたものだ。
通常業務外であるので報告だけでなくなるべくきちんと見聞きしておきたいのだろう、大した仕事人間である、と感心したことであるが。どうも感心した顔で見ると高順も任氏も落ち着かないらしいのであまり出さないようにしている。失礼なことだ。
代わりに補佐に入ってる人間も、あの気遣いの人である高順の代任は大変ではあろう。
ひとまず、今のところの見立ては「まだ大丈夫そう」、まる。
「とはいえ、武官から引っ張ってきたのだからよくやってくれてはいる」
ん?武官?人脈的に引っ張れるところが他になかったのだろうかと首を傾げると、
「文官にも伝手はあるんだが、ちょうど時期が悪くてな」
なるほどそれで。うんうんと相槌を打っておく。
高順も武官のような見た目をしているのでもしかすると出はそちらなのかもしれないが、あの気の回り用を考えるといずれにしろ同格は得難い人材なのかもしれない。
「彫金細工師の件でお前に着かせた人間だ、覚えているだろう」
「あーあのやたらに気骨まっすぐな感じの」
馬閃といったか。上下に厳しい印象の無愛想でちょっと青いあの男…あれでは高順のような気遣い根回しは確かにできそうにない。
「猪突猛進が玉に瑕なのだが、きてもらっているからには余計な文句は言えない。まぁあれはあれでいいところもある」
気遣いの人がそばにいなくなって代わりがやや粗忽な者、とくれば確かに任氏が余計に気を回すことにはなろう。補佐を補っているわけで、それはまぁ疲れるだろう。しかし最近気が利くのはそういうこともあったわけか。
「さて、俺は湯浴みしてくる。どうも道が埃っぽくて身体がざらざらとしてかなわない」
ふん、と踏ん切りつけるように立ち上がり、任氏は部屋を後に。
「小腹が空いているなら、水蓮に言えば茶菓子をくれるぞ。たしか煎餅を仕入れていたはずだ」
と思えば思い出したように扉から顔だけを出して。そのままするすると去って行った。
ほほー煎餅とはいよいよ気が利くじゃないか。などとほくほくしているが。
(ついのんびり構えてしまった)
ごゆっくり、と手を振っている場合ではなかった。
湯浴みから戻るのが遅くなれば、また機会を見直さなければならない、それは面倒であった。
しかし今日のかの貴人はお疲れであるのだろう、例の気に入らないきらきらがかけらも見えず、いつもよりよほど話しかけやすかった。慣れぬ者が見れば憂いでも、猫猫から見れば単なるお疲れのご様子ではある。
しょうがない、せっかくなので煎餅でも貰ってのんびりしてみるか。
と顔に書いてあったかは知らないが。
入れ替わりに水蓮が綺麗な紙箱をもってきた。その素早さからみて、手土産にでも持たせるつもりで詰めてくれていたのだろう。
「まだまだ湿気が来てないから美味しいわよ」
にっこりと孫でも可愛がるような笑顔で。
どうも、直属下女を外れてからは厳しさがないというか。官女試験に落ちてからやっていたことを考えると、あれはほとんど行儀見習いのようなものであった。「鍛えがいがある」とずいぶん扱かれたおかげで掃除の腕は上がったものだ。
今では遊びに来た子供を可愛がるばあや、という方が似つかわしい。
とはいえにこにこしててもなんだか怖いのは、教育の賜物だろうか。
さて、見るに香ばしい姿の煎餅。基本的には外では手をつけないのだが、待つ間が暇であるしせっかくなのでと一枚いただく。
まぶされた塩も程よく、パリッと小気味良い音がした。
「ふふ」
塩が付いて散るからと両の指でちんまりと煎餅を持ってパリパリやっていると、水蓮が不意に笑い声を漏らした。そんなにおもしろい姿であったろうか。
「いえね、さも馬車で帰ってきて一息ついたみたいな顔でいるのだけど」
「ふぁい」
どうやら任氏のことであるらしい。はて馬車で行ったのに馬車で帰ったわけではないのか。
ぼりぼりと煎餅を頬張っているので碌な相槌は打てないが、まぁ喋ったら喋ったで怒られそうである。
「本当は早馬を飛ばしたのよ。仕事も溜めたくない、土産の処理も慣れない馬閃に任せては無駄な手間がかかるし」
つまり、館を辞すや否や騎乗の人となり、ばたばたと馬を駆ったらしい。人参と馬を取られた護衛の一人は馬車にとことこ揺られてきたと。
急な代任とはいえ穴を開けると後が大変だと、私を呼ぶまで仕事を片付け、医局にも搬入を報せて段取りし、それで漸く一息ついたのだそうだ。
「それにね、『馬閃では猫猫が不快になるかも知れないから、それも任せておけない』だなんて」
本当におかしそうにコロコロと口を押さえて笑う老女であるが、そこには多分に「坊ちゃんたら可愛いことをする」という成分が含まれており。
わざわざ猫猫と言い換えるあたり、本実際そのようなことを言ったのだろう。
ふーむ、と冷茶を啜る。
その動きを想像してみるに目まぐるしく、また少し無理をしたりもしているのだろう。
高順の補佐がなくなれば、自分で補うべく色々と考える範囲を増やして行動化していく。子供っぽいような絡み方も多いが、あくまでも仕事は仕事としてやるとなれば実に丁寧というか、抜かりを嫌う。
まぁ別に生薬は貰えればそれでよく、馬閃が多少粗忽でも別にあまり気にならないのだが。
「仕事人間ですねぇ」
暇そうに見えて、というか余裕に見せかけているというか。やはり後宮内での麗人としての顔は大事なのだろう。
「でも、それだけじゃないわ。誰かの喜ぶ顔というのは、少し無理してでも見る価値があるもの」
またにこにこと。さて同じようなことをさっき思ったものの、水蓮が指すその誰かとは。
(この場合私なんだろうな)
いろいろと確かに雑多な仕事はくるものの、その分気を配ってくれている部分もあるのはわかる。高順の気遣いの事後承認みたいなものだろうななど思っていたが、最近あの茶目っ気のあるおじさんがいなくともあまり変わらない。ということはかなり、本当は心掛ければ気がつく人間なのだろう。
しかしいつぞや鉛を含んだ器の危険性とともに、葡萄酒の劣化による酸味を好むのはお疲れではないかと指摘した際など、辛口の酒が良いという冗談半分の要望に「しばらく葡萄酒にする」など子供っぽいことを返したきたものだが。それでも3日とおかず多様な辛口の酒が出るようになったのだからなんだかんだ聞き届けてくれるあたり甘いというか。
(気に入られてる、というか)
気を回すだけでなく、正直あの天上美人な御仁はどうも顔をみたがるというか、近づきたがるというか。
見た目のおかげで下卑た感じがしない、なんてことではなく。子供っぽいような表現かもしれないが、仲良くしたがっている感触であり。面倒くさがりの猫猫は率直に面倒だとは思う。はじめのころのように色を使ってくるならそれは地虫を払うようにはねつけてやるが、どうにも、毒気がなさすぎて無碍にもできない。
それを思うと、この問いは前置きをつけていないとまるで自分自身が任氏に探りを入れているかのように取られないとも…。
いやま大丈夫か、これまでを思えばそうはとらんだろ。だいぶ失礼な視線を送ってきた自覚はある。
ま、一応断りを入れておくだけでそれ以上言い訳がましいことをいう必要もないな、と煎餅を齧りつつ任氏を待った。