連邦捜査部第1ヘリコプター班   作:h.hokura

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今回の戦闘時のBGMは地獄の黙示録からワルキューレの騎行です(笑)。



4.「暴走多脚戦車を破壊せよ」

ミレニアムサイエンススクールの屋上にあるヘリポート。

そこに1機のブラックホークが降下して来る、それをヘリポート脇の待機所で待つのはミレニアムのセミナーで会計担当を務める早瀬 ユウカだった。

ブラックホークが着地しローターが止まるとユウカはブラックホークに向かう。

そして着地したブラックホークから降りて来た、先生とアヤネそしてエリカを迎える。

「ようこそミレニアムサイエンススクールへ、初めましてアヤネさん・・・先生、エリカは久しぶりね。」

ミレニアムにおいて指折りの数学の鬼才と知られるユウカはそう言ってほほ笑む。

「久しぶりだなユウカ。」

「お迎えありがとうございます早瀬さん。」

「ええ久しぶりねユウカさん、元気そうで何よりです。」

この日先生とアヤネそしてエリカはセミナーから要請を受けミレニアムサイエンススクールを訪れていた。

「要請を受けて頂き感謝します・・・まあ対策委員会の方々には多大な迷惑をお掛けするかもしれませんが。」

何故か疲れ切った表情でユウカが言うと先生とアヤネそしてエリカは戸惑った表情を浮かべる。

「とりあえずセミナーの執務室へご案内します。」

ユウカは気を取り直して先生とアヤネ、エリカの3人を執務室へ案内するのだった。

セミナー・執務室。

「改めて皆さんミレニアムサイエンススクールようこそ。」

執務室にある仕切られた小会議室に先生達を導き座ってもらったユウカが皆を見ながら歓迎の挨拶をする。

「えっとユウカさん、お話では対策委員会の私達に何かお願いしたいとの事でしたが?」

「はいその通りです、ただこの依頼はセミナーからと言うより・・・ああ正式な依頼者が来ましたね。」

ノック音がしユウカが執務室の扉を見ると声を掛ける。

「どうぞお入りください、白石部長。」

「遅れて申し訳なかった早瀬会計担当殿。」

扉を開けて入って来たのはエンジニア部の部長を務める白石 ウタハだった。

多種多様なロボットを発明している優秀な技術者だ。

「先生、奥空君、エリカ、3人共今回招集に応じてくれ感謝する。」

先生達3人に軽く頭を下げてウタハは礼を言う。

「エンジニア部からの依頼と言う訳でしたか・・・お久しぶりですねウタハ。」

「君がアビドスに居てくれたのは幸いだったよエリカ。」

ウタハとエリカは以前にもエンジニア部絡みの件で顔を会わせた事があった。

「私には幸いとは思えないけどね白石部長。」

ほほ笑むウタハを見てユウカは肩を竦めて言う。

エンジニア部絡みの厄介事にユウカは何度も巻き込まれた事があったからだが。

「それで対策委員会への依頼とは一体何のかな?」

3人の様子を微笑ましく見ていた先生だが、話を進める為ウタハに問い掛ける。

「ああ先生それに対策委員会に対する依頼なんだが。」

ウタハが先生達に依頼内容を説明していた頃。

エンジニア部・第3格納庫。

厳重なセキュリティ下に置かれている無人の格納庫はエンジニア部の3人の部員以外入れない様になっていた。

それなのに明らかに3人の部員以外の者が格納庫に侵入していた。

侵入者は人の気配が無い事を確認すると、格納されている多脚戦車に近寄り上部に登ると砲塔脇のパネルを開き作業を始める。

やがて作業を終えた侵入者は静かに格納庫出て行く、その間セキュリティはまったく反応せず、監視カメラには何も写っていなかった。

その為先生達はもちろんエンジニア部の3人の部員達も気づけなかった、そう全てが終わるまで。

数日後アビドス郊外の砂漠地帯上空をエリカの操縦するブラックホークが飛行していた。

「エンジニア部が作成した多脚戦車のテストねぇ。」

後部キャビンでホシノが欠伸を噛み殺しながらぼやいていた。

朝早くブラックホークに乗せられた為かホシノは眠くて仕方がなかったのだ。

「よりによってエンジニア部からの依頼?悪い予感しかしないじゃない。」

ホシノの隣に座っているセリカが不安げに言う、ミレニアムのエンジニア部に関する悪評は有名だったからだ。

「でもその多脚戦車でしたか、どんな物なのか興味が湧きますね。」

「うんこれは見逃せない事案。」

好奇心を抑えられないノノミ、シロコも同じ様に好奇心を抑えられない様だった。

「00式汎用多脚戦車、高性能AIを搭載、あらゆる状況に対応出来る、との事なんですが。」

アヤネがウタハが提供された多脚戦車の情報をシロコ、ホシノ、セリカ。ノノミに説明する。

「その性能をテストしかったのですが、ミレニアでは・・・その難しいと言うことになったらしく。」

悪名高きエンジニア部の作成したものをミレニアの敷地内でテストする事にセミナーは難色を示したのだ。

そこで部長のウタハがアビドスの砂漠地帯でのテストを提案したのだ。

砂漠地帯であれば周りに迷惑を掛けないと言う訳で。

その代わり対策委員会にはテスト場所を提供してもらった代価として相当額のお礼を払うとする事にした。

エンジニア部のテストと言う事で対策委員会メンバーは不安を隠せなかったが、借金のこともあり承諾したのだった。

今回のテストが上手くいけば継続的に依頼する可能性があり、対策委員会としても利点があったからだ。

『皆さんもう間もなく会合点に到着しますので用意願います』

ブラックホークの副操縦席でタブレット端末を見ていたアヤネが話し掛けて来る。

その声にホシノはベルトを外しキャビンの窓から眼下を見下ろす。

そこにはエンジニア部の大型トレーラーが既に到着しており部員達が扉が両側に開かれた荷台上にある多脚戦車に取り付いているのが見えた。

ブラックホークは傍まで近づくとホバリングに入り先ず吊り下げてきたバギーを砂漠上に降ろすとワイヤーを外し傍に着地する。

そしてシロコとホシノそして先生を降ろすと再び離陸し観測ポイントへ向かう、一方降りた先生達はエンジニア部の部員達が作業している場所へ歩いて行く。

「やあ対策委員会の方々だね、ようこそ私は部長の白石 ウタハだ、先生共々今日はよろしくお願いするよ。」

開いていたパネルを閉じ顔を上げたウタハがシロコとホシノそして先生を迎える。

「こちらこそ頼むよ。」

「やあ~よろしくね。」

「うんよろしく。」

先生とホシノは微笑みながら、シロコは生真面目に答えると3人そろって多脚戦車を見上げる。

「ふ~んこれが多脚戦車かい?」

見上げながらホシノが質問すると、同じ様に点検していた豊見 コトリが我が意を得たと言う様に解説を始める。

「説明しよう、これこそ我がエンジニア部が開発した00式汎用多脚戦車無敵1号だよ、あらゆる環境下でも確実に作動出来る機関、状況を我々が指示しなくとも自ら判断して行動出来るAIを搭載、そのボディはどんな攻撃も防ぎ、そして・・・」

際限なく続くコトリの説明にシロコとホシノが思わず引き、先生は苦笑してしまう。

「まあほっておいて構わないよお三方、兎も角本日はよろしくね。」

止まる事の無い説明をするコトリを気にする事も無く猫塚 ヒビキが言う。

「ではテスト開始だ対策委員会の方々も準備入って貰えるかい。」

「了解だウタハ。」

「おじさんも了解だよ。」

「分かった、準備に入る。」

ホシノとシロコはそう返事をするとバギーに戻り乗り込み、先生はシッテムの箱を起動させアロナを呼び出す。

「アロナ、テストを開始する、バックアップをよろしく。」

『はい先生。』

バギーの乗り込んだホシノはエンジンを始動、シロコは無線でエリカのブラックホークを呼び出す。

「エリカ、そっちの準備は問題無し?」

『はい、こちらは何時でもOKです。』

シロコの問いに無線機からエリカの返事が流れる、その返答を聞きホシノが窓から顔を出し先生とエンジニア部の3人に合図する。

その合図に先生は頷き、ウタハを見て言う。

「それじゃテスト開始だウタハ。」

「了解だ先生、コトリ、ヒビキ、始めよう。」

「「OK部長。」」

トレーラー脇に設置されたテントの中に入り、それぞれ準備された端末に向かうとコトリとヒビキが操作し始める。

機関が始動され、各センサーが活動を開始、多脚戦車無敵1号が荷台から砂上に降り立つ。

「機関出力70%、歩行システム稼働確認。」

「センサー作動、AIに戦術指令3号を送信、準備よし。」

端末を操作しながらコトリとヒビキが報告する。

「では指令3号開始、全員に告ぐ、無敵1号始動します。」

作動音させ無敵1号が前進を始める。

「皆さんモニター開始して下さい。」

『『『了解!』』』

ホシノがバギーを発進させ無敵1号の横に張り付くとシロコがモニター用カメラを向ける。

一方エリカのブラックホークは無敵1号の後ろに着きスタブ・ウィングに装備されたカメラを作動させる。

「無敵1号、目標地点に到着、砲撃テストの準備に入って下さい。」

ウタハの指示を受けコトリが火器管制システムを起動させると、無敵1号のAIがセンサーで目標を捜索する。

「無敵1号が目標を確認、攻撃態勢に入ります。」

ディスプレー上で砂漠に置かれた車のスクラップに照準が合わされた事を確認しコトリが報告する。

「砲撃開始。」

ウタハでの指示を受けヒビキが射撃許可をAIに送ると、無敵1号は捉えた標的に砲身を向け射撃を開始する。

砲弾を受けたスクラップが次、々と吹き飛ばされてゆく、その光景を見ながらホシノ口笛を吹き呟く。

「これま凄いね・・・おじさんは自分が標的ではなかった事を感謝したいね~」

全ての標的を撃破した無敵1号は更に前進し次のテスト地点へ向かおうとした時だった。

テント内にアラーム音が響きコトリが焦った表情を浮かべ報告する。

「管制システムがシャットダウン、AIが戦術指令を拒否!?」

「緊急停止指令は?」

コトリの報告にウタハが冷静に問い掛ける。

「反応無し、他の指令同様拒否されています。」

無敵1号は進路を変えると速度を上げ移動し始める。

「各員へAIがこちらの指令を拒否、無敵1号は制御不能繰り返す無敵1号は制御不能。」

ウタハの声が先生やエリカ達に送られる。

「ヒビキ、自爆システムは?」

「駄目、反応が無い、まったくこちらの制御を受け付けない。」

切迫したヒビキの声が無線回線に流れる、即座に先生がアロナに問い掛ける。

「アロナ、そっちから制御出来ないか?」

『・・・駄目です先生、全ての回線が閉鎖されていて、こちらからのアクセスを受け付けてくれません。』

焦ったアロナからの報告に先生は一瞬沈黙した後ウタハに問い掛ける。

「ウタハ、無敵1号はどこへ向かっているか分かるか?」

「コトリ、無敵1号の進路を確認して。」

指示を受けたコトリが端末を操作してディスプレー上に無敵1号の進路を表示させる。

「・・・アビドス高等学校の校舎へ向かってます!」

『『『『!?』』』』

その報告にシロコ達が動揺の声を上げる、その中エリカが先生に進言する。

『先生、無敵1号の破壊許可をお願いします。』

先生はエリカの進言に頷き隣に立つウタハの方を向いて尋ねる。

「ウタハ、申し訳ないけど無敵1号を破壊する。」

ウタハは先生の言葉に頷いて答える。

「仕方がありませんね、私達では暴走を止められません、先生の指示に従います。」

落ち込んだ表情を一瞬浮かべたが、ウタハは冷静にそう判断を下した。」

「「部長・・・」」

悔しそうなコトリとヒビキの声にウタハは微笑みながら言う。

「失敗を受け入れ、次の為に進みましょう。」

ウタハの言葉にコトリとヒビキは苦渋の表情を浮かべつつ頷く。

「先生、お願いします。」

「分かった、皆これより無敵1号を破壊し、アビドスへの進行を阻止する。」

『『『『はい先生。』』』』

先生の指示を受け、無敵1号と並走していたバギーの荷台からシロコがカービン銃を向け射撃する。

だが装甲に阻まれ効果は認められないうえに砲塔がバギーに向けられる。

「ホシノ先輩!!」

シロコの声にホシノはバギーのハンドルを切って回避する、直後に砲撃が掠めて砂上に着弾する。

一方エリカのブラックホークは後方からバギーとは反対側に回り込んで行く。

「ノノミ、セリカ射撃開始!」

先生の指示を受けノノミとセリカもそれぞれミニガンとカービン銃で無敵1号に向け射撃をするが。

こちらも装甲の為大した損傷も受けず無敵1号は前進を続け、ブラックホークはバギー同様攻撃を受けた為回避。

『先生、手持ちの火器では止められないみたいだね。』

ホシノの声を受け先生はウタハに問い掛ける。

「ウタハ、奴を確実に停止さるにはどうしたらいい?」

先生の問い掛けにウタハは自分のタブレットを操作して、関連情報を呼び出し検討する。

「・・・確実なのは砲塔上部にあるAI中枢部の破壊だ、出来れば停止させられる筈だよ先生。」

その返答を聞くと先生はエリカを呼び出す。

「エリカ、ブラックホークを無敵1号の砲塔に接近させAI中枢部を破壊して欲しい、詳しい位置は・・・」

「こちらからブラックホークに送るよ・・・そちらのアドレスを教えてくれ。」

アヤネがアドレスを送りウタハがAI中枢部関連のデータを送る。

『確認しました先生、ただこちらの持つ火器では装甲が邪魔で破壊出来そうにありません、可能性があるとしたらエリカさんのアンチマテリアルライフルしか。」

あのライフルなら装甲を打ち抜けそうだと分析した結果をアヤネが報告する。

『でもエリカさんはブラックホークの操縦が・・・」

ブラックホークを操縦しながら射撃は出来ない、それを聞き先生は考え込む。

『先生、わたしなら何とか扱えるわ。』

そんな時セリカの声が通信回線に割り込んで来る。

「可能かセリカ?」

『ええ、エリカに教えて貰ったから・・・彼女みたいに完璧には扱えないけど。』

セリカは射撃訓練の際、エリカにアンチマテリアルライフルの扱いについて教わっていたのだった。

最初は特殊なライフルの扱いに苦労させられたが、訓練を重ねた結果何とか扱い方を習得していた。

『先生、現状ではセリカちゃんを信じるしかないと思うよ、大丈夫さ彼女なら出来るさ。』

ホシノの言葉に先生は頷き指示を出す。

「頼んだよセリカ。」

『私に任せて先生。』

そう宣言するとセリカはエリカに問い掛ける。

「エリカ、ライフルを借りるわよ。」

「はい、お願いします。」

キャビンのロッカーに収められているアンチマテリアルライフルをセリカは取り出す。

そしてドアを開けライフルを無敵1号へ向けるセリカ、ノノミが後ろから支える。

「アヤネ?」

「砲塔上部のハッチ手前にAIのメンテナンス用の点検口があります、そこならライフルで打ち抜ける筈です。」

アヤネの指示を受けスコープで砲塔上部を見たセリカはハッチ手前の点検口を確認し照準しようとした。

「エリカさん!!」

砲塔上の機関銃がこちらに向けられたのを見たノノミが叫ぶ。

咄嗟にエリカはブラックホークを上昇させ回避する、その至近距離を曳光弾が通り過ぎて行く。

「くっこれじゃ射撃出来ない。」

焦るセリカ、その後も射撃位置に着こうとするブラックホークだったが機関銃の為射撃位置に着けなかった。

『何とか足を止めないと・・・』

シロコが言うがミニガンとカービン銃だけの装備だけしかない彼女達ではそれは難しかった。

「武装さえしていたら。」

エリカが悔しそうにつぶやく、今回試験のモニター任務の為ブラックホークは武器の代わりにセンサーとカメラしか搭載していなかったのだ。

『先生、学校まで20分です。』

既に校舎が前方に見え始めておりアヤネが悲痛な声を上げる。

機関銃の射撃を回避していたエリカは近くに半壊しかけたビルを見つけ危険だがある手を思いつく。

「セリカさん、ノノミさん、アヤネさん、近くのビル屋上に向います、着いたら降りて射撃の準備を、奴は私が足を止めますから。」

「どうやって止めるって言いうのよ!?」

『エリカちゃんまさか・・・ブラックホークをぶつけて足を止める積りじゃないよね?』

エリカの意図をいち早く察したホシノが厳しめの声で問い掛けて来る。

「エリカ、本気か?」

『『『『エリカ(ちゃん、さん)!?』』』』

そのホシノの問いに先生やシロコ達が驚いた声を上げる。

「他に方法がありません先生、心配されなくても事前に脱出しますから。」

何でも無い様に言うエリカの声に先生は眉を顰めアロナに問い掛ける。

「アロナ、脱出の成功率は?」

『・・・0.003%です先生・・・』

アロナの絶望的な報告に先生は唇をかむ。

『先生、いくらなんでもそんな事エリカちゃんにさせないよね?・・・もしやらせると言うならおじさん軽蔑するよ。』

そんな事許せないとホシノは怒気を含んだ声で先生に問い掛ける。

『当り前よ・・・許可をするなら先生だって容赦しないから。』

『そんな戦い方、絶対認めない。』

『エリカちゃん、そんな危険な事、私は許しません。』

『そうですエリカさん・・・私は絶対降りません、そんな危険な事絶対させません。』

もちろん学校は守りたい、自分達にとってそこは何があっても守りたい、自分達の居場所だから。

だがその為にエリカを犠牲にする事などホシノ達には容認出来ない話だ、彼女だって自分達の大事な仲間なのだ。

「ああ、私も反対だエリカ・・・君だって大事な生徒なんだから。」

もちろん先生も命じる事は考えてもいないし容認する気も無い、自分にとってもエリカは守るべき対象なのだから。

「・・・責任がある我々が言うのもおかしいかもしれないが、エンジニア部としても賛成出来ないね。」

ウタハもまたそう言って反対の意思を示す、自分達の失態の為誰かを犠牲にする事を認めてしまっては技術者としては恥だと思っているからだ。

「皆さん・・・」

総意としてエリカを犠牲にさせないと言う仲間たちの意思にエリカはこんな時だと言うのに嬉しかった。

『アビドスやミレニアムの方々の言うとおりね、第1ヘリコプター班としてもそんな戦法を許可出来ないわエリカ。』

突然通信回線に聞き覚えの無い声が流れ、先生達が驚かされる。

『ミーナ先輩、いえ班長!?』

その声を聴いたエリカが驚きの声を上げる。

『先生、前方からヘリが5いや6機急速に接近してくる。』

シロコの報告に先生とウタハ達はエリカのブラックホークから撮影された映像が映し出されているディスプレーに視線を向ける。

その映像にはこちらに向かって来る6機のブラックホークが映し出されていた。

6機のブラックホークは一旦無敵1号を通り過ぎて行く、その編隊を見上げたシロコはその機体に描かれたシャーレのロゴマークを見た。

その中の1機の『001ー01』というの機体番号も。

『もしかしてあれは第1ヘリコプター班!?』

前にエリカから教えて貰った第1ヘリコプター班の話をシロコは思いだして呟く。

テントを飛び出した先生もまた自分達の上空を飛び越えて行くブラックホークの機体に描かれたロゴマークと機体番号を見て驚く。

『先生?』

「間違いないね・・・シャーレの第1ヘリコプター班、ワルキューレ達だよ。」

『『『『・・・・・』』』』

上空を飛び越えて行った6機のブラックホークは旋回し、テント上空で一旦ホバリングに入ると先生に呼び掛けてくる。

『先生お久しぶりです、第1ヘリコプター班の外海 ミーナです。』

「久しぶり・・・ミーナ達が来るとは思ってみなかったよ。」

単機でもヴァルキューレ警察学校の公安局一個中隊に匹敵する戦力を有すると言われれる第1ヘリコプター班。

その為単機かよくて2機のペアが活動単位のワルキューレ達のブラックホークが7機も揃う事は演習以外で先生も見た事が無かった。

『今回は我が班の一人が不甲斐ない所を見せてしまい、第1ヘリコプター班を代表して謝罪させて頂きますわ先生。』

自他とも厳しいミーナらしい言葉に先生は苦笑してしまう、一方シロコ達面々は不満げな表情を浮かべている。

『申し訳ありませんミーナ班長。』

エリカが意気消沈した声で答えると、我慢できなくなったのかシロコ達が反論し始める。

『エリカは良くやってくれている。』

『おじさんはとしてはエリカちゃんを悪く言うのは・・・納得出来ないね。』

『何よ先輩なのに頑張ってくれているエリカに対してそんな事言うの!?』

『エリカちゃんは私達の為に健気に頑張ってくれてます。』

『そうです私達はとても助かっているんです。』

一斉にエリカの事を擁護するシロコ達。

『皆様、これは第1ヘリコプター班の責任者として・・・』

『くすくす・・・そんなこと言ってミーナ班長が一番エリカを心配してくせに。』

『まったくな、訓練中にエリカが苦戦していると連邦生徒会の首席行政官から聞かされて真っ先に救援に行こうとしくせに。』

『ミーナ班長を引き留めるのは大変でしたわ・・・まったく。』

そんなシロコ達の反論にミーナが反論しようとした時、他の班員から揶揄う声が無線回線に入ってくる。

現場の状況はアロナを通して首席行政官であるリンに報告されており心配した彼女によってミーナ班長に伝わったのだ。

ちなみにリンも親友の苦戦が心配で業務に手が付かない状態で、調停室の岩櫃 アユムや財務室長の扇喜 アオイは呆れさせていた。

(由良木 モモカは仕事が無くなったと喜んでいたが。)

『何を言って・・・』

今まで厳しい態度だったミーナはそんな班員達の声に急に慌てた声を上げる。

『エリカ気にしなくても良いぞ、ミーナ班長はお前の事を何時も心配しているからな。』

『そうそう、エリカが長期任務で離れているから寂しいと毎日嘆いていたぞ。』

『▽・〇・☆・!?$・%・&・』

班員達の暴露にミーナ班長は意味不明の言葉を発してしまうが、そこはワルキューレを率いる班長らしく直ぐに冷静さを取戻す。

『・・・エリカ、ここは私達が彼奴の動きを止めます、その隙に無力化させるのよ。』

『はい班長。』

先程とは違い意気軒高に答えるエリカ、ミーナの言動が余程嬉しかったらしいのはその返答でも分かる。

そのやり取りを聞いて居たシロコ達は微笑ましいと思いながらもそんなエリカとミーナ達の関係が羨ましくもあった。

『全機攻撃態勢に、エリカの7号機を援護します。』

『『『『『はい、班長。』』』』』

ミーナの指揮の元6機のブラックホークは散開し、無敵1号を取り囲むとロケット弾や機関砲で攻撃を開始する。

それは的確で効果的な攻撃だった、無敵1号が前後左右から繰り出されるワルキューレ達の攻撃に次第に翻弄されてゆく。

攻撃を受けるとそれをひらりと躱し、別の機が攻撃する、先生やウタハ達、そしてシロコ達は見とれてしまう。

「凄いね・・・AIの対応が追い付いていない、これがワルキューレ達の実力な訳だ先生。」

「そうだね・・・」

ウタハの言葉に先生も頷いて答える、何回か第1ヘリコプター班の訓練を見た事がある彼も今更ながらワルキューレ達の実力を再認識していた。

その攻撃の中、エリカの7号機はAI中枢部を狙う為接近して行く、だが無敵1号は他のブラックホークの攻撃の対応に能力を取られ気づけない。

「セリカさん!」

「任せて、これで・・・決める!!」

セリカがアンチマテリアルライフルを再び構え、照準をAI中枢部に合わせると引き金を引く。

発射されたライフルの3連射が中枢部を打ち抜くと無敵1号はあちこちから火花を上げると停止する。

『全員へ無敵1号は機能を停止した繰り返す機能を停止した・・・再起動の恐れなし。』

こうして無敵1号は停止した・・・アビドス高等学校の校舎まで500メートルの位置で。

「はぁぁ・・・」

「セリカちゃんご苦労様、エリカちゃんもね。」

セリカを後ろから支えていたノノミが労いの声をセリカとエリカに掛ける。

『皆ほ~んとご苦労さん・・・おじさんは早く帰って眠りたいね。』

『学校を守ってくれてありがとうセリカ、エリカ。』

『いえ皆さんの協力があればこそです・・・ミーナ班長や第1ヘリコプター班の先輩方もありがとうございました。』

『!・・・指揮官として当然の・・・』

『また班長のツンデレが出たよ。』

『ほ~セリカちゃんにそっくりだねミーナ班長さん。』

『ホシノ先輩、私にそっくりってどう言う意味ですか!?』

『すばらしい、無敵1号はあらゆる事態に対応しています、それは何重の安全システムが・・・』

無敵1号を停止させた事で全員安堵した為か、無線回線はアビドスやミレニアム、第1ヘリコプター班のメンバー達の声で騒がしくなる。

そんな皆の声を聴きながら先生は微笑むとアロナに話し掛ける。

「アロナもお疲れさん。」

『先生もお疲れ様でした・・・生徒の皆さんが全員無事で良かったです。』

アロナも安堵の声で答える。

こうしてアビドスやミレニアム、第1ヘリコプター班にとって長い一日が終わったのだった。

数日後・・・

連邦生徒会の首席行政官執務室。

『分析の結果AIの制御システムにウィルスが仕込まれていた事が分かったよ。』

執務室に居るのは先生、エリカ、リン、それに加えてネットでウタハが参加していた。

「明らかな破壊工作ですね・・・狙いはアビドス高等学校ですか。」

ウタハの報告にリンは深い溜息を付きながら呟く。

「その可能性は否定出来ません、先のヘルメット団や便利屋68の襲撃・・・事態は悪化していると思われます。」

エリカも深刻な表情を浮かべながら自身の見解を述べる。

「リン、例の違法モジュールの流通ルートの追跡は進んでいるのかな。」

先生も同様に深刻な表情を浮かべながらリンに問い掛ける。

「まだはっきりとした確証は掴めていません・・・幾つかのダミーを介在しているらしく防衛室もてこずっている様です。」

「そうか・・・ウタハ、ウィルスが何時、何処でシステムに仕込まれたか解析は出来たのかい?」

ディスプレー上のウタハは何時もの飄々とした表情を消し忌々しそうに答える。

「どうやらエンジニア部の格納庫で試験数日前らしいね、かなり巧妙に隠されていたのでヒビキさえも事前に見つけられなかった。』

試験前にチェックしたがその時点では気づけず、破壊された後に原因究明の為AIの制御システムを念入りに解析して初めて分かったとウタハ。

「ただ格納庫のセキュリティは異常を検知していなかった、監視カメラの方もだよ、まったく嘗められたものだよ。』

犯人はセキュリティを欺いて破壊工作をしたと言う事になる、技術者のウタハとしては屈辱以外のは何物でもなかった。

『今セミナーを中心にヴェリタスやC&C、ゲーム開発部合同でセキュリティとウィルスの解析や製造元の追跡を始めた所だよ。』

ウタハはそう言って溜息を付きつつ続ける。

『もっともそちらと同様かなり手間取りそうだけどね。』

執務室に沈黙が落ちる。

「犯人どころかその目的すら未だに掴めていないのは現状しては問題ですね、何とか糸口が掴めれば良いのですが。」

「焦ってもどうにもならないよリン、今は出来る事に専念するしかない。」

先生の言葉にリン、エリカ、ウタハの3人は深く頷く。

影すら掴めない敵との戦いはまだその終わりが見えなかった。

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