連邦捜査部第1ヘリコプター班   作:h.hokura

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ゲヘナ学園美食研究会が今回のゲストです。



3.「アビドス砂漠のキノコ」

砂風が舞う大地に横たわるアビドス砂漠のとある廃墟と化した街。

家々の窓や扉は壊れ、壁は崩れかけており砂嵐の中に無残な姿をさらしている。

道は荒れ果てており、様々なものがうち捨てられている。

かつて多くの人々で賑わっただろう街は、今や消え去るのを待つだけである。

そんな誰もいないはずの街を訪れる者などいないはずだった、しかしその無人の街に誰かが訪れようとしていた。

その何かは最初水平線上に浮かんだ「点」に過ぎなかったが、やがて接近して来るとそれはブラックホークの姿になった。

ブラックホークは一旦上空を飛び抜けると再び戻って来て街の中心にある広場上空でホバリングに入る。

そして機体をぐるりと1回旋回させた後ヘリは徐々に高度を下げて広場に着陸して行く。

着陸しエンジンが切られると機体のドアが開き機内から制服の上にタクティカルベストを着たエリカが降りて来る。

降り立ったエリカは周りを一瞥すると持ち出して来たアンチマテリアルライフルを下に置き身に着けている通信機や白兵戦用ナイフを確認する。

そして確認を終えたエリカは、置いたアンチマテリアルライフルを持つと通信機を作動させる。

暫く通信機を操作していたエリカは視線を近くにある一軒家に向ける。

その家のドアは外れかけており、エリカが触ると中に倒れ激しい埃を上げる。

エリカはその埃が晴れるのを待ってからアンチマテリアルライフルを構えながら家の中に入っていく。

家具が散乱し床は穴だらけ、壁も所々崩れかけているうえに、どこもかしこも砂だらけになっている。

エリカが躊躇せず部屋へ入った時だった、何者かがナイフを持って襲い掛かって来たのだ。

光るナイフが振り下ろされたがエリカはアンチマテリアルライフルで弾くと襲い掛かって来た相手に廻し蹴りを食らわす。

蹴りを食らった相手は部屋の壁に叩きつけられナイフがエリカの足元に転がって来る。

「そこまでですわジュンコさん。」

高貴なお嬢様の声が再びエリカに向かって来ようとした影を寸前で止まる。

その声と共に気品を纏わせた少女がエリカの前に進み出て来る。

「失礼しましたわ、賊と間違えてしまったのです、わたくしはゲヘナ学園美食研究会の黒舘 ハルナと申します。」

ハルナはそう言って微笑むとエリカの服装を暫し見つめ言葉を続ける。

「貴女の制服はシャーレですね・・・ヘリで来たという事は第1ヘリコプター班の方でしょうか?」

「はい、第1ヘリコプター班の佐々木 エリカです。」

その返事を聞いて襲い掛かった赤司 ジュンコは驚愕の声を上げる。

「ワルキューレ!?」

「あのワルキューレさんですか?」

ジュンコの叫びに続いてハルナの隣に居た獅子堂 イズミも驚きの声を上げる。

「ははは・・・私ワルキューレに喧嘩を売った訳ね。」

青い顔でこの世の終わりみたいに呟くジュンコと驚愕の表情のイズミ。

まあ尾刃 カンナ率いるヴァルキューレ警察学校の公安局と外海 ミーナ率いるシャーレ第1ヘリコプター班所属の生徒達にとっては珍しい話では無かった。

だからエリカは何時もの事だと内心溜息をつきつつ此処に来た目的を果たそうとする。

「ところで皆さんが救難信号の発信者で間違いありませんね?」

2時間前のアビドス高等学校廃校対策委員会室。

久々に訪ねてきたエリカはアヤネと委員会室で話しをしていた。

「それではホシノさん達はアビドスのリゾート開発の為に島へ?」

「ええ、でも当地でトラブルがあって・・・事後処理の為私だけ戻って来たのですが。」

アヤネはそう言って深い溜息をついて肩を落とす、相当疲れている様でエリカはそんな彼女に労いの言葉を掛ける。

「それは大変でしたねアヤネさん、ご苦労様です。」

それにしても対策委員会のメンバー達はカイザーコーポレーションの件が終わっても災難は続くらしいなとエリカは苦笑する。

お茶を飲みながらエリカがアヤネの愚痴を聞いている時だった、部屋に置かれてある汎用通信機からアラーム音が聞こえてきた。

通信機に駆け寄ったアヤネが操作して状況を確認するとエリカの方を向いて言う。

「救難信号を受信しました、砂漠の何処かみたいですね。」

「砂漠の?誰だか分かりますか?」

「いえ、救助を要請だけで所属や氏名はありません。」

エリカとアヤネは暫し顔を見合わせる、こういう場合厄介事なのははっきりしているからだ、

「データを下さいアヤネさん、確認して来ますね。」

厄介事であるが救難信号を受信した以上無視は出来ない、エリカは確認すべきだと考えてアヤネに伝える。

「分かりました、十分注意して下さい。」

情報を貰ったエリカはアヤネに見送られアビドス高校の校舎を出発し救難信号の発信地点へ向かった。

そして目的地に到着し捜索していたら美食研究会のメンバー達に遭遇した訳だ。

ちなみに美食研究会がゲヘナでも屈指の問題児集団なのは当然エリカも知っていた。

巨大パンケーキの報告と称して風紀委員長のヒナに呼び出されたお茶会の時に彼女が愚痴っていたからだが。

「ええ助かりましたわ・・・何よりワルキューレの方に救助に来て頂けたのは幸運でしたわ。」

ハルナの含む言葉にエリカは嫌な予感を覚えて身構えてしまう。

「何者かに拉致された鰐渕 アカリさんの奪回をお願いしたいのです。」

やはり厄介事でしたよ、エリカは心の中でアヤネそう言って深い溜息を付くのだった。

事の始まりはアビドスの砂漠に他では手に入らない美味なキノコが生育しているとの噂を美食研究会の部長であるハルナが聞いたからだった。

美味な食材を手に入れる為なら手段を択ばない美食研究会はそこがアビドスの管轄なのも無視してこの砂漠に乗り込んで来た。

そしてキノコなら暗くて湿っている場所だと見当をつけ廃棄されたこの街に来たのは事件が起こる昨日の事だった。

地下街や崩れかかったビルの中など捜索していたハルナ達は日が暮れた為取り合えず野営の準備を始めた。

食材を探して様々な土地に行き場合によって何日も滞在する美食研究会のメンバーはサバイバル能力が高かったので準備自体は何でもなかったのだが。

準備した夕食を取ると疲れていたせいもあり美食研究会のメンバー達は寝袋に入ると直ぐに寝息を立て眠りにつく。

そして事件は就寝してから暫くたって起こった。

寝袋に包まって寝ていたメンバー達の中からむくりと起き上がったのはアカリだった。

這い出したアカリは目をこすりながら立ち上がる。

「トイレ・・・」

アカリは寝袋の傍に置いた銃を取ると事前に調べて使用可能なトイレがある家を目指す。

周りは耳が痛くなるほどの静寂に包まれている。

その静寂に不安になりながらも目的地の家に辿り着くアカリ。

明かりもないその家の不気味さに震えながらアカリは中に入って行く。

荒れ果てた家の中は外以上に不気味だった。

びくびくしながらトイレを済ませたアカリは用を済ませほっとした顔で家を出る。

星も見えない夜空をアカリは見上げながら寒さにぶるっと震える。

そしてアカリが皆の所に戻ろうと振り向いた瞬間。

アカリは闇夜から伸びてきた手に身体を拘束され背中に当てられたものから激しい電撃を受け身動きが取れなくなる。

「・・・!?」

声を上げようとするが、ショックの為アカリは掠れた声しか出せなかった。

ヘイローを持つキヴォトス人は高い身体能力と耐久力を持つが決して無敵ではない。

まともに銃撃や爆発を受ければダメージや精神的なショックは避けられない。

油断していた訳では無かったが流石にこんな襲撃は予想できなかったアカリはそのまま暗闇に引きずり込まれていったのだった。

翌朝アカリの姿が消えている事にハルナ達は気づき捜索を行い犯人達を発見できたのだが。

「思ったより大人数なうえ車両や重火器を持っていて手が出せなかった。」

悔しそうにジュンコが話した後ハルナが目を伏せながら続ける。

「その為わたくしは救援を呼ぶ決断を下した訳ですわ。」

その救援要請をアビドスに来ていたエリカが偶然受けたという訳だ。

「そう言う事では仕方ありませんね、分かりました協力します。」

エリカはハルナ達と共に片付けたキャンプ用具をヘリに乗せると装備を再確認して街のメインストリートを挟んだ所にある犯人達の居場所に向かう。

「長い1日なりそうですね・・・」

瓦礫が溢れる街の中をエリカとハルナ達は慎重に進む、ヘリの飛来に犯人達が気づいて逃走する可能性があり急ぐ必要はあったが。

焦れば犯人達がアカリに危害を加える恐れがあるのでここは慎重に行こうとエリカは今に突っ込みそうなジュンコを説得したのだった。

通りの角で一旦止まエリカはそっとビルの陰から2台のハンヴィーが前に止まっている家屋を見つけハルナ達にハンドサインで知らせる。

静かに傍らに来たハルナがその家屋を見つめながら小声でエリカに問う。

「どうされますかエリカさん。」

陰に身を隠しつつ様子を伺っていたエリカが答える。

「・・・一瞬で全員を制圧しないとアカリさんが危険ですね。」

家屋の中を人が動き回っている様子をじっと観察しながらエリカが答える。

ただ制圧するなら簡単だが人質が居るのでは慎重に行く必要があるとエリカは段取りを考える。

「・・・これでいきましょうハルナさん。」

エリカはアンチマテリアルライフルを壁に立て掛けるとベストのポケットからガードホーンを取り出してハルナに見せながら説明する。

ガードホーンは緊急時に大音量を発して周りの人間に危険を知らせるアイテムだった。

「これを放り込んで犯人達を混乱させてその隙に制圧するのですねエリカさん、流石はワルキューレですね。」

「本来ならこういうことはヴァルキューレ警察学校公安局の得意分野ですけどね。」

ハルナの賛辞にエリカは苦笑しつつ答える、人質の確保と犯人の制圧作戦は公安局の得意分野でヘリコプター班は普通こんな事はしない。

ちなみにエリカが慣れているのは何回か公安局の作戦に参加したと言うかさせられた事があったからだ。

「謙虚な方ですねエリカさんは。」

ハルナは微笑むとジュンコとイズミに此処で待機している様指示を出すとエリカと共に家屋に音をまったく立てず接近して行く。

見張りは居なかった、「相手の方はほど自信があるのかバカなだけなのかですね。」とハルナは辛辣な言葉を呟く。

難なく家屋の前の車にたどり着いたエリカとハルナはそっと家屋の窓から室内を伺おうとしたがカーテンが引かれ確認出来なかった。

「室内を確認してアカリさんの居る場所を確かめたかったのですが、ハルナさんよろしいでしょうか?」

暫し考えたエリカはハルナにそう言ってガードホーンを左手に持ち右手でナイフを抜きながら尋ねる。

「ええ時間を余り掛けられないですから、大丈夫ですわアカリさんなら。」

ハルナの同意を得られたエリカは立ち上がると慎重に窓を細く明けるとボタンを押して作動状態にしたガードホーンを投げ込む。

エリカがガードホーンを投げ込もうとしていた数分前にアカリは意識を取り戻していた。

「ったく・・・何してやがるんだお前らは。」

銃を持った兵士が5人おりその中のリーダーらしき男が残り4人に怒鳴っていた。

意識を取り戻したアカリは目を薄く開け周りを確認し今自分が荒れ果てた家の中のソファーに縛られる事なく寝かされている事を確認する。

そしてこの部屋に居る5人のカイザーPMC(民間軍事会社)の連中に襲われ、連れてこられたらしいとアカリは推測する。

ただカイザーPMCがこんな所に何故居るのかまではアカリには分からなかったので気絶したふりをしながら連中を観察していた。

もちろんこれからどうなるか分からないがアカリはまったく心配してはいなかった、必ずハルナ達が助けに来てくれる筈だと確信していたからだ。

「とりあえずここを引き払うぞ。ゲヘナの連中がこの女を取り返しに来る前に。」

どうやら兵士達は逃げ出す算段をしているらしい、この連中もゲヘナの生徒を害して風紀委員会と余計な揉め事を起こしたくは無いらしい。

実はこの連中はアビドス砂漠にあった遺物を奪おうと陰謀を巡らし対策委員会を陥れ様として失敗したカイザーPMCの兵士達だった。

ホシノを人質にした最後の決戦で敗れ砂漠に取り残されたのだが、その後のドタバタで撤収するタイミングを失ってしまたったのだ。

そうしている中にカイザーPMCの理事が左遷され、事件の全てが闇に葬られた結果彼らは見捨てられてしまい砂漠を彷徨う羽目になった。

まあそうなら余計な揉め事など起こさなければ良かったのだが、兵士達にはそこまでの知恵は無かったらしい。

「とにかく荷物を・・・」

リーダーがそう言った時だった、兵士たちの後ろ側にある窓から放り込まれたものに気づいたアカリは咄嗟にそれが何か気づき耳を塞いだ、

次の瞬間凄まじい音が部屋の中に鳴り響き兵士達が絶叫を上げる。

「「「う、うおお!!」」」

兵士達は慌てて耳を塞ぐがもう手遅れだった、その音量の所為であっという間に身動きが取れなくなる。

その隙を付く様に扉を蹴破りエリカがナイフをハルナがライフルを持って突入して来る。

「この野郎!」

いち早く回復したリーダーがSMGをエリカに向けて撃ったが完全にガードホーンのダメージが消えていなかった為外してしまう。

エリカはその隙を付いてリーダーに突っ込むと彼の持っていたSMGをナイフで叩き落し腹に膝蹴りを加えて後方に突き飛ばす。

「アカリさん!」

ハルナの声を聞いてソファーから跳ね起きたアカリは彼女と共に家屋から飛び出しエリカも続く。

家屋から飛び出したエリカはハルナとアカリと共に走りジュンコとイズミの居る場所までたどり着く。

そんな3人を追ってリーダーと兵士達が家屋から飛び出すと追って来た。

「先に行って下さい!」

ハルナ達に言うとエリカは置いていたアンチマテリアルライフルを取ると振り向きざまにリーダーと兵士達に向かって撃つ。

咄嗟に遮蔽物に隠れるリーダーの後ろで数人が止めてあるハンヴィーに乗り込もうとするのが見える。

エリカは咄嗟にもう一台のハンヴィーに数発撃ちこんでタイヤとエンジンを使えない状態にするとハルナ達を追って走る。

「ヘリまで走って下さい。」

ハルナ達に追いついたエリカはそう言って先頭に出て走ってゆく。

そうこうする内にエリカとハルナ達はヘリを止めていた広場に辿り着く。

「乗って下さい!」

そうエリカは言ってハルナ達を乗り込ませドアを閉じると自分もコクピットに乗り込みベルトを締めエンジンを始動するとコレクティブレバーを引きヘリを上昇させる。

間一髪ハンヴィーが広場に突入して来る前にヘリは高度を取る事が出来た。

「撃ち落とせ!」

リーダーが叫ぶとハンヴィーの屋根に有るM2重機関銃に取り付いた兵士がヘリに向けて射撃を始める。

エリカはその射撃から一旦後退して距離を取るとマスターアームのスイッチを入れディスプレイに搭載武装を表示させる。

表示された武装の中から左のスタブ・ウィングに装備された機関砲を選択するとアンチトルクペダルを操作して機首をハンヴィーに向ける。

そしてサイクリックレバーの引き金を引くと機関砲から発射された弾丸が周りに着弾しリーダーと兵士達はハンヴィーを置いて慌てて逃げて行く。

それを見て機関砲の射撃を止めたエリカにハルナが問い掛ける。

「終ったんですの?」

「ええ・・・取り敢えず此処を離れます、追ってはこないと思いますが。」

エリカはそう答えるとヘリの進路をアビドス高校の校舎へ向けると廃墟を離れていったのだった。

「本当に長い1日でした。」

その後アビドス高校の校舎へ着いたエリカとハルナ達はリゾート島から戻って来たホシノ達に迎えられた。

エリカとゲヘナの美食研究会メンバー達という組み合わせにホシノ達は驚きを隠せなかったのは言うまでもない。

ホシノ達に事情の説明(聞いたホシノは複雑そうな表情だったが)したエリカは通信機を借りるとシャーレの先生と首席行政官のリンに連絡を取る。

そして先生からゲヘナの風紀委員会に事情を説明して貰い美食研究会の引き執りを依頼して一連の騒動は終わったのだが。

風紀委員会への引き渡しの際にエリカに連れてきて欲しいと言う委員長とそんな事はそちらでやって欲しいと言う行政官が通信機越しに揉め先生の胃痛が酷くなったのはまあ何時もの事だった。

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