ガメラ×エイト 神話の復活   作:ほろろぎ

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第三話 神話

 防衛隊、立川基地全体に、静寂を引き裂くようにけたたましいアラームが鳴り響く。

 眠りについていたカフカらは、異常を告げる警報に飛び起きた。

 

「先輩、これって……!?」

「ああ、怪獣出現の警報だが……このパターンは……!!」

 

 アラームの種類は、()()()()()()()()()()()()()したことを意味していた。

 

『こちら、保科。総員、ただちに戦闘準備を整えて、正面に集合や』

 

  副隊長の号令を聞き、隊員たちは大急ぎでスーツをまとう。

 それぞれが各自の武器を手にすると、速足で基地の正面へと向かった。

 

 基地正面では保科副隊長がすでに準備を終え、全員がそろうのを待っていた。

 

「副隊長!」

「みなまで言わんでもわかっとる。怪獣が今、この上におる」

 

 カフカの言葉をさえぎって、現状を伝える保科。

 

「敵怪獣の推定フォルティチュードは、6.0以上」

「それって……本獣クラスじゃないですか!?」

「しかも、そんな奴が複数体おる」

 

 フォルティチュードとは怪獣のパワーを計る値であり、6.0以上という数値は、防衛隊の隊長クラスの人間が1人で討伐できるレベルである。

 そんな強力な個体が、今基地の上空に何体も飛び交っているという……。カフカたち一般の隊員は、その事実に全員が大きく戦慄した。

 

 そんな隊員たちに、保科は気合を入れるようにげきを飛ばす。

 

「わかっとるやろうが、僕らの仕事は怪獣を討伐すること。相手がどんなに強大でも、逃げることは許されん。それは、無力な市民の死を意味する」

 

 その言葉で、隊員たちの自覚がよみがえった。

 そうだ、自分たちは人々を守るため、苦しい訓練を乗り越えて防衛隊に入ったのだ、と。

 

「僕らでやるで。街への被害を出さず、怪獣を一匹残らず倒し、ほんで……全員生き残って祝勝会や!」

『了!!』

 

 みんなの気持ちが一つとなり、戦いの準備が整う。そして、闇夜から──怪獣が降り立った。

 

 飛行怪獣は、「鳥型」に分類される姿をしている。名前の通り、その姿は鳥類に近い形態をとっている。

 しかし、降り立つ複数の鳥型怪獣を見て、カフカは違和感を覚えた。

 

 怪獣の姿を慎重に観察し、推測して、その違和感は確信となる。

 

「副隊長! この怪獣、まったくの新型です!!」

「なんやて? どういうことや?」

「俺は前職で、過去に現れた怪獣のデータはほとんど記憶しています。でも、この怪獣に似た姿をした奴は、過去にも例がない!」

 

 目の前の怪獣には羽毛が無く、足はおろか翼にまで「手」のような器官を有し、共に鋭いカギヅメを持っていた。口には牙まで生えている。

 一番近いのは「翼竜型」だろうか。しかしカフカの経験では、翼竜型ともまた違う種に思えてならない。

 

 鳥類にも翼竜型にも分類されないであろうこの怪獣を、ゆえにカフカは新種だと判断した。

 

『GYAOOOOOOOOS!!』

 

 新種の鳥型怪獣が鳴いた。耳障りなその声に、みな顔をしかめる。

 

「『ギャオス』って鳴いとるな。ほんなら、こいつらは新型怪獣のギャオスってことか?」

「悠長に名前つけてる場合じゃないですよ!!」

 

 レノが言って、持っていた銃を構える。ギャオスが向かってきて、発砲。戦闘がそこかしこで始まった。

 

 ギャオスのサイズは翼長数メートル。怪獣としてはかなり小型だが、その分機動力が高い模様。

 隊員たちは銃で狙いをつけるが、軽快に飛び回るギャオスをなかなか撃つことができない。

 

「コイツら……ちょこまかと鬱陶しい!!」

 

 直前でキコルにもたらされた専用装備である「大斧」も、破壊力を高めるためかなり重く作られており、そのせいで素早いギャオスにどうしても一撃与えられないでいる。

 

 ギャオスはカギヅメと牙を使って隊員たちを襲い、いいように(もてあそ)んでいた。

 新人ということと、慣れない夜間戦闘でのこともあり、隊員たちは苦戦を強いられるばかり。

 

「不味いなぁ……僕一人では、全員のフォローは難しいで」

 

 保科はそうもらした。

 彼は愛用の武器である二振りの短刀を使用し、器用にギャオスの攻撃をさばき、また反撃を加えていた。

 

 しかしギャオスは生命力も高いのか、保科の斬撃を食らってもなかなか致命傷にいたらず、しぶとく数を減らさないでいる。

 

「アカンな……亜白隊長は、用事で基地を出とるし」

 

 第三部隊の最強戦力である亜白ミナは、残念なことに今、基地にいない。

 急ぎ呼び出されてはいるだろうが、彼女の到着を待つだけの余裕が、果たしてこの場にあるのか……。

 

 そこでまた、カフカがある点に気づき、声を上げる。

 

「みんな! こいつらは……ギャオスは、本獣じゃない可能性が高い!」

「本獣じゃないって、どういうことです!?」

「こいつらのフォルティチュードは6.0越えてるんだぞ!? 本獣じゃないなら、なんなんだよ!?」

 

 レノやイハルたちは、必死にギャオスのツメを防ぎながら聞き返してきた。

 他の面々もカフカの答えに注意を向ける。

 

 カフカも下手な腕でギャオスを狙いながら、叫ぶように持論を伝えようとする。

 

「飛行怪獣はプライドが高いせいで、それぞれが個別に行動するんだ。なのに、今ギャオスたちは──」

「集団で行動し、ここを襲っている……」

「つまり、どういうこったよ!?」

 

 イハルの疑問に答えるように、保科がカフカの言葉を引き継ぐ。

 

「このギャオスたちは『余獣』で、コイツらを率いとる頭がおる……っちゅうことか」

「んなバカな……、本獣クラスのフォルティチュード値のコイツらが、ただの余獣だとぉ!?」

 

 イハルの叫びは、みんなの絶望の気持ちそのものだった。

 隊長クラスで対処可能なレベルの怪獣、それも複数体の敵が、すべてただの本獣の配下でしかないなど……まさに悪夢という他ない。

 

『GYAOOOOOOOOS!!』

 

 その時、一際大きな鳴き声が辺りに響いた。

 声は基地の上空より聞こえてきた。みんなの視線が、空へと向く。

 

 立川基地上空、数百メートルの位置に──余獣ギャオスのリーダー格である本獣、仮に「スーパーギャオス」とでも呼ぶ個体が一匹、浮かんでいた。

 

「あ、あれがギャオスの本獣……」

「デカい……余獣の何十倍あるんだ、ありゃ……」

 

 レノとカフカは、スーパーギャオスの放つ威圧感に圧倒されながら言った。

 

 翼を広げたスーパーギャオスの体長は二百メートル近い。

 その巨大さにともなってもたらされる脅威は、余獣など比にならないだろう。

 

『敵本獣のフォルティチュード……推定、大怪獣クラスです!!』

 

 本部からオペレーターの通信が届く。

 大怪獣とは、本獣よりさらに上の(くらい)の脅威であり、防衛隊の隊長格が複数人で対処するレベルの存在である。

 

 本部から「怪獣10号」の識別コードを与えられたスーパーギャオス。

 この圧倒的脅威の登場によって、新米隊員たちの中に隠し切れない恐怖心がわきあがってしまう。

 

 もはや指揮はガタガタだ。保科も、思わず冷や汗を浮かべる。

 

 そして──カフカは覚悟と共に、表情を引き締めた。

 隣では、焦ったようにレノが彼を制止する。

 

「先輩!? ダメです!!」

 

 カフカは、今こそ怪獣8号としての力で、隊の皆を守ろうとした。

 しかしそれは、同時に正体を衆目に(さら)すことにもなる。

 

 そうなれば、日比野カフカは人ではなく、人に仇成す怪獣として討伐対象になる恐れが高い。

 

「けど、市川」

「ダメですッ! 先輩、自分があとでどうなるか考えてるんですか!?」

「でも……このままじゃ、みんなが!」

 

 不意に、二人は違和感を覚えた。

 

 姿を現したというのに、怪獣10号──スーパーギャオスは、一行に攻撃の姿勢を見せない。

 二人が上を見上げると、スーパーギャオスもまた、視線をあらぬ方角へと向けているではないか。

 

 まるで、眼下の人間たちなど脅威にならないと、他に脅威が迫っているとでもいうように。

 

 そして、()()はやって来た。

 

「お、おい……なんだ、あれ!?」

「ゆ、ユーフォー……!?」

 

 気づいた隊員たちが、口々に騒ぎはじめる。

 

 闇夜の向こうから、立川基地に向けて──、一個の()()()()()()状の飛行物体が迫ってきたのだ。

 

 円盤状の物体は、光を放ちながらコマのようにグルグルと回りつつ、真っすぐにスーパーギャオス目がけて飛び込んでくる。そして

 

『GYA!?』

 

 回転円盤は凄まじい勢いでスーパーギャオスと激突、共に地上へと落下した。

 

「うおぉぉ!?」

 

 怪獣たちが落ちた衝撃で地面は揺れ、カフカらは手をついて衝撃に耐える。

 土砂が空高く舞い上がり、辺りにもうもうと土煙が立ち込める。

 

 土煙を割って立ち上がったのは、スーパーギャオスではない。

 そこには、もう一体の()()()の影があった。

 

「なっ、怪獣がもう一体増えた!?」

「いや、待て!」

 

 驚くレノを、カフカが制する。カフカの声は、全隊員への攻撃を止めさせる要望でもあった。

 

「あれは……敵じゃない」

 

 カフカは、回転円盤が姿を変えた新たなる怪獣を、そう判断した。

 自分でも明確な理由はわからないが、感覚で味方だと思えたのだ。

 

 そんなカフカの感覚を肯定するように、保科が口を開く。

 

「そうや、あれは人間の味方や」

「……副隊長、()()がなにか、知ってるんですか?」

 

 カフカの疑問は、この場にいる者全員の代弁だった。

 保科はうなづき、謎の怪獣の正体を告げる。

 

「あれは、遥か昔──神話と呼ばれる時代から存在する、世界で最初の怪獣。さしずめ、『怪獣0号』か。……その名は、『ガメラ』」

 

 ガメラは自らの存在を示すように、大きく鳴き声を上げた。

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