ガメラ×エイト 神話の復活   作:ほろろぎ

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第四話 大怪獣空中決戦

 夜の立川基地を襲う新型怪獣──ギャオスの群れは、測定されたフォルティチュードによって「怪獣10号」に認定される。

 本獣レベルの強さを持つギャオスの幼体に襲われ、隊員たちは慣れぬ夜戦に苦しめられていた。

 

 さらに追い打ちをかけるように、幼体ギャオスのリーダーである本獣──大怪獣クラスの値をもったスーパーギャオスも姿を現し、立川基地は混乱の渦中に。

 

 怪獣8号への変身を覚悟するカフカだったが、そこに救世主となる援軍が訪れる。

 それは、伝説の怪獣0号──大怪獣ガメラだった。

 

『GAEEEEN!!』

 

 ガメラは雄たけびを上げ、ギャオスの群れへと向かって行く。

 突然現れたガメラという新たな脅威を感じたギャオスの幼体たちは、それまで襲いかかっていた隊員たちから気がそれる。

 

 その隙を逃さず、保科はみなに号令をかけた。

 

「今や! 総員、反撃の時間やで!!」

 

 新人の隊員らもその声で、今が絶好のタイミングだと立ち上がる。

 

「怪獣が味方だなんて、いまいち信じられないけど」

「でも、保科副隊長が言うなら間違いないだろ」

 

 ガメラの介入した理由──人間を守るため、という動機に対してやはり半信半疑の隊員たち。

 それでも上司の言うことなら、と彼らはその武器をギャオスのみに向ける。

 

「俺が一番最初に、ガメラは味方だって言ったんだけどなー」

「そんなのどっちでもいいでしょ! 先輩も手伝ってくださいよ!」

 

 ボヤくカフカをうながして、レノは幼体ギャオスの一体に狙いを定めた。

 

 足元で反撃に転じた人間たちを見てガメラも、そちらに気を回す必要はないと判断。

 敵の中枢であるスーパーギャオスに挑みかかった。

 

 接近するとともに、ガメラは(ひじ)から突起を生やす。

 皮膚の下から突き出た「エルボークロー」と呼ばれる部位による攻撃は、コンクリート製のビルなど軽く削り取る威力がある。

 

『怪獣10号、飛翔!』

 

 しかし高い威力の攻撃でも、当たらなければ意味がない。

 スーパーギャオスは大きく羽ばたくと共に、エルボークローの一撃を回避した。そのまま巨体は夜の闇の向こうへと。

 

 ガメラも即座に四肢を引っ込め、円盤形態へと変化。各部からのジェット噴射で闇夜に消えたスーパーギャオスを追う。

 そして除獣であるギャオスの幼体もまた、何体かがガメラのあとに続いて空へと消えた。

 

『10号と0号、上空で交戦の模様』

 

 オペレーターの通信で、空の上でも怪獣同士による激突が起こっていることが伝えられる。

 が、その内容は思わしくないことが、怪獣の力を持つカフカの視力に(とら)えられていた。

 

「マズいな……、10号だけならまだしも、余獣がいるせいでガメラが手こずってやがる」

「でも、俺たちじゃ助けに行けませんよ」

 

 ガメラに数を割いたおかげで、隊員たちが相手取る幼体ギャオスはかなり少なくなった。これならじきに、駆除は可能だろう。

 しかしそのせいで、助けに来てくれたガメラが不利な状況に追い込まれている。

 

 だがガメラを助けようにも、今の立川基地には怪獣が飛び交う速度に追いつけるほどの飛行用の装備がない。

 

 ()()()()()()()()

 

 カフカは周囲を見回し、周りのみんなが自分に注意を向ける余裕が無いことを確認する。

 同時に、自分一人がいなくなっても、残るメンバーだけで幼体ギャオスの対処が可能なことも。

 

「市川。悪いけど、あとのフォロー頼むな」

「え、……先輩!?」

 

 レノに居なくなったことのアリバイ作りを押し付けると、カフカは急いで建物の影へと走った。

 入れ替わるように、大斧を手にした四ノ宮キコルがやって来る。

 

「ちょっとレノ! 日比野カフカは!?」

「あぁー……先輩は……」

「どうしたの!? まさかギャオスに」

「いや、その……と、トイレに行ってる」

「……は?」

「おっきい方だから、しばらく戻ってこないんじゃないかな?」

「はぁー!?」

 

 キコルの背後に建つビルの影から、一筋の噴煙が天を目がけて飛んで行ったのを、彼女は気づけなかった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 立川基地、上空数千メートル。

 雲の上──月明かりに照らされる中で、ガメラとギャオスによる大怪獣同士の空中戦は、数の差によってガメラ側に不利な状況に展開していた。

 

 ガメラの飛行形態は、四肢のすべてを胴体内に収納した円盤状と、頭部と両腕を外に出したものとがある。

 しかし、後者はむき出しの部位を周囲を飛び交う余獣に傷つけられ、円盤状では攻撃力にかけるという歯がゆい状態。

 

 攻めあぐねるガメラの元に、地上よりもう一体の大怪獣が雲海を突き抜けて、救援に駆け付けた。

 怪獣8号、という彼の名を、ガメラはまだ知らない。

 

 8号は足の一部を展開し、ガメラのようなジェット噴射を駆使してここまでやって来た。

 見様見真似だったが、同じ怪獣ならもしかして……と思ってやってみたのが功を奏した。

 

「これじゃ怪獣ってより、ゴラドンボールの武空術だな」

 

 子供の頃にテレビで見たアニメのヒーローのような姿勢で、両腕を前に突き出したポーズでカフカは空を飛ぶ。

 そのままガメラの横に並び、声を上げる。

 

「ガメラ! お前は俺たちの味方なんだろ!? 助けに来てくれたんだよな!?」

 

 返事はない。風を切る回転ジェットの音だけが、夜の闇の中で響いている。

 

 しかし言葉としてではないが、テレパシーというものか──カフカの脳裏に「肯定」的な感覚が返されてきた。

 これはガメラの意思で、以前カフカが怪獣の体内から手にした、勾玉の存在が関係しているのだろう。

 

「それだけわかりゃ十分だ。一緒に、ギャオスの野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!」

 

 ギャオスの側も、ガメラの元にカフカという手助けが来たのを認識し、それが厄介な存在になるだろうことを察知していた。

 サイズこそはるかに小さいものの、8号はその身に有り余るほどのパワーを秘めている。

 スーパーギャオス(自分)にも匹敵するか……下手をすれば上回るかもしれない力を。

 

 親であるスーパーギャオス(本獣)が鳴き声で指示し、今この場にいる十体近い余獣を、すべて8号の元へ仕向ける。

 まずは邪魔者を排除して、仇敵(ガメラ)はゆっくりと相手をしようという、獰猛(どうもう)な考えがうかがえた。

 

「来るなら来いやぁー!! ……いややっぱ来ないでぇー!?」

 

 威勢よく敵を待ち受けるカフカだったが、ギャオスの幼体が近づいてくるにつれて意外と群れている様がグロテスクに感じ、勢いを()がれてしまう。

 

 弱気になった8号の気配を感じてか、余獣たちは嘲笑のような鳴き声を上げた。

 ──否、それは笑い声ではなかった。

 

 幼体ギャオスたちの声はそれまでの()()()()とは違う、特殊な振動の仕方をしているのをカフカの耳は感じ取った。

 

「なんだ……?」

 

 余獣が開ける口、その回りの空気が蜃気楼のように(ゆが)んでいく様子が、8号の視界に映る。

 歪みは空気のみならず、空間すらも捻じ曲げるように震えだす。

 

 カフカの耳に届くギャオスたちの鳴き声も、()()()にも似た振動を伝える。

 

「なんか……ヤバいぞ、これ。なら、その前にッ」

 

 8号は脚部のジェットの出力を全開にした。

 まさにロケットのごとき加速で、8号は自身を囲んで飛行を続ける幼体ギャオスの一体に迫る。

 

「オラァッ!!」

 

 パァンッ! 同質量の物体の超速度での接触によって、幼体のギャオスの体は破裂するように四散した。

 

「このまま……一気に蹴散らす!!」

 

 怪獣の筋力で無理矢理に軌道を修正し、8号はすぐ隣を飛び交う余獣を目がけて突っ込む。

 バババッ!! 一体目と同じように、余獣たちは次々と8号の体当たりを受けて爆散していく。

 彼を仕留めようとその周りに密集していたことが、逆にこの状況では敵である8号に有利に働いてしまったのは、幼体ギャオスたちにとっての誤算だった。

 

「自分のことながらスゲェ……怪獣相手に素手で余裕だわ……」

 

 いや俺も今は怪獣だけど。カフカは改めて、自分が手にしてしまった力の強大さを実感した。

 しかし恐れはない。この力は上手く使えば、それは人類の理になるのだ。

 

「このまま、本獣の方もやっつけてやるぜ!」

 

 幼体を蹴散らしたカフカはその勢いのままに、本獣であるスーパーギャオスをも自分の手で倒してしまおうと思った。

 しかし、それは慢心であった。

 

 彼が余獣たちに手を割いている間に、同様にスーパーギャオスの方も()()()()を終えていたのだから。

 

『GYAAAAAA!!』

 

 スーパーギャオスの裂けたような口から、一筋の光が8号目がけて飛んでくる。

 それは一直線の、「光の線」だった。

 

 カフカがそれがなにか認識する前に、本獣の()()が彼を襲う。

 

「うが……ッ!?」

 

 8号の胴体を、スーパーギャオスが放った光の線がスッパリと切り裂いた。

 戦車の装甲に匹敵する硬さの8号の腹甲が、粘土の盾のように意味をなさない。まるでメスによる切開のごとき鋭さだった。

 

 ギャオスは特殊な(のど)の構造をしており、内部の攻撃的ユニ器官を振動させることで起こすことができる()()()()()()

 その防御不能の技こそが、この大怪獣の最大の能力なのだ。

 

 再び本獣の口部周りの空間が歪んだ。次弾で、ダメージを負い動きが止まった8号にトドメをさそうというのだろう。

 そうカフカが気づいた時には、超音波メスが彼に向けて放たれた後だった。

 

 光の線が真っすぐに飛んでくる。音速のそれは、いくら8号でも回避は間に合わない。耐えることも出来ないだろう。

 

(ヤベッ……ミスった)

 

 カフカはそう思うが、しかしどうすれば……。

 

 彼は忘れていた。今、戦っているのは己一人だけではないことに。

 8号に迫る超音波メスの射線上に、突如として黒い大きな影が割り込んでくる。

 

「が、ガメラ!?」

 

 そう。ガメラが自身を盾として、カフカの身を守ったのだ。回転する円盤が、超音波メスのレーザーを削るように闇夜に火花を散らせる。

 

 怪獣に成りたての8号に比べて、神話の時代に生まれたガメラの甲羅は比にならないほど頑丈だ。

 しかしそれでも尚、スーパーギャオスの超音波メスは完全に防ぎきれない。ガメラの体から流れた緑色の血が飛び散って、夜空の黒に消える。

 

「ッ……ガメラ! このまま本獣に突っ込んでくれ!!」

 

 自分を(かば)って怪我をしている仲間を、そのまま盾として利用するなんてカフカにとっても苦渋の決断だった。

 しかし自分一人の力では、スーパーギャオスには敵わないこともまた理解している。ゆえにカフカは、無理を承知でガメラに頼んだ。

 

 ガメラは、ただ「了解」の意志だけを返した。カフカもまた、心からの感謝の意を彼に返す。

 

「行くぞぉおおおおお!!」

 

 手足を収納した円盤状態のまま、回転を止めて四肢のジェット噴射を一方向に向けて加速。

 ガメラは巨大な壁となり、超音波メスから8号を守りながらスーパーギャオスへ突撃する。

 

 ギャオスは相手の特攻を崩そうとさらにレーザーを乱射するが、ガメラの甲羅はそう容易には切断できないようだ。

 

『GYA!?』

 

 ドガァッ! と空中で二体の大怪獣は音を立てて激突。ガメラの巨体が重りとなって、ギャオスも飛行姿勢が維持できず、その体がグラついた。

 

「今だッ」

 

 8号はガメラの体を駆け上がり、やがて敵本獣の頭部が見える位置に立った。

 スーパーギャオスは生きているにもかかわらず、すでに死んでいるような生気のない瞳で8号を睨みつける。

 

「今まで見てきた飛行怪獣の核。それから推測して、お前の急所は……ここだぁーッ!!」

 

 8号はヒジの装甲を展開。飛行に利用したジェット噴射の応用で、拳を加速させたトドメの一撃を、ギャオスのノドへと叩きこんだ。

 

『GYAOOOOOOOOS……』

 

 推測は的中し、8号が降り抜いた拳の先にはスーパーギャオスの心臓部である「核」が、破損した状態で空へと四散していた。

 

 この時、大怪獣の10号に認定された巨大怪鳥ギャオスは、地上に残った余獣も含めてすべての個体が駆除されたのだった。




開始早々、急に執筆意欲が減退してエタりかけたので、以降のプロットを見直し話数を短縮しようと思います。
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