怪獣10号、ギャオスの一群を一掃した立川基地の防衛隊員たち。
死闘を終え、みな一様に肩で息をしている。
大怪獣クラスのフォルティチュードを持つ敵を相手にした結果はしかし、怪我を負った者こそいれど、死傷者は無かった。
「あっ、おい見ろ!」
ヤンキー風の隊員、古橋イハルが声を上げる。
彼の指さす先には、夜の闇を流れていく一筋の星の光が。それは戦いを終えて帰っていく、人類の味方──怪獣0号、ガメラの姿であった。
直後、地上の方でもまた、激闘から帰って来た者が一人いた。
「おぉ~い、みんな~!」
「先輩!」
「オッサン!」
日比野カフカもガメラと共にギャオスとの戦いを済ませて、仲間の元に駆けよる。
大きく手を振って帰還した彼を出迎える仲間たちは
「コノヤロー! 俺らが必死で戦ってる時に、のんびりトイレなんて行ってんじゃねー!!」
「しかも長いんだよ! あのタイミングでウンコかこいつ!!」
「えっ、えっ、なに!? なんで俺怒られてんのー!?」
彼が怪獣8号に変身出来るということを明かせないレノは、その場しのぎで「カフカはトイレで抜けた」と言ってしまったがため、当人は周囲から酷い誤解を受けていた。
「ちょっと市川さーん! 説明してぇー!?」
「すいません、先輩……あの時はああするしかなかったんです……」
状況が分からずみんなからボッコボコにされるカフカに対して、レノはただそう言う他になかった。
◇ ◆ ◇ ◆
立川基地がギャオスの襲撃を
基地の損害は軽微なもので、すでに復旧も完了。務める職員たちも、今は元通りの体制を取り戻している。
基地のみならず周辺への被害もゼロで、特に一般市民の被害も無かったのは、まさに奇跡的な出来事だった。
「ガメラのおかげだな」
「ああ、まったくだぜ。ガメラ様様だ」
と隊員たちは口々に言いあい、ミラクルな結果を出したこのケースを喜びあう。
そして、彼らは共に戦ってくれた大怪獣0号を、討伐すべき存在──怪獣であるはずのガメラを、すでに仲間として認めていた。
「俺も頑張ったんだけどなぁ……」
「お前はウンコしてただけじゃねえか」
怪獣8号として参戦したカフカは、もちろんその事実を誰にも知られず、故に彼の奮闘も誰も知る
「おいそこぉ! 無駄口叩くヒマがあったら体動かせぇ!!」
誰からともなく檄が飛ぶ。
立川基地の新人隊員たちは、ギャオスの襲来に対して満足に動けなかったことを反省。
その失態を挽回しようと、この一週間彼らは、これまで以上に訓練に熱を上げていた。
トレーニングは一層激しさを増し、しかしそれでも音を上げる者は一人もいない。
みんながみんな、自分たちの不甲斐なさに活を入れていた。
「おーおー、みんな頑張っとるなぁ~」
そこに、副隊長の保科が様子を見にやってきた。
相変わらずのゆったりした様子だが、彼もまた人目に付かない所では、過酷な訓練を自らに課している。
「そのままで聞いてくれ」
保科は手にした書類を読み上げる。それは先の怪獣10号こと、ギャオスに関する調査の報告書であった。
「10号ギャオスのことなんやが、ウチの研究所のモンが調べた結果……色々と厄介なことが分かった」
「厄介なことって、なんですか?」
周囲を代表して、年長のカフカがたずねる。
「ギャオスの亡骸から採取した細胞を機械にかけたんやが、この怪獣……これまで発生した奴らとは、まったく別の生体なんや」
「今までの怪獣と違うって……」
「ギャオスの遺伝子を解析したら、おどろきや。こいつのDNAは、他の地球上のあらゆる生物──怪獣も非怪獣も含めて、同一の型が無かったんや」
保科は言葉を続ける。
「それだけやない。ギャオスのDNAは、あまりにも完璧すぎる構造をしとる、と解析班は言うとった。生物学的に、
「つまり……分かりやすく言うと?」
この手の知識に明るくないカフカは、明確な説明を求めた。
保科は思わせぶりに間を開けて、答える。
「ギャオスは、何者かの手によって人工的に生み出された生命体、っちゅーこっちゃ」
「何者かって……何者なんですか」
「それについては、見当はついとる」
保科は持っていた書類から一枚の写真を取り出して、みんなの前にかざす。
「これは、古代の地層から発見されたもんや」
写真は、石板のような物体を映していた。
板の表面には文字と思えるものが溝のように掘られているのだが、その字体は現存するあらゆるものとも異なっていた。
「なんて書いてあるんでしょうね?」
レノは横にいるカフカに、なんの気なしに問いかけた。
答えが返ってくるはずもない。それは、誰も見聞きすらしたことのない文字だったのだから。
しかしカフカは
「『最後の希望、ガメラ。時の揺りかごに託す。災いの影を払わん』……」
「えっ?」
横のレノにだけ、かろうじて聞こえるほどの小さな囁き。
カフカは一目見ただけで、なぜか石板の文字が読み解けてしまった。
驚きに目を開くレノ。直後に保科の口からも、同じ意味の内容が繰り返される。
どうやらカフカが発した言葉は、ただのデタラメではないようだった。
「これはウチの解析班が数年かかって解読したもんなんやで~」
なぜか自慢げな保科。
「この
「もしかして、そこに書かれている『災いの影』というのが……」
「ギャオスのことやろう。つまりギャオスもまた、ガメラと同じく大昔に古代人が生み出し存在やというのが、研究所の面々の出した結論や」
キコルに答えるように保科は言った。
「で、ここからが本題なんやが」
保科の口調が、急に真剣味をおびる。
「ギャオスの遺伝子には、つい最近になって、新たに手を加えられた形跡があった」
副隊長の説明を聞いていた隊員たちの間に、一斉に緊張が走る。
彼の言葉の意味する所は、つまり
「上層部は、おそらくギャオスをいじった犯人は、怪獣9号やろうと見当をつけとる」
「9号が……!?」
「けど、なんでそんなことを」
出現して以降、まったく動きを見せなかった怪獣9号が、今になって暗躍しはじめた。
そのことに驚くイハルと、9号の行動に意味を見出せないキコル。
「目的はわからん」
「もしかして……」
きっぱりと意図は不明と言いのけた保科に、カフカは独り言のように続ける。
「立川基地を潰すこと、そのものが目的だったんじゃ……」
「私たちが狙い? なにか根拠はあるの?」
「いや、これといった理由はないんだが……勘? みたいな?」
「オッサンの勘とか、当てにならねーんじゃねえか?」
カフカの勘はしかし、まったくの見当外れでは無かった。
それは、彼の体に取り込まれた古代の勾玉、そして……
◇ ◆ ◇ ◆
夜。人気どころか生物の気配すらない、
別に、防衛隊に討伐されることを恐れての行動ではない。その気になれば、武装した人間など軽く蹴散らせる自信があった。
「まあ……確かに数ノ差は、厄介だけどネ」
なにより、これは
「ギャオスを使エば、楽に『ボーエータイ』とやらを駆除できるト思ったんだけどなぁ……まさか、アイツに邪魔されルとは」
怪獣0号、ガメラ。
「ボクらの使命は、この星の生態系のバランスを守るコと。今の地球は、人間の数ガ多すぎる。だから人を減らして、怪獣の数を増やさナきゃいけないのになァ」
そのために、人を守る存在である防衛隊を排除することが重要。なぜ、その役目を理解しないのか。
9号は誰もいない空間に向かって、そこに居る誰かに愚痴るように言葉を発し続ける。
「まア、いい。ギャオスの卵は、まだ残っているからネ。さらなる改良ヲほどこして、次はモっと強い個体をつくろうジャないか」
そして
「この星を、ボクたち怪獣の惑星へ、変えてしマおう」
不意に、9号は空を見上げた。いくつか星がキラめいている。
その中で一つだけ、他よりわずかに強く輝く星があった。その星の光は、なにか言葉に出来ない、底知れない不気味さをはらんでいた。
「ナんだ? なにカ……」
星を見つめる9号は自らの中に、言い知れない不安な感覚が沸き上がるのを感じていた。
「バカな……怪獣であるボクが、なにより強大な存在デあるボクが、『恐れ』を感じている……?」
大怪獣が恐れるモノ。そんなもの、あるはずがない。
9号は自身の感じた「恐怖」という直感にフタをして、見ないフリをてしまった……。
プロット4回ほど作り直して全く別物になりつつ、一応納得いく形になったけど
話数を短縮するためにやったのに結局2話しか削れず、これ意味あったのか…?