ガメラ×エイト 神話の復活   作:ほろろぎ

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最終話 急転直下

「いやぁー……とんでもないことになったなぁ……」

「ホントにネ」

「まさか俺たち人間と、怪獣の9号(お前)が、一緒に協力して戦うことになるとはなぁ」

「ボクも想像してナかったヨ」

 

 大炎上する東京の街並みを前にして、日比野カフカと怪獣9号は場違いにのん気な会話を交わしていた。

 彼らの前を、担架に乗せられた亜白ミナが、救護班に搬送されていく。

 その様子を、カフカはぼんやりと見送った。

 

「デモ、おかゲで彼女を無事ニとりもどせたダロう?」

「まあ、最初にあいつを奪い去ったのはお前だけどな」

「ハハハ。まさか彼女をトりコンだ怪獣11号──イリスが暴走しテしまうナンてね」

「お前舐めすぎなんだよ、ミナの怪獣に対する怒りを」

「そのオカげでイリスは強くなッたけど、仲間ノ怪獣にマデ攻撃ヲはじめるトハ」

「怪獣だけをターゲットにしてくれてれば、まだよかったんだがな」

 

 

 

報告書-1

 

・怪獣9号は、人間をターゲットとする超生物を誕生させた。

 過去に発生した同経緯の怪獣10号「ギャオス」をベースに、さらに遺伝子改良を加えた怪獣11号が通称「イリス」である。

 

 9号は人質兼パワーソースとしてイリスの体内に、防衛隊第三部隊隊長の亜白ミナをとりこませた。

 しかしここで9号に誤算が発生。

 亜白隊長の深層意識がイリスの行動に影響を与え、怪獣11号の攻撃目標の設定が人間から怪獣に変更。

 

 イリスは誕生地の樹海を出て、東京と付近の都市ごと、地下に生息する怪獣へ攻撃を始めた。

 生息怪獣は殲滅されたものの、東京は炎上、壊滅。

 

 急行した第三部隊と、怪獣8号=日比野カフカ 元隊員、および怪獣0号「ガメラ」が合流。

 人的被害への懸念から、イリスの排除および亜白隊長の救出のための戦闘を開始。

 

 そこに9号も共闘を申し出た。

 9号の言によれば、「このままではイリスによって怪獣も滅ぼされてしまう、それを防ぎたい」。

 

 合同部隊によってイリスは沈静化し、亜白隊長はガメラの手によって摘出された。

 

 なお、この戦闘によってガメラは負傷、怪我を癒すための休眠状態に入った。

 

 

 

 眠り込んでいるガメラの巨体を横に、カフカと9号の会話は続く。

 東京は未だ炎上中だ。

 

「で、なんでお前は怪獣代表として、人間を滅ぼそうとしてんだよ? ……今更だけどさ」

「本当に今更だナ」

「いいだろ、こうして腹割って話せる機会はなかなか無いんだから」

「……ボクとガメラは、共に古代アトランティスの人間に造らレた生物兵器ダ」

「あぁ、前に保科副隊長が、ガメラに関してはそんなこと言ってたけど、なに? お前もだったのかよ? ってことはガメラとお前は」

「仲間、というコトになるのカな? ボクらは共に、地球の生態系を守ルために生ミだされた」

「なのに(たもと)を分かった」

「ガメラは地球の環境と、ソコに生きる君たち人間も守ろウトしている。対してボクは、地球が生み出した新たな種──怪獣を守護し、彼らノタめに自然を汚す人間を排除すると決めた」

「けど、今こうして俺たちは協力できた。これからも上手いことやれるんじゃねえか?」

「ボクが力を貸したノは、あくまデ怪獣のためダ」

「じゃあ、これで決裂……なのか?」

「……いや、もうしバラくは関係ヲ続投しよう」

 

 9号は視線を空へと向けた。

 日は傾き、夜の暗幕が顔をのぞかせつつある。

 

「流れ星……流星群か?」

 

 カフカの目に、尾を引く流星の輝きが映った。

 一つ二つではない。

 百を超すほどの、一目には数えきれないほどの星の軌道。

 

『緊急報告! 大気圏外より、()()()()()()()無数の隕石が飛来中!!』

 

 防衛隊のオペレーターから、鬼気迫る声での通信が入った。

 

「ツイに来てしまっタか、奴らが……」

「なんだありゃ!? 奴らって、お前なにか知ってるのか!?」

「ボクの行動にはモウ一つ、目的がアった。この星ヲ怪獣の惑星とシテ、奴らニ対抗するコトだ」

「だから何なんだよ、アレは!?」

 

 流星は巨大な隕石となって、地球全土へと落下した。

 日本にも数十個ほどの隕石が飛来し、その内の一個がカフカらの前に落着。

 大きな揺れと風圧が辺りを襲う。

 

「今、通信で言っテタだろう? あの隕石にハ怪獣反応がアル、と」

「……おいおい、そんな……まさかだろ」

 

 地上に激突した隕石が卵の殻のように割れ、中から昆虫と甲殻類を組み合わせたような生き物が這い出てきた。

 

「ヤツらは軍勢(レギオン)でヤッて来た。この星を侵略スる意図があるノカはわからないけど、このママじゃボクらも怪獣モ、君たち人間も生存は危うイだろうね」

「レギオン……あれが、()()()()なのか……」

 

 金属を引き裂くような不快な鳴き声が、いまだ燃え上がる東京の夜空に響いた。

 

 

 

報告書-2

 

・飛来した宇宙怪獣は、未知の存在により「X号」とナンバリングする。名称は「レギオン」。

 

 レギオンは東京に1体、日本各地に数十体が存在。

 世界各地の各都市にもそれぞれに数十体のレギオンが上陸し、地球全土で正確な総数は把握されていないが、およそ百体前後と思われる。

 

 レギオンは腹部から、多数の小型レギオンを放った。(以後、小型を「ソルジャー」、大型を「マザー」と呼称)

 マザーレギオンとソルジャーレギオン、合わせて数千体にも及ぶ敵怪獣と、地球全土で交戦状態に入る。

 

 数、力の圧倒的な差から、防衛隊は半壊滅状態におちいり、人類はシェルターを中心とした地下空間へと撤退、どうにか逃げ延びた。

 そして地上は、レギオンの群れに占拠されてしまった。

 

 もはや人間は、暗い地の底でみじめに生を繋ぐしか術はないのかと思われた。

 が、地底に潜ったことが、逆に幸いした。

 

 かねてより怪獣発生の原因と噂されていた、フォルト波動を発生させている断層に近づき、調査することで、怪獣の生態メカニズムの解析に成功。

 この研究を応用することで、レギオンの力を弱める特殊な波動「アンチ・フォルトウェーブ」を生成する装置が完成した。

 

 さらに海外の防衛隊からの情報で、異次元に繋がるゲート「次元門」の存在が判明。

 これは別の世界から、こちら側へ怪獣を呼び込む恐れがあったものである。

 が、門の研究をおこなっていた専属班から、ゲートの構造を反転させることで、こちら側から別の世界への移動が可能となる公算がついた。

 

 これらの装置により、弱体化させたレギオンを異世界へ追放する作戦が立案、可決された。

 早急に準備を整え、地上奪還のための大規模作戦が決行される。

 

 

 

「いややっぱ数が多いな!!」

 

 8号に変身し、マザーレギオンの一体と交戦を開始したカフカが叫んだ。

 上空は太陽の光をさえぎるほどのソルジャーレギオンの群れが飛行している。

 

 日本全土に分散して飛来したレギオンは、電波誘導によって東京の跡地に集められていた。

 ここが日本で唯一、次元門を安定的に発生させられる区域だからだ。

 

 レギオンはバリアを発生させいかなる攻撃も阻んでいたが、厄介な防壁も今はアンチ・フォルトウェーブによって無効化されている。

 防衛隊残存部隊とガメラによる一斉砲撃がマザーとソルジャー、集められた無数のレギオンに着弾。

 熱と爆風に煽られ、敵宇宙怪獣は吸い寄せられるようにして、次々に次元門の中へと消えていく。

 

「これでラストだッ」

 

 最後まで抵抗していたマザーの一体も、8号の拳を受けてゲートの向こう側へと追いやられた。

 

『マザー、ソルジャー、含めてすべてのレギオンの反応、消失しました!』

「ふぅ~、これでやっと一件落着か……」

 

 しかし、戦いが終わったはずのその場に、ガメラはとどまったままだ。

 ガメラと9号の視線が交錯し、9号が口を開く。

 

「それじゃあ、ボクらの決着モつけようカ」

 

 9号の枯れ木のようだった細身の体躯が泡立つように膨張し、見る間にガメラに迫る大きさにまでふくらんでいく。

 

「9号ッ、お前なにを!?」

「コの()()()()()()()()の力を開放するノサ」

「9号の中に封じてきた……怪獣の力?」

 

 9号だったモノの体は、牛の角をもつワニを思わせる巨大生物へと変異した。あるいは複数の牙を生やしたドラゴンか。

 

「こレはボクとガメラを生み出したアトランティスと敵対する、ムー大陸の人間が太古に造りだシタ怪獣……」

 

 やっとの思いでレギオンを放逐し、疲労困憊の防衛隊員らの前で怪獣が唸る。

 その異様な姿は、人間なら誰もが知っている……否、知らなければならない存在。

 四百年前に江戸の町を壊滅させたといわれる、伝説級の()()()()

 

「君たちハ『明暦の大怪獣』と呼ンデいるが、コイつの正式な名前は……魔獣『ジャイガー』」

 

 古代アトランティスは地球の生態系を守護・維持するためにガメラや9号を造った。

 対してムー大陸の人間は、地球の環境を守るという名目で、人間や怪獣をふくむすべての生命のリセットをもくろんだ。

 

 破壊による再生。

 一度はこの凶行を防ぐため、9号は自らの内にジャイガーを封印することを選んだ。

 

 しかし時の流れの中で封印の力が弱まり、いったん外に放たれてしまったのが明暦の経緯。

 そして今、再びの解放は9号自身の意思によって行われた。

 

「ガメラも8号(キミ)も、防衛隊モ疲弊して、ボクも疲れ切っているが……今がチャンスと思ってネ」

「それほど、この星を怪獣のものにしたいのか」

「キミたちだって、怪獣を排除して地球ヲ人間のモノにしたイダろう? 人間(キミら)怪獣(ボクら)は相容れナい」

「ガメラは俺たちと一緒に戦ってくれた。お前も、理由はどうあれ協力できただろ!」

「同じコトの繰り返しダ。今はヨくても、いずレハまた敵対の道を選ぶダロウ」

 

 返す言葉を失ったカフカ──8号の隣にガメラが並ぶ。

 なぜ、ガメラはここまでして……仲間であるはずの9号を敵に回してまで、人間の側に立ってくれるのだろう。

 カフカの疑念にこたえるように9号が自論を述べる。

 

「きっと、単純に……人間ガ好きなんダロウね、ソイツは」

「ガメラ……」

「いつカ、人間が地球を汚ス存在になっタトシても、ガメラは人との繋がりヲ断てないダロウ。それがガメラの弱さだ」

 

 いや、違う。

 

「ガメラは……これまで自分が傷つくこともいとわず、人間を護るために力を貸してくれてきた。俺たち防衛隊も、人間を護りたい一心で戦ってきた。それは同じ想いをもとにした強さだ」

 

 8号とガメラの後ろで、消耗しきっていた防衛隊員たちが武器をとり、再び立ち上がる。

 

 ジャイガーは地上のすべての生命を根絶させる力を持った大魔獣だ。

 奴の自由にさせては、地球は色を失った闇の星へと変わり果ててしまうだろう。

 すべては命の存続のために。

 

「いこうぜ、防衛隊のみんな。そしてガメラ」

 

 8号が握りしめた拳に、青白いイナヅマ状のエネルギーが溜まっていく。

 ガメラの胸部の隙間から、同じく青白い炎の力が脈動を始めた。

 

「俺たちは生きる。生きて、ガメラの想いを裏切らない……自然と共に命を謳歌する」

 

 ジャイガーの、ガメラの、そして8号の──大怪獣の咆哮が天地を揺るがした。

 

 

 

◇報告書-3

 

・完全な荒野と化した地球の大地。

 その上空を一羽の巨大な鳥が旋回している。

 この星が持つ命のエネルギー、「マナ」によって形作られた炎の怪獣──『不死鳥(フェニックス)』が。

 

 フェニックスの羽ばたきで舞った火の粉が、赤い雪のように地上に降りそそぐ。

 これは地上の、この星の命という明かりを繋ぐ、祈りの灯火だ。

 

 大地の上に、新たな生命(ヒカリ)が芽吹く。




一年以上も放置していてすいません。
久しぶりに感想をいただけてやる気が復活し、再度筆をとれました。
といっても打ち切りのための一話分だけですが…。

自作を振り返ってみると、ガメラと怪獣8号サイドのキャラとの心の交流が無く、ガメラがただ戦うためだけのパワーアシスト装置にしかなってなかったことに今更ながら気づきました。
ここにきて改善するにも手遅れで、そのまま突っ切りました…。5回もプロットを組み建て直してこれか(呆れ)

ラストはガメラがジャイガーと共に自爆、地球のマナとガメラのマナが結びついてフェニックスとなり、荒れ果てた地上に新たな命の種を蒔く、というものですが、詳細に描く余裕がなくこんな感じでお届けしました。カフカたち怪8サイドのキャラは生き残ってます。

怪獣フェニックスは小説のガメラ対不死鳥より、展開を端折るために報告書形式の文体にしたのは右園死児報告を真似してます。

なんだかんだで最後まで読んでくれた人はありがとうございました。
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