引き金を引くことを。
乾いた銃声、間違いなく銃弾は彼女の、アル・テラーの心臓を撃ち抜いた。
一瞬驚いたような顔をした彼女だったが、すぐに穏やかな笑みに変わった。
「……本当に撃ってくれるなんてね。ありがとう、アル。成長したのね、私……皆を、便利屋をよろしくね、陸八魔アル」
そう言い残して、どさっと彼女の身体は地面に伏せる。それと同時に体の光は消え、先生を囲っていた膜が消え去った。
アルは、撃ったその姿勢を崩すことが出来なかった。
「アル……」
ゆっくりと歩み寄る先生へ、アルは引きつった笑みを浮かべる。
「わ、私は……彼女を、たすけ、たくて……それで……それで」
「うん、分かってる」
硬直してしまったアルの左手に、先生は自身の手を重ね、優しくもみほぐすように握る。すると、ようやく力が抜けたのか、アルの手から、ワインレッド・アドマイアーは零れ落ちた。
「わ、私……人を、人を……!」
「言わなくていい。言わなくていいよ、アル。大丈夫、大丈夫だから……」
全身から力が抜けたアルを抱きかかえながら、先生はそっと頭を撫で続けた。「大丈夫」「大丈夫」と何度も繰り返しながら。
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その後、アル・テラーの遺体はシャーレの土地に埋められた。墓石には、何も書かれてはいないが、真っ赤にさびれたワインレッドアーマーが側に立てかけられている。
今回の事件に関わった生徒には口外禁止を厳命し、秘匿することになった。おかげでキヴォトスは、今日も何の変哲もない一日が過ぎる。そして、これからもきっと。
だが、ただ一つ変わってしまったこともあった。
「ねえアルちゃん、本当にこんなことしていいの?」
「何を言ってるのムツキ、仕事なんだから当たり前でしょ」
「……分かった、社長がそう言うなら、やるよ」
「はい、私も、やらせていただきます」
「それじゃあ行きましょう、仕事の時間よ」
アルはあれ以来、感情の起伏が小さくなった。それこそ、アルが思い描いた冷徹なアウトローの姿へと変わっていった。仕事の達成率も上昇し、売り上げも伸びて行った。
だがその手段は、段々と狡猾で、悪質なものへと変わって行った。「人殺し」という最大の悪事を行ったアルは、もはやそれ以外の悪を、悪とも思わないようになっていた。
以前までとは大きく変わってしまったアルのことを不安に思いつつも、便利屋は今日も行く。本物のアウトローを目指して。陸八魔アルは今日も生きる。便利屋の皆を守るために。
【アルEND:アウトローを目指した少女はヴィラネスになるのか?】