ダンジョン探索と魔法陣解析。この2つのタスクをこなしつつ、フリーレン・ゼル・マルシルの3人のエルフ魔法使いは、ようやくパーティーシャッフルの罠の魔法陣のある部屋にたどり着いた。
「これで、ようやくっ」
疲労感満腹状態でヘロヘロになったマルシルが杖を支えに息巻く。
「帰れるな」
疲労感腹八分目といったところのゼルは、フゥと息をついて頭を掻いた。
「あと一回でね」
無表情だがどこか疲労感のあるフリーレンは、油断大敵とばかりに2人をたしなめた。
「転送の解析は大丈夫だよな? これでこの3人が次に各世界に飛ぶ。そして行先で各世界の仲間たちに合流、もしくは他の世界に戻してやる。問題ないな」
ゼルの言うように、3人は同じ任務を胸に覚悟を決めていた。
3人はシャッフルの罠の攻略魔法を確立させていた。
今からの転送で3つの世界に3人がそれぞれ飛び、転送先で自分の仲間、その世界にいるべき者、そして他の正しい世界に移動させるべき者を正しく導く。
そうすることで、次の転送で完全に元のパーティーに戻ることができるのだ。
「それで問題ないよ」
フリーレンは余裕の表情で答えた。
だがマルシルは少し自信なさげに「う、うん」と答えていた。
そのことに気付かないフリーレンとゼルではない。
「おいおい大丈夫か?」
「自信なさそうだね。大丈夫だよ、マルシルの魔法はちゃんとしているよ」
「だってぇ。私、フリーレンさんやゼルさんみたいなスゴイ魔法使いじゃないし」
実はマルシルには魔法の解析が難しかった。どうにか“自分自身と仲間を一緒に特定の世界に移動する”ことはできそうな気がしたが、“他の人を特定の世界に送る”魔法が複雑だったのだ。
グズグズとするマルシルに、ゼルとフリーレンは優しく肩に手を置いた。
「そう気負うなって。そういう面倒は俺らに任せて、お前には簡単なルートを用意してやるから」
「そうだよ。単純な話だ」
ゼルとフリーレンの思惑としては、今からの転送はマルシルに最も負担がかからないものになるはずだ。
それはマルシルを“スタンクとクリムがいる世界”に飛ばすというもの。
スタンクたちの世界には今、フェルンとシュタルクがいる。つまり今回の転送でフェルンとシュタルクはその世界にいなくなる。
そしてライオス、チルチャック、センシのうちの“誰か1人が”2分の1の確率でスタンクたちの世界に飛ばされてくるだろう。
となれば次の転送でマルシルは自分の仲間と一緒に、もしくは自分一人で自分の世界に戻ればいいだけだ。
「この世界にはフェルンかシュタルクが戻ってくる。もう1人はライオスの世界に行くだろうから、私は今からライオスの世界に飛ぶよ。その1人を迎えに行く形だね」
「だな。俺はこの世界に留まる。こっちに来ちまったヤツの面倒見てやればいい、ってことでいいな」
自信の無さから頭が回りきらないマルシルだったが、ゼルとフリーレンが自信をもって言う姿に勇気をもらうことができた。
「そうだね。よし! 次の転送でこの旅ともおさらばだ!」
から元気で杖を振り上げるマルシル。
そしてガッツポーズをとった彼女は、フッと杖を降ろしてゼルとフリーレンに一礼した。
「ゼルさん、フリーレンさん。改めまして、ありがとうございました。お二人がいなかったら、私たちどうなっていたか。お二人に会えてうれしかったです」
深々と頭を下げたマルシルに、フリーレンは手を握った。
「私もマルシルと会えて楽しかったよ。ゼルも、これでサヨナラだけど元気でね」
「おう。お前らも達者でな」
挨拶は湿っぽくならないように簡単に交わすようにして、マルシルとフリーレンは杖を構えて魔法を唱えながら、魔法陣に足を踏み入れた。
そして光に包まれたマルシル。
次の瞬間、目の前にいたのは可愛らしい男の子の天使。そして見慣れた仲間“2人”の姿。
「あっ、クリムくん。それにセンシとチルチャックじゃん。コッチに飛ばされちゃったんだね・・・・って何で!?」
思わず二度見をしてしまったマルシル。
そのリアクションに「うむ」と平然と答えるセンシ。そしてバツの悪そうに気まずそうに顔を背けるチルチャック。
そう。
こともあろうにマルシルの仲間たち3人は、本来シャッフルの罠を踏むのが1人だけでよいところを、わざわざ3人で罠を踏んで転送されて来たのだ。
「おい。誰だ。言い出しっぺは」