「やっと会えたねフェルン」
「あっ、フリーレン様」
光の中から現れたフリーレンとフェルン。互いの顔を確認するや微笑を浮かべ、その背に穏やかな安心の色を見せた。
だが直後に2人は首を傾げた。
「…ここには私たちしかいないようだね」
「そのようですね。皆様、どちらに向かわれたのでしょうか?」
キョロキョロと周りを見回すフェルンに、フリーレンは“想定済みの中で悪い方の事態”にしょんぼり顔になった。
フリーレンの転移先、この世界には本来であればライオスとセンシ、そしてチルチャックがいるはずだった。
だが誰もいない。
全員でシャッフルの罠を踏んでしまったようだ。
「事故でもあったのでしょうか?」
「う~ん。わざとかもね。だってほら」
そう言ってフリーレンが杖で差した方向に、置手紙と何かを包んだ袋が置かれていた。
「多分、この次で最後の転送だから、今のうちに他の世界を見に行きたくなったんだろうね」
「ではコチラはお詫びの品ということでしょうか」
フリーレンの予想の裏付けに、フェルンが袋を開くと中には何かの食べ物が入っていた。
更に置手紙には詫びの言葉と、おそらくはどんな料理かの紹介が添えられていた。
だがフリーレンとフェルンはその文字を読めなかった。
「う~ん、ひとまず食べてもイイよってことだと思うけど」
「美味しそうなお料理ですね。たしかライオス様とチルチャック様、あとセンシ様が男の方だと伺っていますが。お三方で作られたのでしょうか?」
冒険者の男だけで作った手作りの料理にしては、実に美味しそうな料理がそこに並んでいた。
というより、ダンジョンの中でここまで手の込んだ料理が用意されていることにフェルンは驚いた。
都市の食堂でもなければ、こんなダンジョンで家庭料理の温かさと出会えるのは感動ものだ。
「この世界は料理文化に優れているようだね」
「そのようですね」
どの世界でも三大欲求というものは共通のようだが、それぞれの世界で何が最も尊ばれているかは違うようだ。
ライオスたちの世界は食欲を満たす文化に傾向が強いのだろう。
「じゃあ、ありがたくいただこう」
そう言って手を合わせるフリーレンとフェルン。
まず最初に手を付けたのは“キノコの炒め物”。
「へぇ、このキノコ美味しいね」
「たしかゼルさんがキノコがお好きだとおっしゃっていました」
笠が大きく、身の引き締まった上等なキノコだ。この世界特有のタイプなのだろう。食べたことが無い味がした。
続いては野菜入りオムレツ。
「…野菜だった。でも、これは何だろう?」
「フリーレン様が大丈夫なお野菜なんですね。何のお野菜か知りたいですが、もう機会がないのが残念です」
フリーレンの匙が止まらないことにフェルンは感動しながらも、次が最後の転送であり、もうライオスたち一行と会うことがないことを残念がった。
最後は・・・不思議な白くて丸いお菓子だった。
「…不思議な触感だね」
「甘いお菓子かと思いましたが、何でしょう?」
カリッとしてサクッとして、香ばしく焼かれた不思議な食べ物だった。煎餅か何かだろうか?
いずれにせよ腹が満たされ、フリーレンとフェルンは満足した。
惜しむらくは、手紙に何と書かれていたのかが読めればよかったが。
ちなみに本日のお品書き
・歩き茸炒め
・人食い植物のオムレツ
・真珠ムカデの素揚げ