葬送のレビュアーズ飯   作:三柱 努

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フェルン×クリム×ライオス(異種族世界)

「あのぉ。お二人は…」

天使・クリムは困惑していた。

つい先ほどまで一緒だった仲間のスタンクとゼルが消え、代わりに現れた2人の人間から向けられる独特の視線に。

クリムは天使であることから、普段から好奇の目を向けられることが多い。

とはいえその目の大半は「天使かぁ、初めて見た」という物珍しさから。

道を歩けば別種族の10や20とすれ違い、毎日新たな種族と出会うのが日常となっている世界において、天使も珍しい1種族としか思われない。

一瞬興味は向けられるが、しばらくすれば特に詮索されることはない。

むしろ『火山帯に現れた雪男』のほうが珍しさと好奇の目に曝されるだろう。

 

だが今、クリムに向けられているのは今までに無かった視線。

目の前の男女は、まるで別種族と出会う機会がほとんど無かった秘境の民かのように、クリムの天使感をジロジロと見ていた。

『居心地が・・・』

緊張するクリム。だが2人の視線は徐々に軟化していった。

「あ、あのぉ。僕は」

「ああ、ジロジロ見てしまいすまない」

すると男の方はクリムに気を遣うように丁寧な態度を見せた。

「私も挨拶もそこそこに、失礼しました」

女性の方も礼節をわきまえた態度を見せた。このことにクリムはホッと一安心。

 

だが2人の思惑としては“こう”だ。

『天使なんてほんとにいるんだなぁ。もっと威張り散らしたような存在だと思っていたけど。なんだまるで子供じゃないか』

『もっと威厳のある、ふんぞり返った存在なんじゃないかと心配しましたが。なんだか可愛い・・・男の子? 女の子? どちらでしょう』

最初は見慣れぬ神秘的な存在だと警戒していたが、いざクリムの態度を見るに大したことない・・・ではなく、親しみやすい存在だと判断できたことに安心したのだった。

 

「じゃあ俺たちも自己紹介といこうか。俺はライオス。他にエルフのマルシルやハーフフットのチルチャック、ドワーフのセンシと一緒にダンジョンを潜っている」

「私はフェルンと申します。エルフのフリーレン様。人間のシュタルク様と共に旅をしておりました。このダンジョンにはフリーレン様がよりみちしてしまい、その付き合いで入りました」

「僕は天使のクリムです。エルフのゼルさんや、人間のスタンクさんにお世話になっています。今日はダンジョンにはおつかいで。いつもは酒場で配膳の仕事をしています」

自己紹介もそこそこに、3人は三者三様に互いの印象を心の中で考えていた。

『『天使が配膳?』』

フェルンとライオスはそこに少し引っかかったが、それよりも気になることがあった。

『『『この人たちもエルフと知り合いなんだぁ』』』

と。

『2人の知り合いのエルフも、マルシルみたいな感じなのかな?』

『お二方のお知り合いのエルフも、フリーレン様みたいな方なのでしょうか?』

『お二人の知り合いのエルフも、ゼルさんみたいな人なのかな?』

見当違い。まさかそれぞれのエルフが“あんな感じ”だとは知る由もない3人。

 

 

「ではそろそろ、皆様の仲間を探しに向かいましょう。私も、フリーレン様やシュタルク様が今ごろ変な宝箱を開けたり、泣いたりしていないか心配です」

「そうだな。今の状況を考えると俺の仲間も3人とも、皆の他の仲間と一緒にいるだろう。食うものに困っているチームもいるかもしれない。早く見つけてやろう」

「スタンクさんやゼルさんが皆さんのお仲間さんに失礼なことを言っていなければいいですが」

三者三様の心配は互いに、口にしたものと心の中で思っていることがちょっとズレてはいた。だがそんな事に気付く者はいない。

そして不意にそれは衝突した。

 

モフッ

 

ダンジョンの曲がり角で遭遇した不意のハプニング。

先頭を進んでいたクリムが、その目の前に現れた2つの柔山に顔からぶつかってしまったのだ。

「あら、ごめんなさい! あなた大丈夫」

それは赤い肌と鱗、角に尻尾。そんな特徴をもったサラマンダーの女の子だった。

サラマンダーは酷く心配した様子でクリムの顔を覗き込み、何度も頭を下げて謝り倒した。

その必死な様子にフェルンもライオスも首をかしげる。

「大丈夫ですよ。こちらこそすみませんでした」

当のクリム自身も平気な様子。彼女が何を心配しているのか、ライオスがその理由を直後に知る事となる。

「あっ、熱っ!」

背中でサラマンダーに触れてしまったのだ。

「どうされたんですか! ライオス様!」

「背中が燃えたみたいに熱い!」

「やっぱり、私みたいなサラマンダーの体温は人間さんには火傷させちゃうよね」

ライオスとフェルンは『サラマンダー?』と少女が自称していることに一瞬の困惑を見せた。

だが今は火傷のことで必死。

「ライオス様、はやく服を脱いでください。治療しなくては」

「ちょっと待った! さすがに女の子たちの前でそれは」

倫理的な問題で抵抗するライオス。だがフェルンは治療を優先すべきと譲らない。

「仕方ありません」

フェルンは即決して、とある魔法を唱えることを決めた。

それはかつて、竜の退治の報酬として手に入れた魔法。

フェルン自身、あまり面白い魔法ではないと酷評したが、今は使うべきだと判断した。

 

服が透けて見える魔法

 

「どうやら火傷は大丈夫なようですね」

ライオスの背中を見たフェルンがそう呟く。

さっきまで自分の服を脱がそうとした彼女が手を緩めたことに、ライオスは首をかしげながらも「そうか。それならいい」とホッと安堵した。

「大丈夫でしたか? ライオスさん」

そう心配するクリムに、フェルンは「ええ。それよりクリム様は大丈夫ですか?」と振り返った。

 

その直後、フェルンはこう思った。

「でっか」

 

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