「やっと見つけることができたね。シャッフルの罠の魔法陣」
部屋に入るなり、フリーレンは落ち着いた声と表情のまま呟いた。彼女なりに喜んでいるのだろうが、感情の起伏がそこまで激しくないフリーレンの様子から、チルチャックもスタンクも『嬉しくないのか?』と首を傾げた。
その部屋の中央には3人がともに記憶のある魔法陣が、不思議な光を放ち描かれていた。
フリーレンとスタンクは「せーの」と部屋に入り、チルチャックはその様子を通路から眺めた。
「俺が踏んだらアウトだもんな」
「そうだねチルチャック。今度は3人が飛ばされちゃうところだったよ」
チルチャックの慎重な行動に、フリーレンは少し口角をあげて満足したような様子を見せた。『そんな表情もするんだな』とチルチャックは感心する。
「これでやっと元に戻れるわけか」
「そうとは限らないよ。もしかしたらスタンクの行くべき場所に私が行くかもしれない。その逆も。あとは他の仲間が私たちと入れ違いになるかもしれない」
フリーレンが指を交差させるように示し、シャッフルの可能性について説明すると、スタンクはすんなり納得した。
「そん時はまた魔法陣を探すことになるか。まぁなるようになるさ」
気楽に答えたスタンク。フリーレンも「そうだね」と軽く答えたが、チルチャックだけは呑気に構えていられなかった。
「いやいや、また無駄にダンジョンを散策するのは勘弁だぜ。アンタらは平気かもしれないけどさ」
シャッフルの罠の魔法陣を探す間、チルチャックの目の前で繰り広げられていたのは驚きの連続だった。
スタンクの剣術。それはチルチャックが知るどの剣士よりも凄まじいものだった。下手をすれば英雄クラス。そしてダンジョン内での抜かりのなさは一流の冒険者並み。
フリーレンの魔術。それはチルチャックが知るどの魔法使いをも超越していた。下手をすれば大賢者クラス。そしてダンジョン内での抜かりのなさは一流の冒険者並み(ミミックの箱を迂闊に開けようとする点以外は)。
こんな2人であればダンジョン再探索は朝飯前なのだろうが、チルチャックとしては命がいくつあっても足りないレベル。
このシャッフルの罠で元のメンバーが無事に戻ってくれれば良いが、運が悪ければ何度もダンジョンを巡る羽目になる。
「いや、この2人の仲間っていうなら、そいつらも実力者か。なら再探索も安全か?」
そう呟くチルチャック。だがここでふと気づいた。
「? で、シャッフルはどうやって起きるんだ?」
フリーレンとスタンクが魔法陣を踏み、足元の光がスッと消えたにもかかわらず、2人の姿がそこに残り続けていることにチルチャックは首を傾げた。
「他の2組が罠を踏んでくれないと発動しないよ」
「っぽいな。俺らの時も魔法陣踏んでからしばらくして、いつの間にか飛ばされてたぜ」
どうやら転移にはタイムラグがあるようだ。つまり他の2つのパーティーが魔法陣を踏んでくれるまで待たなければならないようだ。
「大丈夫か? もし他の奴らが罠に気付いてくれなかったら」
「まぁフェルンなら大丈夫だと思うけど、シュタルクじゃちょっと不安かな」
「俺の方もゼルなら大丈夫だと思うが、クリムじゃちと厳しいか」
「俺の方は・・・不安しかねぇ」
頭を抱えるチルチャック。だが手の届かない場所のことを考えていても仕方がない話。
「まぁ、なんとかなるだろ
そうスタンクが肩をすくめた瞬間、それは起きた。
スタンクとフリーレンの体が光に包まれ、声が途絶えたのだ。
転移発動にホッとするチルチャック。
「いい奴らだったな。もうちょっと話しときゃよかった」
その頃、とあるダンジョンにて。
「来ましたね
「じゃあ
「あっ、フェルンさん。ライオスさん」
天使の目の前で光に包まれる2人。
それと同じ頃、とあるダンジョンにて。
「おっ
「ほぉ
「え? ダメじゃ
「あっ
光に包まれる4人がいた。