「ゴメンナサイ」
リスのようにムスーッと頬を膨らますフェルンを前に、シュタルクは地面に正座をして頭を下げ、これでもかと言うくらいショボンとしていた。
「あれ、何があったんだ?」
ついさっき、シャッフルの罠で転送が起き、互いに初めましての挨拶。その後で各々の直前のメンバー確認をしようとした矢先に気まずそうにしたシュタルク。それをフェルンが睨み、ゼルがなんとなく理解。チルチャックだけが理解不能。
そんな中チルチャックが尋ねると、ゼルは肩をすくめながら答えた。
「ポカやらかした仲間を叱ってんだろ。まぁ若いうちは何回だって失敗すりゃいいさ」
今回のシャッフル前、シュタルクはゼルとセンシ・マルシルと共に4人で行動していた。
だが、いざシャッフルの罠の魔法陣を踏む時に、絶対に踏んではいけないシュタルクまでもが魔法陣に触れてしまっていた。
だから今、シュタルクはゼルと共に転送され、チルチャックたちがいるべき場所にいる。本来は7人が元居るべき場所に戻る予定だったのに、シュタルク1人分の余計な手間が増えてしまったのだ。
「まったくシュタルク様。絶対に手を離さないでください」
「…はい」
その後、フェルンはシュタルクと手を握りダンジョンを進んだ。
「あれどういうこと?」
「ああ。今回の罠の実験みたいなもんさ。手握っておけば一緒に転送されるんじゃねえかって」
「そうなのか?」
「一応、俺と一緒にいたマルシルとセンシに試してもらったら、アイツらはペアで転送されたからな。まぁ行先がコッチに来てくれたほうがよかったが」
ゼルは気軽に答えていたが、チルチャックは感心した。チルチャックですら困惑する初体験の罠において、ゼルは既に研究と対策のステージにいたのだ。
「じゃあ次はゼルとフェルン&シュタルクが元の世界に戻れればいいわけだな。次で成功するといいな」
「そうだな。次が駄目でも、各世界への転送術式がおおかた判明する。アホみたく延々と巡ることはないから安心しな」
「へぇ」
「・・・え?」
シュタルクがスルーするほどサラッと言ってのけたゼルだが、フェルンからすれば目が点になるほど相当にとんでもなく高度な攻略法の話であった。
見た目こそフェルンやシュタルクと同世代のようなゼルだが、そこはやはりエルフ。圧倒的経験値の差といったところか。
「素晴らしいです、ゼル様」
「別に褒めて何か出してもらうつもりもねぇよ」
尊敬のまなざしを送るフェルンに、ゼルは歯を見せてキザっぽくスルーする。
そんな姿にチルチャックは嫌な予感がした。
そういえばゼルはスタンクの仲間。
スタンクといえば、そこまで深く突っ込んだわけでもないが、なかなかに危うい発言もあった人物。
まさかゼルも?
「な、なぁ。他の世界とかも関係あるけど、あんまり他のパーティーの冒険者に手を出さないほうがいいぜ。余計なトラブルとか起きても嫌だろ?」
「あ? んなもん当たり前だろ。サキュバス店でもなきゃお触りするほどボケちゃねぇよ」
「サキュ?」
聞いたことも無い単語に首をかしげるフェルンとシュタルク。
チルチャックもその新単語の意味を理解こそしなかったが察した。
だが彼にも絶対に想像できなかった。
もしその単語の意味をゼルが説明したとして、この場にセンシがいたとする。
その場合、鼓膜が破れるくらいの力でセンシはチルチャックの耳を押さえていた。などと。