「そうですか」
「ああ、私はもう迷わない。ヴィヴィのおかげだな」
あの戦闘から数時間後、カノンは全ての迷いを断ち切り、なのは達の為に戦うことをヴィヴィアに報告していた。
「私のおかげではありません。本当なら私も加勢したいのですが……」
「仕方ないさ。お前の分まで、私が頑張る。ヴィヴィは穏やかに過ごしてくれればいい」
これは紛れもないカノンの真実だ。
ヴィヴィアは小さい頃から聖王として崇められてきた。
それ故に、普通の少女なら普通にしている筈の事もヴィヴィアはしたことがなかったのである。
実は学校に通いたいと言ったのもヴィヴィアなのである。
「カノン、戦うという事は……」
「ああ、つい先日からこの町にやってきた魔力を持った人物とも戦う可能性があるだろう」
カノンとヴィヴィアはそのような事を話していた。
つい先日、丁度ジュエルシードが落ちてきた少し後、二つの魔力がこの街にやってきたのだ。
魔力総量からして一人が魔法を使う人間、そしてもう一人がその魔導士から魔力を供給してもらっている使い魔なのだろうと当たりをつけていた。
「まあ、出会った時は出会った時だ。そいつが話が通じる相手なら話し合いで済ませる。話し合いで済ませられない時は……少し痛い目を見てもらうかもしれん」
「ふふっ……大丈夫ですよ。カノンは自分でも決めているでしょう。相手を決して傷つけず相手を制する……それがカノンなんですから」
「ありがとうな、ヴィヴィア」
そう言ってカノンはヴィヴィアの頭を撫でる。
カノンとヴィヴィアの身長は少しだけカノン大きく、カノンが少し手を上げればすぐそこにヴィヴィアの頭があるため撫でるには絶好の位置なのだ。
「え、あの、カノン……?」
頭を撫でられて少し困惑するヴィヴィア。
「あ、すまん。嫌だったか?」
カノンはすぐさま手を離そうとするが
「い、いえ。違います……何だか、昔を思い出してしまって……」
「そういえば、昔もお前を守ると決めた時には……泣きじゃくるヴィヴィをこうやって撫でて落ち着かせていたな」
「そうですね……あの時との違いは私が泣きじゃくっているか泣きじゃくっていないかと」
「私の守る対象が増えた事、だな……」
その後、ヴィヴィアが満足するまでカノンはヴィヴィアの頭を撫でつづけた。
それから数日後……カノンは立夏やなのはとは別行動をしていた。
これはカノンからの提案で自分達が訓練している時にジュエルシードが発動してしまえば、疲弊した状態で戦闘に参加してしまう事になる。
そうならない為にも、カノンは別行動を取り、ジュエルシード探索をしているのだ。
カノンも空いた時間があれば二人に近接戦闘に関して教えている。
と言ってもなのはに関しては自身の身を守るための護身術とそれを応用して相手との距離を取りこちらの得意な中遠距離戦闘に持ち込む為の物だ。
立夏に関しても最初はそうしようと思っていたカノンだったが最初に戦った際に感じたある疑問を解決する為にも立夏には近接戦闘を教えていた。
そしてカノンが立夏の戦闘方法を尋ねた所……
「えっとね、私魔力変換資質を持ってるの……多分、光だと思う……」
その言葉を聞いた瞬間……カノンは目の前の人物がかつて自分と共に戦場を戦い抜いたある人物と立夏が重なって見えた。
しかし、それも一瞬ですぐに立夏の姿に戻る。
「どうしたの?」という立夏の言葉に何でもない、と答えてカノンは立夏に近接戦闘の戦い方を教えるようになった。
『いやぁ~にしても……何かカノンの言った事が分かった気がしたぜ。そうだよなぁ~変換資質光を持ってればそりゃ重なるってもんだぜ』
「そうだな。私もそれに関しては思っている」
カノン達の思い出している人物も魔力変換資質光を持っていたのだろう。
すると、その時
ドクンッ
『っ……マスター、ジュエルシードが発動したぜ』
「ああ……ここから近いな」
『しかし……何だかこの前の魔力を持った人物もその近くにいるぜ』
「行ってみるか……話が通じるなら話をしてみよう」
そしてカノンはジュエルシードが発動したであろうポイントまで家の屋根の上を走ってものの数分で駆けつける。
そこにいたのは赤い怪物だった。
全長は恐らく八メートルはあるだろう。赤い外皮に体を守られており、足などを見れば強靭な物だというのが見て取れる。
そんな怪物と相対しているのは金髪のツインテールと黒いマントをはためかた少女とその子とは違い金髪をポニーテールにしている少女。
二人共、鎌の形をしたデバイスを持っている。違いがあるとすればコアの部分の色だろう。ツインテールの子の方は金色なのに対し、ポニーテールの子の方は銀色だ。
そしてオレンジ色の長い髪に、犬耳と犬の尻尾がついた女性。
三人で怪物と戦っているのだ。
『あれはヤベェな……マスター。あのジュエルシード、多分だが厄介な願い事を叶えてるぜ』
「厄介な願い事?」
『ああ、あいつ。さっきからずっと街中の木々とか果てには瓦礫の破片とかを食べてやがるだろ?』
「ああ」
先ほどから赤い怪物はずっと戦いながらも一心不乱に食べ物を食べるかのように木々などを食べているのだ。そのために少女達が邪魔なのか攻撃しているといった感じだ。
『あいつ……多分空腹に耐えかねた何かが何でもいいから食べたいっていう願いを叶えようとしているんだ』
「何でもいいから食べたい……それで瓦礫の破片まで……」
確かに辻褄は合う。
「とにかく……話をする為にも落ち着かせなければな……ムーン、セットアップだ」
『了解だ、マスター』
カノンの服装が一瞬で変わりバリアジャケットになる。
するとその時、怪物が動けなくなってしまったのだろう少女達を踏みつけようとした。
「させるかっ」
カノンは一瞬で少女達の前に来ると
「ムーン、コロナだっ」
『了解した、カノン!コロナフォーム、チェンジ!』
するとカノンのジャケットの色が青から燃え盛るような赤色に変わる。
怪物が踏みつけようとしたその足を……カノンは右手一本だけで受け止めた。
「え……?」
「あなた、は……?」
「何者、だい……?」
三人がそれぞれ目の前の光景が信じられないようにそう声をあげる。
「何、通りすがりの魔導士だ。怪我をしているようだし……休んでいてくれて結構だ」
カノンはそう言って
「ふんっ!!」
一気に力を入れると……何と、怪物を押し出した。
「さあ、ここから先には通さんぞ」
カノンはいつもとは少し違う型-右手をグーにして相手に向かって突き出し、左手を頭の上に置く-を取り、構えた。
次回、赤い怪物との戦い。