魔法少女リリカルなのは 全てを幸せにする為に   作:レゾナ

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第十一話

???SIDE

 

「くぅっ!?」

 

「姉さんっ!」

 

「アリシア、大丈夫かい!?」

 

「だ、大丈夫……吹っ飛ばされる瞬間に魔力で強化しといたから……痛っ!」

 

立ち上がろうとしたら右足に痛みを覚えた。多分、無理に右足を使ったせいだろう。

 

「フェイト、アルフ、私はもう多分ダメだから……二人だけでも逃げて」

 

「何言ってるの、姉さん!?」

 

フェイトが心配してくれるけど……でも、目の前のジュエルシードの思念体は待ってはくれない。

 

怪物の足が私たちに迫ってくる。

 

ああ、これで終わりなんだ……。

 

………………………?

 

でも、いつまで経っても衝撃はこなかった。

 

気になって目を開けてみると……そこには私たちと同じ位の男の子が右手だけで怪物の足を止めていた。

 

「え……?」

 

私は思わずそんな呆けた声を出した。

 

「あなた、は……?」

 

「何者、だい……?」

 

フェイトとアルフも同じような呆けた声を出していた。

 

「何、通りすがりの魔導士だ。怪我をしているようだし……休んでいてくれて結構だ」

 

男の子はそう言うと視線をまっすぐ怪物に向けると

 

「ふんっ!」

 

何と、怪物を押し出した。

 

これが私──────アリシア・テスタロッサと結城カノンの出会いだった。

 

SIDE OUT

 

 

グオオオオォォォォォォ!!!

 

怪物が吠えてうっとうしいゴミを踏み潰そうともう一度、足を振り上げる。

 

「あ、危ない!」

 

後ろで女の子が声をあげているがカノンはその声に反応しなかった。

 

カノンは一瞬で怪物の懐に飛び込み、拳を叩き込もうとしていたのだ。

 

「はあっ!」

 

グギャアアァァァァァァァ!!!???

 

怪物は悲鳴をあげながら吹っ飛ばされていく。

 

それを見たアリシア達は驚いた。

 

それはカノンが自身よりも相当大きく重量もまったく違う筈の怪物を吹っ飛ばしたからである。

 

これには秘密があった。

 

実は、ムーン・プロミネンスには三つのフォームがあるのだが……それぞれを発動した際に自動的に発動する魔法が存在している。

 

ルナフォームは反射速度と動体視力を強化する魔法。カノンの生来の戦闘スキルの高さを生かし、敵の一挙一動を見逃さずに的確に相手の攻撃を捌きながらカウンターを決めていく。

 

反射速度は手をより早く動かすために、動体視力は敵の動きを全て見落とさないように、というコンセプトの元、この魔法は成り立っている。

 

それと同様にコロナフォームには動体視力を強化するのは変わらないが反射速度ではなく身体能力強化魔法が付与される。

 

しかし身体能力強化といってもそれはたった一瞬だけ。そう、相手に攻撃を加える時や相手からの攻撃を防御する際にだけ、この魔法は発動する。

 

先ほどの場合でも怪物の足が迫ってくるのを見て身体強化魔法を右手だけに発動。それにより相手の攻撃を防ぎ、攻撃する際にも強化され怪物は吹っ飛ばされたのだ。

 

コロナフォームは相手の攻撃を捌きながら攻撃するというのはルナフォームと変わらない。

 

が、ルナフォームは相手を制するがコロナフォームは制するのではなく力で相手を倒す際に使用されるフォームだ。

 

カノン自身はこのフォームを少し嫌っているのだが……しかし、後ろで自分を見ている少女達を守るためにカノンはこのフォームを選択した。

 

それと理由はもう一つある。それはこの願いを叶えた人物を早く解放してあげたいからである。

 

これ以上無理をすればその人物にさえ、悪影響を及ぼし兼ねないからである。

 

カノンはコロナフォームでの型を取ると相手の出方を待つ前に仕掛ける。

 

「おおおおおっ!!」

 

カノンが走り出したとほぼ同時に怪物─────ジュエルシードの思念体もカノンに向けて突進を掛ける。

 

カノンはその突進を冷静に見極め、思念体の体を左にいなしその脇腹に拳を叩き込む。

 

「はあっ!!」

 

グワァァァァァッ!!?

 

思念体は苦しみながらも負けじと口から炎の弾を吐き出す。

 

カノンは拳を下から上へと振り上げてその炎の弾を上へと弾き飛ばす。

 

物体に働く力は別の方向から力が加わるとその方向に力が加わり、元からあった力はほぼなくなると言ってもいい。

 

それを応用してカノンは炎の弾を弾いたのだ。

 

思念体も負けじと炎の弾を吐きつづけるが……それをカノンは右左上へと弾き続ける。

 

思念体の口から炎が吐き出されようとするが……今度は不発に終わった。

 

どうやら弾切れらしい。

 

それを好機と見たカノンは一気に畳み掛ける。

 

右ストレート、左のジャブ。そして右足、左足でのキック……それらが吸い込まれるように思念体の体に打ち込まれていく。

 

思念体はどんどんと弱まっていき……とうとう、倒れこんでしまう。

 

それを見たカノンは一旦距離を取り……ルナフォームへと戻る。

 

「な、何をするんですか……?」

 

「思念体を大人しくさせる」

 

「そ、そんな事出来るのかいっ!?」

 

アリシア達はカノンの言った事が信じられなかった。感情を持っていない思念体を大人しくさせる事なんて不可能だと思っているのだ。

 

「あいつの願いを叶えてやるんだ……そうすればここまで暴れる事はなくなる」

 

そう言ってカノンは両手を広げて前方へと持っていく。両手を中心に光が集まっていき、その光を右手に集める。

 

そして……その光を思念体へとぶつけるように大きく突き出す。

 

すると光の粒子の塊が思念体へと向かっていき、塊が命中する。

 

その光を受けた瞬間……思念体は先ほどまで暴れていたのが嘘なように大人しくなった。

 

「う、嘘……」

 

「本当に大人しくなっちゃった……」

 

「こ、こんな事ってありえるんだねぇ……」

 

三人は未だに信じられなかった。

 

カノンが今使った魔法は『エナジーフォース』。対象に高エネルギーを与え、体力などを回復させる魔法だ。

 

今までは遠慮をして使っていたのだが今回思念体に対しては全力で放った。

 

それほどの高エネルギーを与えられればもう既に願いが叶えられたと思ってしまっても不思議ではない。

 

「封印魔法を使ってくれ。私は使えないのでね」

 

「あ。は、はい」

 

フェイトがそう言って慌ててジュエルシードを封印する。

 

ジュエルシードの封印を確認したカノンは安心する。

 

───ふぅ……何とかこれ以上の被害は防げたか……。

 

しかし、街の惨状は明らかだった。

 

木々はへし折られ、そこかしこの建物にはひび割れや最悪倒壊している建物まである。

 

こんな物を普通の人々が見れば大惨事と思ってしまう事間違いなしだろう。

 

結界内だったからよかったものの……これが実際に起こってしまうと思うとカノンはゾッとする。

 

「あ、ありがとうございました……手伝っていただいて」

 

フェイトがジュエルシードを封印して自身のデバイスに収納するとカノンにお礼を言いにきた。

 

「何、私はただ通りすがっただけ。お礼を言われる事をした覚えはない」

 

カノンはそう言ってお礼は必要ないと言った。

 

「で、でも……あの、せめて名前だけは……痛っ」

 

と、アリシアが右足を抑えた。少し休んでいてもやはり痛いらしい。

 

「ん?怪我をしていたのか……どれ、診せてくれ」

 

カノンはそう言うとアリシアの右足に手をやる。

 

「ひゃっ!?」

 

突然の出来事にアリシアは思わず声をあげる。

 

「?ああ、済まなかった。どうも、怪我を治さなければと思ってしまうと周りが見えなくなってしまうのでね」

 

「い、いえいえ!ちょっと驚いただけなんで!」

 

「それでは、改めて……」

 

そう言ってカノンは真剣な表情で足を調べる。

 

それを見ていたフェイトは心配そうな顔をしていた。

 

すると、カノンはフェイトの顔が見えていない筈なのに

 

「大丈夫だ。軽い捻挫だろう。君が心配する事はない」

 

そう言ってフェイトを気遣った。

 

「ご、ごめんんさい……邪魔じゃなければ、その近くにいても」

 

「ああ、構わんよ。それと……そこの貴女も出来れば近くにいてください。そんなに警戒しなくても何もしませんよ」

 

「い、いや……でもさ……」

 

どうやらアルフはまだ少しだけカノンを信じきれていないらしい。

 

「大丈夫です。何もしませんってば」

 

「……わかったよ」

 

そう言ってアルフはフェイトの側に立つ。

 

その後、カノンはヒーリングフェアリーを発動させて、アリシアの右足の捻挫を治した。

 

「す、すごい……痛くない」

 

「痛くはないかもしれんが……念の為だ。あまり右足を酷使しないようにな」

 

カノンは言ってはいないがアリシアの右足には相当な負荷がかかっていた。

 

────恐らくは彼女は右足に重心を傾けてしまう癖がある。

 

それによってアリシアは右足に必要以上の負荷が掛かり続けていた。

 

それを克服させる為にもカノンは今のように注意をしたのだ。

 

「あ、自己紹介がまだだったね。私、アリシア!アリシア・テスタロッサ!」

 

「私は、フェイト・テスタロッサです。助けていただいてありがとうございました」

 

「アルフだよ。さっきはありがとうね。それと……疑ってごめん」

 

「いいさ。私の名前は結城カノン。カノンと呼んでくれていいよ」

 

互いに自己紹介を済ませる。

 

「フェイトとアリシアは双子なのか?」

 

カノンの最初の小さな疑問だった。二人の容姿はまったく一緒だからである。

 

「うん!私が姉で、フェイトが妹ね!」

 

そう言ってフェイトに抱きつくアリシア。

 

「く、苦しいよ姉さん……」

 

とは言いつつも離そうとはしないフェイト。

 

これだけでこの双子の姉妹がどれだけ仲良しなのかわかる。

 

「アルフはどちらかの使い魔なのだろう?」

 

「ああ、あたしはフェイトの使い魔さ。倒れてしまった所をフェイトに助けられてね」

 

そう言ってアルフまでもフェイトに抱きつく。

 

「あ、アルフも……」

 

これだけ見ると百合百合みたいに見えるが……しかし、それだけフェイトが大事にされているという事なのだろう。

 

「こらこら、話が進まないだろう?」

 

「そうだったね、たはは……」

 

「フェイト~♪」

 

アリシアはフェイトを離したがアルフは離さなかった。

 

「あはは……ごめんね、カノン君。アルフああなっちゃったら梃子でも動かないから」

 

「いいさ……それで?何で三人はジュエルシードを集めていたのだ?」

 

「えっと……それなんだけど……ごめんなさい!」

 

そう言ってアリシアは頭を下げた。

 

「?何で頭を下げるんだ?」

 

カノンは訳がわからなかった。自分は理由を聞いたのになぜか頭を下げられた。

 

「えっと……簡単に説明すると……ジュエルシードがこの世界にばらまかれちゃったのって、私たちのせいなんだ……」

 

アリシア達の話を要約すると、こうだ。

 

彼女達の母親は天才的な魔導士でその人とその人の使い魔に魔法を習っていたらしい。

 

そして一つの区切りだという事でその人は次元跳躍魔法を使ってみせた。

 

それを見よう見まねでアリシアはやってみたが……照準が狂ってしまい、近くを通っていた次元航行艦に次元跳躍魔法が当たり、その衝撃で次元航行艦に積まれていた荷物の一部がここ、地球に落下。

 

それを見たアリシア達は超特急でこの地球に向かい荷物……ジュエルシードを回収してまわり、母親とその使い魔は関係各所に謝りに行っているらしい。

 

その話を聞いてカノンは思った。

 

────次元跳躍魔法なんぞ、この年で教えれるのか……?

 

次元跳躍魔法はその名前の通り、次元を飛び越える為、扱いが非常に難しい。

 

しかし、それを座標を間違えたとはいえ、発動出来たアリシアをカノンは素直に称賛する。

 

「しかし、すごいではないか。次元跳躍魔法を使えるなんて……」

 

「ダメダメだよ。座標も間違えちゃったし……」

 

「だが、その責任を自分で背負おうとしているのだろう?それはとても立派な事だ」

 

「カノン君……」

 

アリシアは怒られるかな?と思い、不安になりながらもこの話をした。

 

しかし、カノンから送られる言葉は罵倒などではなく称賛の言葉だった。

 

────カノン君……ありがとう。

 

「しかし、自分一人で責任を背負おうとするな。お前には心配してくれる家族がいるだろう?」

 

「はい……」

 

「そんな家族を心配させるような事だけはしてはいけない」

 

「わかってます……今回の事で痛感しました」

 

「わかったのならいい。これからも頑張ってくれ。何かあればすぐに呼ぶといい」

 

そう言ってカノンは私に紙を渡してきた。

 

「これは……?」

 

「私のデバイスの通信の番号だ。その番号にかければデバイスを通じて私と会話が出来る。何分念話が苦手でね」

 

「あ……」

 

アリシアはこの時、カノンが自身を助けにきてくれた王子様と思った。

 

そして言ったのだ。何かあればすぐに呼ぶといい、と。

 

────カノン君……カノン君……!

 

その時、アリシアは胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

 

それが何なのか知るのはもう少し後になるだろう。

 

「さて、それではな。また、いつか」

 

そう言ってカノンは結界から出て行った。

 

その後ろ姿をアリシアはぼうっとした顔で見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト~~♪」

 

「あ、アルフ……本当に、もう、苦しいから……」

 

ちなみに最後の最後までアルフはフェイトを離さなかった。




この作品の中で一番長いのではないだろうか?この話。
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