それから一週間……立夏となのははジュエルシードの探索に精を出した。
と言っても未だにジュエルシードは発見出来てはいない。
それもそうだろう、ジュエルシードは発動するまではその辺の石ころと変わらない。
ゆえに発動するまではどこにあるのかが分からないのだ。
かと言って発動してしまえばそれは災厄をもたらしてしまう。
だからこそ、なのは達はジュエルシードを探索しているのだ。
そんな中、カノンはデバイス作りに没頭していた。
「カノン、あまり根を詰めすぎると病気になってしまいますよ?」
と、カノンの研究室にお盆を持ってヴィヴィアがやってきた。お盆の上にはお茶とクッキーが置いてある。
「ああ、ヴィヴィアか。そこに置いておいてくれ」
ちなみに今日は休日。カノンは引きこもりデバイスを作成している。
「もう……そこまで気になるんだったら直接助けてあげればいいのに……」
カノンにもう助ける気はない。しかしそれでも放ってはおけない。
だからこそカノンは、全力でバックアップするつもりでデバイス作りに没頭しているのだ。
「ここはこうするとして……いや、だが確か今の魔法体系はミッドチルダ式だったな……だったらベルカ式にすると余計に怪しまれるか……」
カノンがミッドチルダ式やベルカ式と言っている物……これは現在の魔法体系である。
ミッドチルダ式が近代に開発された中遠距離戦闘を視野に入れた体系である。安全性も高いため、現在の魔導士達はこのミッドチルダ式を使っている者達が多い。なのはの使用している術式もミッドチルダ式だ。
対するベルカ式とは中遠距離ではなく近距離戦闘に重きを置いた術式で主に肉体強化、自身のデバイスに魔力刃などを纏わせた戦いを得意とする。
カノンやヴィヴィアが使用するのもこのベルカ式だ。
しかし現代においてはこのベルカ式を使用している者は少ない為に立夏がベルカ式を使用すれば怪しまれる。
そこでカノンはミッドチルダ式を適用したのだ。
「さて、方向性は決まったが……」
そしてカノンはまた作業に没頭する。
─はぁ……カノンは昔っから研究する際には周りを顧みない感じでしたが、やはり変わっていませんね。
ヴィヴィアはそんな事を考えながらお茶を入れたコップをカノンの机の邪魔にならない所に置いてクッキーをその場に置き、研究室を出て行く。
カノンがいたのは燃えている光景の真っ只中だった。
その中に置いてカノンの周りだけは燃えていない。
─ああ、これは夢だな……。
カノンは直感でそう感じた。
しかし、それ以上にこの光景に見覚えがあったのだ。
なぜならば、ここは……カノンの生まれ故郷なのだから。
「い、いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なぜだ、なんでお前が……あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
そんな悲鳴の音しか聞こえない。
そして全ての悲鳴が聞こえなくなった時……目の前に男が現れた。
この男こそ……今のカノンという人格並びに戦闘方法を確立させた存在───
「やぁ、兄さん?」
ギルス・ハイウェルト……カノン・ハイウェルトの弟である。
「うわぁっ!? はぁ、はぁ……」
最近、カノンはこうやって夢にうなされる日々を送っていた。
『大丈夫か、マスター?すんげぇうなされてたけど……』
そんなマスターを心配してかムーンが話しかける。
「ああ、大丈夫だ……完成、したな」
『ああ、おめでとうだ、マスター』
そう話し合っているカノンとムーンの前には一つのネックレスがあった。
小さな剣を模したタイプの物だ。
『しかしだな、マスター……お前、何でこのデバイスにあの形態を追加したんだ?』
「ん?」
『だってさ……あれは、彼女の最も得意とする戦い方を最大限に利用しようとした形態だろ?』
「ああ。何でなのか、か……」
カノンは少し考えると答えを出した。
「似ている、と思ったんだよ」
『似ている?何がだ?』
「雰囲気、というか……とにかく彼女に似通った何かを感じたんだ」
『似ている、ねぇ……だけど似ているだけじゃこの形態は意味がないぜ?何せこの形態は光を最大限利用する為の形態。彼女は魔力変換資質“光”を持っていたから意味はあったが……』
カノンとムーンが何を喋っているのかは理解できない。しかし彼らの話しているあの形態というのが光を使用するという所は理解出来るだろう。
「ああ、だけど……なぜか搭載したくなったんだ……」
『ふぅん……ま、いいや。あたしはマスターの意思を尊重するよ』
「ありがとうな、ムーン」
そう言ってネックレスを手に持ち、カノンは研究室を出て行く。
果たして、彼女とは誰なのか?そして魔力変換資質“光”にはどんな秘密があるのか?それは……カノン達にしか、わからない。