Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP08 蘇る愛だけを信じる歌 -後編-

 

――――――ゲヘナ自治区/ヒノム火山周辺地域

 

北条先生「これが光のピラミッドか」

 

錠前 サオリ「どうする、先生? これも前回の隕石怪獣と同じ怪獣カプセルだとしたら、動き出す前に手を打たないとだが?」

 

北条先生「落ち着いて。人間の常識を超えた存在の総称が“怪獣(KAIJU)”である以上、可能な限り細心の注意を払って情報を集めて取り返しのつかない事態が起きる可能性を極限まで減らすのが鉄則です」

 

北条先生「というわけで、前回の巨大隕石の調査の経験を踏まえて素早く巨大構造物の表面を走査するミレニアム製の探査機の到着を待つんだ」

 

鬼怒川 カスミ「いや、そう悠長に事を構えている場合ではないみたいだぞ、先生?」

 

北条先生「何かあったのですか?」

 

鬼怒川 カスミ「この辺りは最初の怪獣:クレッセントが地面を掘り進めたことで空洞化している場所が多いのは憶えているな?」

 

鬼怒川 カスミ「だから、光のピラミッドから出てくるであろう怪獣の逃走経路になりそうな場所をあらかじめ潰しておこうと先に地底探査をしていたんだが……」

 

北条先生「どうしました?」

 

鬼怒川 カスミ「この超音波検査の結果を見たまえ」

 

鬼怒川 カスミ「現在進行形で56mだった月の輪怪獣:クレッセントよりも5mぐらい大きな何かが刻一刻と近づいてきているようなんだが……」

 

錠前 サオリ「本当か!?」

 

北条先生「地底怪獣の接近の可能性大! 警戒態勢! 戦力の集結を急げ!」カチッ

 

――――――

調月 リオ「大変です、先生!」

――――――

 

北条先生「――――――地底怪獣か!?」

 

――――――

調月 リオ「もう先生のところにも連絡が?」

 

調月 リオ「そうです、先程【オデュッセイア海洋高等学校】から怪獣出現の報がありました!」

 

調月 リオ「画像解析ができましたので、ご覧ください」

――――――

 

北条先生「は」

 

鬼怒川 カスミ「おやおや、断崖絶壁の孤島から伝説の竜みたいなのが、飛んできたみたいだねぇ」

 

鬼怒川 カスミ「このまままっすぐ来ているのだとすれば、【ゲヘナ】は空中と地中から二大怪獣の襲撃を受けることになるぞ」

 

錠前 サオリ「なんだと!?」

 

――――――

調月 リオ「先生、こちらの空を飛ぶ紅い怪獣は現在マッハ6で飛行中。およそ2時間で先生が目にしている光のピラミッドに到達します」

――――――

 

北条先生「地底怪獣がマッハで空を飛ぶだと!? これでは航空部隊で迎撃ができない!?」

 

北条先生「鬼怒川さん、地中の怪獣はどれくらいで来ると思う?」

 

鬼怒川 カスミ「たぶん、この推移を見るに、空飛ぶ紅い怪獣と同じく2時間でここに到達すると思うぞ」

 

北条先生「よし、2時間だ! 2時間で二大怪獣の迎撃体制を構築する!」

 

北条先生「その間に光のピラミッドの調査も行う。これが怪獣たちにとって何であるのかを調べ上げる必要がある」

 

 

 

ロボット職員「おまたせしました。北条先生に代わって【シャーレ】の歩兵部隊を指揮します、マウンテンガリバーです」

 

北条先生「みなさん、光のピラミッドの内部調査をお願いします。50m級の巨大構造物なんてものは決まって怪獣カプセルであるというのが防衛チームの常識です」

 

ロボット職員「はい。ですので、今回は調査と制圧を素早くこなせる【ミレニアム】の精鋭部隊に召集を掛けました」

 

北条先生「残り時間は少ない。罠の可能性も高い。大胆かつ慎重に頼む」

 

ロボット職員「はい。それでは吉報をお待ちください」

 

 

 

北条先生「よし、ライナー部隊は配置に着いた」

 

北条先生「歩兵部隊にもギャラクシー・スナイパーライフルが行き渡った」

 

北条先生「地底怪獣に対して有効打があるとは思えないけど、対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸も戦闘準備完了」

 

北条先生「あとは調査部隊の報告を待つだけか」

 

北条先生「――――――ゴルザとメルバの位置は?」

 

――――――

調月 リオ「どちらも残り20分以内で到達する見込みです」

 

調月 リオ「航空部隊もそれに合わせての出撃準備は万端です」

――――――

 

北条先生「おそらく、空中の紅い怪獣:メルバの方は防御力が低いはずだが、断崖から現れた地底怪獣だもんな。ギコギラーよりも硬いと見て間違いないか」

 

北条先生「地中のゴルザの方はクレッセントを上回る大きさだ。それだけにパワーも段違いだろうな」

 

北条先生「ともかく、メルバの出現場所は明白だから、終わったらそこにも調査に行かせないと」

 

飛鳥馬 トキ「先生」

 

北条先生「飛鳥馬さん、ピラミッドに突入した部隊からの連絡はまだですか?」

 

飛鳥馬 トキ「まだです」

 

飛鳥馬 トキ「それよりも、【万魔殿】の羽沼 マコト議長にキスをしたというのは本当ですか?」

 

北条先生「手の甲にね」

 

飛鳥馬 トキ「ズルいです。不公平です。先生は私やリオ会長にもキスをするべきです」ブーブー!

 

北条先生「今、作戦中だから!」

 

――――――

調月 リオ「先生、地中のゴルザが地上に現れました!」

――――――

 

北条先生「――――――あれがゴルザ! クレッセントと同じタイプの鈍重な尾長二足歩行怪獣だ!」

 

北条先生「よし、予測した範囲から地上に出てきたな」

 

北条先生「メルバの到着前に時間差をつけてゴルザを撃破する! クレッセントを倒せる計算のサーモバリック爆弾なら地底怪獣はこれで終わりだ!」

 

飛鳥馬 トキ「今度こそ倒せますか? サーモバリック爆弾だけで倒せた実績は未だにありませんよ?」

 

北条先生「それでも、怪獣の強さを計る指標にはなる」

 

飛鳥馬 トキ「航空部隊による怪獣への地上攻撃です」

 

北条先生「それは足止めに過ぎない。クレッセントのように目からビームで対空迎撃をしてくる可能性も踏まえて深追いは禁物だ」

 

北条先生「さて、クレッセントは地中を掘り進めるのに高温でマグマに溶かしていたが、このゴルザはどういった方法で地中を潜航している?」

 

北条先生「さあ、サーモバリック爆弾、直撃!」

 

飛鳥馬 トキ「この自由空間蒸気雲爆発も見慣れたものです。それに耐えて形を留めている怪獣の姿も」

 

北条先生「ん?」ピクッ

 

飛鳥馬 トキ「どうしました、先生?」

 

 

北条先生「――――――消えた? 消えた、だと? おかしくないか、この消え方は?」

 

 

飛鳥馬 トキ「どういうことです? 何に気づいたのですか、先生?」

 

北条先生「クレッセントはマイナスエネルギーによって怪獣の形となったマグマの塊だ。つまり怪獣らしい外見に擬態した非生物怪獣なんだ」

 

北条先生「今、サーモバリック爆弾の直撃を受けてレーダーからゴルザの反応が一気に消えた。クレッセントのような生けるマグマの塊でも容赦なく木端微塵にする威力のものを使っているからには、並大抵の怪獣は一溜まりもないはずだ」

 

北条先生「――――――見掛け倒しだったのか? クレッセントよりも大きかったのに? 見るからに地下深くの圧力にも耐えられる岩石を彷彿とさせる硬質的な外観だったのに?」

 

北条先生「直撃したからと言って警戒を緩めるな! 何かが変だ! クレッセントのように非実体化した可能性がある!」カチッ

 

北条先生「調月さん、怪獣が素早く地下に潜った可能性はないですか?」

 

――――――

調月 リオ「いえ、サーモバリック爆弾から逃れて地下に潜ったと思われる反応はないわ」

 

調月 リオ「ただ、マイナスエネルギーを帯びたマグマの塊であるクレッセントの破片を組み込んだマイナスエネルギーレーダーには反応が出続けているわ」

――――――

 

北条先生「じゃあ、クレッセントと同じくマイナスエネルギーに由来する地底怪獣なのか?」

 

――――――

調月 リオ「いえ、どうもマイナスエネルギーとはちがうものを感知しているように思えるの」

 

調月 リオ「マイナスエネルギーレーダーには反応があるのだけれど、マイナスエネルギー的なものを含んでいる別種のエネルギーを感知しているとしか思えない微小な数値がゴルザとメルバから出ていたわ」

――――――

 

北条先生「人間の負の感情が怪獣を生み出すマイナスエネルギーと似て非なるもの――――――」

 

北条先生「たしかに、宇宙は広い。人知を超えた超常の存在の全てを一緒くたに“怪獣(KAIJU)”と呼んでいる以上、似ているようで全然ちがうものとめぐりあうことも在り得るか……」

 

北条先生「それでも、マイナスエネルギーレーダーで感知できるのは大きい!」

 

――――――

調月 リオ「ええ。こちらでも何とかマイナスエネルギーレーダーの調整を行って感度を上げてみるわ」

 

調月 リオ「ただ、本当にゴルザがサーモバリック爆弾の直撃を回避していたとするなら、メルバの方にも打撃を与えることが難しいように思うわ」

――――――

 

北条先生「……やれるだけやって無理ならあきらめましょう。要は総合的に(トータルで)見て犠牲者が増えなければ何でもいいんです」

 

北条先生「僕たちの戦いは必ず勝たねばならない戦いですが、戦いとは最初の一戦だけを言うのではない」

 

北条先生「今はとにかく未確認怪獣の情報が欲しい。少しでも被害を抑えて情報を持ち帰ることができれば、遭遇戦としては上出来です。逆に言えば、同じ怪獣相手に対策を立てずに滅ぼされることが真の敗北なのです」

 

北条先生「ただ、スペック上はクレッセントやギコギラーよりも強そうに見えるのに、なんだろう、それでも弱い部類の怪獣のように感じてはいますね」

 

 

今回のゲヘナ自治区に突如出現した光のピラミッド目掛けて直進してくる二大怪獣:ゴルザとメルバはキヴォトスで何の因果かウルトラマン80に変身して戦ってきた北条 アキラからすると、そんなに強そうな怪獣のようには思えなかったのがモニター越しに見た第一印象だった。

 

なぜなら、ゴルザとメルバは正体不明の怪人物:ゴルコンダと予知能力者:百合園 セイアからその存在が予言されていたのもあったが、市街地で住民への被害を考えなくてはならない上にバム星人の侵略兵器を上回る性能のロボット怪獣:ガラモンが3体同時に現れるかもしれなかった状況よりかは遥かに気楽であったからだ。

 

そもそも、ゴルザとメルバは見た目からして仲間であるようには思えないので鉢合わせて怪獣同士で潰し合ってもらえないかと期待できる面もあった。

 

しかし、それならゴルザとメルバを引き寄せたこの光のピラミッドが何なのかが気に掛かるわけであり、装甲の厚い地底怪獣なのにマッハで飛んでくるために対空迎撃が困難なメルバが到着するまで残り20分を切っていた。この時点で順次撤退が内部で開始されているはずだ。

 

ピラミッドパワーなるものについては怪獣災害の可能性を鑑みて過去の防衛チームの研究資料を読み込んで、科学的な証明はされてなくてもある種の宇宙エネルギーを受信しているらしいことは憶えていたため、この光のピラミッドにも何らかの力場が発生していることを北条 アキラは疑っていない。

 

実際、今回の調査に多数の動員がなされた【ミレニアムサイエンススクール】の科学主義に傾倒している生徒たちは始めて数分の周辺調査だけでありえない反応が返ってきたことに計器の故障を疑うか、未知との遭遇に興奮するか、『ありえない』『ありえない』と喚き立てるばかりだった。

 

そして、ロボット職員:マウンテンガリバーに率いられた突入部隊から光のピラミッドの外に脱出した班が姿を見せ始め、その調査報告が次々と仮設指揮所に届けられ、その情報処理を【セミナー】調月 リオが迅速に行なった。

 

 

北条先生「――――――方向感覚が狂わされる光の中を進めたのはガリバーさんと一部の生徒だけか」

 

戒野 ミサキ「班ごとに行動して、みんなで同じ方向に進んでいたはずなのに、気づいたらリーダーと姫が側からいなくなっていて……」

 

槌永 ヒヨリ「それで絶対にはぐれないように手を繋いで歩いていたら、光の中にくっきりと出口とわかる場所しか視えなくて、時間ギリギリまで辺りを探し続けていたんですよねぇ……」

 

北条先生「2人共、泣かないで。まずはきみたちが無事に戻ってこれただけでも本当に良かったよ」

 

戒野 ミサキ「そんな慰めの言葉なんて要らないよ、先生!」

 

槌永 ヒヨリ「あんなにも不気味で恐ろしい体験は今まで味わったことがありませんでした! 薄暗くない明るい空間でひとりぼっちになるんじゃないかって本当に怖くて怖くて……!」

 

飛鳥馬 トキ「先生、他に戻ってくることができた生徒たちの報告も同じようなものでした」

 

北条先生「ありがとう」

 

北条先生「まさか、【C&C】のトップエージェントでも奥に進めたのが美甘さんだけとは……」

 

飛鳥馬 トキ「ここで全員が出戻りになっていれば、自動的に【C&C】最強のメイドの座は私のものになっていたのに残念です」

 

北条先生「各員へ! もう間もなくメルバがこの場所に到達する! 姿を隠したゴルザも息を潜めて機会を狙っているに違いない!」カチッ

 

北条先生「今回の作戦は光のピラミッドに突入した部隊を全員回収した後、待機地点から光のピラミッドに到達した二大怪獣の様子を窺うため、まずは後退の準備を始めてください」

 

北条先生「機龍丸は無理に前に出る必要はない。下手をするとゴルザとメルバの挟み撃ちに遭う可能性があるから、後退の支援に徹してください。以上」カチッ

 

――――――

調月 リオ「先生、ゴルザが接近中! やはり、生きていました!」

――――――

 

戒野 ミサキ「せ、先生! あ、あっちに怪獣が!」

 

槌永 ヒヨリ「こ、ここからでもはっきり見える場所にいますぅ!」

 

北条先生「歩行速度からすると、クレッセントよりも大きい分、鈍重か」

 

北条先生「さあ、待機地点まで後退を急いで!」

 

北条先生「くっ! 突入部隊の完全撤退はまだなのか!?」

 

 

――――――どうする? 先制攻撃でゴルザとメルバも倒せるかもしれないが、可能な限りの情報を残しておかないとウルトラマンがいなくなった後で困らないか?

 

 

地球人:北条 アキラは怪獣退治の専門家として大きな迷いがあった。それは超早熟の天才たちの才能に運営や発展が左右されている超巨大学園都市:キヴォトスの教育制度の破綻を目の当たりにしていたからこそ尚更の深刻な問題である。

 

そもそも、最初からウルトラマンが怪獣を真っ先に倒してくれれば万事解決という論調は地球でもあったわけであり、その反発として軍事力の強化に傾倒する者もいたわけなのだが、恩師:大山キャップの薫陶を受けている身としては独立不羈のために怪獣を撃退できるだけの防衛力の強化は必須であった。

 

しかし、これまでの歴史に存在しなかったものをいきなり完成形にまで持っていけるはずもなく、経験者の根気強い指導と介添でパワーレベリングをする他に道はなかった。

 

それは正しい。ただ、怪獣退治の専門家が最後に繰り出す最終防衛機構である赤と銀の巨人:ウルトラマンの存在が偉大すぎて、人類の一生の努力など塵も同然に思えるほどの憧れと同時に途方もなさを見る者に与えてもいるのだ。

 

正直に言って、いろんな意味で最初からウルトラマンが現れて被害を最小限にして怪獣と戦ってくれたら、最高にコストパフォーマンスがいいのは自分自身が怪獣災害の後始末を見るようになってから痛感していることではある。

 

けれども、トップの能力に組織の質が依存しているキヴォトスでは当たり前になりすぎたワンマン運転では怪獣災害は絶対に乗り切れないのが事実だからこそ、ある程度は自力で怪獣と戦えるだけの防衛体制と協力体制を構築して維持してもらいたいと願っている。一人で支えるのではない。みんなで平等に支えないといけない時代になってきたのだ。

 

それに、自分がやった方が早いからと言って経験値を稼ぐ機会を奪い続けていたら、いつまで経っても未熟者は未熟なままなのだから、小学校の先生のつもりになって忍耐強く接していないとやってられないものがある。

 

しかし、そもそも怪獣退治の専門家とキヴォトスで持て囃されている北条 アキラにしてみても、過去のデータベースからの膨大な知識があるだけで実戦経験皆無の平和な時代の若者に過ぎないため、偉そうに怪獣退治の指揮を執る人間ではないと常々思っているのだ。

 

それでも、こうして人前で積極的に指揮を執っているのは、高校生に過ぎないキヴォトスの生徒たちが大人と同じように国家と同義の学園の運営を精魂燃やして才能を磨き上げて迷いながらも頑張っている姿を見て、大人として甘ったれたことを言わないように気を張っているからなのだ。子供に大人の真似事を強制させているキヴォトスの教育環境でまともな大人なんてものは自分一人しかいないのだから。

 

そんなわけで、今後のことを考えると、北条 アキラの怪獣退治とは教訓を与えるものでなければならない制約があり、怪獣退治というものが怪獣を倒すだけ倒して後のことは知らんという仕事であれば、どれだけ楽であったことか――――――。

 

こういう防衛の面で嫌なことをほとんど考えなくていい楽な状況こそ、雑にウルトラマンが出てきて怪獣を処理する流れが当たり前になってしまったら、教育者の一人として、防衛チームの一員としても、悔やんでも悔やみきれない禍根を残すことになる。そこまでのことも考えて引き際を見極めなければならない。

 

幸い、キヴォトス征服の野心を隠そうともせずに戦力強化に積極的な【万魔殿】羽沼 マコトに焚きつけられて、ウルトラマンに依存しない防衛体制の構築が声高に叫ばれており、全体的な士気が高い状況が続いている。

 

あとは膨張し続ける防衛費が結果として科学の発展や暮らしを豊かにするものへと応用される経済モデルの確立が急務であり、財政破綻でキヴォトスが滅ぶことになったら目も当てられない。

 

 

――――――だからこそ、怪獣災害の時代を一所懸命にみんなが生きてきた証として【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】を残していかなければならないのだ。

 

 

飛鳥馬 トキ「ようやく繋がりましたね」

 

北条先生「……時間ギリギリまでよく粘ったものだ」

 

――――――

ロボット職員「すみません、遅くなりました!」

――――――

 

北条先生「報告は後で聴く! ゴルザとメルバはもう目の前だ! 今すぐに待機地点まで後退を! 撤収!」

 

――――――

秤 アツコ「それはできない! ここにあるものは絶対に守らなくちゃいけないものなの!」

 

美甘 ネル「そうだぜ、先生! 今すぐに機龍丸を向かわせてくれ! 私たちは勝手にやっているから!」

――――――

 

北条先生「な、何を言っているんだ!? いや、攻撃するにしても味方の避難が優先だ! そこにいたら巻き込むだろう!?」

 

北条先生「それとも、そんなところで命を懸けなければならないほどのものが見つかったとでも?」

 

――――――

ロボット職員「報告をご覧ください、先生」

 

錠前 サオリ「頼む! お願いです、先生!」

――――――

 

北条先生「………………反省文100枚だな」カチッ

 

北条先生「機龍丸! 突入部隊の後退を援護してくれ! ライナー部隊と航空部隊はいつでも攻撃に移れるように準備を!」カチッ

 

飛鳥馬 トキ「先生、いいのですか?」

 

北条先生「建前は用意した。これ以上の権限は僕にはない」

 

――――――

調月 リオ「……同士討ちを狙うはずでしたが、どうしますか?」

――――――

 

北条先生「ロボット怪獣:機龍丸の機動力ではメルバに太刀打ちできない」

 

飛鳥馬 トキ「では、同じ尾長二足歩行怪獣のゴルザの方にぶつけるんですね?」

 

北条先生「あとは、防御力が低いと思われるメルバを無人兵器で誘い出してライナー部隊で処理できれば理想か」

 

飛鳥馬 トキ「同じ有翼怪獣のギコギラーの時のリベンジですね」

 

――――――

調月 リオ「わかったわ。あの時は素人に任せて戦線が崩壊したわけだから、今度は私が無人兵器群の操作を受け持つわ」

 

調月 リオ「それはそれとして、送信されてきたデータの解析が終わりました。モニターに表示します」

――――――

 

北条先生「これは……」

 

飛鳥馬 トキ「――――――怪獣の石像ですか? それも2体?」

 

北条先生「……これがピラミッドを死守したい理由? ミイラ化している怪獣をマケット怪獣に改造するつもりなのか?」

 

飛鳥馬 トキ「先生、胸についているのってカラータイマー?」

 

北条先生「――――――怪獣にカラータイマーがある?」

 

北条先生「理由はわかりましたが、何でもいいから早く撤収してください! もう交戦距離ですよ!」ピッ

 

北条先生「ゴルザには機龍丸、メルバは誘い出してライナー部隊で対処しますから!」

 

――――――

ロボット職員「ありがとうございます!」

――――――

 

北条先生「いや、早くその場から離れて! ああ、もう!」

 

北条先生「……まあ、こういうことも時にはあるさ。信賞必罰は武門の拠って立つところだ」ブツブツ・・・

 

北条先生「……作戦が上手くいくことを祈るか」ハア・・・

 

 

飛鳥馬 トキ「先生、()()()先生が何とかするおつもりなのですか?」

 

 

飛鳥馬 トキ「いつになったら私に活躍の場を与えてくださるのですか? またネル先輩ばかり活躍するのは嫌ですよ?」

 

北条先生「……護衛という立派な任務を軽んじてはいけないよ」

 

飛鳥馬 トキ「では、先生はおとなしくキヴォトス最強のメイドである私に守られてください。そして、いっぱい褒めてください」

 

北条先生「……見ていることや耐えることも戦いだよ」

 

飛鳥馬 トキ「私も先生と()()()()戦う覚悟はできています」

 

北条先生「危ないから止めようね」

 

飛鳥馬 トキ「先生こそ危ないですから止めてください」

 

北条先生「………………」

 

飛鳥馬 トキ「………………」

 

 

こうしてサーモバリック爆弾から生き延びたゴルザと飛来したメルバを分断しての怪獣退治が開始された。

 

周辺の被害を気にしなくていい場所なので四方八方から弾丸の雨霰を浴びせることは容易だったが、ゴルザもメルバも地底怪獣らしく装甲が厚く、通常弾による火力支援の効果はさほどなかったと言える。

 

さて、前回の戦いで宇宙金属:チルソナイトに正面装甲を引き裂かれた【万魔殿】保有の対怪獣兵器:機龍丸はそのチルソナイトを正面装甲に組み込むことで光線を反射する補強が行われていた。

 

そのため、クレッセントのように飛び道具を持っていたとしても光線技の撃ち合いになれば機龍丸に分があると考え、1分間に2000発は発射できるミサイルの弾幕で牽制しつつ、口からの破壊光線でジワジワと体力を削る戦法を選んだのだった。その間に有翼怪獣の方をライナー部隊が片付けてくれることも期待して。

 

ところが、光線同士の撃ち合いではゴルザの方に軍配を上げってしまったのだ。超古代怪獣:ゴルザが放った光線に光線を反射するチルソナイトが機能しなかったのである。光線であって光線に非ず。まさかの攻撃にチルソナイトを取り付けた正面装甲が引き剥がされてしまったのである。

 

これはどういうことか;光線を反射するチルソナイトは特殊装甲なのに対し、額にエネルギーを集めて紫の光線を一直線状に撃つ超音波光線=振動属性の攻撃だったのだ。可視化できる程の超音波が光線に視えていたのだ。*1

 

そのため、たしかに光線技はチルソナイトで補強した正面装甲で完璧に防ぐことができても、その実態は前回のガラモンにも繰り出されたことがある超強力な超音波なので、機体に拡散した振動によって継ぎ目が甘い正面装甲の補強部分が引き剥がされてしまったのである。

 

こうして、またしても操縦士が正面装甲の裂け目から空が見える状況に顔面蒼白になって気絶し、後部座席の意識を保っていた機長:棗 イロハが絶体絶命の危機に陥ったのだった。前回のガラモンはラジコン操作だったので圏外まで運んでしまえば無力化できたが、今回は生きた怪獣であるため、ここから逆転というのは難しい。

 

しかし、操縦士が意識を失ったことで強烈な振動波に耐えていた姿勢制御が失われて機龍丸が崩れ落ちたのを見て、光線技の撃ち合いを制したゴルザは目標である光のピラミッドへの行進を再開し、ついに光のピラミッドに超音波光線を浴びせるのだった。

 

そこにはメルバも駆けつけており、射撃戦を仕掛ければゴルザの足止めができるという前提で組まれたライナー部隊によるメルバ撃滅作戦は最初の段階で躓くことになり、ご自慢の対怪獣兵器を道すがら打ち負かされて光のピラミッドに二大怪獣を近づけてしまうという大失態にしかならなかったのである。

 

そして、光のピラミッドはバリアーの役割を持っていたようだが、ゴルザの超音波光線によってみるみるうちに掻き消されていき、光のベールに包まれていた2体の怪獣の石像が日の光に照らされ、同時にゴルザの銀の光沢やメルバの鋭い刃も煌めく――――――。

 

 

バッ        

 

        バッ

 

エイティ!

 

 

タアッ!

 

 

そこに駆けつけたのがキヴォトスに現れた赤と銀の巨人:ウルトラマン80である。よくわからないまま光のピラミッドに秘蔵されていた2体の怪獣の石像を死守するために立ち向かう。

 

だが、北条 アキラの印象ではそこまで強いようには思わなかった怪獣であっても、2体の怪獣の石像を守りながらパワータイプの怪獣:ゴルザとスピードタイプの怪獣:メルバの相手を同時にするとなると話は別であり、

 

超古代竜:メルバの方も目から連射する山吹色の破壊光弾:メルバニックレイを隠し持っていたため、素早く光弾を手で弾いた隙に後ろからゴルザの超音波光線が発射されるという緩急のついた連携攻撃をしてくるため、攻めに転じるタイミングを掴めずにいたのだ。

 

もちろん、その間も光のピラミッドの防衛に残っていた歩兵部隊の攻撃もあったのだが、光のピラミッドへの攻撃を優先している超古代怪獣の矛先を変えることは叶わなかったのである。

 

その様子を横転した機体の正面装甲の裂け目から唇を噛んで見ていたのが棗 イロハであり、チルソナイトを過信した結果、昨夜に表彰された翌日に一発K.O.になってしまった不甲斐なさへの怒りが湧き上がると同時に、

 

味方の後退を支援するという簡単な話だったのに、いろいろと話がちがってきていることに憤慨しながらも、今すぐに起き上がることができれば 防衛目標になっているらしい2体の怪獣の石像を四次元移動で転移させるなりして ウルトラマンの足枷になっている今の戦況を変えられるはずだと必死になってシステムの再起動を試みていた。

 

ところが、作戦通りにならなかった最悪の状況が見える正面装甲の裂け目から予想もしなかった展開が始まるのである――――――。

 

 

神代キヴォトス人「おい、動いてないんなら、こいつを我にくれぬか?」

 

棗 イロハ「だ、誰ですか、あなたは!? どこの犬の獣人ですか?」

 

棗 イロハ「それに、ふざけたことを言わないでください! 機龍丸は渡しませんよ!」

 

神代キヴォトス人「ふむ、ゴルザごときの超音波光線で壊れたようだが、随分と人の手が入っているみたいだな」

 

棗 イロハ「そうですよ! この機龍丸はキヴォトス中のみんなが創り上げた未来への希望なんです! それをどこの誰かもわからない獣人に渡す道理なんてあるわけがないじゃないですか!」

 

棗 イロハ「今、見ての通り再起動で忙しいですから、私の目の前から消えてください! 今すぐに!」

 

神代キヴォトス人「いいぞ。怪獣を真似て人類が造り上げた巨大兵器はスペックそのものは怪獣には及ばないものの、劣化コピーであるが故の長所を豊富に兼ね備えているときたか」

 

 

――――――その意気や良し。最弱にして無敵。それこそが人類が誇るべき最強の武器だ。

 

 

棗 イロハ「……せめて口を閉じてくれませんか。気が散りますから」

 

棗 イロハ「あ、やった! パワーが戻った!」ググウウウウウウウン!

 

棗 イロハ「さあ、さっさとどいてください! 危ないですから!」

 

神代キヴォトス人「形は違えども絆の力で未来を築く光の巨人には頼もしい仲間が必要だ」

 

棗 イロハ「舌、噛みますよ! 振り落とされても知らないですからね!」

 

神代キヴォトス人「よし、この機械兵器に込められた“光”を媒介にして、友の力よ、今こそ甦れ!」

 

 

――――――星が育みし破壊暴竜:デスドラゴよ!

 

 

その瞬間、ウルトラマン80が深い理由も知らないまま守っていた怪獣の石像の1つが天に昇る雷光となり、それが起き上がった機龍丸を貫く青天の霹靂となったのである。

 

雷に打たれた機龍丸は ダークブルーに塗装された いかにもロボット怪獣の外見から一転して、その輪郭を残しながらも盛り上がった有機的な肉体を得て、頭頂部から回り込む黄色の線が眩い光を放っていたのである。

 

突然の雷光に続く雷鳴に場は騒然となり、機龍丸を一撃で倒したゴルザでさえも思わず後退りする迫力が漲っており、機龍丸に取り付けられたチルソナイトの強化装甲を打ち破ったゴルザの超音波光線が向けられた。

 

しかし、機龍丸の口から放たれるシンプルな破壊光線の代わりに、この破壊暴竜の力と一体化した機龍丸は口から強力無比の電撃光線を放ち、今度は逆にゴルザの方を吹っ飛ばす威力を見せつけたのである。

 

この光景に誰もが唖然とする中、戦意喪失した超古代竜:メルバが一目散に空へと逃走を図った。

 

さて、憶えているだろうか? ウルトラマン80がこれまで戦ってきた宇宙怪獣の飛行速度はいくつだっただろうか? そして、ウルトラマン80の飛行速度は――――――?

 

結果、逃走を図ったメルバがマッハ6で大空を駆けたのに対し、追跡するウルトラマン80はマッハ9で追い抜かすと、真上から首根っこを掴んで大空から大地へ真っ逆さまの垂直降下;スカイダイビング・フェイスクラッシャーを敢行し、メルバの身体は情け容赦なく地表に叩きつけられたのだった。

 

それでも、ヨロヨロと起き上がったのはさすがは断崖に眠っていた地底怪獣と言ったところで、起き上がりにウルトラレイランスが突き刺さって怯んだところに、とどめのサクシウム光線が炸裂し、超古代竜:メルバは爆発四散するのであった――――――。

 

 

棗 イロハ「……な、何をしたのよ、これって!?」

 

神代キヴォトス人「破壊暴竜:デスドラゴの力の依代にさせてもらった」

 

神代キヴォトス人「しかし、さすがは現代のウルトラマンだな。1対1の状況になれば、メルバ程度は瞬殺か。頼もしい限りだ」

 

神代キヴォトス人「よし、さっさとゴルザの方も片付けようではないか。ほら、とどめを刺せ」

 

 

――――――もしかして、これって“神の雷”!?

 

 

棗 イロハ「ふざけないで! こんなの、こんなのって……!」ブルブル・・・

 

神代キヴォトス人「何をぐずぐずしている!? 光の巨人がメルバを倒したのだから、その相棒としてゴルザを倒せ!」

 

棗 イロハ「答えて! かつて“雷帝”が使っていたとされる禁忌の正体がこれなの!?」

 

神代キヴォトス人「は? 誰だ、『“雷帝”』というのは? そもそも、あれから何万年経った時代なんだ、今というのは?」

 

神代キヴォトス人「あ」

 

神代キヴォトス人「ああああああああああああ?!」

 

 

――――――見ると、瀕死のゴルザが死物狂いの渾身の頭突き:ソニックヘッドバットで残り1つの怪獣の石像を破壊して地中へ逃走!

 

 

神代キヴォトス人「ああ……、我の身体が粉々に……!」

 

神代キヴォトス人「こ、この、バカ娘が! ぐずぐずしおって! しかも、逃げられたぞ! この始末、どうつけてくれる!?」

 

棗 イロハ「知らないですよ! 突然 現れて、そっちこそ何なんですか!?」

 

神代キヴォトス人「この小娘が! 貴様がやらぬのなら、友の力を返してもらおう!」

 

棗 イロハ「や、やめてください! 撃ちますよ! いや、撃つ!」ジャキ!

 

 

北条先生「そこまでです!」ガシッ ――――――謎の犬男を背後から羽交い締めにする!

 

 

神代キヴォトス人「むっ」

 

棗 イロハ「せ、先生!」

 

北条先生「ゴルザには逃げられましたが、メルバはウルトラマンが倒しました。作戦は終了です」

 

神代キヴォトス人「貴様……」

 

北条先生「ひとまず、安全は確保されたみたいなので、話し合いの場に参加してもらえませんか?」

 

神代キヴォトス人「わかった。わかったから放せ」

 

北条先生「はい」パッ

 

北条先生「はじめまして。太陽系第3惑星の地球から怪獣退治のためキヴォトスにやってきた北条 アキラです」

 

北条先生「すみませんが、怪獣災害というものがこのキヴォトスの歴史には今までなかったということで、大目に見てもらえませんか? 今は僕が軍事顧問になって防衛体制の強化に取り組んでいますので」

 

神代キヴォトス人「……そうか。怪獣の脅威が完全に忘れ去られた時代なんだな、今は」

 

北条先生「失礼ですが、あなたはこの星の生まれなのですか? それとも、犬顔のイヌイヌ星人なのですか?」

 

神代キヴォトス人「――――――『犬顔のイヌイヌ星人』だと?」

 

神代キヴォトス人「ああ、なるほど。いや、ここから遥か遠くの星雲から闇の勢力を打ち払うためにやってきた」

 

神代キヴォトス人「そして、再び闇が世界を覆う時に備えて 時代を超越するために精神を別の肉体に移し替えて その時を待っていたのが今の我だ」

 

神代キヴォトス人「だが、元の肉体はこの小娘の不手際で目の前で粉々になってしまった……」

 

北条先生「そうでしたか。責任は軍事顧問の僕がとりますので、どうか怒りを鎮めていただけないでしょうか」

 

神代キヴォトス人「まあ、よかろう。あくまでも我は光の眷属。光の巨人の助けとなるのが使命だ」

 

神代キヴォトス人「要は、これから我が仕える光の巨人が強ければいいのだ」

 

北条先生「では、話はここで一旦終わりにしましょう」

 

神代キヴォトス人「よろしい。我も遺跡に戻って準備をせねばな。彼女たちも待たせている」パン!

 

 

――――――指を鳴らすと、機龍丸から破壊暴竜の力が抜け落ち、元の無機質な正面装甲の裂け目から謎の犬男は飛び降りていった。

 

 

棗 イロハ「……先生」

 

北条先生「よく頑張ってくれました」ポン

 

棗 イロハ「昨日、先生にみんなの前で表彰してもらいました……」

 

北条先生「うん」

 

棗 イロハ「だから、もっと上手くやれるつもりでした……」ポタポタ・・・

 

棗 イロハ「でも、こんなんじゃ、イブキのことも、みんなのことも守れそうにないです……」ポタポタ・・・

 

北条先生「だからこそ、悔しさをバネにして『今度こそはッ!』と意気込むんですよ」

 

北条先生「ただ、それでも一人では挫けそうになったら、必ず僕が支えますから。ほら、肩の力を抜いて」

 

棗 イロハ「……じゃあ、今日は死ぬほど疲れましたので、おんぶしてくれませんか? 横転した際に頭もぶつけてますし、身体の震えも止まらないんです」

 

北条先生「いいですよ。ガラモンとの戦いから1週間も経たずに、また怖い目に遭わせてしまいました。本当に申し訳ないです」

 

棗 イロハ「本当ですよ。おまけに機龍丸まで私の操縦を離れて得体の知れない何かに変貌した時はもう何が何だかわからなくなりました……」

 

北条先生「おつかれさまでした、棗さん」

 

棗 イロハ「先生もおつかれさまです」

 

棗 イロハ「………………」ドクンドクン・・・

 

 

――――――本当に先生はズルい人です。一人で震えて助けて欲しいと思った時に颯爽と現れたら、マコト議長だって好きになっちゃうじゃないですか。

 

 

音楽フェスティバル後夜祭の翌日、ゲヘナ自治区での超古代の光のピラミッドを巡る戦いは一旦は幕を閉じたが、それは新たな戦いの幕開けであった。

 

それはそれとして、1週間も経たずに再び正面装甲の裂け目ができた機龍丸から機長:棗 イロハをおぶって仮設指揮所に戻ってきた“GUYSの先生”北条 アキラのことをポカポカと飛鳥馬 トキは無言で叩いてくるのだった。

 

しかし、今回の戦いは【キヴォトス防衛軍】の軍事顧問としてはいろいろと言いたいことが山ほどあり、戦後処理としてその1つ1つを詰問していくことになったのは当然の流れであった。

 

 

まず1つ目は、正面装甲に亀裂を創った隕石怪獣:ガラモンとの激闘から1週間も経っていないとは言え、正面装甲を修復することなく 雑にチルソナイトを埋め込んで継ぎ接ぎした結果、ゴルザの超音波光線を受けた時にその継ぎ目から真っ先に剥がれ落ちることになり、再び正面装甲の裂け目を晒す危険を招いたことを詰問した。

 

やりたかったことはわかる。最高クラスの光線反射装甲のチルソナイトを装着できれば、それだけで防御力が格段に上がるのだから、【万魔殿】羽沼 マコトの無茶振りでチルソナイトの装着が急がれたのは容易に想像がつく。

 

しかし、元々が機龍丸の装甲を容易く貫通する未知の金属:チルソナイトなのに、怪獣サイズの精密加工技術が昨日今日で生えてくるわけもないので、正面装甲の亀裂に合うように荒削りしたチルソナイトを埋め込むという横着ぶりを発揮したことで、いざ実戦で搭乗者を危険に晒す結果になったのだ。

 

それだったら、ちゃんと正面装甲を修復してチルソナイトの実戦投入は後回しにするのが筋というものだ。【万魔殿】の保有なので運用と管理は完全に任せているとは言え、こんなお粗末な整備をして【キヴォトス防衛軍】の軍事作戦に参加されては命を預かる側としても非常に困るのだ。

 

なので、別に今回の管理ミスによって所有権を取り上げるわけではないが、最高責任者である【万魔殿】議長:羽沼 マコトには搭乗者の安全を最優先にするようにキツめに言っておくことになった。

 

これにはさすがの羽沼 マコトも今回の整備不良の被害者である棗 イロハの恨み言も聞かされた上に、溺愛している丹花 イブキからも睨まれたことでタジタジとなり、たしかに整備不良なんかで貴重な対怪獣兵器と仲間を失いたくないと納得して、ちゃんと反省したようである。

 

 

次に2つ目は、光のピラミッドの内部調査に入った【シャーレ】の突入部隊が後退を拒否したことで、機龍丸を前に出さざるを得なくなった結果、機龍丸がゴルザの超音波光線で撃破されて二大怪獣の迎撃作戦が破綻することについて反省文100枚を提出させることになった件である。

 

整備不良の機龍丸が回避ではなく正面からの撃ち合いを選択して撃破されたことは現場の判断ミスなのだが、突入部隊が直前になって光のピラミッドの防衛の必要性を訴えて指揮所の指示に従わなかったことについてのけじめをつけさせることは対外的にも必要だった。

 

結果として、光のピラミッドを防衛したことで決定力に欠けていた機龍丸の大幅な強化が行われたのは作戦にはなかった偶然でしかなく、命を預かる側としては今回の戦いは容認しがたい無様なものでしかなかった。

 

そう、せっかく来てくれたウルトラマン80でさえも、デカすぎる防衛目標が2つもある不利な状態で一体一体は余裕で撃破できるはずの2体の超古代怪獣の相手を同時にしなくてはならないジリ貧の状況に陥ったのだから、これに関しては変身者である北条 アキラはかなりストレスを感じていた。

 

だから、いつも言っているだろう。怪獣退治をするための最高のパフォーマンスを発揮できる状況を作ることにみんなが協力してもらわないといけないのだと。そのために人命最優先で避難の徹底をしていると言うのに。

 

これは油断をした結果なのかもしれない。周辺の避難誘導が必要ない状況だったから、現場の独断専行を許すことにも繋がったと考えるなら、ある程度の緊張感と手順を維持できる状況こそが最高のパフォーマンスを発揮できるのではなかろうか――――――。

 

なので、今回の戦闘記録を見せながら、誰も死ななくて結果オーライなんかじゃなくて、周りがどれだけ不快な気分にさせられたのかを懇切丁寧に解説しながら、反省文100枚を書かせることになった。たしかに人的損失はなかったかもしれないが、信頼という人間関係で重要な要素を失うことがいかに苦しいことかをここで教え込むことになったのだ。

 

実際、復活したばかりの神代キヴォトス人の謎の犬男に一方的に命令された挙げ句に理不尽に責められるという怪獣の脅威とは別の怖い思いをした棗 イロハのことや、時間ギリギリまで仲間を探し続けて戒野 ミサキと槌永 ヒヨリが心底心配していたことの具体例を挙げることで、ようやく納得してくれたようだった。

 

そんなわけで、二大怪獣がすぐそこまで迫っていたのにぐずぐずしていたせいで周りに多大な迷惑をかけたことに対して誠心誠意の謝罪をして回るのに北条 アキラは付き添うことになった。いわゆる『自分(先生)の顔に免じて』というやつである。

 

ここで公式に頭を下げておかないと後々になって大事な局面で個人的な恨み辛みから最悪の事態を招く恐れがあるため、信頼関係の形成にFace to Faceを基本としている防衛チームの人間としては謝罪行脚の指導も仕事の内であった。

 

いや、これが本当にバカに出来ない問題であり、侵略者の中にはそうした人間関係の亀裂や歪みに付け込む卑劣な策略や心理戦を仕掛けてくる者もいるため、人間関係の健全化は平和な時代におけるマイナスエネルギーの抑制を志した北条 アキラにとっても重要な研究テーマであったのだ。なので、人間関係の構築に関しては怪獣退治の専門家としても超真面目なのである。

 

ただ、丁寧に真心を込めた謝罪というのはその人の内面を綺麗に映し出すものとなるため、素晴らしい謝罪というのは両者の信頼関係を更に深めるコミュニケーションとなることを実感させれば、きっとより良い未来への進展をもたらすことだろう。

 

これが地球人:北条 アキラが行く先々で人々から信頼を得ることができた秘訣:おもてなしの心と気配りの精神であり、とにかく謝罪する側のこともこうこうこういうところで素晴らしいところがあるのだと褒めて印象を回復させてから今後とも仲良くしてもらえるようにお願いしているため、謝罪を受けた側としては そこまで先生が言う人なのだからと それ以上は悪い気は起きないだろう。

 

こういう謝罪の機会ですらも、両者を結びつける人材紹介の売り込みの機会だと考えれば、日頃から接する一人一人の良い面を見つけ出そうという眼も養われるというものである。それが子供心に深く突き刺さることを小学校の先生の体験から学び体得していたことである。

 

だから、現場で【シャーレ】の部隊を率いて責任を取る大人であるロボット職員:マウンテンガリバーは、ただただ感服する他なかった。

 

というのも、ここまで誠実な対応なんてものをキヴォトスの腐敗と悪徳に満ちた社会で目にしたことなんてなかったのだから、謝罪の仕方だけでもここまでレベルの違いを見せつけられると、キヴォトスの空気に馴染んでしまった大人として大変恥ずかしくなったからだ

 

 

最後に3つ目というのが、突如として現れた光のピラミッドの遺産のことであり、何やら世界の成り立ちについて詳しそうな神代キヴォトス人が復活したので、人を選んで聞き込みを始めることになった。

 

そのため、しばらくは近隣の温泉街を拠点にして現地調査をすることになり、再び怪獣の脅威から【ゲヘナ】を救った大恩人:北条 アキラは温泉街から猛烈な歓迎を受けることになったのだ。

 

そこから始まる温泉旅館の逗留の日々の中で、あの光のピラミッドが何だったのか、ゴルザとメルバの出現の因果関係、機龍丸を依代にした強化の謎などを聞き出すことになったのである――――――。

 

 

・・・チャポン

 

 

北条先生「どうですか、湯加減は? ここの温泉は?」

 

神代キヴォトス人「悪くない。悪くない場所に光のピラミッドを建てたのだから当然か」

 

ロボット職員「途方もない時間の流れですよね」ゴシゴシ ――――――入浴できないので風呂場の掃除をしている。

 

ロボット職員「今から3000万年前の超古代のキヴォトスで光と闇に分かれた巨人たちの戦争があったわけなんですね」

 

神代キヴォトス人「ああ。それで神代から受け継がれた超古代文明は完全に滅びてしまったようだな……」

 

北条先生「まあ、3000万年前というのもメルバが飛び立った断崖から確認できた地層の年代測定をした推定ですけどね」

 

神代キヴォトス人「だが、我ら光の勢力が『栄えあれ』と祝福したこの大地はたしかに豊穣の大地と相成った」

 

北条先生「そうですね。キヴォトスで一二を争うほどのマンモス校が成立しただけじゃなく、キヴォトスでも屈指の優れた農作物の名産地や湧水地にもなっていて、自然も豊かですからね」

 

神代キヴォトス人「豊かだからこそ、愚かでも生きていけるのだ」

 

神代キヴォトス人「だが、餌があればあるだけ殖えていくだけなら、それではただの家畜と何ら差はないであろう」

 

神代キヴォトス人「故に、闇の勢力に勝つために自らを戒めて磨き上げるための修行の地と定めたのが【トリニティ】の霊場の由来だ」

 

神代キヴォトス人「もっとも、『新約』なるものが必要になるほど、人々の劣化と堕落に歯止めがかからなかったようだがな」

 

北条先生「なるほど。【ゲヘナ】では物質主義が盛んで、【トリニティ】では精神主義が栄えたことで、イジメのやり方にも歴史的な背景からちがいが出たのか……」

 

神代キヴォトス人「豊かだからこそ、愚かでも生きていけるという道理は、時代が進んだことで【ゲヘナ】でも【トリニティ】でも区別なくということ」

 

神代キヴォトス人「我の目から見れば、どちらも等しく愚かなだけよ」

 

北条先生「……この人を表に出すとキヴォトスが混乱に陥りますね」

 

神代キヴォトス人「聞こえているぞ」

 

 

ロボット職員「もしも光のピラミッドを破壊し尽くした後、ゴルザとメルバが向かうとしたら、次はサンクトゥムタワーになるのでしょうか?

 

 

北条先生「?」

 

神代キヴォトス人「そうだな。そもそも、【メトロポリス(首都:D.U.)】自体が神代から超古代にかけて光の都があった場所にあるのだからな。その時の神秘が色濃く残っているから人々が再び寄り集まって【メトロポリス(首都:D.U.)】になったのであろう」

 

ロボット職員「じゃあ、どうして【メトロポリス(首都:D.U.)】よりも先に光のピラミッドを示し合わせたようにゴルザとメルバは襲ったのでしょうか?」

 

神代キヴォトス人「それは簡単だ。本城を攻めるのならば、支城を落としてからが鉄則であろう」

 

神代キヴォトス人「そもそも、順番が逆なのだ。闇の眷属が目覚めたから、光の眷属である我が目覚めるのだ。光のピラミッドはそのための防衛拠点なのだ」

 

神代キヴォトス人「なにより、我はヒノム火山に封じられた地獄の釜の門番。ヒノム火山から湧き出る大地のエネルギーを司っているのだ。我を封じぬ限り、穢れたる者共を聖地へは何人たりとも行かせぬ」

 

神代キヴォトス人「ただ、覚醒(めざ)めた時の状況は最悪であったな。友の魂はすでにこの地になく、闇の眷属と同時に復活するはずだった我もまた、現地人に叩き起こされるまで覚醒できなかったのだからな」

 

神代キヴォトス人「そういう意味では、我が知る光の巨人とはいろいろとちがうようだが、ウルトラマン80とやらの奮戦には大いに助けられた」

 

ロボット職員「…………そういうことだったのか。デスドラゴと戦うことになったのも

 

――――――

 

美甘 ネル「おい、こら、トキ! 男湯を覗き見しようとするんじゃない!」ガシッ

 

飛鳥馬 トキ「放してください。“メイドの中のメイド”である私には先生をお世話する義務があります」

 

美甘 ネル「今、男同士で大事な話し合いをしているってんだから、邪魔すんなっての!」

 

飛鳥馬 トキ「反省文100枚を書くことになった人の言うことは聞く価値がありません」

 

美甘 ネル「な、何をぅ!」

 

 

・・・チャポン

 

 

槌永 ヒヨリ「……あ、熱いですねぇ」

 

秤 アツコ「気持ちいいね、サッちゃん」

 

錠前 サオリ「ああ。日頃の疲れが癒されるようだ」

 

錠前 サオリ「しかし、よく温泉の入り方というのを知っていたな、ミサキ?」

 

戒野 ミサキ「まあ、セナに湯治目的で何度か連れてきてもらったから」

 

錠前 サオリ「そうだな。そんなようなことを言っていたな。その甲斐あって随分と肌が綺麗になっている」

 

戒野 ミサキ「……まあね」

 

槌永 ヒヨリ「でも、まさか、サオリ姉さん。温泉合宿というものを実際に体験する日がくるだなんて思いもしませんでしたねぇ」

 

錠前 サオリ「ああ。表向きは協定違反のために反省文100枚を書くことになっているが、これでは懲罰にならないではないか……」

 

秤 アツコ「それが先生のいいところだし、コーイチのかっこいいところだよね」

 

戒野 ミサキ「ホント、姫はコーイチのことばかりだよね」

 

秤 アツコ「だって、お姫様のことを守ってくれる騎士様だから」ポッ

 

錠前 サオリ「コーイチにはすまないと思っている。先生の作戦通りに撤収するのが一番だとわかっていたのに、本当にみんなには迷惑をかけてしまった……」

 

秤 アツコ「でも、そこは先生が言っていたように『愛・勇気・正義』だよね。『正義→勇気→愛』じゃなくて」

 

錠前 サオリ「そうだとしても、機龍丸のパイロットには悪いことをしてしまったのは本当だ。今回は整備不良という過失が相手にもあったということでお互い様ということにはなったが……」

 

戒野 ミサキ「それはそうだけど、謝りに行っているのにリーダーのことをこれでもかというぐらい褒めちぎって最後に握手に持っていかせるのは、傍から見ていて言葉にならない衝撃を受けたけどね」

 

槌永 ヒヨリ「あれはもう魔法の域に達してませんかねぇ。どんな本にも載ってない謝り方で、【アリウス】はもちろん、キヴォトスで先生と同じことができている人なんていないと思いますよ、あれ……」

 

錠前 サオリ「そうだな。どっちが悪かったか事実関係から謝罪の必要性を考えるべきだが、互いに思うところがあるのを吐き出させて互いの胸のつかえを取り除くことが、先生が授業で取り上げた“(合い)”の実践というわけなんだろうな」

 

 

秤 アツコ「要するに、『偉い人が率先して謝る』っていうのを想像できてなかったんだよね、みんな。だから、みんながびっくりすることになった」

 

 

戒野 ミサキ「うん。それは言えてる。絶対に【アリウス】の大人って自分が間違っていても謝るだなんてしそうもないよね。特にマダムなんて」

 

錠前 サオリ「……そうか。だから、私自身も、コーイチも、みんなが先生の謝罪に驚いたのか」

 

槌永 ヒヨリ「ああ、そうですねぇ。先生自身に過失があったわけじゃないし、頭を下げさせるのも恐れ多い天下の【キヴォトス防衛軍】の軍事顧問なんて方に謝られたら、逆にこっちの方がびっくりですもんねぇ」

 

秤 アツコ「でも、びっくりしたけど、嬉しかったよね」

 

秤 アツコ「サッちゃんがあの子のことを必死に庇ったように、サッちゃんのことも必死に守ろうとしてくれたんだから」

 

秤 アツコ「だから、先生とサッちゃんは本当に似ていると思う」

 

錠前 サオリ「……そうだといいな」

 

 

かつて3000万年前、この星は光の巨人と光の眷属による光の勢力が支配しており、地上から闇の勢力を駆逐した神代から続く超古代文明が築き上げられていた。

 

それから幾星霜、光の巨人は地上の繁栄を見届け、その肉体を巨人像として地上に残して精神は“光”となって彼らの故郷である星雲へと帰っていったのである。

 

こうして神代が終焉を迎え、地上に再び闇の勢力が現れた時、今度は古代人たちが“光”となって巨人像と一体化して脅威を駆逐していったのである。

 

しかし、光の勢力が地上を去っていたことで闇の勢力は勢いづき、光と闇の戦いは悠久の時を刻むこととなった。

 

その結果、永遠にも思われた永い戦いの果てに超古代文明を滅ぼした最終戦争で光と闇は相討ちとなり、地上は無限の静寂に包まれることとなったのである。

 

 

――――――それでも、人は命を繋ぎ続けて天に祈りを捧げてきたのである。

 

 

その祈りに応えて、最終戦争の災禍を免れた巨人像が復活することもあれば、光の勢力が闇の眷属を打ち払うために地上に再臨することも度々あった。

 

だが、そのいずれもがかつての超古代文明を復活させるほどの繁栄をもたらすことはなく、光と闇は共に現在に至るまでに完全に歴史の闇へと葬られることとなったのである。

 

しかし、光在るところ闇在り。光のピラミッドが再び地上に現れ、超古代怪獣が復活したことは神代から続く超古代文明を滅ぼした最終戦争が繰り返される予兆が現れたということなのだ――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛しい人の胸に 誰もが帰っていくよ

 

懐かしく暖かい 光に包まれながら……いつか

 

 

誰よりも 何よりも 君だけを守りたい

 

いつまでも どこまでも 君だけを守りたい

 

 

ラララララ…… 君だけを守りたい

 

ラララララ…… 君だけを守りたい

 

 

Wow Wow Wow 叫ぼう もう一度

 

Wow Wow Wow 叫ぼう 世界は終わらない

 

 

 

――――――もし世界がピンチになったら、あなたがウルトラマンになって助けに来てくれる?

 

 

 

七神 リン「――――――あら?」

 

扇喜 アオイ「どうかしましたか?」

 

七神 リン「今、音楽フェスティバルの特設サイトで出演者の思い出の曲について情報募集中とあって少し聴いてみたのだけれど、」

 

七神 リン「この歌、『キヴォトスの外の歌』って話だけど、“連邦生徒会長”がよく歌っていたような気がして……」

 

扇喜 アオイ「そうなんですか?」

 

七神 リン「そうそう、『君だけを守りたい』って歌った後に『Wow Wow Wow 叫ぼう』って来るから『世界は終わらない』って本当にシャウトしていた奇行でよく憶えてる。懐かしい」

 

七神 リン「……本当にどこに行ってしまったのかしら、“連邦生徒会長”は?」

 

 

――――――やっぱり、愛だよね。愛だけを信じたい。もう愛しかないよね。

 

 

七神 リン「…………愛、か」

 

七神 リン「先生は言っていた。正しいかどうかだけで物事を判断するようになったら、人それぞれの正しさによって問題は膨張した末に破裂するのだと」

 

七神 リン「だから、本質的な解決をするにはお互いの気持ちを伝えて納得させる愛が普遍的に必要なのだと。倒れている人や苦しそうな人がいたら駆け寄るぐらいの普遍的なものが」

 

七神 リン「そして、正しさや法というものは後から理屈付けされてできあがるのなら、正しさや法が形成されるに至る合意には理屈は存在しないことになる」

 

扇喜 アオイ「――――――合意に理屈はない。その理屈なき合意の根源が“(合い)”というのが先生の持論でしたね」

 

七神 リン「結局、正しさや法というものが絶対であると信じることすら自由でしかなかったのよね」

 

扇喜 アオイ「そうですね。信じない自由を支持している方たちが圧倒的多数ですから、いつまで経っても治安は良くならないです」

 

扇喜 アオイ「でも、先生が掲げる『犯罪ゼロ地区』のモデル都市として新生したシャーレ地区の治安は最高に良くなっています」

 

七神 リン「――――――どうしてだと思う?」

 

扇喜 アオイ「犯罪ゼロのモデル都市を創り上げようとした先生の言うことになら、みんなが従いたいと思うからです」

 

七神 リン「それが結論よね。絶対であるはずの正しさや法はみんなが心から納得して従うという理屈なき合意がないと絶対は“絶対”になり得ない」

 

七神 リン「結局、法治主義も現実には人治主義ということなのよ。人を愛して人を従わせる者でなければ、絶対である正しさも法も扱いきれないということね」

 

七神 リン「もしかすると、“連邦生徒会長”もままならぬ現実を前に自分の中にある“(合い)”が失われていくことを一番に恐れていたのかもしれないわね……」

 

扇喜 アオイ「だから、先生を――――――?」

 

七神 リン「そう。だから、先生に変えてもらいたかったのかもしれない」

 

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

 

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 

*1
特殊装甲に対して振動属性の攻撃はEffective(ダメージ倍率:1.5)である。




-Document GUYS feat.LXXX No.08-

超古代怪獣:ゴルザ 登場作品『ウルトラマンティガ』第1話『光を継ぐもの』登場
太古の昔から地中に生息していた闇の支配者::ガタノゾーアの尖兵である超古代怪獣の一種。3000万年前の超古代怪獣の生き残りで、かつては大量に出現して光の巨人と戦っていた。
アーストロンやゴジラのような所謂「王道怪獣」らしい二足歩行で尻尾を引きずるスタイルで、平成ウルトラマンを代表する「大地を揺るがす怪獣」であり、数々の派生怪獣が誕生している。

地底怪獣らしく全身に岩石を彷彿とさせるディティールが見られる硬質的な外観で、中でも顔の外側から喉元を覆う鎧のような皮膚はかなり特徴的。
地中を掘り進むことができるマッシブで筋肉質になっており、そのパワフルな外見通り戦闘では肉弾戦を得意とし、パンチや頑丈な頭部の鎧を活かした頭突きなどの強力な技で持つ。
また、額から発射する紫色の超音波光線で触れた物体を一瞬にしてボロボロにしてしまう。これを使って頭突きを行えばソニックヘッドバットとなる。


突如としてモンゴル高原の地底を突き破って出現し、特捜チーム:GUTSのガッツウイング1号の攻撃を受けると地面を掘り返し逃走。
まるで導かれるかのように日本を目指し、秋田沖から上陸すると街を一直線に薙ぎ倒しつつ、奥羽山脈某所の黄金のピラミッドに辿り着いた。
自身ら超古代怪獣の抑止力たりうる光の巨人の石像がそこに眠っていることを悟ると超音波光線でピラミッドを上から順に削り飛ばし、合流したメルバと共に石像のうち2体を破壊する。
しかし、最後の一体を破壊しようとした その時、ダイゴの駆るガッツウイング1号に邪魔立てされ、メルバがこれを打ち落とした後、石像を踏み砕こうと脚を振り上げる。
しかし、その刹那、石像の額に光が灯り、ゴルザの脚をしっかりと受け止めたのである。

――――――ここに超古代の伝説の英雄:ウルトラマンティガが長き眠りから目覚めたのである!

ゴルザはメルバと組んですぐさまティガを始末しようとするも、超音波光線を悉く回避されてしまう。
一旦はメルバとの共闘でティガを追い詰めたかに思えたが、ティガが赤きパワータイプに変身すると形勢は逆転。
二人の合体光線も片手で一蹴され、ゴルザはサバ折りを受けて背骨を折られてしまう。
そして、ティガがメルバに気を取られた瞬間、脱兎のごとく地を掘り、ゴルザは逃げ出してしまったのだった……。


超古代竜:メルバ 登場作品『ウルトラマンティガ』第1話『光を継ぐもの』登場
太古の昔から地中に生息していた闇の支配者::ガタノゾーアの尖兵である超古代怪獣の一種。3000万年前の超古代怪獣の生き残りで、かつては大量に出現して光の巨人と戦っていた。
オーソドックスな怪獣体形のゴルザとは対照的に、ドラゴンと鳥を掛け合わせたようなスラリとしたシャープな真っ赤なシルエットを持つ「空を切り裂く怪獣」。身体前面の首から胴にかけてゴルザに似た岩石状の組織に覆われている。

断崖に眠っていた超古代怪獣の生き残りであるだけに地底怪獣と同等の頑丈さを誇る上に、肩口から伸びる突起から巨大な飛膜を広げてマッハ6で飛行することが可能。
両腕の大爪:スラッシュクローと鋭いクチバシ、目から発射する山吹色の破壊光弾:メルバニックレイが武器としており、遠近両用で飛行可能という非常に汎用性が高い戦闘能力を持つ。


イースター島の断崖から出現して約2時間で太平洋を横断して秋田に到達し、ピラミッド内の巨人像をゴルザと共に破壊するが、最後の一体の破壊が間に合わず、光となったダイゴと一体化してウルトラマンティガとして蘇ってしまう。
二体がかりで襲いかかり、最初は善戦するが、パワータイプに変身したティガに深傷を負わされたゴルザが地中に逃走したため、単独での戦いを強いられる。
得意の空中殺法で翻弄するものの、青紫色の姿となったティガに蹴り落とされ、ランバルト光弾で爆砕された。






実は、この超古代怪獣:ゴルザとかいう闇の眷属なのだが、モンゴルの平原での初戦闘ではガッツウイング1号の非武装ゆえの苦肉の策の信号弾を受けて地中へと逃走しており、
光となったマドカ・ダイゴと一体化して蘇ったウルトラマンティガとの戦いではパワータイプの鯖折りを受けたことで仲間であるメルバを見捨てて真っ先に逃走しているという、闇の眷属の風上にも置けない見掛け倒しの臆病者であった。
そのため、“災害の化身”として日本の各地で震災を引き起こして平和ボケした防衛チームを叩きのめした月の輪怪獣:クレッセントを見習えと言いたくなるような腰抜けぶりであった。

一方で、本作のゴルザは隕石怪獣:ガラモンとの激戦の末に最高クラスの光線反射装甲:チルソナイトを獲得して早速装着した機龍丸を超音波光線の特性で真っ向から打ち倒した末に、目的である光のピラミッドの石像の1つを破壊して戦線離脱するという大活躍を見せている。
しかし、光のピラミッドで現代に覚醒を果たした神代キヴォトス人によってゴルザが倒した機龍丸を依代にして光のピラミッドの石像の1つとして封印されていた破壊暴竜:デスドラゴが復活し、復活の電撃光線に打ちのめされているため、やはり弱めの怪獣という印象までは塗り替えられなかった。
ちなみに、破壊暴竜:デスドラゴは『ウルトラマントリガー』の世界で最初に確認された序盤の怪獣であり、『ウルトラマンティガ』の世界で最初に確認された序盤の怪獣:ゴルザを手を変え品を変えてぶちのめした構図となっている。そのデスドラゴも『ウルトラマントリガー』に登場する怪獣の中では弱い部類に入る。


遠近両用で飛行可能という非常に汎用性が高い超古代竜:メルバは部隊運用をしたら戦術の要になれるぐらいに厄介な怪獣ではあり、実際に本作ではパワータイプのゴルザとスピードタイプのメルバの連携で元から不利な防衛戦でウルトラマン80を更に追い込んでいる。
ただし、原典である『ウルトラマンティガ』で最初に撃破された怪獣らしく、単体での戦闘能力はそこまで高くなく、実際に本作では状況がひっくり返った瞬間に命を失うことになったが、相手が悪すぎたとしか言いようがない。
なにしろ、ウルトラマン80自身がマッハ9で飛べるのに、その相手をしてきた有翼怪獣がことごとくマッハ6で飛ぶメルバをウスノロ扱いにしてしまう猛者ばかりなのだ。
また、操演や管理の面においても 構造上 翼の部分が脆いせいで、仲間のことを見捨てて敵前逃亡したゴルザとは打って変わって、人気の割には再登場の機会に恵まれないところも不憫である。
それでも、“マッハで空を飛べる地底怪獣”と考えたら、地底怪獣並みの防御力でマッハ6を両立させているという他にはない強みがあったため、機龍丸の強化プランの参考になっている。

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