Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
基本的に先生は月曜日の定例会議に必ず参加し、その前に【シャーレ・オフィス】でみんなと朝食を摂ることで美味しいご飯に舌鼓を打たせて場の空気を朗らかにして心の距離をぐっと近づけるアイスブレイクを図っていた。
別にオンライン会議で済ませることも可能なのだが、そこまで徹底するのは裏返すと私たち生徒に対して信用がないことの現れでもあり、物理的な距離感を心理的な距離感が超越するまでしっかりと顔を出すつもりなのだそうだ。単純接触効果というらしい。
なので、【ゲヘナ学園】で毎週行われている公開授業から引き続き、そのままゲヘナ自治区/ヒノム火山周辺地域に現れた光のピラミッドと超古代怪獣の対応をし、その後始末や調査のために温泉旅館に宿泊しながらも、月曜日の朝は必ず【シャーレ・オフィス】に帰って一週間のエンジンを温めるのだった。あるいは、一週間分の時計のネジを巻くのだと。
非日常の中で日常を貫く努力と意志こそが、非常事態における平常心と体力を養うものであり、習慣づけることでいつもの自分を取り戻すために心を落ち着ける取り掛かりをいくつも作っているとも言っていた。
生まれて初めての温泉旅館での日々は温泉合宿と呼ばれるものであり、温泉に浸かった後に開放感溢れる浴衣で身も心も軽やかになって外を出歩くと、豊かな自然の息吹を満喫することができた。こんなにも雄大で美しいものは私の世界にはこれまでなかったものだ。
そして、協定違反のために反省文100枚を書く懲罰を受けているはずが、すでに用意してある反省文の見本を精密に書き写して音読する課外授業となっており、美しく書くための鉛筆やペンの持ち方や説得力のあるスピーチの仕方などを教わることになった。
実は、この課外授業を受けているのは協定違反で懲罰を受けることになった【アリウススクワッド】の私と姫、【C&C】美甘 ネル以外にも、先生の課外授業という貴重な機会に是非とも参加したいと温泉街の人たちも集まり、ついでに居合わせた宿泊客たちも一緒になって勉強することになったのだ。
その中で 一際 異彩を放っているのだが、私たちが光のピラミッドで永き眠りから目覚めさせた神代キヴォトス人:サーベラスという頭身が明らかにちがう犬の獣人であり、私たちヒト族にはわからないが、同族からするとこの世のものとは思えない美貌であるだけじゃなく魔性のオーラを放っているらしく、目にした瞬間に心が鷲掴みになるものがあったという。
なので、サーベラス様に少しでもお近づきになりたいということで、関係者の私に取り次いでもらえないかと声がかかる時があり、温泉とは異なる熱に浮かされる獣人たちの様子を間近に見続けることになったのだ。
だから、『誰かを好きになる』というのはこういうことなのだと知ることができた。
――――――それはまさしく先生が言っていた通りの“
棗 イロハ「私は嫌いですけどね、サーベラス様。あの後、謝られましたけど」
秤 アツコ「うんうん。知らない人がいきなりやってきて怒鳴ってくるのはたしかに怖いよね」
秤 アツコ「だから、心細い時や不安な時に真っ先に駆けつけてくれた先生のことが好きになったんだよね~」
棗 イロハ「……それは否定しません」
棗 イロハ「まあ、常日頃からマコト議長や鬼怒川 カスミ、黒舘 ハルナといった錚々たる面々の暴走を抑えるのに尽力してくれてますから、本当にいつも大助かりですよ」
棗 イロハ「本当は対怪獣兵器のパイロットなんて、Xデーで最初の怪獣:クレッセントに戦車部隊が蹂躙された時の体験で懲り懲りだったんですけどね……」
棗 イロハ「でも、誰かがやらなくちゃならないんだったら、イブキのために私がやるしかないんだって、ヘイローが消失するかもしれない四次元都市:フォーサイトでの操縦訓練だって必死にやってこれたんです」
棗 イロハ「正直に言って、先生はあざといんですよ」
棗 イロハ「怪獣退治の専門家として全体の総括をする代わりに、自分の代わりに現場で手足になる人には特に目をかけてくれますから。それが役割や契約に基づく待遇だとしても、先生は地球人の基準を持ち出してあまりにもキヴォトス人の私たちに優しくし過ぎるんです」
棗 イロハ「嫌になるんですよね。そのことを指摘したら適切な距離感を保つためにキヴォトス人基準に切り替えてくるかもしれないから、みんな誰もそのことを言い出せず、先生にされるがままを受け容れる他ないんですから」
棗 イロハ「頭では自分だけを特別に扱ってくれているわけじゃないと言い聞かせていても、一緒にいる時間の心地よさを覚えてしまったら、もう引き返せないですね」
秤 アツコ「だから、会いに来たんだよね、先生に」フフッ
棗 イロハ「ええ。先日の戦いで負傷したので療養するという名目で」ニヒヒ!
錠前 サオリ「………………」カキカキ・・・
美甘 ネル「あっちは随分とコイバナで盛り上がってんな。こっちは反省文100枚だってのに」カキカキ・・・
錠前 サオリ「なあ、ネルも先生に恋しているのか?」カキカキ・・・
美甘 ネル「はあ!?」カアアアアア!
美甘 ネル「先生の大のお気に入りだからって、高みの見物のつもりか!?」
錠前 サオリ「ちがうのか?」
美甘 ネル「いや、別に。先生のことは嫌いじゃねえよ。【C&C】に相応しい任務や相手を用意してくれるから、一緒に仕事をして退屈しないしな。さすがは“連邦生徒会長”が寄越した怪獣退治の専門家だ。言うことがない」
美甘 ネル「けど、先生とはそういうんじゃないんだ。『互いの能力を信頼し合って最高の仕事をこなす』っていう、大人のつきあいってやつだな」
美甘 ネル「そんなわけだから、『仕事をするんだったら先生と』って思うぐらいには先生のことは評価しているつもりだ」
美甘 ネル「だ、だから、勘違いするなよな!? そ、そんな、す、『好き』とか、あ、『愛している』とかそんなんじゃないんだからな!?」
錠前 サオリ「そうか」
美甘 ネル「仏頂面のあんたはどうなんだ?」
錠前 サオリ「いや、そういうのはまだわからないんだ。自分で調べてもいるんだが、共感できるものがないんだ……」
美甘 ネル「……まあ、焦ることはねえさ。恋ってのは
錠前 サオリ「そうなのか?」
美甘 ネル「ああ。うちのところのカリンを見ていたらわかる。“恋する乙女”ってやつの生きた見本だから」
美甘 ネル「あいつ、本当に
錠前 サオリ「なら、その
美甘 ネル「文句なんてねえ。初対面だってのに【C&C】一人一人の能力や人格を把握して完璧な現場指揮を執ってみせたんだから、先生の次ぐらいには評価しているつもりだ」
美甘 ネル「むしろ、適材適所だな。平時は事務仕事をこなしながら、銃弾一発で死にかねない虚弱な先生の欠点を補うために前線で部隊を率いているわけだから、この2人が揃うことで完璧な采配になっている」
美甘 ネル「ただ、さすがにロボット相手に恋愛感情を抱くってのはないけどな。先生と同じでキヴォトス人とは思えないぐらい良い人だけどよ」
錠前 サオリ「なるほど」
夕食を終えて布団を敷いて浴衣姿で足をバタつかせながら横たわる姫と棗 イロハがコイバナというので盛り上がる一方で、私と美甘 ネルは窓から入ってくる涼風を微かに感じながら襖1枚で隔てた隣室で反省文100枚の書き取りを続ける。
この温泉合宿には反省文100枚を書く必要がある生徒の他に、日替わりで何人もの生徒が訪れており、【C&C】からは美甘 ネルを見張る名目で代わる代わるにエージェントたちが来ており、初日は飛鳥馬 トキから始まり、角楯 カリンの日も巡ってきた。
角楯 カリンは明確に
後々になって考えてみると、角楯 カリンが
なぜなら、
だから、日頃の苦労を慰めてくれる人のことが自分の中で大きくなっていくのは【万魔殿】棗 イロハの例から考えると非常にわかりやすい。
なので、全身機械の
なぜ知っているのかと言うと、その時の様子を扉に耳を当てて頬を赤く染めながらミサキとヒヨリが盗み聞きしているのを見つけた姫と棗 イロハも混ざって盗み聞きしていたのを更に私と美甘 ネルが見つけることになったからだ。
そっと隙間を開けて盗み見た角楯 カリンの表情はたしかに怪獣退治の現場では決して見せたことのない頬が緩んだ甘いものであり、全身機械であるはずの
その状況下で
これ以上は覗き見るべきではないと顔を真赤にした美甘 ネルはそっと隙間を閉じたのだが、『あの様子だと本気で種族の壁を超えるつもりなのだ』と角楯 カリンの本気具合に戦慄していたのだった。
そんなことが本当にできるのかと素朴な疑問を投げかけると、角楯 カリンと同じく
――――――曰く、
それ以上のことは言えるはずがないと耳まで赤く染めた美甘 ネルに告げられたが、私にはそれがどういうことなのかがまるで理解できなかった。
ただ、その話を聞いて姫は少し頬を染めながらいたずらっぽく笑っていたのはよく憶えている。一番興味深そうに角楯 カリンのご奉仕の様子を隙間からそっと盗み見ていただけに。
私はただ、ロボットでもヒトと同じようにあそこまで喘ぐことができるのかと、私以外に常にアツコの身を案じてくれている
北条先生「――――――他にも光のピラミッドのような光の勢力の遺跡があると?」
神代キヴォトス人「当然ある。その多くが幾星霜にもなる時の流れで踏み荒らされることが決してない秘境に隠されているはずだ」
ロボット職員「……そうか、キヴォトス中にある遺跡はそのためのものなのか。だから、【カタコンベ】にも存在していたのか」
神代キヴォトス人「実際、ヒノム火山の地中深くに埋め込まれた【アビス】を光のピラミッドとして地上に繋げているわけで、我が“地獄の釜の門番”としての権限で地獄の釜を開け放てば、いつでもヒノム火山を爆発させることができる」
ロボット職員「え、なんでそんなことができる権限が?」
神代キヴォトス人「いつでも火山を爆発させることができるということは、必要な時に爆発させられるように管理が行き届いているというだけのことだ」
ロボット職員「ああ、なるほど」
神代キヴォトス人「ただ、光と闇の果てしない戦いはいつまでも続くと思い込んでいたのは我らが光の勢力も宿敵たる闇の勢力も同じだったようだ」
北条先生「どういうことですか?」
神代キヴォトス人「闇の勢力の復活を察知して光の眷属たる我も復活するはずが、想定以上に永い永い年月が経ってピラミッドの機能に誤作動が起きてしまったせいで、我は人の手を借りなければ
神代キヴォトス人「聞けばメルバが出土した地層が3000万年前という話で、1000万年周期で光と闇の戦いが繰り返される想定からそこまで外れていれば、誤作動も自然と起きて我が永遠の眠りから
神代キヴォトス人「それだけ平和が続いたと評すべきか、光と闇のそのどちらもこの星のことを忘れ去ったと儚むべきか、3000万年前の神代から続く超古代文明の在りし日の栄華のことを懐かしむべきか……」
神代キヴォトス人「だが、我の使命は永遠に変わることはない。光の眷属として復活した現代に闇の勢力を地上から抹殺して消滅させるのみ」
神代キヴォトス人「そのために失われた身体の代わりになるものを提供してもらいたい」
神代キヴォトス人「もしくは、闇の勢力を撃退できるだけの戦力を用意する手伝いをさせてもらおう」
神代キヴォトス人「その一例が、機龍丸とやらに我が友:デスドラゴの力を宿したことだ」
ロボット職員「どういった原理なのですか?」
神代キヴォトス人「簡単なことだ。人が“光”となって“光”と一体化すればよい」
神代キヴォトス人「あの機龍丸とやらは物質界ではたくさんの人たちの手によって造られたロボット怪獣でしかないが、同時にたくさんの人たちの手を経て思いを乗せた“人々の願いの結晶”でもある」
北条先生「そうか! 機龍丸も大々的に活躍を報じられているから、ウルトラマン80と並ぶ怪獣退治のヒーローとしてキヴォトス中で認知されている! まさか、現地人に造らせた完成度の低いロボット怪獣にそんな利点があっただなんて!」
神代キヴォトス人「そう、人造物であっても“光”を集める器となれば、あとは“光”と一体化した者ならば1つになれるのだ」
神代キヴォトス人「あの時は我が同乗して“光”を導いたが、その行程を自動化することは不可能ではない。実際に光の巨人が肉体を石像として残して神代が終わり、新たに“光”となった現地人が石像と一体化して闇と戦ったのが超古代文明だ」
北条先生「いいですね。それを神代から続く超古代文明のメテオール:
ロボット職員「あなた自身の力はどうなのですか?」
神代キヴォトス人「我は光の巨人とは根本的に役割がちがう。豊穣の大地を生み出すエネルギープラントであるヒノム火山の地獄の釜の門番としてこの地を安定させることが第一ではある」
北条先生「噴火したら大問題ですもんね」
神代キヴォトス人「しかし、我の本来の肉体である石像が先の戦いで粉々に砕かれてしまったのだ。【アビス】の制御室とも言えるピラミッドの権限はあっても、戦うための力は我自身にはもうない」
ロボット職員「……そうですか」
神代キヴォトス人「過ぎたことを言っていてもしかたあるまい。あれだけの栄華を極めた神代から続く超古代文明さえも滅んだのだから、どんなものであろうと終わりは来る。小娘には悪いことをした」
北条先生「……そう言ってもらえると気が楽になります」
神代キヴォトス人「だが、あれから3000万年も経っているのなら、光と同じく闇もまた勢力の衰えは顕著であろう」
神代キヴォトス人「であるならば、無制限に持ち場を離れるわけにはいかないが、他のピラミッドに眠れる同胞たちの様子を見に行くぐらいのことはできよう」
神代キヴォトス人「その中に空いている巨人像があれば、我も“光”となって戦うことができる日が来るかもしれん」
北条先生「それだけでも十分ですよ!」
北条先生「これはますますキヴォトス全土のハザードマップを完成させる意義がある! キヴォトス各地に隠された巨人像を探すんだ!」
ロボット職員「…………ますますベアトリーチェの好きにはさせられない!」
神代キヴォトス人「しかし、3000万年も経てば、何もかもがちがうな」
神代キヴォトス人「昔はこの地を“
北条先生「興味深いですね。超古代文明を滅ぼした最終戦争の後も人類の歴史が続いたことが関係しているのでしょうか」
神代キヴォトス人「まあ、最終戦争を生き延びた人の子らが超古代文明の遺産を使って肉体改造や環境整備を行った結果かは知らないが、超古代文明の遺伝子が脈々と伝えられている気はするかな」
ロボット職員「どの辺りがですか?」
神代キヴォトス人「見ての通り、今の我は犬の獣人だ。もちろん、我は遥か彼方の星雲から降りてきた光の眷属であり、神代からの直系ではあるが、光の勢力ではヒト族;つまりはヒューマノイド型宇宙人が支配種族で、獣人族は入植のために品種改良される奉仕種族といった階級社会となっていた」
神代キヴォトス人「その階級構造がこの学園都市:キヴォトスでは国権を握るのがヘイローという超人化装置を宿した生徒に限定されていて、産業を担うのが獣人族やロボット族といった人外になっているのを見ると、実態がそっくりに思えてな」
神代キヴォトス人「ただ、なぜ
ロボット職員「もしも超古代文明の階級社会が現在のキヴォトスでも引き継がれていると仮定するなら、それこそ最終戦争の過ちを繰り返さない処置が施されているとか?」
北条先生「それはつまり、どちらかの性を排除することで生徒たちの学生妊娠のリスクを避けるためでは?」
ロボット職員「は? え? あの、北条先生……?」
北条先生「同族の異性がいない現状であっても、年相応に色恋沙汰に興味津々のキヴォトスの生徒たちにそういうのを我慢できると思いますか?」
ロボット職員「そ、それは…………」
神代キヴォトス人「なんだ、そこまで酷いのか?」
神代キヴォトス人「じゃあ、子供が産めない男子の方がキヴォトスから排除されるわけだな。何らかの人口管理プログラムによって、男子生徒が禁制になっていると見える」
北条先生「それはあるかもしれませんね。四次元都市:フォーサイトに長期間いるとヘイローが消失して意識不明に陥ることから、キヴォトスにはヘイローと結びついた何らかの環境システムが適応されているのかもしれません」
神代キヴォトス人「なるほどな。ヘイローはキヴォトス限定か」
北条先生「それに、僕のような地球人のことも
北条先生「実際、キヴォトスで上映されている恋愛映画はキヴォトスの外から輸入されているものが大半で、そうでない場合は男役を使っての男女の恋愛模様が表現されていましたし」
神代キヴォトス人「こうして聞くと、銃声と爆発音が絶えない犯罪都市として堕落しきっているが、それでも人口を維持できているのは意外にもまともな恋愛観が徹底されているからなのかもしれんな」
神代キヴォトス人「男の目を失った女の醜さは筆舌に尽くし難いものがあるからな。女の敵は女というぐらいだ。あまりそういった女の戦いといった意地汚いものを強く感じないのは徹底した恋愛観によって純情が透き通っているからなのだろう」
神代キヴォトス人「――――――いや、ヘイローがあるおかげで恋愛観が矯正されているんじゃないのか、これは?」
ロボット職員「な、何を言うんですか!? 彼女たちの純情が偽物だとでも!?」
神代キヴォトス人「豊穣の大地を造成した管理人である我が自然な作り物だとそう感じたのだから、人の手が入った作為的なものが多分に働いていることは疑いようがない」
神代キヴォトス人「それにだ。逆に考えてみろ。キヴォトスの外でヘイローが失われるのなら、キヴォトスでは通じていた横暴さも外では慎まなければなるまい。その時は手弱女の振る舞いによって助けてもらえるかもしれんぞ。これが男だったら見向きもされんかもな」
北条先生「まあ、理由はどうあれ、真っ当な恋愛観があるおかげで異性に対する距離感を測り損ねる不利益を回避できると考えるなら、有用なものではあるとは思います」
北条先生「そもそも、キヴォトスでは身近に存在しない同族の異性に対する理解が欠如するのは言うまでもない事実です。それを恋愛への興味関心を抱かせることで自ら異性のことについて知るようになるのはキヴォトスの外では重要な能力に繋がると思いますね」
ロボット職員「そう言われると、そうかもしれないけど、何か納得がいかない……」
神代キヴォトス人「となると、存続のためには異性を排除するが、繁栄のためには真っ当な恋愛観を植え付ける必要があり、自衛のためには闘争も辞さないのがキヴォトスの構造ではないのか?」
北条先生「なるほど! それなら身の丈に合わない銃器を扱える知識や能力が一番に備わっているのも納得がいきます!」
ロボット職員「全ては超古代文明を滅ぼした光と闇の最終戦争の記憶がそうさせているのか……」
神代キヴォトス人「――――――まだ何かありそうだな」
神代キヴォトス人「あ、そうだ」
神代キヴォトス人「おい、物質主義や精神主義を極めた場所はわかったが、知性主義の最高学府みたいな場所は現在のキヴォトスにないか? あるとしたら、そこにもありそうな気がするぞ」
北条先生「それなら【ミレニアムサイエンススクール】の名前が挙がりますね」
ロボット職員「あ!」
神代キヴォトス人「思い当たる節があるようだな」
ロボット職員「ありますね。【連邦生徒会】が立入禁止区域に指定している【ミレニアム】近郊にある【廃墟】と呼ばれている場所が」
ロボット職員「あそこには正体不明のオートマタが徘徊しているという噂で、その全貌を知る者はいないはずです」
北条先生「じゃあ、そこもハザードマップ完成のためにいずれは調査しなければならないですね。超古代文明の遺跡がある可能性があります」
ロボット職員「そうですね……」
神代キヴォトス人「………………」
神代キヴォトス人「ふむふむ。3000万年経った後も男女の営みというのは大概変わることがないようだな」パラ・・・
槌永 ヒヨリ「うわーん! 私が集めた本を見られてますぅ! もうオシマイですぅ!」
戒野 ミサキ「文献調査だとか言い張って居座ってくるとか、普通にヒクんですけど……」
神代キヴォトス人「なるほどな。こういうのを見て真っ当な恋愛観を育むわけか。キヴォトスでは女性誌の役割が非常に大きいと見えるな」
神代キヴォトス人「お、これは先生の特集か。ここだけ随分と手汗がついているな――――――」
槌永 ヒヨリ「み、見ないでくださいぃぃいい!」カアアアアアア!
神代キヴォトス人「なら、もう見たから返すぞ、小娘」
槌永 ヒヨリ「ええぇ……」
神代キヴォトス人「さて、今度は――――――」
神代キヴォトス人「おやおやおや、これは発禁処分を受けているじゃないか。どうやって手に入れたのやら」
槌永 ヒヨリ「や、やめてください! 見ないでください! そ、それだけは、それだけは――――――!」
神代キヴォトス人「ほうほう。これはキヴォトスの外から密輸入されたイケナイものだな。わざわざキヴォトス人向けに作られている辺り、そういった需要があるようだな」
神代キヴォトス人「おっと、これはなかなか教育的内容だな。ページいっぱいに男のイチモツを目盛付きで載せてまあ。なるほど、このページを丸めて綴じ込み付録を使って勉強するわけか。よくできているな」
戒野 ミサキ「ちょっと、いいかげんにしてよ! さっきから不快なんだけど!」
神代キヴォトス人「キヴォトス人にとって一般教養の内容に対して何を声を荒げる必要がある? もう少し待て。これで一通り見終わる」
神代キヴォトス人「……いや、これは小娘のものではないな。これだけ新品同様の保存状態で手垢もほとんどついていない発禁本がその辺で拾えるとは思えん」クンクン
神代キヴォトス人「――――――この臭い、あのメイド集団【C&C】の誰かからの差し入れか?」
神代キヴォトス人「悪かった。これを使って勉強会をするつもりだったんだな。返すよ」
槌永 ヒヨリ「ひ、ひぃいいいいい!? どうしてそこまでわかるんですかあああ!?」
戒野 ミサキ「……最低! それでも、大人なの?」
神代キヴォトス人「知っての通り、この時代に目覚めたばかりで、この時代のことを何も知らんから、お前たちと同じ稚児も同然」
神代キヴォトス人「だから、男女共学といこうじゃないか」
槌永 ヒヨリ「え、ええええ……」
戒野 ミサキ「最悪なんですけど……」
神代キヴォトス人の生き残り:サーベラスは 闇の勢力の復活を感じて この時代に
そのため、神代から続く超古代文明のことや闇の勢力についてよく知る貴重な生き証人を専門家として雇うために、一旦は【連邦捜査部
その間、温泉旅館で様々な手続きをしながら渡された本やスマートフォンで暇を潰していたが、それでも暇だったので他に面白い本がないかと旅館を歩き回って槌永 ヒヨリが集めていた本に平然と手を伸ばしていたのだった。
それで、キヴォトスの生徒たちをあるべき方向へと導いている“シャーレの先生”との話の中で議論になった生徒たちのヘイローや性教育についての真相を確かめるべく、発禁処分の女性誌を実際に目にすることができたのは大きな収穫ではあった。
実は、神代キヴォトス人:サーベラスの登場は北条 アキラとしては歴史の生き証人として願ってもない展開であり、謎の学園都市:キヴォトスの歴史や習俗に関する研究を行える歴史家として登用することを打診していたため、こうやって貪欲に情報収集を行っているのである。
もちろん、推定3000万年前の神代から続く超古代文明の生き残りという実質的にキヴォトスの外の人間と変わらないレベルの
しかし、神代キヴォトス人:サーベラスがただの超古代文明の生き残りではないことは怪獣災害のない暇を持て余した日常の中で次第に明らかになっていくのである。
神代キヴォトス人「――――――死臭が漂う。臭うぞ、死の気配が」
槌永 ヒヨリ「え」
戒野 ミサキ「は」
神代キヴォトス人「随分と薄まっているが、お前たちだけじゃないな。お前たちが敬愛して止まない“サオリ姉さん”と“姫”からはそれ以上に死の運命が這い寄っているな」
神代キヴォトス人「なんだ、お前たち【アリウススクワッド】は揃いも揃って死にたがりの集団か? 自分から死に行くことを誓い合っているのか?」
戒野 ミサキ「ふ、ふざけないで! デタラメを言わないで!」
槌永 ヒヨリ「ど、どうしてそんなことが言えるんですか?」
神代キヴォトス人「いや、六感でわかるだろう、そんなこと」
神代キヴォトス人「――――――わからないのか。ああ、わからないんだろうな」
神代キヴォトス人「たしか、【アリウス学園】とやらも元々は【トリニティ】にあったのだったな」
神代キヴォトス人「いいか、【ゲヘナ】には豊穣の大地を、【トリニティ】には悟りの霊地を授けて地上を共に繁栄させていくことを約束していたのだ」
神代キヴォトス人「つまり、【トリニティ】の霊地には目には見えないものを読み取って地上を繁栄に導く霊験あらたかであることを約したのだ」
神代キヴォトス人「それなのに、死相すら読み取れないとはどういうことだ? いや、そういった霊験があること自体を知らないということが信じられん!」
神代キヴォトス人「我は地獄の釜の番人として豊穣の大地を死の大地にしないように死への嗅覚を磨いているが、そういった秘儀を継承して使いこなす霊場が失われたというのなら、堕落しきった【トリニティ】に存在する価値などないぞ!」
戒野 ミサキ「……それ、本当の話?」
神代キヴォトス人「本当だとも。お前たちがこういう女性誌で持て囃している“占い”と呼んでいるものは【トリニティ】の霊地で修行をして人々の人生や暮らしを良くするために活用されていたものの名残なのだぞ」
神代キヴォトス人「我の場合は臭いで大まかな寿命を察知して、手相で具体的な寿命を調べて、患部に巣食う死の糸を刈り取ることもやっているぞ」
神代キヴォトス人「ほら、小娘。だいぶ浄化されたようだが、今も絡んでいた死の糸を切ってやったから、手相が変わったはずだぞ。うん、もう臭くない。右手と左手を見比べてみよ」
戒野 ミサキ「は」チラッ
戒野 ミサキ「え」ジー
戒野 ミサキ「う、嘘?! 何これ!? どうなってるの?!」
槌永 ヒヨリ「ほ、本当です! 右と左で全然ちがいます!?」
神代キヴォトス人「ほれ、こんなふうに天命を知る修行をして加持祈祷をするのが【トリニティ】の本来の役目なのだがな。それが途絶えたのなら、搾り滓の伝統に縋るだけの、何の取り柄もない最低の淀みにしかならんぞ」
神代キヴォトス人「いや、もうすでに【トリニティ】に眠る同胞は地上を去ってしまったのだろうな。我のように息災であるのなら、試練を与えて手ずから秘儀を伝授して鍛え直しているはずだからな……」
戒野 ミサキ「………………」
槌永 ヒヨリ「………………」
神代キヴォトス人「だが、気付いたことがある」
神代キヴォトス人「お前たち【アリウススクワッド】は本来ならもっとムワッと臭う死の運命が待ち受けていたはずだったのが、すでに“光”に包まれて生へと導かれていたのがわかった」
神代キヴォトス人「そう、常に“光”があのロボット職員:マウンテンガリバーから注がれているのがわかった」
戒野 ミサキ「え」
槌永 ヒヨリ「そ、そうなんですか?」
神代キヴォトス人「間違いない。お前たちは彼の者の熱烈な愛の祈りによって今日この場に生き永らえているのだ」
戒野 ミサキ「……祈ったぐらいで、運命が変わるわけないじゃん」
神代キヴォトス人「――――――お前たちのことを祈った上でお前たちの運命が変わるように何かしてきたんだろうな。運命が変わるまで」
槌永 ヒヨリ「そ、そうだったんですねぇ……」
神代キヴォトス人「よいか、勘違いするでない。まずは祈ること、願いを発すること、思いを形にすることで万物が形作られていくのだから、祈っただけで全てが解決するなどという誤った幻想は今この場で捨てろ」
神代キヴォトス人「あるいは、こう考えてみろ。『何かがこうなったらいいな』という願いを天に投げかけたとして、それを願望器が機械的に実現するものだと想像しているのか。ちがうだろう、目には見えない世界でお前たちが投げかけた願いを叶えるために実際に動く何かが存在するはずだろう」
神代キヴォトス人「だから、天に投げかけた願いを叶える仕組みを働かせるための燃料とか対価が必要になるとは思わないか?」
戒野 ミサキ「……たしかに」
槌永 ヒヨリ「そう考えると、実はそんなに難しくない?」
神代キヴォトス人「そういうのを教えるのが【トリニティ】になる場所に築いた悟りの霊地の役割だったのだ!」
神代キヴォトス人「ちなみに、生物は『生まれる』『育つ』『殖える』『死ぬ』の循環にあって不即不離であるから、我は死の線を断ち切るだけならず、恋の線を結んで『殖える』ことも促すことができるし、恋の線を切ってカップルを破局させることもできる」
神代キヴォトス人「だから、この女性誌に載っている恋愛必勝法なるものを我は鼻で笑うことができる! 恋の線すら見えないのに必勝法とは片腹痛いわ!」
戒野 ミサキ「ヒヨリ、まともに相手にしない方がいい。私たちよりももっと相応しい相手がいる。そいつらに押し付けよう」
槌永 ヒヨリ「そ、そうですねぇ。正直に言って、ついていける気がしないです」
戒野 ミサキ「でも、今のを聞いてマダムが【アリウス】に現れた理由も、姫にこだわる理由も少しわかったかもしれない……」
槌永 ヒヨリ「やっぱり、【アリウス】には秘密が眠っているのでしょうか?」
戒野 ミサキ「結局、そういうことだろうね。【アリウス】を利用するために現れた大人なだけなんだ、マダムも」
棗 イロハ「先生、もうその辺にして今日はもうサボりませんか? せっかくの温泉旅館なんですから」
北条先生「棗さん、あなたは療養目的でここにいるのですから、僕の仕事に付き合う必要はないですよ?」
棗 イロハ「だから、昼間から涼しい風が入り込む場所で一緒に横になりましょうよ。最高の一時になると思いますよ」
北条先生「僕は今の時間が最高ですから。怪獣退治の専門家として仕事に邁進している時間が」
棗 イロハ「……先生。先生がそういう人なのはわかってます。だから、みんながついていこうと思ったんです」
棗 イロハ「けど、先生には責任があると思いますよ。地球ではそれが当たり前なのかもしれませんけど、距離が近いんですよ、先生は。それで地球人のおもてなしの心に勘違いさせられるキヴォトス人が何人も出ているんですから」
棗 イロハ「ですから、私は今からこの衝立1枚を隔てたところでお昼寝しますから、先生も仕事が終わったら来てくださいね」
北条先生「しかたがないですね」
北条先生「わかりました。いいですよ。一緒に横になりましょうか、仕事が終わったら」
棗 イロハ「え!?」
北条先生「どうかしましたか?」
棗 イロハ「ほ、本当ですか、さっきの言葉?」
北条先生「――――――整う必要がありますので」
棗 イロハ「や、やった……」
北条先生「……ホント、まだまだ子供なんだから」クスッ
モワアアアアアアアアアアアアアアアアア!
棗 イロハ「………………」
戒野 ミサキ「せ、先生……、あと何分……?」
北条先生「あと180秒」
槌永 ヒヨリ「あ、暑いですぅ……」
北条先生「苦しいのでしたら、先に出て汗を拭って水分補給をしてください。倒れられても困るので」
神代キヴォトス人「こういう時、意識があるかどうかを見るのにヘイローは便利だが、脱水症状で急死するのには用心せねばな」
秤 アツコ「だ、大丈夫、サッちゃん?」
錠前 サオリ「…………ああ」
美甘 ネル「……さすがにこれは暑いなぁ」
棗 イロハ「……先生?」
北条先生「大丈夫ですか? 棗さんも小柄なんですから成人男性より短めに岩盤浴を切り上げてくださいよ?」
棗 イロハ「……そんなに私と横になるのが嫌だったんですか?」
北条先生「していい理由がないですから」
北条先生「だから、ここが僕ができるギリギリのラインですよ」
棗 イロハ「……本当にこの人はどうしようもないぐらいに罪作りですね」
棗 イロハ「ホント、ありがとうございます、私のワガママを聞いてもらえて」
棗 イロハ「なら、意識朦朧としそうなので、私を外に連れ出して涼しいところで介抱してくださいよ」
北条先生「はい。わかりました」
北条先生「じゃあ、腕を伸ばして」
棗 イロハ「はい」ギュッ
棗 イロハ「……すごい汗の匂い。それに大きくて温かい」ポー
北条先生「それじゃあ、棗さんを介抱してきます。みんなもそろそろでいいので出てきてくださいね」
秤 アツコ「……うん」
錠前 サオリ「……ああ」
神代キヴォトス人「先生がああ言ってくれているのだから、お前たちも意地を張らずに出るぞ。ほら」
戒野 ミサキ「う、うん……」
槌永 ヒヨリ「ああ、暑かったですぅ……」
美甘 ネル「おい、お前たちも出るぞ」
秤 アツコ「もうちょっとだけ」
錠前 サオリ「私が付き添うから先に出てくれ、みんな」
美甘 ネル「わかった。3分で出てこいよ」
美甘 ネル「ああ、アツイアツイアツイ……」ホカホカ・・・
秤 アツコ「ねえ、サッちゃん」
錠前 サオリ「……何だ、姫?」
秤 アツコ「やっぱり、先生って優しいよね。それでいてズルいよね。みんな、騙されちゃうのも無理ないよね」
錠前 サオリ「?」
秤 アツコ「ごめん、悪口を言っているんじゃないんだ」
秤 アツコ「みんなのことを思って みんなに合わせて みんなを喜ばせようと一所懸命だから、誰か一人のためだけの立居振舞じゃないってこと」
秤 アツコ「でも、そのおかげで失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者としてキヴォトスのみんなから愛されていろいろな揉め事を解決することができている――――――」
錠前 サオリ「そうだな。そのおかげで、私は怪獣災害に巻き込まれた姫を失わずに済んだ」
秤 アツコ「サッちゃんも同じだったね」
錠前 サオリ「うん?」
秤 アツコ「サッちゃんも先生と同じで【アリウス】で必死に藻掻きながらも自分よりも仲間のために頑張ってきたわけだから」
錠前 サオリ「そのことを重荷だと思ったことはないぞ、私は」
秤 アツコ「うん。わかってる。でも、ありがとう、サッちゃん。ずっと」
秤 アツコ「だからこそ、サッちゃんが私たちにしたように、先生が無理をしないかを見守って欲しいんだ」
錠前 サオリ「だが、それは――――――」
秤 アツコ「大丈夫。私も強くなるから、サッちゃんのやりたいことをやれるようにしてあげたい」
秤 アツコ「それに、先生の仕事ぶりを見ていてわかっていると思うけど、毎週必ず定例会議を開いて一人一人の様子を確認するのって、『何も言わなくても任せられるぐらいの信頼がない』ってことの裏返しだから」
秤 アツコ「何も言わなくても、離れていても、立場が変わっても通じ合えることが本当の信頼の証だから、私はサッちゃんとはそういう関係になりたいんだ」
――――――一緒にいることが嫌になったんじゃなくて、一緒じゃない時も心はずっと一緒って素敵じゃない?
そして、温泉合宿は終わりを迎える。その間にも様々な生徒たちが温泉旅館を訪れて、私たちはたくさんの“
外を出歩けば温泉街の獣人族からもはや神獣のように崇められている神代キヴォトス人:サーベラスがいて、失踪した“連邦生徒会長”の後継者としてキヴォトスの頂点に昇りつめた地球人:北条 アキラがいて、極一部の生徒たちから種族を超えた恋慕を抱かれているロボット職員:マウンテンガリバーがいる。
猫塚 ヒビキはその極一部の生徒たちの代表格であり、角楯 カリンと並んで
その猫塚 ヒビキが温泉旅館を訪れると、3Dスキャナーを使った採寸をすることになり、そこから試着を依頼されたのが先生が着ている万能戦闘服:GUYSスーツのレプリカであり、パンツタイプとスカートタイプの需要の比較調査もなされた。
【アリウススクワッド】の場合、姫だけスカートタイプを選択したが、愛銃にデコレーションを施すのが一般的なキヴォトスにおいては些か色合いが地味ということで事前調査では不評であったことを知った先生は苦笑いしていた。
なので、先生の方で色指定を行い、襟の部分は色で階級を示すので固定、黄色の部分が目印のジャケットなので固定、それ以外の箇所は公序良俗に反しない範囲で自由に配色していいことを服装規則に明文化することとなったのだ。
そんな中、犬の亜人種の猫塚 ヒビキが目にした犬の獣人族の神代キヴォトス人:サーベラスは彼女の目から見ても精緻のとれた美の結晶であるらしく、思わず見惚れてしまったのを振り払って
実際、その思いの強さは
それはそれとして、【ミレニアム】が誇る“マイスター”の一人として、現状でも完全再現ができない地球が誇る高度な技術に深い敬意を払っていることが見え、
あらためて先生から正真正銘の本物のGUYSスーツを借り受けると、一見するとレプリカと同じ生地の厚さの中にパワーアシスト機能、生命維持機能、耐熱・耐寒・耐G・耐弾性能が敷き詰められている技術の結晶に惚れ惚れしていた。
そして、先生の愛銃:トライガーショットの整備をこの場で行い、【ミレニアム】で試作された劣化コピー品の性能評価も依頼するのだ。その技術力の高さは見ているだけでも伝わる。
そうした猫塚 ヒビキの様子を神代キヴォトス人:サーベラスは頬を膨らませた姫と一緒に眺め、超古代文明における婦道を語るわけなのだが、さすがにロボット族に奉仕するのならば専門技術が必要だと姫に諭す他なかった。
姫からすれば、大の恩人である先生と姫を守る騎士である
ただ、だからこそ、神代キヴォトス人:サーベラスは姫のことを“ユザレの末裔”と呼んで励ましていた。それが意味するところは私にはわからないのだが、そうとは知らずに姫を守っていた私に対して労いの言葉をもらえたのは素直に嬉しかった。マダムは何があってもそんなことは絶対に言ってくれない。
そして、天命に生きることの何たるかを教えてくれたのだ――――――。
神代キヴォトス人「よいか、アツコ。【ゲヘナ】には【ゲヘナ】の、【ミレニアム】には【ミレニアム】の役割がある」
神代キヴォトス人「そして、同じように【トリニティ】にも【トリニティ】の役割というものがある」
神代キヴォトス人「そのために時代を超えて受け継がれてきたものが貴女の中にあるのだから、猫塚 ヒビキや角楯 カリンのことを羨んでもしかたがないのだ」
神代キヴォトス人「貴女こそが【トリニティ】で忘れ去られた使命に生きる血族の末裔なのだから、その血に受け継がれてきた“光”を次代に伝えて欲しい」
秤 アツコ「それって、どういうこと?」
神代キヴォトス人「――――――貴女には義姉君が居ただろう?」
秤 アツコ「はい」
神代キヴォトス人「この地に再び光の巨人が現れたのは、貴方の義姉君の愛の祈りからなのだ」
神代キヴォトス人「その愛の始発点は義妹である貴女を守りたいという願いから」
神代キヴォトス人「そのおかげで、貴女は生きてこの地に足を踏み入れ、光の眷属である我は貴女のおかげで再び
秤 アツコ「で、でも、お義姉さんは私を残して『光になる』って言って、もう二度と私の前に――――――」グスン・・・
神代キヴォトス人「我にはそれがどういうことなのかはわからないが、全ては貴女を愛していたからこそ」
神代キヴォトス人「しかし、今日という現在に繋げてくれた義姉君の想いに報いるためにも、アツコよ、貴女は【トリニティ】の真の後継者“ユザレの末裔”としての使命に生きねばならん」
神代キヴォトス人「さすれば、貴女の想いは遂げられよう」
――――――なぜならば、義姉君が託した“光”は