Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
――――――この
M78ワールドの地球で生まれ育った地球人:北条 アキラは現代日本によく似た謎の超巨大学園都市:キヴォトスで起きている日常風景に沸々と怒りと嘆きが沸き上がっていた。
なぜ地球人:北条 アキラがキヴォトスという異世界に居るのか、その経緯を思い出せないまま、年端もいかない女子生徒たちが思い思いの可愛らしいデコレーションをした愛銃の引き金を簡単に引いて日常的に銃犯罪を行っている惨状に心を痛めたのだ。
なぜなら、地球人:北条 アキラは小学校の先生であり、子供たちの健やかな成長を願って止まないが故にウルトラマンの心を教育現場で実践しようとして、防衛チームの隊員になることを止めて教職の道を志していたからなのだ。
だから、キヴォトスという異世界で目覚めた時に初めて会ったキヴォトス人:七神 リンから“先生”と呼ばれて受け容れていたのは自然なことであり、七神 リンという明らかに地球人とは異なる尖った耳の異種族の女性の話には静かに耳を傾けていた。
というのも、M78ワールドの地球では
M78ワールドの地球人:北条 アキラとしては異星人や異種族が存在することは周知の事実であり、自身もまたウルトラマンに憧れて防衛チームの候補生にまでなっていたことから、こうした異星人や異種族とのコミュニケーションについては多少の心得があったのだ。
さて、自分が何のためにキヴォトスに喚ばれたのかを落ち着いて話を聞きながら状況分析をしていると、小学校の先生としてクラスの生徒たちとの交流で培われた観察眼が真っ先に『代行』の腕章をした七神 リンの表情にうっすらと浮かぶ疲労の色を見つけ出した。
まだわからない。優秀だから一人で多くの仕事を抱え込んでオーバーワーク気味になっているのか、それとも上司が無能ゆえのブラック職場なのかが。
最初に言葉を交わした印象だけで、七神 リンという尖った耳の異種族の女性については『職務に忠実な堅物だが愛想が悪い』という情報が得られ、こういった手合にはストレスを与えて円滑なコミュニケーションの阻害にならないよう、こちらから積極的に質問をしていくのは避けるのが賢明に思えた。
――――――キヴォトスへ、ようこそ。先生。
窓から眼下に見える街並みからすると、ニューヨークの行政区:マンハッタン区のような臨海都心にキヴォトスの行政府【連邦生徒会】が所在していることが確認できた。すでに【連邦生徒会】という言葉だけで大体のキヴォトスの政体について察しがついていたが、もしかしたら地球人とはまったく異なる生態や文化なのかもしれないので、まだ質問はしない。
少なくとも、キヴォトスが“連邦国家”であること、行政府が“生徒会”と呼ばれていることから重度の学歴社会であることが推察できた。それは高等教育を受けられる選ばれし人間のみが支配層になれるディストピアであることを想像させた。
また、異世界なのに日本語がキヴォトスの公用語となっているらしいことを見るに、学園都市:キヴォトスと呼ばれる異世界は地球をモデルにした異星人たちの開拓惑星ではないかという推測が頭の中を過り、地球を守ってきたウルトラマンたちが夢中になった地球の文化を宇宙に誇れるものだと主張できるように文化人としての教養を磨いてきた北条 アキラとしてはそれで少し嬉しくなるものはあった。
しかし、深刻なのは『あの“連邦生徒会長”が選んだ』と言う理由だけで妙な信頼感が初対面なのに自分に対して向けられていることであり、それだけ藁にも縋るような追い詰められた状況であるようにも感じられた一方、
そもそもの話、“連邦生徒会長”という誰なのか会った覚えのない人物の手によって“シャーレの先生”としてキヴォトスに招かれていたらしい事実に身体が凍りつきそうになった。
ウルトラマンに憧れてどこに出しても恥ずかしくない宇宙に誇れる地球人としての自覚を持って精進していた北条 アキラが地球人代表として適任だったという評価の結果なのか、たまたまキヴォトスに流れ着いてしまっただけなのかはわからないが、その胸の内には冒険心に沸き立つ高揚感と未知への不安があり、それを悟られないようにするために話を合わせるが、口元が不敵に歪んでしまうのを堪えるのに必死だった。
そこから詳細な説明を受ける前に“連邦生徒会長”が失踪したことによるキヴォトス各地の混乱についての【連邦生徒会】からの公式な見解を各学園の代表として駆けつけた生徒たちが直接聞きに来ることになり、そこで“連邦生徒会長”がキヴォトスの混乱を収めるために喚んだのが“シャーレの先生”であることが明かされるのであった。
そのため、暴走するサンクトゥムタワーの制御権を回復させるための仕掛けがここから30km離れた外郭地区の【シャーレ・オフィス】にあるので、地元の暴動を鎮圧して奪回するように【連邦生徒会】から命令されるのであった。
そして、【連邦生徒会】に乗り込んできた4人の女子生徒を見て、初めてキヴォトスの生徒にはヘイローと呼ばれる頭から浮かんでいる謎の輪っかと女の子が持つには物騒すぎる銃器がセットになっていることに気づき、連邦生徒会長代行:七神 リンもまたよく見るとヘイローと銃がセットになっていたことを確かめることになった。
それから生徒たちの話を横で聞いて状況整理をすると、学園都市:キヴォトスとは軍事国家の開拓惑星として効率的な人材育成を図ろうとして極端化した結果、深刻な学歴社会となってモラルハザードから治安維持機能が著しく消耗したディストピアなのではないかと言う;アイザック・アシモフのSF小説のような世界が現実のものになった世界ではないかという疑念が深まっていた。
男子生徒というものが何故か存在しないように見える完全な女性社会で銃器や兵器が氾濫している犯罪都市と化しているのを見て、女性だけの国を創ろうとして酷評されることになった世間知らずのフェミニストたちの失敗談のことを思い出す。
いや、よく見ると自律したロボットや人語を話す獣人たちもいるようなのだが、キヴォトスの行政府【連邦生徒会】にいるのは全て女子生徒だったのを見ると、あれらは女性社会の社会インフラの維持や労働力の確保のために
数千もの学園が存在しているという謎の超巨大学園都市:キヴォトスの成り立ちを想像して眉を顰めてしまったが、そこから更に地球人:北条 アキラとしては許せない現実が舞い込んできた。
失踪した“連邦生徒会長”によって地球人:北条 アキラが赴任させられていた【連邦捜査部
北条先生「ふざけるな」
七神 リン「え」
北条先生「僕は地球人だ。年端もいかない子供たちが平然と銃を撃ち合う状況は地球では許されないことだ」
北条先生「たしかに、僕は小学校の先生だけど、同時に防衛チームの候補生でもあったんだ。人に銃を向けることの罪深さは一番理解している」
七神 リン「ですが、先生も腰に銃を――――――」
北条先生「これは【GUYS】で制式採用されているトライガーショットと言って、決して人に向けて撃つものではなくてだね――――――」スチャ
北条先生「ん」ピタッ
――――――どうして僕は【GUYS】の装備をしているんだ? 今の僕は小学校の先生なんだぞ?
北条先生「………………」
早瀬 ユウカ「キヴォトスでは見たことがない形状の装備ですね、それ」
羽川 ハスミ「キヴォトスの外から“連邦生徒会長”がお招きした方というのは本当みたいですね」
守月 スズミ「え、でも、人に向けて撃つものではないと言うのでしたら、先生は何のために喚ばれたのですか?」
北条先生「正直に言います。僕は“連邦生徒会長”が誰なのかもわかっていないです。会った覚えがないです」
早瀬 ユウカ「ええええええええ!?」
北条先生「そして、どうやってキヴォトスに来たのかも記憶が曖昧なんです」
羽川 ハスミ「ええ……」
北条先生「ですが、僕が【GUYS】の装備をしているということは、そういうことなんでしょう?」
守月 スズミ「ど、どういうことなんですか?」
北条先生「それはね、みんな」ニヤッ
――――――僕が怪獣退治の専門家としてキヴォトスに喚ばれたんじゃないかってことですよ。
そして、D.U.外郭地区での【シャーレ・オフィス】奪還作戦で、何の躊躇いもなく銃を乱射して平然と銃弾に浴びてもヘッチャラなキヴォトス人の精強さを地球人:北条 アキラは目の当たりにするのだった。
その一方で、あくまでも『人に対しては絶対に銃を向けない』という防衛チームのポリシーに従って、自分から銃を抜くことは絶対にしないと地球人:北条 アキラは言い張り、
たしかに銃弾1発で致命傷になりかねないキヴォトスの外から来た大人に無茶はさせられないという理解もあって、たまたま【連邦生徒会】に押しかけてきた4人の生徒たちが主力となって作戦を進めることとなった。
一方で、もしもの状況になったらどうするのかを事細かく七神 リンに質問攻めにしているところを見たことで、本気で心配してくれていることを知って4人の生徒たちの心証はいくぶんか良くなったのであった。
ところが、前線を突破して【シャーレ・オフィス】までもう少しで到達しそうなところに、横流しされた巡航戦車:クルセイダー1型を暴徒たちが持ち出したことで、『さすがにこれは子供同士の
どうにかして戦車を突破しようと4人の生徒たちが遮蔽物に身を隠して対策を練り始めた直後、地球人:北条 アキラが抜き放ったトライガーショットの一撃が戦車を破壊してしまったので、一瞬何が起きたのか理解することができず、思わず前と後ろを二度見する他なくなってしまったのだった。
トライガーショットの正体がキヴォトスには存在しない光線銃だったという驚愕の事実とその威力を前に、これはたしかに人に向けて撃っていいものではないと誰もが納得すると同時に、頑なに銃を抜こうとしないのも良識ある大人の振る舞いであったと心から理解することができた。
また、ピンチの時には仲間を助けるために即座に行動する点も評価されることになり、直接的には戦闘には参加することはないものの、そうした大人が見守ってくれるだけでも非常に心強いものだと生徒たちには感じられた。
そして、【シャーレ・オフィス】に到達した地球人:北条 アキラは襲撃犯:狐坂 ワカモやその手勢が潜伏していることを警戒しながら、4人の生徒たちを引き連れて内部の探索を慎重に行うのだった。
そうした中、生徒たちは怪獣退治の専門家を自称する地球人:北条 アキラを“連邦生徒会長”が喚んだことの真意について思うところを語り合った。
キヴォトスにはたしかに建物と同じぐらいの大きさの怪生物や破壊兵器が出没しているらしいという噂が流れていたため、その対策として地球人:北条 アキラを【連邦捜査部
それから襲撃犯:狐坂 ワカモの逃走が確認され、【シャーレ・オフィス】に到着した連邦生徒会長代行:七神 リンの案内で“連邦生徒会長”が残した
七神 リン「おまたせしました」
七神 リン「ここに、“連邦生徒会長”が残したものが保管されています」
七神 リン「……幸い、傷一つなく無事ですね」
七神 リン「先生、これを受け取ってください」
北条先生「――――――タブレット端末?」
七神 リン「はい。これが“連邦生徒会長”が“先生”に残したもの」
――――――【シッテムの箱】です。
北条先生「不思議な名前だね」
羽川 ハスミ「こ、これが……?」
守月 スズミ「今のキヴォトスの混乱を収めることができるもの……?」
早瀬 ユウカ「見た感じ、普通のタブレット端末に見えるわね……」
七神 リン「ええ。普通のタブレットに見えますが、実は正体がわからないものです。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みも全てが不明」
七神 リン「“連邦生徒会長”は【シッテムの箱】は“先生”のもので、“先生”がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」
七神 リン「私たちでは起動すらできなかったものですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか。それとも……」
守月 スズミ「どう思いますか、先生?」
北条先生「生体認証だと思います。問題はいつ僕のバイタルデータを採取して登録していたかなんですが、怪獣退治の専門家として喚んでいたとしても、サンクトゥムタワーの制御権に干渉できるのは異常だと思いますね」
北条先生「ともかく、地球から喚ばれてきた以上は何も無いってことはないはずですが……」
北条先生「ん、んん……?」
七神 リン「では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています。邪魔にならないよう、離れています」
羽川 ハスミ「私たちもここは見守ることにしましょう。まだ建物内部に暴徒が隠れている可能性もありますので」
早瀬 ユウカ「うん、そうね。先生を銃弾から守れるようにシールドを張れるようにしておくわ」
北条先生「……どういうことだ、これって?」
システム接続パスワードをご入力ください。
……我々は望む、七つの嘆きを。
……我々は覚えている、ジェリコの古則を。
北条先生「――――――
羽川 ハスミ「どうしたんですか、先生?」
北条先生「みんな、これを見て欲しいんだけど――――――」
守月 スズミ「やっぱり、先生でもダメだったんですか?」
北条先生「え?」
早瀬 ユウカ「貸してもらえませんか? どこかに電源ボタンが隠されているのかもしれません」
北条先生「いや、電源はもう入っているんだ。パスワード画面にも入っている」
羽川 ハスミ「……何も映ってませんが?」
守月 スズミ「先生にだけ画面が見えているのでしょうか?」
早瀬 ユウカ「特定の人物だけに画面が見える技術だなんて、聞いたことがないわ」
北条先生「ともかく、ここから進めてみます」
羽川 ハスミ「お願いします、先生」
北条先生「………………」
北条先生「……ログインできた」
こうして【シッテムの箱】は起動され、意識が電脳空間にダイブすることで疑似人格プログラムを付与されたメインOS:
しかし、サンクトゥムタワーの制御権を回復させたことによって【連邦生徒会】の機能が回復したとしても、“連邦生徒会長”失踪による混乱と破壊はそれで収束することはなく、未だに銃声と爆発音が遠くから鳴り響いていた。
作戦完了によってこうして知り合った生徒たちと別れた後、赴任先として宛てがわれた【シャーレ・オフィス】の内部構造を確認して回り、これから何をするのか、どうすればいいのかを連邦生徒会長代行:七神 リンに聞かされることになった。
しかし、キヴォトスの情報や状況を把握できていないため、いきなりは仕事はできないということで情報が一番集まる場所【連邦生徒会】に一緒に戻ろうと提案する前に、すぐにでも本来の業務に戻ることに頭がいっぱいになっていた七神 リンは【シャーレ・オフィス】に地球人:北条 アキラを一人置き去りにしてしまったのだ。
【連邦生徒会】のヘリコプターが飛び立ってしまったのを見送ってしまった後、とりあえず腹が減ったので周辺の店に買い出しに行って、そこで近隣住民への挨拶と情報収集でもしようと思っていたら、よく考えたら当然のことで、暴動の跡地となった通りの店は荒れ果て、とてもじゃないが商売ができる状態ではなかった。
そもそも、キヴォトスの通貨を持っていないので買い物をすることもできないことに気づき、すぐにでも【連邦生徒会】に支度金と物資を送るように連絡しようとした。
その時、本当は実戦経験がない予備役のくせに怪獣退治の専門家であることを言い張っている地球人:北条 アキラの目の前に彼の者は現れたのだった――――――。
ロボット職員「あの、すみません。ここが【連邦捜査部
北条先生「えと、あなたは――――――?」
ロボット職員「私は“連邦生徒会長”とここに新しくできる部活の職員をする契約で結んでいたわけなのですが、あなたが“シャーレの先生”なのでしょうか?」
北条先生「そういうことになっています」
北条先生「太陽系第3惑星:地球からやってきました北条 アキラです」
ロボット職員「――――――『地球』ですか」
北条先生「はい。防衛チーム【CREW GUYS JAPAN】の北条 アキラです。怪獣退治の専門家として喚ばれました」
ロボット職員「そうですか」
ロボット職員「………………良かった。僕と同じ地球人で、しかも防衛チームの人間だ」
ロボット職員「私はマウンテンガリバーと申します。【トリニティ総合学園】の職員を長年勤めておりました」
北条先生「――――――【トリニティ総合学園】と言いましたか。たしか、羽川 ハスミさんと守月 スズミが所属している学園でしたね」
ロボット職員「そうです。お二人にお会いしたのですね。お二人は学園を代表する有名人なんですよ」
北条先生「いろいろとキヴォトスのことには詳しいみたいですね」
ロボット職員「ええ。そのために“連邦生徒会長”との契約で“シャーレの先生”の補佐をすることになりました」
ロボット職員「さあさあ、キヴォトスに来て日が浅いでしょうから、私がお教えしますよ、キヴォトスのことについて何でも」
北条先生「じゃあ、まずは美味しいものを食べさせてください。この通り、来たばかりで支度金も住居も提供されていませんので根無し草なんですよ」
ロボット職員「え!? あ、それは大変ですね!?」
ロボット職員「えっと、ちょっとまってください!」
ロボット職員「あ、そうですねぇ、ここはひとまず この場を離れて、先生の就任祝いを兼ねて行き着けの居酒屋に案内しましょう!」
北条先生「……あなたはロボットのようですが、食べることができるのですか?」
ロボット職員「あ」
ロボット職員「いえいえ、私はもう食べることはできませんが、晩酌に付き合うことぐらいの経験はしてきましたので」
北条先生「そうですか。では、ご馳走になりますよ、マウンテンガリバーさん」
ロボット職員「ええ。こちらこそ、よろしくお願いします、北条先生」
ロボット職員「一緒に今度こそキヴォトスを救いましょう」
北条先生「……はい」
――――――怪しい。まるでキヴォトス人と話をしている感覚がしない。それがかえって。
地球人:北条 アキラはロボット職員:マウンテンガリバーとの最初の出会いをその日の宿泊先の安全なホテルのベッドの上でそのように振り返っていた。
なぜなら、この短期間でキヴォトスの惨状を見て学んだことは、地球人といろいろ違いすぎるキヴォトス人は根本的に自分本位で思いやりの心が欠けていて、引き金を引く指が軽いことから常に殺伐としたものが意識的・無意識的に全方位に向けられていることであった。それが当たり前であるという雰囲気が平和な時代に生まれ育った地球人:北条 アキラから見てすぐに浮かび上がるキヴォトスの異様さだった。
つまり、連邦生徒会長代行:七神 リンの配慮がこれほどまでに行き届いていないようなまったく余裕のない状況で、ここまでの体験から仕事ぶりが決して丁寧だとは思えない“連邦生徒会長”が気を利かせて“シャーレの職員”を用意していたとは到底思えないのだ。最初から居ることを知っていたのなら、七神 リンからも紹介があったはずなのだ。
事実、“連邦生徒会長”と契約を結んで“シャーレの職員”になった者がいたことは七神 リンも初耳であり、契約の真偽を確かめることは今となっては不可能のため、一人になった直後にタイミングよく駆けつけてくれた謎のロボット職員:マウンテンガリバーのことを【トリニティ総合学園】に長年勤めてきた職員であった職歴を信用して今は力を借りる他なかった。
そこからは“シャーレの先生”と“シャーレの職員”の二人三脚で【シャーレ・オフィス】周辺の治安回復に乗り出すことになり、“連邦生徒会長”不在によって閉校になる【SRT特殊学園】の一部の生徒たちの反乱の鎮圧も行うことになった。
そのため、【シャーレ】の活動の最初期で力を借りることになった生徒たちのほとんどが【SRT特殊学園】の出身であり、【シャーレ】の権限で合法的に治安維持活動に参加させて役割を与えることで自分たちの存在意義が取り戻せたため、デモ活動と称した散発的な反乱も収束していくことになったのだ。
そして、これまで“連邦生徒会長”がどのように【SRT特殊学園】を運用していたのかも聞くことができ、そこから各学園の極秘情報も閲覧することができ、各学園の傾向と対策も頭に入れることができた。
こうして【SRT特殊学園】の生徒たちを実質的に【シャーレ】に引き抜いて治安維持活動に貢献することで少しずつ信頼と実績を積み上げていくことになり、後にキヴォトス史上最大の軍事力【キヴォトス防衛軍】が結成される土台が着々と築かれていくことになるのであった。
ただし、この段階ではいくら【SRT特殊学園】の生徒たちの反乱を収束させた功績を【連邦捜査部
常識的に考えて【連邦生徒会】が自分たちの治安部隊【SRT特殊学園】を統制するのは当たり前のことなので【連邦捜査部
むしろ、現在の【連邦生徒会】には【SRT特殊学園】を統制するだけの力も適切に運用する能力もないという醜聞をキヴォトス中に広めることにしかならなかったのである。
そのため、少しでも醜聞になるものを隠すように直走っていた【連邦生徒会】が【連邦捜査部
バババババババ・・・! カチカチカチッ・・・!
ロボット職員「まだやりますか? 貴重な弾薬が無駄になるだけですよ?」バチバチ・・・ ――――――電磁装甲!
月雪 ミヤコ「ま、まだです! ここであなたたちのような大人に屈してしまったら、私たちの正義は……!」
北条先生「無抵抗の人間を攻撃することが【SRT特殊学園】の正義なのですか?」
月雪 ミヤコ「うっ」
北条先生「良かったですね。こちらの“シャーレの職員”は電磁装甲のおかげで無傷ですけど、キヴォトスの外からやってきた僕の方は1発でも弾丸を受けたら致命傷を負うんです」
北条先生「あなたたちは自分たちの正義を貫くために人殺しになる覚悟はありますか?」
月雪 ミヤコ「……ひ、『人殺し』?!」ゾクッ
月雪 ミヤコ「…………くっ」
月雪 ミヤコ「――――――【RABBIT小隊】各員、これ以上の戦闘の継続は無意味です。銃を下ろしてください」
北条先生「ようやく話を聞く気になってくれましたね」
月雪 ミヤコ「……先生。私たちは、あなたのような大人が一番嫌いです」
ロボット職員「…………み、ミヤコ! そんなことを言っちゃダメじゃないか!」
月雪 ミヤコ「………………」
北条先生「ありがとう。あなたたちを殺人犯にさせずに済んだのですから最高の褒め言葉ですよ、今のは」ニッコリ
月雪 ミヤコ「え!?」
ロボット職員「せ、先生……?」
北条先生「さあ、お腹が空いただろうし、お肌をツヤツヤするコラーゲンたっぷりの杏仁豆腐はいかが? 今ならカットフルーツもたっぷり入っているよ?」パカッ
月雪 ミヤコ「――――――あ、『杏仁豆腐』、ですか!?」ジュル・・・
月雪 ミヤコ「あ」
月雪 ミヤコ「そ、その手には乗りません!」
北条先生「そんなことを言わずに! こんなところでデモ活動のために野営し続けて本当に大丈夫なの?」
北条先生「いいかい。これから大切な話をするんだから、話をちゃんと聞いてもらいたいというこちらの厚意を無下にしないで欲しいな。コンディションが悪い状態で頭が回るわけないよね」
北条先生「それで後で『騙された』とか『話がちがう』とか言ってきても、それはいつでも過酷なミッションを遂行するためにコンディションを最高に維持する努力を怠ったきみたちの自業自得にしかならないんだよ」
北条先生「とりあえず、杏仁豆腐、食べようよ? 美味しいよ? 今日はそのために来たんだから、食べないなら持って帰って他の子に全部あげるよ?」
月雪 ミヤコ「……わ、わかりました! わかりましたから! お話を聞かせてもらいますから! そのために杏仁豆腐をご馳走になります!」
北条先生「素直でよろしい」
ロボット職員「や、やった!」
北条先生「やったね」
ロボット職員「ありがとう、先生! ありがとうございます!」
ロボット職員「……うん、本当に良かったよ、ミヤコ! この人で本当に良かった!」
北条先生「きみたちは何の理想を抱き、何のために厳しい選抜試験に合格して“連邦生徒会長”が指揮する【SRT特殊学園】に入学したのか!」
北条先生「――――――超エリート校の生徒であったと周りに『いいだろう!』と
北条先生「――――――混迷を極めるキヴォトスに秩序をもたらして『ありがとう』の言葉と感謝状を受け取りたいと願ったからか!?」
北条先生「さあ、どっちだ!? 卒業証書のために【SRT特殊学園】の超エリートであることを誇りとするか、世に蔓延る悪を滅ぼして正義を示すために【SRT特殊学園】の生徒になることを志したのか――――――!?」
北条先生「もしも【SRT特殊学園】に入学した時の志が変わっていないのなら、失踪した“連邦生徒会長”が新たに用意した部活【連邦捜査部
北条先生「キヴォトス中に存在する全ての学園の生徒たちを制限なく加入させ、各学園の自治区で制限なしに戦闘行為が認められている【連邦捜査部
北条先生「もちろん、最新鋭の装備と設備と潤沢な予算は用意できないから、待遇は以前よりも下がるだろう!」
北条先生「でも、今もこうして“連邦生徒会長”が失踪してからずっとキヴォトス中が混乱に陥っている中、きみたちは“連邦生徒会長”の行方を探すことにかまけて混乱を収めることができない【連邦生徒会】と何がちがうのだとはっきり言いたい!」
北条先生「きみたち【SRT特殊学園】の存続には最高責任者である“連邦生徒会長”の復帰が不可欠なのだから、【連邦生徒会】と目的は一緒のはずなんだ!」
北条先生「それなのに、【連邦生徒会】の決定にも従わず、失踪した“連邦生徒会長”の影を追い求めて秩序を乱す反乱分子の一員に成り果てるとは何事か!?」
北条先生「……であるのならば、【連邦捜査部
北条先生「そして、約束します! “連邦生徒会長”直属である【SRT特殊学園】の運用規則を変えることで、あなたたちの居場所を取り戻します!」
北条先生「そのための第一歩として、みんなが心の底から守りたいと思えるものを用意いたしますので、まずは僕たちと一緒に【シャーレ・オフィス】を中心に『犯罪ゼロ地区』の理想を実現しましょう! すでにあるものを作り直すよりも、一から新しく作った方が時には早いのです!」
北条先生「志を一つにすれば必ずや『犯罪ゼロ地区』は達成できます! 資金・装備面でもトップレベルの待遇を受けていた【SRT特殊学園】の総力を上げて、まずは小さな完全平和を!」
北条先生「けれども、志が一つにならなければ、永久に理想は叶えられないのです!」
北条先生「きみたちは平和を愛しているかー!? 平和を守れる誇りを取り戻したいかー!? こんなところで燻っているようなきみたちじゃないだろうー!?」
北条先生「さあ、みんなー! “連邦生徒会長”が用意した超法規的機関の秘密基地【シャーレ・オフィス】でシャワーを浴びて、冷房が効いた部屋で涼んでゲームしたり、おしゃべりしたり、お化粧したり、訓練したり、美味しいものを食べたりしてリフレッシュしたくないかーーー! いつまでもこんなところで野宿していたいかーーーーーーーー!?」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! バキュンバキューン!
ロボット職員「こちらが【シャーレ】で受け容れすることができた【SRT特殊学園】の生徒たちの一覧です」
七神 リン「お、お見事でした、先生。これで【SRT特殊学園】の生徒たちのデモ活動は全て解散させられたはずです」
北条先生「いつまで“連邦生徒会長”を探しているのかは知りませんけど、彼女たちのためにも【SRT特殊学園】の運用規則を改編するか、迅速に次の連邦生徒会長を選出してください」
北条先生「ダメじゃないですか。一方的に彼女たちの居場所を奪っておいて、閉校して浮いた予算を着服しようだなんて」
七神 リン「そんな事実はありません」
北条先生「なら、常に資金難に喘いで地元住民からも信頼がないことで有名な【ヴァルキューレ警察学校】に無理やり編入させるのなら、そういう口実を与えちゃダメですよ。これまで任務に忠実で“連邦生徒会長”に心酔していた子たちが猛抗議していたのはそういうところですからね」
七神 リン「そ、それは…………」
北条先生「報告は以上です」
北条先生「まあ、これでまた1つキヴォトスが抱える問題を解決することができましたね」パンパン
北条先生「おつかれさまでした、七神さん。ここまで一緒にやってこれましたね」ニコッ
七神 リン「せ、先生……」
七神 リン「あの、先生……!」
北条先生「?」
七神 リン「……ありがとうございました!」
七神 リン「先生のおかげで【SRT特殊学園】の生徒たちが暴徒化することなく、更には【
七神 リン「失踪した“連邦生徒会長”が喚んできたのが怪獣退治の専門家と聞いて本当に頼りになるのかと疑っていましたが、先生の目から見ると頼りにならないのは私たちの方ですよね……」
ロボット職員「……七神さん」
北条先生「まあ、これも怪獣退治の一環ですから」
七神 リン「え」
ロボット職員「…………『これも怪獣退治の一環』なんですか?」
北条先生「そうですよ。怪獣退治を行うには地域住民との信頼関係の構築と秩序の維持が不可欠なのです」
北条先生「そのためにはFace to Faceが基本で、こうやって面と向かって話し合うことが重要なんです。現場に行ってみないとわからないものがたくさんありますから」
北条先生「ですから、僕は怪獣退治の専門家として、理想的な怪獣退治の前提条件を整えているだけに過ぎませんよ」
――――――それよりも、僕はね、七神 リンさん、今度はあなたのことを知りたいな。
七神 リン「へ」ドキッ
ロボット職員「え」
北条先生「まだ七神さんがどんな思いで連邦生徒会長代行の任に就いているのか、どんな苦労があるのか、何が好きで、何が嫌いなのか、そういったことを僕はまだ聞けてないと思って」
七神 リン「あ、あの、それってどういう…………?」ドクンドクン・・・
北条先生「言ったでしょう? これも怪獣退治の一環です」
北条先生「七神さんだって一人の人間なんだから、好きなことや嫌いなことがあるでしょう? これから長い付き合いになっていく仲間になるんだから、嬉しい時は喜び合い、辛い時を支え合えるようになりたいんです」
北条先生「ほら、僕ぐらいだよね。連邦生徒会長代行をやっている偉い人の七神 リンさんの生の声が聞ける距離にいる大人ってのは。ご意見番でもいいから、相談相手は絶対に居た方が気が楽になって効率的になりますよ」
七神 リン「……そういうことでしたか。その、お気遣い、ありがとうございます」ドクンドクン・・・
北条先生「いや、僕の方も必死なんだ。僕を【連邦捜査部
北条先生「だからこそ、怪獣退治の基本として信頼関係の構築にFace to Faceで力を入れているわけです」
北条先生「怪獣というのは裁判が意味をなさない災害の一種ですから、そんな理不尽をみんなで力を合わせて乗り切るべきものなんです」
ロボット職員「つまり、怪獣退治の専門家というのは災害対策のプロということなんですね」
北条先生「怪獣が現れない平和な時代こそ、怪獣の出現に備えて万全の災害対策を事前にしておかなくてはいけないんです」
北条先生「むしろ、怪獣という脅威から解放された平和な時代ほど、世の中の理不尽さに対する怒りをぶつけていい
――――――そんなわけで、僕は怪獣が現れない御時世であっても、怪獣が現れた時の備えを忘れないようにしているわけですよ。