Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
――――――それは今は遠い日の教壇。
「先生、どうしてウルトラマンは正体を明かそうとしないのでしょうか? 最初から正体を明かしていた方が連携が取りやすくなると思います」
「そうだな。そう思うのは地球防衛軍という組織の公開性が当たり前だと思っているからだろうな」’
「どういうことですか?」
「俺たち地球防衛軍の防衛チームというのは人類同士の大戦の後に世界中に現れた怪獣という地球規模の災害に対抗するために世界中が団結して優秀な人材や莫大な予算が提供されていることはわかるね」’
「はい。人類同士で争っている場合じゃありませんから。敵は地底から、海から、宇宙から、本当にどこからでも現れます」
「だが、よく考えてみてくれ。世界中から怪獣退治のための莫大な予算が投じられているのだから、それは怪獣退治という仕事に対する報酬の高さにも繋がっているだろう」’
「はい。それだけの報酬や予算があるから選抜された各分野のエキスパートを集めた防衛チームが活躍してきたわけです」
「つまり、怪獣災害の被災者からすれば、妬ましいこと この上ないだろう? どれだけ補償が出たとしても失ったものは二度と戻らないのだから、その人にとっては地球防衛軍は役立たずの高給取りの税金泥棒にしか思えないだろう?」’
「そんなこと……」
「だから、地球防衛軍の花形となる防衛チームは現地・現物・現実の三現主義が基本となっているが、それは人間関係の構築はやはりFace to Faceが一番だから、地域住民らに怪獣退治を任せてもらうために、できるだけ怪獣退治の主役である防衛チームのことは情報公開されているわけだよ」’
「じゃあ、ウルトラマンの場合は?」
「いや、地球防衛軍の情報公開の在り方が特殊なのであって、ウルトラマンが正体を隠すのはまったくおかしなことじゃない」’
「………………?」
「もしもウルトラマンの正体までも公開されていたら、どうなるのかを考えてみればいい」’
「どうなるんですか?」
「さっき報酬や予算の面から説明したから、同じように考えると、怪獣退治とは怪獣災害に立ち向かうことと同義だ」’
「はい」
「その怪獣災害を単独で解決できる個人がいたとしたら、その能力に対してどれだけの報酬を渡すのが妥当になると思う?」’
「え」
「俺だったら怪獣1体倒すだけで災害復興の予算と同等の報酬を支払わないと、人類社会に対して貢献してくれたことの対価として不釣り合いに思うな。それぐらいの誠意を見せないと人類社会は成り立たない」’
「いやいやいや、ヒーローがお金にうるさいだなんて――――――」
「本人がどう思っているかじゃないよ。むしろ、タダほど怖いものはない。得体のしれない存在の気まぐれに人類の命運を賭けることがいかに人類史に対する侮蔑になるかなんだよ」’
「今更、ウルトラマンが『得体のしれない』って、そんな言い方――――――」
「すまないな。憧れのヒーローに対してこんな言い方……」’
「だが、俺はこれまでウルトラマン80には随分助けられた。今でも感謝しているし、共に戦えた日々のことを誇りに思っている」’
「しかし、いつまでも宇宙人であるウルトラマンに力を貸してもらうことに悔しさもある。地球はやっぱり地球人の手で守らねばならん。地球はウルトラの星の保護国でもなければ属国でもない。対等でありたいのだ」’
「――――――『対等』ですか?」
「ああ。これはとても大切なことだ。友達にいつも助けられているのに、友達が困っている時に力になれないのは本当に悲しいことじゃないか。頼りにならないと思われるのもとても悔しいことじゃないか」’
「……そうですね」
「ウルトラマンにだって事情はある。きっと、故郷に家族や友人だっているはずだ。地球人の我々と何も変わらない生活がそこにはあるのだ」’
「だから、安心して故郷に送り出せるように、あの時 我々は怪獣に勝った。80の助けを借りないで、地球最後かもしれない大怪獣をやっつけることができた。それで我々は胸を張って80とユリアンにさよならが言えた」’
「もちろん、ウルトラマンであると同時に彼は“矢的 猛”という大切な友人でもあった。本当はいつまでも地球に居て欲しかった……」’
「………………」
「それからディノゾールが現れるまでの四半世紀は地球は平和と繁栄を享受することができた」’
「それでも、今の防衛チーム【GUYS】に我々が編み出した空中戦闘機動『フォーメーション・ヤマト』が受け継がれていることが本当に誇らしい。あの頃のことが今でも昨日のことのように思い出せる」’
「――――――『フォーメーション・ヤマト』!」
「きみは似ている。よく似ている」’
「もしかしたら、本当になれるかもしれないな、きみならば」’
―――
――――――
―――――――――
――――――――――――
北条先生「扇喜さん、前に頼んでいたことなんだけど、もしもウルトラマンに怪獣退治を依頼したとして、どれくらいの報酬を用意できますか?」
扇喜 アオイ「その話なんですが、先生。正式に契約を結ぶとなると、天文学的な予算が必要になりますね。怪獣を1体倒すだけでも【連邦生徒会】の年間の予算を使い切るはずです」
北条先生「え」
扇喜 アオイ「というのも、先日の怪獣:クレッセントがもたらしたサンクトゥムタワー及びD.U.に対する直接の被害の他に、それ以前のクレッセントが原因と思われるキヴォトス各地の異常現象による被害も合わせると、これだけの額が算出されています」
扇喜 アオイ「ですから、この算出額を元に警備会社や保険会社に怪獣災害の対処を依頼したとなると、できるかどうかは別として、これぐらいの契約料を求められることでしょう」
北条先生「……怪獣が“災害の化身”というのも頷けますね、これは」
扇喜 アオイ「ええ。その災害の化身を単独で倒すことができるウルトラマンも言うまでもなく規格外の存在ですけどね」
扇喜 アオイ「あれだけの巨体を維持するのに必要な食糧から報酬を試算しても、これだけの資金と食糧が必要になりますので、あっという間にキヴォトスが干上がってしまいます」
扇喜 アオイ「そう考えると、ウルトラマンに頼り切りになるのは結果として自分たちの首を絞めることに繋がりますので、その理屈で対怪獣兵器の予算案を押し通しています」
北条先生「……ああ、ありがとう、扇喜さん。こうやってはっきりした数字でウルトラマンに頼り切りになると人類社会がどうなるのか示されると、やっぱり自分たちの手で頑張った方がいいよね」
扇喜 アオイ「ねえ、先生? 地球はどうやってウルトラマンに助けてもらっていたんですか? キヴォトスの財政なんて比べ物にならないほどの経済力があったんですか?」
北条先生「いや、彼らはずっと宇宙の平和のために何の見返りも求めずに戦ってくれていたよ」
北条先生「だから、僕は彼らのようになりたかった。彼らのように怪獣と戦えるヒーローになりたかった。みんなを守れるウルトラマンになりたかった」
扇喜 アオイ「羨ましいですね。そうやって何の見返りも求めずに助けてくれる存在に目をかけてもらえるだなんて、地球に住んでいる人たちは本当に幸せね」
北条先生「それは…………」
扇喜 アオイ「あ、ごめんなさい。先生に悪口を言ったつもりじゃないんです」
扇喜 アオイ「ただ、私たちキヴォトス人に守ってもらうだけの価値が本当にあるのか、不安になっただけです」
北条先生「扇喜さん、僕はそんなつもりで……」
扇喜 アオイ「そんな顔をしないでください、先生」
扇喜 アオイ「財務室長という立場上、怪獣がD.U.に現れた直後に撃退してもらえたら復興予算を削減できましたから、算出された被害額を見て『来るんだったら早く来て欲しかった』と愚痴をこぼしましたけど、」
扇喜 アオイ「あの日、ウルトラマンが来てくれなかったらサンクトゥムタワーは破壊され、キヴォトスは滅亡していました。こうして先生と予算のことで頭を悩ませる日々は永遠に訪れなかったのです」
扇喜 アオイ「そのことを思えば、ウルトラマンは最終防衛ラインの先にあるもの。これだけの額になるのもしかたがないんじゃなくて、本当は破滅していたところを紙一重で助けてもらえたことになるのですから、当然のものになるんです」
扇喜 アオイ「上手く言葉にできないですが、ウルトラマンはきっと“災害の化身”である怪獣と対になる概念だと思っていますから、そう悪いものだとは思っていませんから」
北条先生「ありがとう。そう言ってもらえて、気が楽になったよ」
扇喜 アオイ「いいえ。礼を言うのはこちらの方です」
扇喜 アオイ「先生がウルトラマンが味方だってことを説明してくれなかったら、私たちはウルトラマンのことも別の怪獣だと認識して、終わらない怪獣の恐怖に怯え続ける日々を送ることになりましたから」
扇喜 アオイ「そう言う意味では失踪した“連邦生徒会長”が喚んでくれた人が“シャーレの先生”である以上に“GUYSの先生”でよかったです。本当に」
北条先生「――――――僕はそのためにキヴォトスに喚ばれたのかな?」
キヴォトスにおいてウルトラマンや怪獣のことを知っているのは地球人の北条 アキラだけである。
そのため、キヴォトスにおけるウルトラマンへの信頼はウルトラマンのことを知っている北条先生への信頼とイコールとなっており、知っている限りの情報を【キヴォトス防衛軍】設立のために明かしているため、実際に防衛チームの戦闘技術を有している北条先生が嘘を吐いているとは誰も思いもしなかった。
いや、キヴォトスを滅ぼす災厄として全身全霊に刻まれた怪獣に対する膨大な情報の精査に忙しいだけで、地球人:北条 アキラがまだ話していないことがある事実まで気が回っていないのだ。
更に、こうして怪獣がサンクトゥムタワーに進撃したXデーを迎えたことにより、失踪した“連邦生徒会長”が事態を見越して怪獣退治の専門家を“シャーレの先生”として招聘していた事実が知れ渡り、キヴォトスの外から来た異邦人のその物珍しさに誰もが興味津々となっていたのも大きかった。
だから、北条 アキラは『ウルトラマンに変身できる』という一番重要な秘密を話していないわけであり、こうして子供の頃の憧れのヒーローになれたのに、それを素直に喜ぶことができなくなっていた自分に密かに驚いていた。
Xデーを迎えて滅亡の危機に瀕したキヴォトスを救ってくれた赤と銀の巨人:ウルトラマンの登場にキヴォトス中が大いに湧き立っていたわけなのだが、
怪獣災害に巻き込まれた被災者にとってはウルトラマンが怪獣を退治して平和を取り戻してくれても失ったものは還ってきてくれないのだから、『被害が出る前にさっさと出てきて何とかして欲しかった』という率直な声に対して聞こえないふりをするわけにもいかなかったのだ。
なので、地球人:北条 アキラから見て まともな防衛戦力がない 現状のキヴォトスでは怪獣災害は致命的なものであり、ウルトラマンの力を借りないと滅亡は免れないことを確信している。自分が何とかしないといけない。
しかし、どうしても恩師:大山キャップにかつて言われていたことを確かめるために、財務室長:扇喜 アオイに公正中立な見解を求めたところ、
要は、仕事への対価として報酬を支払うのが人類社会の基本なのだが、ウルトラマンの仕事ぶりは怪獣という災害に対する貢献とイコールになるため、とてもじゃないが通常の予算でまかない切れるようなものではないのだ。
ウルトラマンと一緒に戦ってきたことを誇りに思う防衛チームでさえも無給で働けるわけがないのだから、こうした面でウルトラマンが完全に人類社会の基本と掛け離れた人知を超えた地球外生命体であることを思い知らされるのであった。
そう、おそらくウルトラマンの側も地球人類に正当な報酬が支払えるとは微塵も思ってはいないはずだ。
それなのに、傍から見てタダ働きで人類社会を滅亡に追いやる怪獣や侵略者の脅威に対して身も心も燃やして敢然と立ち向かう姿は人伝に聞けば信じられないものに思えてしまうのだから、ウルトラマンにずっと守ってもらえている地球人は本当に恵まれていると思われてもしかたがなかったのだ。
だから、こうしてキヴォトスで子供の頃の夢であるウルトラマンになることができた北条 アキラは 自分から訊いたこととは言え 忌憚のない意見を聞いて 尚更 正体を明かす勇気が出なくなっていたのだ。
ウルトラマンが来て 怪獣を倒してくれたら それで全てハッピーエンドとはならず、ウルトラマンに助けられた時点で人類は怪獣に敗北していたも同然という答えは、それだけ北条 アキラにとっては衝撃的であった。
あるいは、こうしてはっきりとウルトラマンの人類社会への献身がこれだけの額の数値になったのを見て、それだけの年俸をもらえるのなら正体を明かして正式な契約を結ぶ現金な考えが湧くどころか、自分の気持ちや思いを無機質に渡される札束で換金されることを想像して、どれだけ金を積まれても素直に頷くことのない信条が自分の中に根付いていたことに気付かされたのだ。
そう、金やチヤホヤされるためにヒーローになろうと思ったんじゃない。ウルトラマンのようになりたいという自分の気持ちや想いを遂げるために防衛チームに志願したのだから、正当な対価として災害復興に必要な予算を削った莫大な報酬を渡されても正直に言って非常に困るのが北条 アキラであった。
それを超越者の余興や気まぐれと呼ぶのは容易いことだが、金の切れ目が縁の切れ目となるような関係を築きたいと思うかどうかである。これまで幾度となく地球の危機を救ってくれたウルトラマンたちが報酬目当てに死ぬような思いをしてまで故郷を離れて大気汚染の激しい地球で戦い続ける決心をするのはなぜなのかである。
これが自由意志による選択の自由があるのなら、どうであろうか。地球防衛という任務は割に合うのだろうか。地球人の感覚で仕事を選ぶ権利があるのなら、遥か遠くのウルトラの星から宇宙の片隅の辺鄙な惑星に来たいと思うのだろうか。
あるいは、こういう考え方をすればウルトラマンが名乗り出ないのもわかるはずだ。
ウルトラマンが王様だったとして、王様自らが世の悪を憎み、人々を苦しめている悪党を手ずから成敗したとして、民草は王様に対してどんな報酬を用意できるのだろうか。王様もまた民衆から何を受け取れば結果に満足することができるのだろうか――――――。
そんな風に一人の地球人として苦楽を共にすることができたウルトラマンの善性をどこまでも信じ抜くなら、そこにウルトラマンがウルトラマンたる真相が見えてくるのだった。
――――――それこそがウルトラマンが
北条先生「大山キャップ、僕もウルトラマンになって ようやくウルトラマンがどういった存在なのかを理解できるようになりました」
北条先生「巷ではウルトラマンを神と崇める声もありましたけど、たしかにウルトラマンは超越した存在という意味では神に等しい存在ですけど、そうじゃないってことは大山キャップがしっかりと教えてくれましたから」
北条先生「そもそも、ウルトラマンだって無給で働いているわけじゃないんですよね。故郷であるウルトラの星から出張してくる怪獣退治の専門家って考えると、地球人類に見返りを求めようとしないのもおかしなことじゃないですよね」
北条先生「問題はウルトラマンにも故郷や社会があるということがわからないから、タダ働きしているように見えるわけですよね」
北条先生「そうか。それなら、ウルトラマンと僕のちがいは何もなくなるわけですよね。何も問題なんてない」
北条先生「僕は大山キャップが伝えてくれた“ウルトラマン先生”になる! ウルトラマンの心を実践する先生になれるんだ!」
――――――G.I.G. :GUYS IN GREEN !
調月 リオ「――――――それで、『人類が食事をする必要がなくなったら、どのように社会が進化するか』ですか?」
北条先生「そう、ウルトラマンが人類に対して見返りを求める必要がないのは『出張業だから』なのもあるけれど、あれだけの巨体を維持するために必要なエネルギーを食事に頼らないからだとするなら?」
調月 リオ「考えるに値しないことだと一蹴するところですが、実際にXデーで戦車や戦闘機で倒せなかった怪獣を破壊光線で爆散させた巨人が現れた以上は考えないわけにはいきませんね」
調月 リオ「真っ先に思いつくのは太陽エネルギーを効率良く吸収しているのでしょう。これが自然界にもっとも充満しているエネルギー源ですから」
調月 リオ「あるいは体内で核融合を起こして莫大なエネルギーを賄っているとも考えられます。これはウルトラマンも地球に飛来した宇宙人の一種族という基本情報によるものです」
調月 リオ「それで『どのように社会が進化するか』という問いですが、少なくともキヴォトスや地球で定義されるところの生物からは超越した存在になるでしょう」
調月 リオ「具体的にはエネルギー補給のために『食べる』という行為が基本的に不要になるでしょうから、『食べる』ために必要な行為も社会から不要になっていきます」
北条先生「つまり、食べていくために『働く』という行為も必要なくなる?」
調月 リオ「そうですね。働いたことへの対価として金銭を得て、その金銭で食糧を得ることも不要になりますね。原始時代、働くというのは狩りをすること、すなわち食糧を得ることです」
北条先生「そうなると、日向ぼっこしているだけで ずっと寝て暮らすこともできるようになるわけだよね?」
調月 リオ「……それでは生きている意味がなくなります」
北条先生「だから、ウルトラマンは自分ではない誰かのために戦うことができるのかな」
調月 リオ「……つまり、生の実感を得るためにウルトラマンは災害と同義の怪獣と戦うことに精を出しているのだと?」
北条先生「いや、わからないよ、まだ。これは想像だから」
北条先生「でも、それと同じことができるんじゃないかと思ってね」
北条先生「人類社会が次のステージに進むためには『食べる』必要がなくなるところからだと考えると、ウルトラマンの善性を信じられるとは思いませんか?」
調月 リオ「それは今の人類には決して到達し得ないことだと言いたいのですか?」
北条先生「いや、進化の方向性を言っているんだって」
北条先生「僕はウルトラマンの心を教育現場で実践したいんだ。『食べる』必要がなくなれば『働く』必要もないはずのウルトラマンがどうして地球人と同じ価値観を持って共闘することができたのかをここしばらく考えていたんだ」
北条先生「仮にウルトラマンが次のステージに到達した生命体だとするなら、その高位生命体には『食べる』ことに代わる生存本能が備わっているんじゃないかって」
調月 リオ「どういう意味です?」
北条先生「まあ、僕の想像でしかないんだけど――――――、」
北条先生「生き物ってさ、不思議だよね。高等動物になればなるほど親の教えが必要になっていて、下等動物になるほど何も教えなくても生きていける術を身に着けているんだよね」
調月 リオ「そうですね」
北条先生「つまりさ、下等動物には最初から最後までDNAの設計図通りの人生を送って、ある程度 条件付で習慣を作れても一生の内に芸を仕込めることはできないよね」
北条先生「逆に高等動物はDNAの設計図通りの生き方から掛け離れた生き方ができるよね。両親は日本人でも外国語を勉強すれば、外国の人たちともつながることができるし。これってDNAに縛られずに自由に生きられるからこそ達成できる能力に思えるよね」
調月 リオ「……もしも先生の言う その仮説が本当だとしても、それこそ気が遠くなるような歳月の末に辿り着ける進化に私たちは追いつくことはできやしませんよ」
北条先生「だったら、あきらめるのかい? できないとわかっていたら、何も目指さないのかい? 自分もああなってみたいって憧れないのかい?」
北条先生「努力を否定する人間の印象がポジティブなものか、ネガティブなものかなんて言うまでもないじゃないか」
時はXデーを迎えたばかりの傷跡癒えぬ時にして、怪獣の出現によってキヴォトス中が団結して立ち向かおうという機運が盛り上がり、【キヴォトス防衛軍】設立が【連邦生徒会】で満場一致で議決されて間もない頃――――――。
戦車や戦闘機でも太刀打ちできなかった“災害の化身”である怪獣:クレッセントの能力を基準に対怪獣兵器の開発と運用を念頭に置いて【キヴォトス防衛軍】が設立されたのだが、具体的にはどうするべきなのかを提示したのがXデーを迎える前から北条 アキラと準備をしていた【ミレニアムサイエンススクール】の生徒会長こと“ビッグシスター”調月 リオの功績であった。
調月 リオが解析した北条 アキラが所持していた【GUYS】の装備を基にコピー品を提供したことにより、取っ掛かりを得たキヴォトス中の秀才・鬼才・天才たちが思い思いのアプローチから研究を始めることになり、【GUYS】の制式採用拳銃:トライガーショットっぽい何かが次々と開発されることになったのである。
しかし、キヴォトスでも屈指の頭脳を誇る天才集団が集まる新進気鋭の【ミレニアムサイエンススクール】の長人たる“ビッグシスター”調月 リオをして、【GUYS】のオーバーテクノロジーぶりには何から何まで驚嘆するほどであり、キヴォトスの科学水準を大きく突き放すほどに怪獣と戦い続けて進化し続けた地球人の科学力と戦闘力との差を痛感することになったのだ。
同じことをキヴォトス中の天才たちも感じたわけなので、当初は“シャーレの先生”として生徒たちの悩みや問題を解決する便利屋に思われていたのが一転して、キヴォトス中の頭脳が認める“GUYSの先生”として北条 アキラはそんなオーバーテクノロジーの装備を使いこなしてみせたのだ。
これによって【キヴォトス防衛軍】の一大拠点として“連邦生徒会長”不在の為に閉校となった【SRT特殊学園】を“GUYSの先生”北条 アキラを軍事顧問として赴任させて指導させる【キヴォトス防衛学園】として再編する流れを生み出すことになった。
結果としてXデーには間に合わなかったものの、Xデーを乗り切った後に【キヴォトス防衛軍】設立へと繋げる立役者となった“ビッグシスター”調月 リオの名声はキヴォトス中に響き渡ることとなった。
しかし、当の本人としては肝腎のXデーまでに準備が間に合わず、サンクトゥムタワーが崩壊するのを『ウルトラマンが来てくれた』という偶然や奇跡によって免れたことに酷く落胆していたのだった。
良くも悪くも なすべきことをなすために徹底した合理主義を極めた人物であり、自分一人で世界を救おうとする使命感と自分の行動にしっかり責任を持つ倫理観もあって、自分の能力が足りなかったばかりにXデーを迎えたことや、確実となったキヴォトスの破滅がウルトラマンの登場によって覆されたという誰も予測できなかった展開に、人知れず大きな挫折感を味わっていたのだ。
だからこそ、Xデーを迎えたことに真っ先に絶望した後は自分の手によらずに生かされ続けて生きた心地がしない毎日であり、Xデーを迎えてキヴォトスが新たな局面を迎えて大きく変わろうとしている中でなすべきことを流れ作業でやっていた。心はXデーを迎えてしまった時の絶望の涙で渇ききっていた。
そこにウルトラマンであることがどういうことなのかを思い知った北条 アキラが進捗確認と大事な生徒の様子を見にやってきた時、“ビッグシスター”調月 リオは机の下で膝を抱えて縮こまって何時間も経っていたようなのだから、さあ大変――――――。
そこから“GUYSの先生”は日頃お世話になっている調月 リオの興味を引くためにいろんなことを一方的に語っていた中で、ようやく反応を見せてくれたのが『人類が食事をする必要がなくなったら、どのように社会が進化するか』という話題であった。
忘れられがちだが、本職が小学校の先生である北条 アキラは担当教科だけ授業を行う中学校以上の教職員とは異なり、担任となるクラスの授業を4コマから6コマ全てつきっきりで教壇に立つわけなので、ここまで調月 リオの興味を引くために軽く1時間は余裕で喋り続けていた。
そのため、延々と先生の授業を聞かされていた調月 リオであったが、彼女は非常に聡明な女性であった。どれだけ自分自身に失望していたとしても、それが自分の役目や使命を投げ出す理由にはならないことを肝に銘じており、キヴォトスを襲う災厄である怪獣に関する情報を少しでも集めようと怪獣退治の専門家の話すことの一言一句をしっかりと聞いていたわけなのだ。
だから、ずっと固い床の上に座り込んでいた生徒を気遣って不意に北条 アキラが可愛らしいクッションをニッコリと渡してくると、呆気にとられた調月 リオから張り詰めた表情が解かれ、重い腰を上げて先生のためにコーヒーを淹れてくると、先生が渡してくれた座り心地のいいクッションの感覚を確かめてから座って、ようやく北条 アキラと目を合わせることができた。
そこから自分と同じように腰を下ろしても机の引き出しに背中を預けずに姿勢正しくコーヒーを飲んでくれる人と言葉を少しずつ交わしていくうちに、自分の中ですでに導き出されていた破滅という結論に対してどうすることもできなかった苦しさが喉の奥からこみ上げてくる。
いや、今までずっと自分の中に抑え込むことができていた感情なのだ。なのに、なぜ今になって堰を切ったように感情が溢れ出してしまうのかと言えば、その答えもまたすでに――――――。
調月 リオ「だとしても、時間は待ってくれない! キヴォトスの滅亡はもう始まっている!」
調月 リオ「ウルトラマンが来てくれなかった時点でキヴォトスは原始時代へと逆戻りしていた!」
調月 リオ「私たちは、結局、間に合わなかったのよ……」グス・・・
北条先生「だから、最初にきみが僕の力になってくれたじゃないか!」
調月 リオ「先生……」
北条先生「僕がどうして地球によく似たこのキヴォトスに来てしまったのかは今もわからないけれど、僕がやることは変わらない。怪獣が現れたのなら、僕は人々の笑顔を守るために戦う。それが僕が選んだ生き方だから」
北条先生「でも、僕も一人の人間だから 助け合わないと 怪獣と戦うだなんて でっかいこと できっこないんだ」
北条先生「あの時、僕が地球という惑星で怪獣と戦う防衛チームの人間だって明かした時、ドラマやマンガの見過ぎだってみんなに笑われたけれど、きみだけは真剣に話を聞いてくれた」
北条先生「だから、ウルトラマンに助けられた奇跡の後にキヴォトス中が一丸となって【キヴォトス防衛軍】を作って災厄と戦う機運が出てきたじゃないか」
北条先生「今こそキヴォトス中のみんなが勇気を出して、知恵を出し合って、力を合わせれば、きっと未来は変えられる!」
北条先生「そのための装備を整えてくれたのは僕と一緒に頑張ってきたきみなんだよ、調月さん!」
調月 リオ「私はそんな…………」
北条先生「ほら、僕のGUYSの装備を解析して整備してくれたおかげで、次からは僕も戦える!」ジャキ
北条先生「だから、いいんだよ、泣いたって」
北条先生「調月さんって初めた会った時から恐ろしく大人びた生徒で、実際に大人顔負けの絵に描いたような完璧超人って印象だったけど、それでも失敗する時だってあるさ。人間だもの」
北条先生「でも、『失敗は成功の元』って言うし、人類の歴史は本当に過ちや失敗ばかりで、反省を重ねて少しずつ良いことを結実させて暮らしやすい世の中にしてきたんだよ」
北条先生「だから、若いうちは失敗してもいいと思うんだ。いろんなことをたくさん経験して いろんな人のいろんなことがわかることができる人間になれたら素敵なことだと思うから」
北条先生「けれど、誰だって失敗したくないし、落ち込む時だってある。また立ち上がる勇気が出ない時もある」
北条先生「そんな時は僕のことを呼んで欲しい。僕だってたくさん助けられてきた。今度は僕が持てる全てを使って、また みんなが夢や目標に向かって輝けるように支えるから」
北条先生「それが大人の僕が子供のきみにしてあげられる精一杯のことだからさ」
北条先生「それに思いっきり泣くのはカタルシス効果を得られるって言うしね。ほら、感情が動いて流れる涙にはストレス物質を体外に排出する働きがあるから、思いっきり泣いてスッキリするのは合理的な行動だよね」
調月 リオ「……何ですか、それは」フフッ
調月 リオ「でも、ありがとうございます、先生。先生と一緒にいるこの時間だけは【ミレニアム】の“ビッグシスター”であることを忘れることができます」
調月 リオ「私、こんな性格だから誰からも嫌われて誰ともわかりあえないから、せめて誰かのためになるものを残そうと必死になって、結局 こんな場所でずっと一人で居たわけです」
調月 リオ「先生、先生も私のことを本当は嫌に思ってません? ほら、その、もっと【セミナー】の後輩たちみたいな可愛らしい女の子の方がいいって思いません?」
北条先生「全然。僕にとっては みんな 大切な生徒だし、命を懸けて守りたいものだよ」
北条先生「それがウルトラマンに憧れてキヴォトスで“シャーレの先生”や“GUYSの先生”になった僕の正直な気持ち。本当だよ」
調月 リオ「……そうですか」フフッ
北条先生「……調月さん?」
調月 リオ「ちがうんです。
北条先生「それじゃ――――――」
調月 リオ「はい。私たちは偶然でも奇跡でもXデーを乗り切ることができました。まだ全てが終わったわけじゃないのに、全てをあきらめるには早すぎました。反省します」
北条先生「うん、その意気だよ、調月さん!」
――――――その時、要塞都市:エリドゥの防空レーダーが宇宙から降下する未確認飛行物体を捉えた!
北条先生「このアラームは!?」
調月 リオ「……ちがう! このアラーム設定は弾道ミサイルのもの! それなのに未確認飛行物体と分類されるのはありえない!」
北条先生「………………」
調月 リオ「――――――ッ!」ピピッ、ピピッ、ピピッ!
調月 リオ「ありえない! こんなのが宇宙から降りてくるだなんて!?」
北条先生「弾道ミサイルでも隕石でもないのなら、僕たち防衛チームの間で
――――――出たな、宇宙怪獣ッ!
北条先生「目標は宇宙怪獣:ギコギラー。僕たち【GUYS】の一世代前の防衛チーム【UGM】の名将;僕を鍛えてくださった大山キャップが交戦したことがある怪獣だ」
北条先生「見ての通り、あのコウモリのような翼で宇宙中を飛び回っては星々で暴れ回る凶悪怪獣だ。見た目も羽根のついたトカゲでみたいで いかにも悪そうな顔つきだろう」
北条先生「けど、それだけにマイナスエネルギーが具現化した地底怪獣:クレッセントとはちがって、まだ生物の範疇だから通常兵器による攻撃が通じる」
北条先生「弱点は背中だ! それからクレッセントよりも脆い翼を狙え! 生物なら飛べなくなる! 生物学的急所を突いてとどめを刺せ!」
北条先生「よし、頼んだぞ、ライナー部隊! きみたちが【キヴォトス防衛軍】の一番槍だ!」
鬼怒川 カスミ「まかせたまえよ、先生。地底探査の時からの付き合いなんだ。今度のドリルはあの時と比べ物にならないぞぉ。これで掘った怪獣の血肉で温泉というのもなかなか乙だねぇ」ハーハッハッハッハ! ――――――ドリルライナー号【温泉開発部】
銀鏡 イオリ「よりにもよって、【キヴォトス防衛軍】の初出撃が【温泉開発部】と【正義実現委員会】との共同戦線とはな。そして、【万魔殿】が見栄を張るためだけに造らせていたという
仲正 イチカ「エデン条約締結前に【トリニティ】も【ゲヘナ】もない共同戦線っす。“シャーレの先生”あらため“GUYSの先生”に頼まれたらやるっきゃないっすよね、これ」フフッ ――――――ミサイルライナー号【正義実現委員会】
調月 リオ「どうやら今度は間に合ったようね。本当に間に合わせだけども」ホッ
北条先生「それでも、クレッセントに壊滅させられた戦車部隊に代わって【ハイランダー鉄道学園】から提供された軍用列車を対怪獣兵器に仕上げて駆けつけてくれたんだ。頼もしい限りだよ」
北条先生「今はとにかく実戦経験とノウハウが重要なんだ。まだ生物の範疇に入る 倒しやすい怪獣が来てくれたことにホッとしている」
北条先生「でも、怪獣を釣り出すための囮になるというもっとも危険な任務だけど、本当に大丈夫なんだね?」
飛鳥馬 トキ「おまかせください。完璧な任務の遂行をお約束します」
調月 リオ「大丈夫よ、トキなら。もしもの場合はエリドゥで全力でバックアップするわ」
調月 リオ「でも、予想通り 宇宙怪獣:ギコギラーが目指しているのは爆散したクレッセントの肉片が 多数 保管されている研究所のようね。あれ自体は細胞片一つない本当に地中深くで採れるマグマだったのに……」
北条先生「マイナスエネルギーで生まれたクレッセントに引き寄せられて宇宙怪獣までやってきたとなると、早いところ、マイナスエネルギーをどうにかしないといけないな……」
北条先生「ともかく、質量の暴力で怪獣を押し切るにはライナー部隊で何とかしなくちゃならないんだ。誘い込むためには餌で釣るしかない」
北条先生「ああ、くそっ。ガンフェニックストライカーがあれば、あんな程度の怪獣なんてウルトラマンに頼らなくても余裕なのに」
調月 リオ「………………」
そして、最初の怪獣災害が終わり、その対策と復興に追われる中で第2の怪獣災害が勃発。宇宙怪獣:ギコギラーが飛来し、クレッセントの肉片として回収されたマグマが多く集まっている地点を目指して、キヴォトスの街を次々と攻撃していくのだった。
50mを超えて星々を悠々と渡る宇宙怪獣とはコウモリの翼が生えたような人型のトカゲという外見通りに獰猛かつ凶暴で残忍であり、巨体を維持するためにキヴォトスの住人を捕食するような行動は取らなかったが、民家の明かりに人がいることを長年の経験で学習しているのか、遊び感覚で家屋を破壊して回るのだ。二足歩行によって悪知恵が発達しているのは見掛け倒しではなかったようだ。
しかし、北条 アキラが憶えている限りでは宇宙怪獣:ギコギラーは【ドキュメントUGM】の2番目の怪獣であり、最初はウルトラマン抜きで撃退できていたため、実際はマグマで固められた操り人形である地底怪獣:クレッセントが最初の怪獣としては異常な強さであり、それに対してギコギラーは歴代の宇宙怪獣の中ではかなり弱い部類に思えた。
そのため、軍事顧問として【キヴォトス防衛軍】の
それでも、それは長年に渡って怪獣と戦い続けてきた地球の水準であって、キヴォトスには対怪獣兵器などこれまで存在してこなかったのだから、何とかして怪獣に打撃を与えられる巨大兵器の開発と投入を急がせる必要があり、その苦肉の策として最初にキヴォトスで誕生した対怪獣兵器というのが列車砲なのだから、圧倒的銃社会であるキヴォトスは文字通りにぶっ飛んでいる。
ライナー部隊の主力である軍用列車は【ハイランダー鉄道学園】が試作した拠点攻撃用特殊列車がベースとなっており、路線や電線がなくても走行できる秘密兵器であり、鉄道から敵拠点に突貫して速やかに部隊を展開して制圧するコンセプトのキヴォトスならではの強襲揚陸艦であった。
後方車両のウェポンハンガーには連結を解除して突撃を支援するための砲台が格納されるはずだったのだが、白兵戦が主体のキヴォトスで列車砲は明らかに過剰戦力であり、基本的に通常の列車と同じく路線がなければ前方一直線にしか突撃できないため、回収の手間も相まって 基本性能の確認だけして概念実証されることもなく すぐに放置されていた。
そして、地底怪獣:クレッセントが襲来したXデーの予兆となる各地の異常現象の調査の一環で行った地底探査に多大な貢献をした【温泉開発部】鬼怒川 カスミが【連邦生徒会】の正式な依頼という後ろ盾を得て もっと強力なドリルと機体を求めて ありとあらゆる可能性からキヴォトス中から探し当てたものであった。
恐ろしいことに“シャーレの先生”を介して【連邦生徒会】の信任を得た【温泉開発部】鬼怒川 カスミは独自の情報網から対怪獣兵器への転用にお誂え向きな軍用列車の試作機が【ハイランダー】に眠ったままなのを聞きつけて口八丁で【キヴォトス防衛軍】の戦力として接収してしまったのだ。
それどころか、自身が搭乗する夢のドリル列車の護衛となる軍用列車の開発と運用をトリニティ総合学園の【正義実現委員会】とゲヘナ学園の【風紀委員会】に白羽の矢を立てたことで、エデン条約締結前に結成された【キヴォトス防衛軍】に参加した手前、怪獣という共通の脅威を前にして、“GUYSの先生”の下で共闘せざるを得ない状況に追い込んだのだ。
元々、怪獣:クレッセントによる各地の異常現象の調査で【連邦生徒会】に協力してキヴォトス中を渡り歩いた“シャーレの先生”だったからこそ、【正義実現委員会】仲正 イチカや【風紀委員会】銀鏡 イオリと面識があり、こうして【キヴォトス防衛軍】として共同戦線を張ることが実現できていたのだ。
実際、長年に渡って啀み合っていた【トリニティ総合学園】と【ゲヘナ学園】から【キヴォトス防衛軍】に出向させられる人員としては最適な2人であり、それでいて部隊長として統率もできるため、今回の複数人で操縦する軍用列車という急拵えの前代未聞の兵器にも対応することができた。
さて、現状の切り札であるライナー部隊はクレッセント撃破を目標に性能を追究された結果、突進力こそあるものの、方向転換に前後のサイドブースターを吹かせて強引に旋回させる方式を採っているため、極まればまだ生物の範疇にある怪獣を絶命させることができるはずだが、どうしても対応力に乏しい。
そのため、切り札であるライナー部隊の陣に誘い込むための陽動作戦が必要となり、そのための戦力として無人で安価に大量生産できるドローンや自走砲が各学園で割当で投入され、無人兵器の操縦室にたくさんの生徒たちが詰めかけて怪獣に立ち向かっていた。
その中には貴重なデータや怪獣のサンプルを採ることを念頭に置いた特殊作戦群も存在し、少しでも戦力が欲しいということで無人兵器群の操縦士が見境なく募集され、怪獣の肉が食べたいから参加した【美食研究会】のような変わり種も存在し、怪獣という脅威を前にしてもキヴォトス人は緩やかに怪獣退治への団結力を発揮していくのだった。
更に、嬉しい誤算もあった。それは“連邦生徒会長”に絶対の指揮権があるために不在を理由に閉校となった【SRT特殊学園】が“GUYSの先生”を軍事顧問に迎えることで【キヴォトス防衛学園】に生まれ変わったことで郊外の航空基地の戦力が解禁となったのだ。
そのため、【キヴォトス防衛軍】の初出撃にSRT特殊学園が誇るアクロバットチーム【FLYING ANGELS】のトップガンが加わり、Xデーでクレッセントに成す術なく撃墜された戦闘機部隊を素人同然にするほどの空中機動で 見事 ギコギラーの弱点である背中への攻撃に成功し、意外なまでに初出撃で怪獣を無人兵器と航空戦力で追い込むことができていた。
しかし、初出撃でギコギラーを追い込むこの火力の高さはクレッセントを基準にしたからであり、そこまでの火力の追求に余念がないキヴォトス人の血の気の多さが完全に想定外だった“GUYSの先生”はギコギラーがあまりの攻勢に体勢を崩して倒れ込んだ瞬間に作戦の失敗を確信した。
北条先生「……マズい!」ガタッ
調月 リオ「先生!」
飛鳥馬 トキ「アクロバットチーム【FLYING ANGELS】による背中への攻撃が成功するまでは良かったですが、ギコギラーが倒れるには早すぎます」
飛鳥馬 トキ「このままだと生命の危険を感じたギコギラーが逃げ出す可能性が高いです」
北条先生「無人兵器群の残存数は!?」
調月 リオ「ダメ! 迎撃ラインごとに攻撃を開始する手筈だったのに、後続部隊が一気に殺到してギコギラーに集中砲火を浴びせている!」
飛鳥馬 トキ「しかし、いくら攻撃を浴びせようと怪獣にとっては蚊に刺された程度。絶命させるには至らない」
調月 リオ「陽動だと言っているのにッ! これじゃ弾薬が保たないッ!」
北条先生「無人兵器の操縦とは言え、初めての実戦で初心者にありがちな行動を計算に入れてなかったな……」
飛鳥馬 トキ「先生、ドリルライナー号がブースターに点火しました! 続いてカノンライナー号とミサイルライナー号も!」
北条先生「――――――ッ!」
調月 リオ「さすがね。状況が動いたことを察知して最善の行動に移ったのね」
北条先生「……間に合うか!?」
鬼怒川 カスミ「行くぞ 行くぞ! 突っ込め 突っ込めー! ハハハハ!」 ――――――ドリルライナー号!
銀鏡 イオリ「射程に入ったな! ドリルライナー号の突入後に撃つ! 主砲発射用意! 対ショック姿勢! 鼓膜を破るなよ!」 ――――――カノンライナー号!
仲正 イチカ「1番2番発射。ドリルライナー号の突入を援護。でも、まだっすよ。クレッセント対策に開発したサーモバリック爆弾を使うのは待つっす」 ――――――ミサイルライナー号!
かくして、Xデーでの甚大な被害の後に飛来した宇宙怪獣:ギコギラーを討伐するべく、【キヴォトス防衛軍】の初出撃は最終的には50点の結果に終わってしまった。
途中までは恐ろしく調子がいいぐらいにギコギラーを急拵えの戦力で追い込むことができていたのだが、予想外の奮闘と攻勢にギコギラーが倒れ込んだことで、主力となる無人兵器群が持ち場を離れてギコギラーに殺到することになり、それによって切り札となるライナー部隊の必殺の間合いまで誘い込めなくなってしまったのだ。
不幸中の幸いとして、勝利に逸った無人兵器群が倒しきれるわけがないのに次々と持ち場を離れて戦線が崩壊してしまっても、さすがは精鋭であるライナー部隊はこのまま待っていたら勝機を逃すと判断して即座に行動に移ったおかげで作戦目的を一応は達成することができたのだ。50点引きで。
というのも、転倒したギコギラー目掛けてミサイルライナー号からのミサイルが着弾し、ドリルライナー号の必殺のドリル攻撃が迫ったのだが、ギコギラーの頭蓋を抉る前に起き上がられてしまい、怪獣の胸元を浅く抉っただけで空振りに終わってしまったからだ。
それに連続してカノンライナー号からの列車砲が直撃し、浅く抉れた箇所の付近に着弾したことでかなりの痛打を与えることができたのだが、それで致命傷にはならなかったのだ。
結果、ギコギラーが痛みに悶絶して飛び跳ねるごとに羽根が煽られて突風が巻き上がり、軽量のドローンや自走砲が次々と風に飛ばされて宙に舞い、嵐の中で揉みくちゃにされて地面にガラクタとして放り出されることとなった。
ドリルライナー号の必殺の一撃が回避された上にギコギラーに立たれてしまった以上、ドリルライナー号にできることは地面に接している怪獣の足を貫くことしかないのだが、痛みに悶絶して怪獣が足をジタバタさせるところに突撃する無謀はできなかった。
むしろ、この次の展開から【温泉開発部】が操縦するドリルライナー号は攻撃をあきらめて旋回することなく、ミサイルライナー号から発射されたサーモバリック爆弾による爆風を背に受ける他なかったのだ。
しかし、怪獣災害というものをキヴォトス中に知らしめた地底怪獣:クレッセントをも屠る威力を追求したサーモバリック爆弾はギコギラーが起こした強風に煽られて狙いが大いに狂うことになり、直撃しなかったことがはっきりわかる位置で自由空間蒸気雲爆発を起こすことになった。
サーモバリック爆弾は爆轟圧力の正圧保持時間の長さに特徴がある。これはTNTなどの固体爆薬だと一瞬でしかない爆風が「長い間」「連続して」「全方位から」襲ってくるところにある。
つまり、サーモバリック爆弾が爆発している間はまともにギコギラーを狙い撃てないわけであり、直撃を免れたギコギラーは死物狂いで爆轟から逃れようとしたのだ。
だから、この時点で宇宙怪獣:ギコギラーを抑えつける主力の無人兵器群が命令無視で弾を撃ち尽くしてサーモバリック爆弾で周辺を巻き込んで跡形もなく消滅した以上、もうギコギラーを倒せる瞬間は訪れなくなっていたのだ。
飛鳥馬 トキ「ギコギラー、戦闘区域から勢いよく離脱しようとしています」
飛鳥馬 トキ「追撃は不可能。作戦は失敗です。ついでに私の出番も無し……」ションボリ
調月 リオ「どうして、こうも上手くいかないのかしら……」
調月 リオ「ライナー部隊は初出撃で最高の仕事をした」
調月 リオ「なのに、ドリルライナー号がつけた傷にカノンライナー号の砲撃が直撃したことでギコギラーが暴れ狂い、ミサイルライナー号のサーモバリック爆弾が外れる結果に繋がった――――――」
調月 リオ「こんなことになるなら、無人兵器群は私が全て制御すればよかった……」
飛鳥馬 トキ「………………」
飛鳥馬 トキ「……先生?」
調月 リオ「え」
その時、よくやったと言わんばかりに怪獣:ギコギラーの前に足りない50点を補うかのようにウルトラマンが降り立ったのだった。
そして、北条 アキラは記憶している。マイナスエネルギーを求めて地球に飛来したギコギラーは最初は背中の弱点を突かれて【UGM】に撃退されるものの、次に現れた時はマイナスエネルギーを吸収して強化されていたことを。ドローンや自走砲を吹き払うどころじゃない全てを吹き飛ばす突風を巻き起こし、口から吐く強力な熱光線も破壊力抜群で、背中の弱点も克服して更なる破壊をもたらすことになったのだ。
だから、最初から逃がすつもりはなかったのだ。対怪獣兵器の開発はキヴォトスでは始まったばかりで、今はとにかく【キヴォトス防衛軍】に実戦経験とノウハウを積ませ、キヴォトス中の戦意と団結を高め、組織の成長を促していくしかない時期であった。
そのため、倒せなくて元々、弱点もはっきりしている弱い宇宙怪獣のため、ウルトラマンになったばかりの北条 アキラもまた自身の実戦経験とノウハウを蓄積する絶好の相手としてギコギラーの命を刈り取るのだ。
これまで地球を守ってきた歴代ウルトラマンの中でもウルトラマン80の戦闘スタイルは非常にスピーディーかつアクロバティックで、その一世代前のウルトラマンレオとはまた異なる華麗なキック技の数々を得意としていた。
そのため、すでに弱りきっていたギコギラーの頭上から弱点である背中に攻撃をめくらせることも朝飯前であり、その機敏さは相手の攻撃をウルトラVバリヤーで防御した直後に必殺光線を放てる程である。
ギコギラーがかわいそうになるほどに執拗に背中を刈り続けるジャンプ攻撃をお見舞いしたところで、最後の抵抗とばかりにギコギラーが口から破壊光線を放つものの、ウルトラマンはお得意のウルトラVバリヤーからの反撃サクシウム光線でギコギラーを絶命させるのであった。
ギコギラーが爆散したのを見届けると、ウルトラマンは両腕を天へと突き出して月下の空に飛んだ。ちょうど再出撃してきた【FLYING ANGELS】がお見送りする形になり、はっきりとパイロットの方に目を合わせた後、キヴォトスの超音速機でも到達し得ないマッハ9で彼方に消えた。
北条先生「作戦完了。作戦部隊は撤収。待機班は現場保存のために周辺の封鎖を。ライナー部隊の野営も手伝ってやって」
北条先生「みんな、よくやってくれたよ。初出撃にしては上出来だった。あとは効率的な連携行動を意識しよう」
飛鳥馬 トキ「……先生、どこへ行かれていたのですか。怪獣はウルトラマンが倒してくれましたよ」
北条先生「ああ、僕も見ていたよ、ウルトラマン。だから、作戦完了を指示した」
飛鳥馬 トキ「連絡には必ず出てください。目を離した一瞬に先生に何かあったんじゃないかと心配しましたよ」
北条先生「ごめんね。本当にどうしようもならない状況だったから、内にこもってないで外で考えた方が何か思いつくんじゃないかと思って」
飛鳥馬 トキ「そうでしたか」
調月 リオ「………………」
北条先生「調月さん」
調月 リオ「あ、はい。先生」
北条先生「それじゃあ、作戦は無事に完了したことだし、僕たちは帰投しよう」
調月 リオ「そうですね。おつかれさまでした。それではお願いします」
飛鳥馬 トキ「先生、私は残念です。せっかくの見せ場が――――――」
北条先生「そうだね。ライナー部隊も完璧な動きをしたのにね――――――」
調月 リオ「………………」
調月 リオ「先生。あなたは、本当に…………」
調月 リオ「私も目指していけば、先生のように…………」
――――――先生の反応が地上から完全に消えていた時間とウルトラマンが存在していた時間はほとんど同じであった。
最初から疑っていたところはある。失踪した“連邦生徒会長”がキヴォトスの外から召喚した異邦人であり、しかも長年に渡って
地球でウルトラマンに倒されてきた怪獣が突如としてキヴォトスに出現するようになった時、地球を救ってきたウルトラマンもまたキヴォトスに出現したとあれば、同時期にキヴォトスに現れた“シャーレの先生”あらため“GUYSの先生”との関係性を誰だって疑わざるを得ない。
しかし、キヴォトスを守るために早期から行動していた調月 リオと手を組むことになり、持参していた【GUYS】の装備を解析してもらうと同時に、キヴォトスの環境因子がキヴォトス人の驚異的な身体能力と圧倒的銃社会を助長させているのかを調べるために地球人:北条 アキラは自身のバイタルデータの提供にも積極的であった。
その結果、地球人とキヴォトス人の間にある身体的構造のちがいはほとんどないのにも関わらず、地球人があまりにも脆弱であることが判明し、むしろ一発の銃弾で即死しかねないという魔境に身を置いているからこそ地球人の戦闘技術が平均的に高いのだと調月 リオの中で結論付けられていた。
だからこそ、ウルトラマンが北条 アキラであるという発想が思いつかなかった。まず合理主義の権化である調月 リオにとって物理法則を超越した変身ヒーローなど荒唐無稽なフィクションの産物でしかないのだから。そんなものを認めてしまったら、何だってありになってしまう。
しかし、そうだとしても、それなら『ウルトラマンはどこから現れて、怪獣を倒したらどこへ去るのか』という疑問が残るわけであり、とにかく合理的に考えて妥当と言える可能性を追求していくと、やはり地球人:北条 アキラと何らかの関係があるのではないのかと言うのが現状では 一番 可能性があった。
あるいは、裏で協力関係を結んで間に合わなかったXデーの後、北条 アキラはいろいろな意味で変わった。失踪した“連邦生徒会長”がこの日のために喚んだ怪獣退治の専門家として周囲の見る目も変わったのもあるし、統括室首席行政官:七神 リンとの
実際、調月 リオも【ミレニアム】の生徒会長としてXデーの翌日、甚大な被害を受けたサンクトゥムタワーとD.U.地区を見て回り、郊外の【シャーレ・オフィス】を臨時の拠点にした【連邦生徒会】を訪ねたが、そこで調月 リオは一瞬だけムッとする体験をしていた。
例のサンクトゥムタワーから脱出する
そして、それはそれとして、元々が【連邦生徒会】の直属組織とは言え、臨時拠点として【シャーレ・オフィス】を提供した“シャーレの先生”が怪獣退治の専門家ということで怪獣災害の後処理のために必要なことを聞き出すために頻繁に足を運んでいる様子を目の当たりにするのだが、およそ あの堅物の七神 リンらしからぬ 先生との距離感に調月 リオが驚くことになった。あれは間違いなく多少は相手を意識しているだろうことが 不器用さからくる ぎこちなさからわかってしまう。
一方で、本当に怪獣が現れてしまったことで“シャーレの先生”である以前に“GUYSの先生”としての活動を始めることになった北条 アキラはその道の専門家として【連邦生徒会】と協力して今後の対策などを考えて忙しくしていたのだが、それ以前から調月 リオは“シャーレの先生”である以上に“GUYSの先生”として接してきていたので、その時点である違和感を覚えていたのだ。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
調月 リオ「おつかれさま、先生。昨日は本当にひどい有り様でしたね……」
北条先生「本当にね、調月さん」
調月 リオ「巨人が現れなかったら、昨日でキヴォトスは滅亡していました」
北条先生「……少しお願いがあるんだけど、聞いてくれませんか、調月さん?」
調月 リオ「何ですか、先生?」
北条先生「持ち運びに便利なチョークケースが欲しいです。無ければ作ってもらえませんか。こんな風に腰につけられるものがいい」
調月 リオ「…………はい? 『チョークケース』ですか? それは怪獣退治に必要なものなのですか?」
北条先生「……いいや。僕はたしかに【
調月 リオ「そういう事情なら、わかりました。先生が満足するものを用意しましょう」
北条先生「ありがとう、調月さん」
―――
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――――――――――――
もちろん、怪獣退治の専門家であったとしても平和な日常を愛する者である先生の切実な願いに応えて贈ったものがただのチョークケースなわけがなかった。チョークホルダーも入る大型のものだとしても。
先生のために合理性を追求した最高のチョークケースを製作しながら、同時に怪獣災害との関係性が疑われている異邦人の動向を監視するために発信機が埋め込まれており、先生は常に調月 リオが作ってくれたチョークケースを身に着けているので、調月 リオが異邦人の居場所を見失うことはありえなかった。
だからこそ、二度目の怪獣災害である宇宙怪獣:ギコギラーとの戦いの最中、突如として先生が誰にも気づかれないように持ち場を離れただけじゃなく、ウルトラマンが怪獣と戦っている間、先生の反応が地上から完全に消えていた事実に調月 リオは より一層 確信を深めた。そう考えなければ辻褄が合わないのだから、直接 見たわけじゃないにしても、状況証拠から そう判断せざるを得なかった。
よくよく考えれば、調月 リオ自身もXデーを迎えてしまったことの無力感に内心では打ちひしがれていた時期であり、持ち前の頭脳を十二分に発揮することができていなかった。
そのため、本業が小学校の先生だからと言って、それで異邦人の動きを監視していたとは言え、怪獣退治の専門家が怪獣退治にまったく必要ないチョークケースを戦場にまで身に着けていること自体がおかしかったことに今になって気づくことになった。
その上で、調月 リオは思う。Xデーを迎えてから何もかもが変わらざるを得なかったキヴォトスの激動の中で、チョークケースの製作をなぜ自分に依頼したのかと。早くからXデーに備えて協力関係を結んで【GUYS】の装備を再現しようと躍起になっていて、Xデーを迎えて やや沈んだ様子で頼んできたのがチョークケース――――――。
普通の反応としては対怪獣兵器の開発に力を入れるように頻りに声を上げるはずだが、あの時の北条 アキラはある種のあきらめと余裕と覚悟が同時に備わったような落ち着きがあったのだ。
それは今から足掻いても怪獣災害はキヴォトスの戦力ではもうどうしようもないというあきらめ、そこからなんとかなる算段が立てられたという余裕、これから戦地に赴くために自分の在り方を見つめ直して固めることができた覚悟だったのだろう。
そして、北条 アキラは協力関係を結んで怪獣災害に備え続けてくれた調月 リオという人間のことを理解しているからこそ、Xデーを迎えてチョークケースを“調月 リオに”用意させたと考えるなら――――――。
仲正 イチカ「先生、いつも腰につけているそれって何っすか?」
北条先生「見たい?」
仲正 イチカ「見たいっす。ぜひ見せてください」
北条先生「ほら、チョークケースだよ」パカッ
仲正 イチカ「へ、チョークケースっすか?」
北条先生「キヴォトスだとビデオ学習が一般的だから教師が教壇に立つことが稀だけど、チョークは先生の必需品だからね。僕が小学校の先生であることを忘れないために調月さんに作ってもらったんだ」
仲正 イチカ「え、『調月さん』って、あの“ミレニアムのビッグシスター”のお手製なんですか!? それは何というか、すごいっすね!」
北条先生「そうかな?」
仲正 イチカ「そうっすよ。“ミレニアムのビッグシスター”って言ったら、新興の【ミレニアムサイエンススクール】の評価をキヴォトス
仲正 イチカ「それだけに“連邦生徒会長”とは違った意味で近寄りがたい人物と思ってましたけど、先生のためにチョークケースを作るって、先生には統括室首席行政官殿もいるのに隅に置けないっすね」
仲正 イチカ「で、どうなんすか? “ミレニアムのビッグシスター”との関係は?」
北条先生「それはもうお世話になりっぱなしだよ。調月さんはね、“連邦生徒会長”以外でキヴォトス全体のことを考えてずっと頑張っていた、キヴォトスで初めて会えた同志だからね」
仲正 イチカ「――――――『初めて会えた同志』ですか。そう言われると少しキツイですね、長年に渡って【ゲヘナ】と啀み合っていた【トリニティ】としては」
北条先生「大丈夫だよ。これから共通の目的にために手を取り合っていけばいいだけだから。最初はそれだけでいいんだよ。世界のために手を取り合えることさえわかれば、最後の一線を信用することができるよね」
仲正 イチカ「そうっすね。エデン条約を締結する前に【キヴォトス防衛軍】なんてものが先にできて、一緒に怪獣退治してきたばかりっす。それに【ゲヘナ】から【トリニティ】に向けられる兵器が怪獣に使われるようになったおかげで、【トリニティ】の治安がだいぶ良くなったっす。これが平和利用ってやつっすか」
北条先生「……うん」
調月 リオ「先生、この前の【SRT】の航空戦力の武装強化案なんだけれど、見てもらえるかしら?」
北条先生「あ、調月さん。どうぞ、見せてください」
仲正 イチカ「おっと、話をしていたら来たっすね。それじゃ、先生。また よろしくっす」
北条先生「うん。またよろしくね」
北条先生「さて、先日のギコギラーとの戦いを踏まえて、【SRT】が誇るアクロバットチーム【FLYING ANGELS】の初期作戦能力が認められたから、今度は完全作戦能力まで持っていかないとだけど――――――」
北条先生「……単純に威力を重視するとなると、サーモバリック爆弾や
北条先生「……これ、毎回のように使っていたら怪獣による直接の被害よりも
調月 リオ「残念ながら、現状のキヴォトスの科学力では環境に対してクリーンかつ威力も安定した光学兵器の実現には研究が継続されたとしても何十年もかかります。それぐらい地球とキヴォトスとでは技術力に差があります」
調月 リオ「ですので、キヴォトスの科学力でも実現できるものがあるとすれば、【ZAT】の多目的大型戦闘機:スカイホエールのような機体で臨機応変に対応するのが一番合理的だと判断します」
調月 リオ「少なくとも、50m級の怪獣であっても鉄球をぶつければダウンを奪うことができ、そこから化学兵器を用いれば対処もしやすくなるかと思われます」
北条先生「そうか。時代性と実績を考えると歴代最強の防衛チームと名高い【ZAT】のスカイホエールが参考になったか。それもそうか、あの頃が時代の頂点だったものな」
北条先生「でも、今から開発したとしても間に合うかどうか。そもそも、【
調月 リオ「ですので、そのコンセプトを受け継いだ怪獣攻撃機を設計しています。それが有人機か無人機になるかは検討段階ですが」
北条先生「…………ガンフェニックストライカー」ボソッ
調月 リオ「ともかく、SRTの航空戦力を正式に【キヴォトス防衛軍】に組み込めたのは重畳です。対空攻撃をもたない怪獣に対しては完全に有利を取れます」
北条先生「その代わり、怪獣出現に対応した緊急出撃や撃滅のための連続出撃に対応しきれる体制を構築しないと、先手としてもっとも使い倒すことになる部署になりうる」
北条先生「しかも、従来機とはまったく異なる運用と武装だから、整備や補給の面でも新しい知識や人材が要求されて基地の人員構成や指揮系統にも多大な影響を与えることになる」
北条先生「そういった変化を簡単に受け入れられるとは思わない。本当に一朝一夕にはいかないね」
調月 リオ「ですが、やらなければならないことです、これは。そうしなければ、私たちにはウルトラマンに全ての命運を握られる未来しかないのですから」
北条先生「……うん。そうだね。そうだよね。それもそうだ」
北条先生「地球は地球人の手で守るべきであるように、キヴォトスはキヴォトス人の手で守られるべきなんだ」
調月 リオ「――――――」
北条先生「けど、そのための手助けはできるはずだ」
調月 リオ「先生」
北条先生「よし。この武装強化案を一緒に【連邦生徒会】に提出しよう、調月さん」
北条先生「正直に言って どういった反応を返されるか予想がつかないけど、“ミレニアムのビッグシスター”と“GUYSの先生”の言うことなら、多くの人が耳を傾けてくれるはずです」
調月 リオ「そうですね」
調月 リオ「では、一緒に参りましょう、先生」
――――――地球は地球人の手で守るべきであるように、キヴォトスはキヴォトス人の手で守られるべきなんだ。
調月 リオ「ええ。その通りです、先生」
調月 リオ「私は先生に全てを背負わせて逃げ出した“連邦生徒会長”のことを許さない。そして、偉大な指導者がいなければ成すべきことさえも決められない【連邦生徒会】のことも」
調月 リオ「きっと、キヴォトスは変わらない。怪獣災害が起きるようになっても何一つ変わろうとしない。失踪した“連邦生徒会長”の代わりに“先生”に縋って自分たちは破滅に向かう日々を変わらず送ろうとし続けている……」
調月 リオ「だから、私だけでも“先生”の望みに応えなくては………………」
調月 リオ「でも、いったいどうすれば………………」
所詮は問題を先送りにしているだけの日々。Xデーを迎えてからキヴォトスに現れるようになった超常の存在である怪獣によってキヴォトスが滅亡するまでの時間をウルトラマンの献身によって引き延ばしているだけの怠慢な日々は続く。
そして、その意味のない時間稼ぎのために尊い犠牲が積み重なる未来しかないのなら、一人の愚か者に全ての業を背負わせて それ以外の犠牲をゼロにするように軌道修正するのが極めて賢明ではないのか――――――。
事実、Xデー:怪獣災害を迎えていなくてもキヴォトス中が破綻寸前であった。学園の運営や自治区の行政を担う生徒会は完全に突出した個人の才能と献身と忍耐によって成立しており、人材が枯渇した瞬間に学園の秩序は絶え間ない銃火によって容易く打ち砕かれてしまう。
キヴォトス
だが、現在の勢力を維持するのが精一杯の膠着状態が続くことになり、変わることのない日常を謳歌するようになってしまってからは内側から凄まじい速度で腐敗が進行していくことをキヴォトスでは誰も理解していなかった
たとえ、“ミレニアムのビッグシスター”として畏怖されていようと、“連邦生徒会長”が全てを上手く収めていようと、かつてキヴォトスを一つの国家としてまとめあげた元勲たちの功績と比べれば、現状維持で手一杯の生徒会長なんぞを天才だの超人と崇める現在のキヴォトスは完全に人材が枯渇していたのだ。
だから、キヴォトスは滅びるしかない。上澄みの中の上澄みである天才たちも現状維持で精一杯なら、誰も自分たちの統治機構を管理できなくなった時、キヴォトスから全ての学園が消滅し、原始の時代へと還るのだ。
だからこそ、全てが行き詰まってしまったキヴォトスで必要なのは停滞を打破するパラダイムシフトであった。
それをもたらす者こそが“連邦生徒会長”がキヴォトスの外から招いた“シャーレの先生”であり、今まさに“先生”によってもたらされた新たな価値観がキヴォトスを根底から変えようとしていた。
この先、キヴォトスを救うために必要なのは持て囃されながらも何も変えることができなかった“連邦生徒会長”でも“ビッグシスター”でもない。
となれば、その道を切り拓くために
-Document GUYS feat.LXXX No.02-
羽根怪獣:ギコギラー 登場作品『ウルトラマン80』第2話『先生の秘密』登場
住みやすい星を求めて宇宙を飛び回る凶暴な宇宙怪獣。外見がコウモリの翼を生やした いかにも悪人顔の空飛ぶ人型トカゲ。
巨大な翼を羽ばたかせて起こす突風:フラップビームは、300m内の建物を全て吹き飛ばしてしまう程の威力があり、口からは強力な熱線を吐くことが出来る。
視力は10光年の先の隕石を視認できるほどであり、言語能力こそないが高い知能を有している。背中が弱点。
地球で発生したマイナスエネルギーに導かれるかのように突如として地球へと襲来し、夜の街を蹂躙する。
しかし、最初の怪獣:クレッセントとの初実戦に教訓を得て再編されたUGMに弱点の背中を集中砲火され、たまらず月の裏側まで撤退。
そこでマイナスエネルギーを吸収したことで弱点を克服すると再度地球へと襲来し、迎撃に現れた地球防衛軍はもとより、UGMの背中への攻撃も受けつけず、破壊を続行して町を大混乱に陥れた。
駆けつけたウルトラマン80と交戦し、激しい格闘戦を繰り広げ、80を苦戦させるが、強化した背中も80の400文キックの前では形無しであり、最後はサクシウム光線を受けて絶命した。
本作においてもキヴォトスで発生していたマイナスエネルギーに導かれて宇宙から飛来した。
しかし、ドキュメントUGMで予習済みの“GUYSの先生”北条 アキラを軍事顧問に迎えたキヴォトス防衛軍によって迎撃され、圧倒的な火力と攻勢によって本格的な対怪獣兵器も無しに追い込むことに成功する。
ところが、これは致命的な誤算であり、本命であるライナー部隊の陣まで怪獣を誘引するはずが、あまりにも血の気の多いキヴォトス人の性から、ギコギラーが倒れ込んだと見るや後先考えずに全員が突っ込んでしまったため、致命傷に至らなかった怪獣が逃げ出しそうになっていたのである。
このまま待っていたら怪獣に逃げられると悟ったライナー部隊が行動に移すが、すんでのところで必殺の攻撃を避けられてしまったため、キヴォトス防衛軍の初出撃は戦略的には大失敗になってしまう。
そこに ここで逃がしたらマイナスエネルギーを吸収してパワーアップして逆襲してくることを知っていたウルトラマン80が追撃し、すでに弱りきっていたギコギラーはまともな反撃もできずに反撃サクシウム光線で絶命した。
キヴォトスで観測された第2の怪獣だが、最初の怪獣:クレッセントと比べると何もかもスケールが小さい弱小怪獣。
強風で市街地を更地にできるために十分に恐るべき災厄の1つなのだが、比較対象のクレッセントが数十倍ヤバい災害の化身であるため、弱点がはっきりしている上にウルトラマン抜きで一度は撃退された以上は格が低い宇宙怪獣である。
一方で、マイナスエネルギーで誕生した怪獣ではないが、マイナスエネルギーに呼び寄せられた宇宙怪獣という点では、マイナスエネルギーがいかに人類社会にとって危険であるかを示唆するものとなっており、
地球の怪獣頻出期が収まったとしてもマイナスエネルギーによって宇宙怪獣を呼び寄せる可能性が残り続けるため、マイナスエネルギーの抑止は平和を維持するためには極めて重要な要素となるのである。