Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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Vol.1 DON'T GIVE UP OH NEXUS
EP11 超古代の光と闇が渦巻く因縁の砂漠へ


 

 

――――――ついにアビドス遠征が始まる。彼の者にとっては2度目の【ブルーアーカイブ】の始まりである。

 

 

目的はキヴォトス全土のハザードマップの完成であり、その一環として未調査領域が全土を占めるということで【連邦生徒会】の提出命令に一切従ってこなかった、かつてキヴォトスで最大の勢力を誇っていたという【アビドス高等学校】を覆う砂塵の暗闇にメスが入れられるのだ。

 

そこで、【キヴォトス防衛軍】によるベースキャンプ設営とハザードマップ作成の許可を取り付けるために【アビドス生徒会】と接触する先遣隊が陸路でアビドス自治区に進入することとなった。

 

なぜ陸路なのかと言えば、破滅の未来を変えるために機械の身体に“光”を移してタイムスリップしてきたロボット職員:マウンテンガリバーがそこで【アビドス高等学校】の生徒との最初の出会いを状況再現するためであった。

 

これがもっとも確実に【アビドス生徒会】と接触する手段と信じて疑わず、また大切な生徒たちと出会うことができることに胸を躍らせながら、燦々と照り続けるアビドス砂漠を陸路で渡ったのであった。

 

 

一方で、彼の者の言うことだけで陸路からの進入になったわけではなかった。

 

 

現在、アビドス砂漠全域で強力な通信障害が発生しており、アビドス自治区の通信環境が悪化して外部との通信に大幅な制限がかけられていることが判明していたからだ。

 

そうなると、アビドス砂漠での正確な情報を得ることができずに遭難する可能性が極めて高く、万が一の襲撃や事故で輸送機が墜落した時が怖かった。

 

そのため、アビドス砂漠の情報が錯綜して極めて危険だとわかるにつれて、失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者である“シャーレの先生”にして“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラが死の砂漠に赴くことを【連邦生徒会】七神 リンは強く反対するようになったのだ。

 

実際、今回のアビドス遠征のきっかけとなった【アビドス高等学校】からの支援要請に対しても嘘か本当かわからないと七神 リンが消極的な姿勢を見せてきたことで、

 

それならばと、超合金のロボット職員:マウンテンガリバーが先導して四次元発信機を設置してきて、四次元移動列車で四次元都市:フォーサイト経由で【アビドス高等学校】を目指すのが安全であるとされたのだ。

 

 

そのため、第一陣として“シャーレの職員”であるロボット職員:マウンテンガリバーが率いる先遣隊は朝早くに通りかかる今回の依頼人である【アビドス高等学校】の生徒の通学路に待ち合わせる必要があった。

 

 

そういうわけで記憶を頼りに 砂漠に呑まれて荒廃して滅亡を待つばかりの砂漠の街でも変わることなく不良生徒たちが銃乱射事件を犯しているという キヴォトスではどこでも当たり前だった光景を他所に、

 

かつて“シャーレの先生”だったロボット職員:マウンテンガリバーは()()()()に戻ってくるまでの万感の思いと大切な生徒との思い出を振り返りながら一人待ち続けていた。

 

生徒が持つ銃では決して傷つくことがない超合金のデカブツなので、その巨体がどれだけ不良生徒たちの目に留まってもどうすることもできない以上は、すぐに他のことに関心が向けられて不良たちは通り過ぎていくのだった。迂闊に触ろうとすると電磁装甲で帯電させた静電気が鋭く走る。

 

その間、ビルの瓦礫に擬態できる光学迷彩付きのサンルーフテントを展開して隠された冷房の効いた兵員輸送車の中で先遣隊として参加している【C&C】のエージェントたちが待機しており、

 

そのうちの一人である角楯 カリンは自分の夢を応援してくれたことで想いを寄せることになったロボット職員:マウンテンガリバーのことを片時も対戦車ライフルのスコープから目を離さずに見つめ続けているのだった。

 

その様子に鬼気迫るものを感じながら、社会勉強のために先遣隊に同伴することになった【アリウススクワッド】錠前 サオリと秤 アツコは手に入れることができた旧い地図と現在の位置を確認しながら、四次元発信機による定期的な追跡も合わせて【アビドス高等学校】までの経路(ルート)を書き込んでいた。

 

そして、状況再現のためだけに日が昇る前から記憶にある場所に佇んで、ついにその時が来たのだった――――――。

 

 

ロボット職員「――――――」

 

砂狼 シロコ「あっ」

 

砂狼 シロコ「………………」

 

――――――

秤 アツコ「――――――自転車に乗った水色のマフラーをした銀狼の生徒が来たよ」

 

角楯 カリン「うん。目標は捉えた」ジャキ!

 

錠前 サオリ「…………間違っても撃つなよ、カリン?」

 

一之瀬 アスナ「ねえねえ、あれって何か、様子、おかしくない?」

 

角楯 カリン「ん?」

 

秤 アツコ「……あれ?」

 

錠前 サオリ「……コーイチの側を通り過ぎたぞ?」

――――――

 

砂狼 シロコ「――――――」

 

ロボット職員「………………」

 

ロボット職員「…………あれ、シロコ?」

 

 

砂狼 シロコ「ねえ、生きてる?」

 

戦場カメラマン「うぅ…………」

 

砂狼 シロコ「……日向ぼっこ?」

 

戦場カメラマン「うぅ…………」

 

砂狼 シロコ「……行き倒れ?」

 

戦場カメラマン「うぅ…………」

 

砂狼 シロコ「……もしかしてこのままだと死んじゃうのかな、この人?」

 

砂狼 シロコ「ねえ、わかる? これ、エナジードリンクだけど飲む――――――?」

 

 

ロボット職員「――――――大丈夫ですか! 大丈夫ですかぁあああああ!?」ドドド!

 

 

戦場カメラマン「うぅ…………」

 

砂狼 シロコ「誰!?」ビクッ

 

ロボット職員「シロコ! 今すぐにこの人を飲ませて上げた後、安静にできる場所まで案内してくれ!」

 

砂狼 シロコ「え? うん、わかった……!」

 

砂狼 シロコ「ほら、飲んで」

 

戦場カメラマン「うぁ…………」

 

ロボット職員「ああ、くそっ! 直射日光で照らされたこの身体で触るとますますダメだ!」

 

秤 アツコ「コーイチ!」

 

錠前 サオリ「輸送車に載せるぞ! そうすればいいんだろう? だから、しっかりしろ!」ガバッ ――――――要救助者に肩を貸す!

 

戦場カメラマン「あぁ…………」

 

ロボット職員「アツコ、サオリ!」

 

錠前 サオリ「おい、すまないが、道案内をしてくれないか? 看病はこっちでやるから、【アビドス高等学校】を知っているのなら、連れて行って欲しい!」

 

砂狼 シロコ「うん、わかった!」

 

ロボット職員「よしよし。これで遭難者の保護はできた――――――」

 

ロボット職員「ん?」

 

ロボット職員「…………あれぇ?」

 

 

――――――ああ、予定していた大切な生徒との初めての出会い(感動の再会)はなんだかちがうものになってしまったなぁ。

 

 

 

 

 

十六夜 ノノミ「シロコちゃん、どうしたんですか? こんなに大勢のお客さんを連れて来るだなんて……」

 

奥空 アヤネ「えっと、粗茶ですが、これぐらいのものしか用意できなくてすみません……」

 

黒見 セリカ「……何、この人たち?」

 

砂狼 シロコ「この人たち、うちの学校に用があるんだって」

 

 

ロボット職員「挨拶の前に、まずはこちらの【アビドス高等学校廃校対策委員会】名義の支援要請の内容は合っているでしょうか?」

 

 

奥空 アヤネ「あ、それって――――――!」

 

十六夜 ノノミ「支援要請がようやく受理されたんですね!」

 

黒見 セリカ「え、じゃあ、あなたたちはつまり――――――!」

 

 

ロボット職員「はい。【連邦生徒会】の業務を一部代行させてもらっています【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の者です」

 

 

ロボット職員「どうぞ、名刺です。私は“シャーレの職員”をしていますマウンテンガリバーと申します」

 

奥空 アヤネ「あ、ありがとうございます! これで弾薬と補給品の援助が受けられます!」

 

ロボット職員「続いて、こちらは【シャーレ】のお手伝いをしてくれている生徒の皆さんです」

 

錠前 サオリ「私は【アリウススクワッド】の錠前 サオリだ。よろしく頼む」

 

秤 アツコ「同じく、【アリウススクワッド】の秤 アツコだよ。よろしくね」

 

奥空 アヤネ「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

砂狼 シロコ「あと、外に待機してある輸送車にメイドさんが何人もいて、今朝 私が見つけた遭難者の看病をやっているから」

 

ロボット職員「本当は全員をここに呼んでおきたかったんですけど、遭難者に出くわすっていうちょっとしたアクシデントがありましてね……」

 

ロボット職員「とりあえず、私たちが代表して話を進めさせてもらいますね」

 

十六夜 ノノミ「じゃあ、ホシノ先輩を呼ばないと、ですね」

 

黒見 セリカ「たぶん、先輩なら いつもの場所で寝てると思う。私、起こしてくるね」タタタッ

 

ロボット職員「それなら、全員が揃うまでに こちらの資料をお渡ししておきましょう」

 

錠前 サオリ「ああ。これをみんなでじっくりと読んでおいてくれ」ドン!

 

奥空 アヤネ「えと、これは何ですか?」

 

錠前 サオリ「これは【メトロポリス(首都:D.U.)】で起きた最近の出来事についての資料の束だ」

 

錠前 サオリ「驚いたぞ。このアビドス砂漠は通信状態が著しく悪い。しっかりと情報を集めることができているのか?」

 

奥空 アヤネ「わざわざありがとうございます」

 

奥空 アヤネ「はい。そうなんですよ。ここ数ヶ月間、ずっと通信状態が悪くなってまして、いよいよ通信インフラの復旧も考えないといけないと思っていました」

 

十六夜 ノノミ「もしかして、今まで私たちからの再三の支援要請が受理されなかったのも、通信状態が悪かったせいなんでしょうか?」

 

ロボット職員「申し訳ないけど、それはありますね。直接言いに来ない限りは、届かなかった電子メールに気づくことはできませんから」

 

奥空 アヤネ「……これはいよいよダメかもしれませんね」

 

十六夜 ノノミ「………………」

 

砂狼 シロコ「……あ」

 

 

室笠 アカネ「こちらですよ。こちらにみなさんが集まっています」

 

戦場カメラマン「っと、すまない。世話になったな」

 

 

ロボット職員「あ、よかった。無事だったんですね」

 

砂狼 シロコ「うん。よかった」

 

ロボット職員「シロコが……、この子が見つけてくれたんですよ」

 

戦場カメラマン「そうか。ありがとう」

 

砂狼 シロコ「どういたしまして」

 

室笠 アカネ「さあ、みなさん。こちらのテーブルを使わせていただきますね」バサッ

 

砂狼 シロコ「わあ」

 

十六夜 ノノミ「これがシロコちゃんが言っていたメイドさんですか」

 

錠前 サオリ「一発でテーブルクロスを引くとは、いつもながら見事なものだな」

 

奥空 アヤネ「えっと、これから何が始まるんですか?」

 

ロボット職員「ちょっと待っててね」

 

秤 アツコ「もう少しでわかるよ」

 

小鳥遊 ホシノ「もうセリカちゃん。おじさんにはもっと優しくしてくれないと……」

 

黒見 セリカ「何言ってんのよ。委員長なんだから。ほら、ちゃんとして」

 

砂狼 シロコ「あ、来たよ」

 

 

小鳥遊 ホシノ「やあやあ、小鳥遊ホシノだよ。よろしく」

 

ロボット職員「はじめまして。小鳥遊 ホシノさん、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の職員をしていますマウンテンガリバーです」

 

 

小鳥遊 ホシノ「おお、おっきい! 見たことない おっきいロボットだね!」

 

ロボット職員「……やっとだ。また会えたね、ホシノ

 

小鳥遊 ホシノ「ん?」

 

戦場カメラマン「――――――ホシノ」

 

ロボット職員「ん」

 

 

戦場カメラマン「……お前はホシノなんだな?」

 

小鳥遊 ホシノ「――――――もしかして、姫矢さん?」

 

 

戦場カメラマン「じゃあ、ここは間違いなく【アビドス】なんだな?」

 

小鳥遊 ホシノ「うん」

 

秤 アツコ「――――――!」

 

小鳥遊 ホシノ「……今までどこに行っていたのさ」

 

戦場カメラマン「……すまない。俺は地球に帰っていた」

 

戦場カメラマン「……そして、また【アビドス】に戻ってきていた」

 

小鳥遊 ホシノ「……そうなんだ。じゃあ、しかたないね」

 

砂狼 シロコ「もしかして、2人は知り合い……?」

 

ロボット職員「え!? えええっ!?」

 

錠前 サオリ「……どういうことだ? 明らかにコーイチが知らない展開になっているみたいだぞ?」

 

室笠 アカネ「……これはいったいどうしましょうか?」

 

 

秤 アツコ「ねえ、みんな。積もる話はいっぱいあると思うけど、ここは 一旦 席について順序よく行こうよ」

 

 

秤 アツコ「ほら、コップをたくさん用意して。椅子もあるだけ持ってきて」

 

奥空 アヤネ「あ、はい! 立ち話もなんですし、お茶を用意します!」

 

黒見 セリカ「それじゃ、私は椅子を並べるから!」

 

秤 アツコ「じゃあ、これで手筈通りにね」

 

室笠 アカネ「はい。ありがとうございます、アツコ様」

 

十六夜 ノノミ「こちらの席にどうぞ、お客さん。それにホシノ先輩も」

 

小鳥遊 ホシノ「あ、うん。そうだね、ノノミちゃん」

 

ロボット職員「おっと、病み上がりなんだから、遠慮しないでください。ちゃんと最後まで面倒を見させてくださいよ。また行き倒れになっても困りますから」

 

戦場カメラマン「……そういうことなら、すまない。その厚意に甘えさせてもらおうか」

 

ロボット職員「…………あ、そろそろか。()()()()()()

 

砂狼 シロコ「ん」ピクッ

 

砂狼 シロコ「――――――近くで銃撃戦?」

 

 

 

ズバババババ! チュドーン!

 

 

 

ヘルメット団「た、たった一人に、私たち【カタカタヘルメット団】がやられるなんて……」

 

ヘルメット団「い、いったい誰なんだよ、お前!?」

 

ヘルメット団「こ、こんなことをして、ただですむと思っているのかよ!?」

 

美甘 ネル「へえ、白昼堂々と学園を乗っ取ろうだなんて、おもしろいことをやっているじゃねえかよ?」

 

美甘 ネル「このところ、先生のおかげで世間の不良共もお行儀よくなっちまったからよ、これぐらい派手にやってくれねえと身体が鈍ってしかたねえ」

 

美甘 ネル「けどな、【カタカタヘルメット団】なんてやつら、あたしは知らねえんだよな?」

 

美甘 ネル「運が悪かったな。てめぇらの最大のミスはあたしの行く手を塞いだってことだ」

 

 

美甘 ネル「―――――― 清掃完了だ」

 

 

美甘 ネル「おい、他にもいたか?」

 

一之瀬 アスナ「うん! オールクリア! 綺麗になったね」

 

角楯 カリン「これ以上の増援はない」

 

美甘 ネル「そうか。四次元発信機とセントリーガンの設置が終わったら、あたしらも中で涼もうぜ」

 

美甘 ネル「まあ、こんな場所で元気にやっていけるやつらだから、少しは根性はあったが、あたしたちの敵じゃないな」

 

美甘 ネル「さてさて、まずはケーキパーティーで相手の気を解して、ベースキャンプ設営とハザードマップ作成の許可を取り付けるんだったな」

 

 

――――――こんなクソ暑い中で喰う先生特製のアイスクリームケーキの味はさぞ格別だろうな!

 

 

こうして【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】はロボット職員:マウンテンガリバーの記憶を頼りに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、無事に【アビドス高等学校】の生徒たちと接触することに成功した。

 

そして、自分の代わりにアビドス砂漠で行き倒れになっていた戦場カメラマンも参加させてのアイスブレイクのためのケーキパーティーが【アビドス高等学校】で開かれ、【C&C】表の顔は【メイド部】室笠 アカネの見事な給仕もあって【アビドス高等学校廃校対策委員会】の面々は久々に楽しい時間を過ごすことができていた。

 

そう、あの“シャーレの先生”が作った特製アイスクリームケーキなのである。その味や見た目はアビドス砂漠の熱砂で崩れないようにしっかりとドライアイスの箱に詰めてキンキンに冷やして持ってきただけあって品質はしっかり保たれていた。

 

それで全員が思わず目を見開くほどの地球の甘味に驚くことになり、“シャーレの先生”からの素敵な贈り物に一気に胃袋を掴まれてしまったようだった。

 

ちなみに、ロボット職員:マウンテンガリバーは見た目通りのロボットなので一緒に食べることはできないものの、部屋の隅に立ってイオナイザー空気洗浄機となって涼しくて綺麗な空気を場に提供していた。これは電磁装甲で帯電した静電気を除電するのに必須の機能である。

 

そんな中、自分のことを“おじさん”と呼ぶ小鳥遊 ホシノは砂漠の暑さを忘れさせる快適な空間の中で本物のメイド:室笠 アカネに対してだらしのない態度で接しているのに嫉妬する十六夜 ノノミの間に挟まれており、自分の分のアイスクリームケーキを2人に食べさせてもらうという甘えっぷりを披露していた。極楽極楽。

 

その様子を涼しい空間の中で適度な温かさをもたらす【メイド部】室笠 アカネが淹れた紅茶を口に含みながら優しい眼差しで見つめていた戦場カメラマンは静かにアイスクリームケーキを平らげていたのだった。その仕草はワイルドでありながらセクシーさがあった。

 

それで“シャーレの先生”からの贈り物であるアイスクリームケーキを十分に堪能できたところで、あらためて互いの自己紹介をすることになったのであった。

 

 

錠前 サオリ「なるほどな。以上の5名が【アビドス高等学校廃校対策委員会】略して【アビドス対策委員会】というわけだな」カキカキ・・・

 

秤 アツコ「それじゃ、せっかくだから、あなたのことも聞かせて」

 

戦場カメラマン「……俺か」

 

小鳥遊 ホシノ「………………」

 

室笠 アカネ「お茶のおかわりをどうぞ」コポポ・・・

 

戦場カメラマン「ああ、ありがとう」

 

戦場カメラマン「………………」ゴクッ

 

 

――――――俺は姫矢 ジュン。地球という星で生まれた戦場カメラマンだ。

 

 

ロボット職員「え!?」

 

錠前 サオリ「なに!?」

 

秤 アツコ「……姫矢さんも地球という星から来たんですか?」

 

戦場カメラマン「そうだ。【アビドス】に来たのはこれで2度目になる。一度目はホシノが新入生だった時だ」

 

十六夜 ノノミ「そういうことだったんですね。だから、ホシノ先輩とも面識があったわけですね」

 

小鳥遊 ホシノ「……まあね」

 

戦場カメラマン「だから、何も言わずにいなくなったのは悪かったと思っている、ホシノ」

 

小鳥遊 ホシノ「いや、いいよ。その感じだと不可抗力だったんだよね。また【アビドス】に来るだなんて思ってもみなかっただろうし」

 

戦場カメラマン「ホシノ、変わったな。いや、学園自体が賑やかになったのもあるか」

 

 

戦場カメラマン「俺がお前と初めて出会った時は学園には2人だけだったからな。それが今だと5人になっている」

 

 

小鳥遊 ホシノ「昔のことは、おじさん、忘れちゃったな」

 

戦場カメラマン「……そうか」

 

ロボット職員「…………そんな頃があったのか」 ←Final. あまねく奇跡の始発点編を突破できなかったコーイチ先生

 

秤 アツコ「ねえ、姫矢さんはカメラマンなんだよね? 今までどんなものを撮ってきたの?」

 

戦場カメラマン「そうだな。あれからどれくらい経っているかはわからないが、この【アビドス】でも写真を撮ってきたから、いろいろと残っているかもしれないな」

 

戦場カメラマン「だが、その前に1ついいか? いつもながらの変わることのない【アビドス】の窮状だが、支援要請のためだけにわざわざパーティーを開くまでのことはしないはずだ」

 

小鳥遊 ホシノ「……そうだね。そろそろ、要件を聞かせてもらえないかな」

 

ロボット職員「いいでしょう。まずは今、キヴォトスで何が起きているかを把握してもらう必要があります」

 

ロボット職員「じゃあ、アツコさん。用意した紙の資料を」

 

ロボット職員「それでは、プロジェクターを準備しますので、部屋を暗くしてください」

 

砂狼 シロコ「わかった」

 

黒見 セリカ「あれ? プロジェクターはどこ? 用意してきたんじゃないの?」

 

ロボット職員「大丈夫です。私自身がプロジェクターとなりますので」

 

黒見 セリカ「へ」

 

 

ロボット職員「では、これから【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が【アビドス高等学校】に対してハザードマップの提出を催促しに来たことを説明します」パーッ

 

 

十六夜 ノノミ「――――――『ハザードマップの提出』ですか?」

 

ロボット職員「まずは、【連邦生徒会】から全ての学園や団体に対して所有している自治区のハザードマップの提出をするようにお達しが出されています」

 

黒見 セリカ「え、何それ、知らないんだけど」

 

奥空 アヤネ「つまり、ハザードマップの提出が求められていたのに、私たちはそれに気づかないままでいたわけなんですね……」

 

錠前 サオリ「そうだ。そのために【アビドス高等学校】がすでに砂漠に呑まれて消滅しているのかどうかを確かめる必要が出てきた」

 

奥空 アヤネ「じゃあ、支援要請が届いたことを確認できていたのは、まさに九死に一生を得る状況だったんですね……」

 

戦場カメラマン「だが、【アビドス高等学校】がまだ存在しているかどうかを確認するためだけに来るのは割に合わないことのはずだ」

 

ロボット職員「その通りです。もしかしたら、今回の支援要請も【アビドス高等学校】の関係者を装った罠の可能性もありました」

 

黒見 セリカ「え、でも、『パーティーの準備をしてきていた』ってことは私たち【アビドス対策委員会】のことを知っていたんじゃないの?」

 

 

ロボット職員「いいえ、何も知りません。2年前の『全校生徒は2名で【アビドス生徒会】が2名』という最新の情報があるだけで、それ以降は【連邦生徒会】への連絡が途絶えていたので」

 

 

小鳥遊 ホシノ「え」ビクッ

 

戦場カメラマン「……ホシノ?」

 

ロボット職員「ですので、今回のケーキパーティーの準備は【アビドス高等学校】がもしも滅んでいた場合にも自治区に住み続けている地域住民たちを集めて情報を得るためのものでもあったのです」

 

黒見 セリカ「うそ……」

 

 

小鳥遊 ホシノ「ねえ? それって、私のせいなのかな?」

 

 

十六夜 ノノミ「……ホシノ先輩?」

 

小鳥遊 ホシノ「ねえ? もしかして【連邦生徒会】が認識していたのって【アビドス生徒会】ことなの?」

 

ロボット職員「その通りです。【アビドス生徒会】と2年前に音信不通となった以上、【連邦生徒会】はアビドス自治区の状況を把握することができなくなっていたのです」

 

 

ロボット職員「つまり、ここにお集まりになっている【アビドス高等学校廃校対策委員会】は非公式の部活動、もとい【アビドス生徒会】副会長:小鳥遊 ホシノさんを除いて【アビドス高等学校】の在籍が確認されていない状態ということになります」

 

 

小鳥遊 ホシノ「あ、ああ…………」

 

奥空 アヤネ「え」

 

黒見 セリカ「そ、そんな……!」

 

十六夜 ノノミ「じゃあ、本当にこうして支援要請を受けて駆けつけてくださったのは九死に一生を得た結果なんですね……」

 

砂狼 シロコ「みんな……」

 

 

戦場カメラマン「だが、事情が変わったんだろう? だから、ここに【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が来たからには状況が好転することを伝えに来たはず――――――、そうじゃないのか?」

 

 

小鳥遊 ホシノ「……姫矢さん」

 

戦場カメラマン「俺はホシノが新入生の頃の2人きりで運営されていた【アビドス生徒会】を知っている。その時の苦労も目の当たりにしている」

 

戦場カメラマン「ここにいる小鳥遊 ホシノは【アビドス生徒会】の一員だ。それを裏付ける写真を俺は何枚も撮っている」

 

 

戦場カメラマン「つまり、これから【連邦生徒会】に【アビドス高等学校】の正式な部活動――――――、いや、生徒会活動として【アビドス高等学校廃校対策委員会】を登録させるためにここに来た」

 

 

戦場カメラマン「それで合っているな?」

 

ロボット職員「その通りです、姫矢さん!」

 

ロボット職員「ですから、これから【連邦生徒会】に登録される正式な生徒会活動【アビドス高等学校廃校対策委員会】とするために必要なことをお伝えに来ましたので、まずは説明を聴いてください」

 

奥空 アヤネ「はい!」

 

黒見 セリカ「そうだっんだ! それなら、しっかりと聴かなくちゃね!」

 

十六夜 ノノミ「…………本当に良かった。まだ大丈夫みたい」

 

砂狼 シロコ「ん。まだ【アビドス】は滅んだわけじゃない。やれることはなんだってする」

 

小鳥遊 ホシノ「………………」

 

錠前 サオリ「顔を上げろ、ホシノ。私たちはお前のことを責めているわけじゃない」

 

錠前 サオリ「ここも【アリウス】とはちがった意味で過酷な環境だ。そんな中で学園を守り続けてきたことは並大抵のことじゃないのは私でも理解できている」

 

錠前 サオリ「私たちはお前たちの味方だ」

 

 

――――――いや、これから一緒に怪獣災害を戦い抜く仲間になってくれ!

 

 

小鳥遊 ホシノ「え」

 

戦場カメラマン「――――――今、『怪獣災害』と言ったか!?」ガタッ

 

秤 アツコ「うん、言ったよ」

 

錠前 サオリ「ああ。だから、説明を聴いてくれ」

 

錠前 サオリ「これが今のキヴォトスで起きていることだ!」

 

戦場カメラマン「!!」

 

小鳥遊 ホシノ「う、うへ~……」

 

黒見 セリカ「な、何なのよ、これって!?」

 

砂狼 シロコ「……これが怪獣!」

 

 

こうしてロボット職員:マウンテンガリバーは予定通りに【アビドス高等学校】に残り続けている生徒たちが参加している部活動【アビドス高等学校廃校対策委員会】に今回のアビドス遠征の概要と意義を説明することになり、キヴォトスが怪獣頻出期という天変地異の時代に突入していたことを理解させることになった。

 

そして、怪獣がいつどこで現れるかわからないためにキヴォトス全土でハザードマップの作成と提出が必要になったこと、怪獣災害対策の基本として安否確認サービスへの登録と避難シェルターの整備などが各学園で求められるようになったことをまず伝えた。

 

その他、キヴォトスが怪獣頻出期に突入しており、人智を超えた超常の存在である“怪獣(KAIJU)”やそれが引き起こしている怪奇現象などの目撃情報を【キヴォトス防衛軍】のコミュニティサイトで広く募っていることも欠かさずに紹介したのだった。

 

そんなこんなで、1日目は目的通り【アビドス高等学校】ひいては【アビドス高等学校廃校対策委員会】からベースキャンプ設営とハザードマップ作成の許可を取り付けることに成功し、『アビドス砂漠に埋もれてしまった数多ある校舎と敷地の全てを【キヴォトス防衛軍】のハザードマップ作成のためのベースキャンプとして利用してもいい』という内容の契約書に署名する運びとなった。

 

これには【アビドス生徒会】副会長:小鳥遊 ホシノとは顔馴染みの信頼できる大人である戦場カメラマン:姫矢 ジュンが立会人を務めたことにより、円滑に契約を交わすことができた。

 

その契約の範囲には【アビドス高等学校廃校対策委員会】の生徒たちが登校している今現在の校舎である自治区内の別館も該当しており、早速 ハザードマップ作成のために集結する【キヴォトス防衛軍】の調査拠点となるベースキャンプ設営のための人員を呼びつけることになったのである。

 

それと同時に、連れてきていた【メイド部】所属の本職のメイドたちによる校内の清掃が始められることになり、あっという間に砂塗れの一室がピカピカになっていくのだった。ロボット職員:マウンテンガリバーが空気洗浄機となって清掃班の後をついて回り、手で握ることで掃除機の電源も入れられて非常に快適に清掃が進められた。

 

あっさりと自分たちの校舎を他所の組織に間借りさせることについては、【アビドス対策委員会】の面々としても、幾度となく校舎の移転を余儀なくされて 掃いても掃いても砂塗れになる自分たち以外に誰もいない校舎に対して そこまで強い執着心は抱いていないこともあったのだが、

 

近頃、【カタカタヘルメット団】といった不良集団が学園を奪い取ろうと徒党を組んで迫ってきていたため、【キヴォトス防衛軍】のベースキャンプとして校舎を貸し出すことで抑止力にしようという提案が【アビドス対策委員会】の側から出てきた結果であった。

 

そのため、【キヴォトス防衛軍】の旗を目立つように校舎に立てて、【アビドス高等学校廃校対策委員会】が所有している会議室以外の全てを【キヴォトス防衛軍】のベースキャンプとして貸し出すことで、キヴォトス史上最大の軍事組織【キヴォトス防衛軍】の逆鱗に触れることを恐れて不良たちが迂闊に攻めてこなくなるように仕向けたのである。

 

一応、レッドカーペットで丁寧に【アビドス高等学校廃校対策委員会】が所有している会議室への道が敷かれているため、何か物申したいのなら【キヴォトス防衛軍】のベースキャンプとなっている校舎をおとなしく通らせてもらう他ないのだ。

 

しかし、そこまで【キヴォトス防衛軍】のアビドス遠征について現地の【アビドス高等学校】と打ち合わせと情報共有を進めていき、今日のところはこれで解散となったのだが、ここで【アビドス高等学校】を取り巻く悪意が1つずつ顕になるのだった――――――。

 

 

奥空 アヤネ「おかしいですね。いくらやっても【キヴォトス防衛軍】の公式サイトにアクセスできません。【キヴォトス防衛軍】への参加も、コミュニティサイトの利用もできません」

 

錠前 サオリ「ああ、こちらでも確認できた」

 

錠前 サオリ「やはり、この【アビドス】全域で通信妨害が行われているのは間違いない。情報封鎖が行われているんだ」

 

秤 アツコ「じゃあ、新しく設置したWi-Fiスポットを試してみて。パスワードはこれ」

 

奥空 アヤネ「はい。試してみます」

 

砂狼 シロコ「ん。繋がった」

 

奥空 アヤネ「いけました! いけましたよ! これで登録ができます!」

 

錠前 サオリ「ああ。情報封鎖を突破することができたみたいだな」

 

奥空 アヤネ「いったいどうやったんです?」

 

秤 アツコ「えっとね、四次元都市:フォーサイト経由でVPN接続された通信サーバーを準備してくれたみたい」

 

砂狼 シロコ「――――――『四次元都市:フォーサイト』?」

 

錠前 サオリ「そうか。それも知らないのか。一度行ってみるといい。それと他にも学ぶことがいっぱいあるぞ」

 

砂狼 シロコ「ん。これからちゃんと学んでおく」

 

 

 

戦場カメラマン「――――――【連邦捜査部】の“シャーレの職員”としてはどう思う?」

 

ロボット職員「これは砂漠化に乗じた意図的な通信インフラの破壊と独占による情報封鎖と見て間違いないでしょう」

 

戦場カメラマン「俺もそう思う。ホシノが新入生だった頃、つまりは2年前の頃から砂漠化以外に【アビドス】を追い詰めようとしている何者かの強い悪意を俺は感じていた」

 

ロボット職員「…………その頃って何があったんですか?」

 

戦場カメラマン「今はどうかは知らないが、ホシノが新入生だった頃、当時のキヴォトスでは鉄拳政治を用いて【ゲヘナ学園】を治めた“雷帝”と呼ばれた生徒会長が君臨していた」

 

戦場カメラマン「“雷帝”は当時のキヴォトスを混乱に陥れた暴君であり、天才策略家であり、発明家であると同時に政治家でもあった」

 

ロボット職員「ああ、そっか、“雷帝”か。憶えていますよ。【トリニティ総合学園】の職員でしたから。その名は嫌でも記憶に刻み込まれていますよ」

 

ロボット職員「現在、【ゲヘナ】と【トリニティ】の間で結ばれようとしている不可侵条約:エデン条約も、“雷帝”によって引き起こされそうになった全面戦争を恒久的に回避するために失踪した“連邦生徒会長”が考案したものとも言われていますし、“雷帝”が残した傷跡は根深いものがあります」

 

ロボット職員「そうだった。2年前は“雷帝”への対策のせいで【トリニティ】から身動きが取れなくなっていたんだった……

 

戦場カメラマン「その“雷帝”も生徒であることには変わりないんだ。もう卒業しているだろう」

 

ロボット職員「ええ。今の【ゲヘナ学園】を率いている【万魔殿】議長:羽沼 マコトもキヴォトス征服への野心を隠そうともしていませんが、“雷帝”のやり方と比べたら非常に生温いやり方で愛嬌すら感じますよ」

 

 

戦場カメラマン「そうか。だが、その“雷帝”が健在だった2年前、“雷帝”が【アビドス】に残したとされる【遺産】の噂を俺はキヴォトスで聞いたことがある」

 

 

ロボット職員「――――――【“雷帝”の遺産】?」

 

ロボット職員「それが本当だとして、よくそんな噂を耳にすることができましたね」

 

戦場カメラマン「まあ、戦場カメラマンだからな。危ない橋を渡ることには慣れている。それに【トリニティ】に居たのなら、噂を耳にすることは難しかっただろう」

 

ロボット職員「で、その【遺産】というのは何なんです?」

 

戦場カメラマン「俺も正確なところはわかってはいないが、当時の“雷帝”の噂や【アビドス生徒会】の動きを追っていくことで見えてきたものがある」

 

 

――――――おそらく、【アビドス】に残した【“雷帝”の遺産】の正体は【セイント・ネフティス】が開発しようとしていた<列車砲>なんじゃないかって俺は睨んでいる。

 

 

ロボット職員「ええ!? なんだって!? 『列車砲』だって!?」

 

戦場カメラマン「知っての通り、【アビドス】が数十年前からの急激な環境変化で不毛の砂漠と成り始めたことで衰退に歯止めがかからなくなり、アビドス自治区発祥の大企業【セイント・ネフティス】もまた最終的に【アビドス】を捨てて延命を図ることになった」

 

ロボット職員「今も聞きますね、その大企業の名は。昔から評判は物凄く悪いですけど」

 

ロボット職員「たしか、原因不明の砂漠化を阻止するために【アビドス生徒会】と連携してあらゆる手段を模索した結果、【アビドス生徒会】と共に多大な借金を背負うことになり、本社が発祥の地【アビドス】を見捨てたことで【アビドス】衰退の象徴となり、決定打となったんですよね」

 

ロボット職員「企業の判断としては何も間違ってはいないですけど、自治区を管理しなくてはならない学園側としては裏切られたも同然ですよね、これは」

 

戦場カメラマン「ああ。だが、あらゆる手段を模索しても砂漠化を止めることができないということで、十数年以上前に起死回生を狙った大規模な鉄道開発事業に着手して失敗することになったんだが、」

 

 

戦場カメラマン「――――――何かおかしいと思わないか、この話?」

 

 

ロボット職員「……砂漠化を止めるために『鉄道開発をすることが』ですか?」

 

戦場カメラマン「そうだ。最終的に【セイント・ネフティス】が発祥の地【アビドス】から撤退することになった社運を賭けた一大プロジェクトはこの鉄道事業の何に勝機を見出していたと思う?」

 

ロボット職員「……わからないです。鉄道事業っていうのは旅客にしても貨物にしても利用客が毎日のようにいないと赤字になるのがわかりきっているじゃないですか」

 

ロボット職員「砂漠化が止められないことも、新規事業を立ち上げるにしても、砂漠化が始まる以前にアビドス自治区の経済を牛耳っていた【セイント・ネフティス】なら、真っ当な手段での儲けはもう出せないことがわかりきっていたでしょうに」

 

戦場カメラマン「いや、あるだろう。自治区で収益が上げられないのなら、あるところから金を奪い取ればいい。それがキヴォトスの日常だろう」

 

ロボット職員「え? いや、そんな形振り構わないやり方が通用するとでも――――――?」

 

ロボット職員「あ」

 

 

――――――ん、銀行を襲う。

 

 

ロボット職員「……ああ」ゾクッ

 

ロボット職員「……もしかして、本当にそのための『列車砲』?」

 

戦場カメラマン「そうだと俺は睨んでいる」

 

戦場カメラマン「だからこそ、“雷帝”が【セイント・ネフティス】の最後の賭けとなった鉄道事業の裏に隠されていた<列車砲>のアイデアを利用したんじゃないかと思っている」

 

戦場カメラマン「そう考えないと、もはや風前の灯火の【アビドス】に利用価値を“雷帝”が見出すはずがない」

 

戦場カメラマン「そして、それは鉄拳政治を振るっていた“雷帝”が求めていたキヴォトスに更なる混沌をもたらすための武力ということになるはずだ」

 

 

ロボット職員「……だから、すでに完成している列車砲の試作品を【ゲヘナ学園】が持っていたんだ

 

 

戦場カメラマン「どういうことだ、それは?」

 

ロボット職員「実は、【キヴォトス防衛軍】の主力部隊の中にライナー部隊があって、それは【ハイランダー鉄道学園】から接収した軍用列車を改造して対怪獣兵器にしていたんですが、【ゲヘナ学園】が積載したのが列車砲なんですよ!」

 

戦場カメラマン「……皮肉なものだな。“雷帝”の発明の数々はその全てがキヴォトスの秩序を崩壊させることを目的にしたものだったのが、その力が怪獣退治に利用されて平和利用されるだなんてな」

 

戦場カメラマン「いや、力の価値は力を使う者によって決められるか……」

 

ロボット職員「………………」

 

戦場カメラマン「だが、これではっきりしたな」

 

 

戦場カメラマン「【キヴォトス防衛軍】で列車砲が実戦投入されているということは、【“雷帝”の遺産】と思われる<列車砲>にも利用価値があることに気づいて、2年前に“雷帝”と関係を持っていた連中が動き回っているはずだぞ」

 

 

戦場カメラマン「となると、【連邦生徒会】がキヴォトス全土のハザードマップの提出をするように各学園に義務付けたことで、<列車砲>の存在が明るみにならないうちに【アビドス高等学校】を闇に葬ろうとしてきたんじゃないのか?」

 

ロボット職員「――――――【アビドス】全域の通信障害の原因はそれか!」

 

戦場カメラマン「どうする? そうなると、【キヴォトス防衛軍】がハザードマップを完成させるために調査を進めるのをあの手この手で妨害してくるはずだぞ」

 

戦場カメラマン「おそらく、【アビドス】はすでに【連邦生徒会】の統制から完全に分断された無政府状態になっているはずだ」

 

ロボット職員「……いや、待って。何それ。こんな展開、僕は知らないよ」

 

 

――――――ダメだ! こんなところに“シャーレの先生”を呼ぶわけにはいかないじゃないか!

 

 

 

 

 

秤 アツコ「パジャマパーティー!」

 

砂狼 シロコ「ん。こんなにも綺麗になった教室でふかふかの布団を敷いて寝るのは初めての経験」

 

錠前 サオリ「すまないな。着替えを持って来るために 一旦 家に帰ってきたんだろう」

 

砂狼 シロコ「あれぐらいの距離なら朝飯前だから、大丈夫」

 

秤 アツコ「でも、凄かったよね。こんなにも砂塗れになっているだなんて。【アリウス】でもここまで砂埃はなかったよ」

 

砂狼 シロコ「ん。この学校も私が入学した頃にはもうこんな状態だった」

 

砂狼 シロコ「そして、この学校、たくさんの借金があって、もう私たちしか残ってない」

 

砂狼 シロコ「だから、私たちは【対策委員会】として いろいろな依頼を受けて、その報酬を返済に充ててるの」

 

錠前 サオリ「あと何回くらいで借金は返せることになっているんだ?」

 

 

砂狼 シロコ「――――――昨日の時点だと『この調子でいくと 完済まで あと309年と2か月』ってところ」

 

 

錠前 サオリ「……悪いが、生きているうちに完済できるとは 到底 思えないぞ、それは」

 

秤 アツコ「ねえ、どうしてシロコたちは律儀に借金を返そうとしているの? そこら辺にたくさんいる不良たちのように自分たちで稼いだ報酬を自分たちのために使って遊んで暮らせばいいよね?」

 

砂狼 シロコ「ん。それは、考えたこと、なかったかも……」

 

錠前 サオリ「姫」

 

秤 アツコ「ねえ、どうして?」

 

秤 アツコ「私たちね、これから【連邦生徒会】にサッちゃんを生徒会長にした【アリウス学園】を登録申請しようと頑張っているんだ。だから、【アリウススクワッド】は【アリウス準備委員会】でもあるんだ」

 

砂狼 シロコ「そうなんだ。じゃあ、これから【アビドス対策委員会】を【アビドス生徒会】にしようとしている私たちと同じだね」

 

秤 アツコ「そういうわけだから、まだ校舎も決めていない私たちからすると、こんな不便なところに居続ける理由が知りたくて。こんなにもたくさんある教室も使ったことなんてないんでしょう」

 

砂狼 シロコ「ん。難しい……」

 

砂狼 シロコ「ん。逆に訊くけど、どうしてアツコたちはこれから【アリウス学園】を作ろうとしているの?」

 

 

錠前 サオリ「――――――仲間を守りたいからだ」

 

 

砂狼 シロコ「…………『仲間』」

 

錠前 サオリ「私たちは元の場所にもう居場所はない。それでも、変わらず一緒に居続けたいと思える仲間たちがこれからも集まることができる場所が欲しかったんだ」

 

錠前 サオリ「中には学園に在籍しながら会社を立ち上げて それで従業員を養っている【便利屋68】のような一流のアウトロー集団もいたし、【温泉開発部】のように独自の技術力をもって街作りをしているプロ集団もいた」

 

錠前 サオリ「だから、最初は傭兵や会社で身を立てていくことも考えたが、実際はそんな甘くなくて、“シャーレの先生”が憤慨するような労働条件を突きつけてくることが社会の現実だと知って、これでは仲間たちを喰わせていくことができないことを思い知ったんだ」

 

錠前 サオリ「つまり、私たちは所詮は社会に出ても単純労働でしか働けない役立たずでしかなく、学園の保護がなければ児童労働の搾取を受け続ける他ない社会的弱者に過ぎないのだと」

 

錠前 サオリ「なら、たとえ弱小であっても【学園】としての保護を受けられる場所で落ち着いて勉強ができるようにならないと、私たちに安息の時は訪れないと理解した」

 

錠前 サオリ「だから、児童労働を良しとしない“シャーレの先生”の願いもあって、私たちは私たち自身を守るために私たちの学園を必要としているんだ」

 

砂狼 シロコ「じゃあ、私も同じかもしれない」

 

 

――――――ここが私たち【アビドス対策委員会】の居場所だから、私たちの居場所を守るために私は戦いたい。

 

 

【アリウススクワッド】錠前 サオリと秤 アツコが 早速 間借りした校舎の一室にふわふわの布団を敷いてパジャマパーティーの開催を呼びかけたのに応じることができたのはすぐにパジャマを取ってくることができた砂狼 シロコだけだったが、現地の生徒である【アビドス対策委員会】から情報を引き出すのと信頼を得るように言われていた2人はしっかりと砂狼 シロコと対話して親睦を深めることができていた。

 

一方、屋外では四次元発信機で座標登録に成功したことで【キヴォトス防衛軍】が保有する四次元移動列車が【アビドス高等学校】に続々と空間トンネルを通って出現し、夜を徹して必要な機材や物資が運び込まれて、一夜のうちにベースキャンプという名の武装要塞へと校舎を変貌させるのであった。見ようによっては【キヴォトス防衛軍】に【アビドス高等学校】が制圧されたようにも見えるだろう。

 

その現場監督として不寝番で指揮を執っていたロボット職員:マウンテンガリバーと、その様子を写真に収めていく戦場カメラマン:姫矢 ジュン――――――。

 

明らかに異質な組み合わせの大人2人であり、初対面ではあったものの、不思議と通じ合うものがあり、2人の間に共通している話題が2年前から在籍している【アビドス生徒会】副会長:小鳥遊 ホシノというのもあり、互いに知っている情報を交換するだけでも非常に話が弾むのだ。

 

過去の小鳥遊 ホシノを知っている戦場カメラマン:姫矢 ジュンと現在の小鳥遊 ホシノを知っているロボット職員:マウンテンガリバーの情報のやり取りにより――――――、

 

現在の小鳥遊 ホシノがいつも日中は昼寝ばかりしているのは一人で夜回りをしているからだと言えば、昔の小鳥遊 ホシノはもはや風前の灯火のたった二人だけの【アビドス】の現状に何の希望も見出だせずにいたものの、それでも希望を捨てずに明るく前向きに居続けた生徒会長:梔子 ユメのことだけは見捨てられなかった仲間思いの面倒見のいい性格だったと笑顔で語られた。

 

そんなふうに正真正銘のおじさん(二十代の青年)同士の思い出話に花を咲かせていると、常日頃から“おじさん”を自称している小鳥遊 ホシノが夜回りから帰ってきて、夜のうちに【キヴォトス防衛軍】が進駐してくることを聞かされていたのでベースキャンプ設営の様子を見に来たところ、小鳥遊 ホシノのことで盛り上がっている大人たちの会話が聞こえてしまったのだ。

 

なぜか自分のことを一方的に知っているロボット職員:マウンテンガリバーと、2年前に突然現れて突然いなくなった戦場カメラマン:姫矢 ジュンの会話によって、自分の全てが丸裸にされるような気恥ずかしさと不安が沸き上がっていき、居ても立っても居られなくなって思わず扉を開けてしまうのだった。

 

 

小鳥遊 ホシノ「もういつまで起きて夜更かししているの! 子供はもう寝る時間だよ!」

 

戦場カメラマン「お、帰ってきたか、ホシノ」

 

ロボット職員「見回り、おつかれさまでした。温かい飲み物をどうぞ」コトッ

 

小鳥遊 ホシノ「あ、ありがとう……」ゴクッ

 

小鳥遊 ホシノ「いや、そうじゃなくて!」

 

小鳥遊 ホシノ「もう止めてよ! おじさんのことなんて話題にしないでよ!」

 

戦場カメラマン「そうは言っても、初めて会った時から2年でそこまで変わったんだ。知り合いとして何があったのかを知りたくもなる」

 

 

戦場カメラマン「そう言えば、今のホシノの姿はまるでユメにそっくりだな」

 

 

小鳥遊 ホシノ「…………!」ドキッ

 

戦場カメラマン「やっぱりな。口ではいろいろ言っていても、尊敬できる先輩だったわけなんだな」

 

小鳥遊 ホシノ「……うん。まあね」

 

戦場カメラマン「短いな、学生の3年なんて。ホシノが3年生になっているんだから、もう卒業しているか」

 

小鳥遊 ホシノ「……姫矢さんが撮ってくれたユメ先輩との写真は大事にしているよ」

 

戦場カメラマン「そうか。それなら、ユメが卒業した時の写真も撮ってやりたかったな。すまない」

 

 

小鳥遊 ホシノ「――――――そんなこと、ない! 姫矢さんが謝ることなんて、ないから! あれは私が、私が!」ダン!

 

 

ロボット職員「……ホシノさん?」

 

戦場カメラマン「……ホシノ」

 

小鳥遊 ホシノ「あ」

 

小鳥遊 ホシノ「……ごめんね。おじさん、今日はいろいろあって疲れちゃってたよ~」

 

小鳥遊 ホシノ「とりあえず、早速 ベースキャンプの設営しに来てくれたわけだし、その様子をもうちょっと見たらさ、今日はシロコちゃんたちが寝泊まりしている場所にお邪魔させてもらうよ~」

 

 

小鳥遊 ホシノ「それじゃ、おやすみ~」バタン!

 

 

ロボット職員「………………」

 

戦場カメラマン「………………」

 

ロボット職員「姫矢さん。あの様子、もしかして、その『ユメ先輩』って――――――」

 

戦場カメラマン「言うな。言葉にしなくても目を見ればわかる」

 

戦場カメラマン「――――――俺は戦場カメラマンなんだ」

 

ロボット職員「――――――僕は“教父(ファザー)”だったよ」

 

 

ピピッピピッピピッ!

 

 

ロボット職員「はい、マウンテンガリバーです」ピッ

 

ロボット職員「……なに!? 【アビドス】上空の電離層から怪獣が現れた!?」

 

ロボット職員「異常なまでの電磁波が地上から発生して突然変異を生み出したとするなら、その原因はおそらく――――――」

 

戦場カメラマン「………………」

 

ロボット職員「くそっ! 怪獣を生み出した原因と思われる重度の通信妨害のせいで【アビドス】での作戦行動が取れない!」

 

ロボット職員「万が一の場合は、地域住民を四次元都市:フォーサイトに避難させるしかないんですね?」

 

ロボット職員「それまでは周辺地域の警戒に当たれ――――――、わかりました」

 

戦場カメラマン「……怪獣災害か?」

 

ロボット職員「そうです。【アビドス】上空の電離層から突然変異と思われる怪獣が現れたらしいので、四次元移動列車でいつでも避難できるように指示を出しておきます」

 

戦場カメラマン「……わかった」

 

 

秤 アツコ「コーイチ、闇がやってくる!」ドン!

 

 

戦場カメラマン「!!」

 

ロボット職員「まさか、現れたのは闇怪獣か!? まずい!」

 

ロボット職員「総員撤退! 接近してくる怪獣は飛行可能な闇怪獣と判明した! 迎撃体制も不十分ということでプログラムに従い、四次元移動列車に乗って四次元都市:フォーサイトに退避せよ!」カチッ

 

ロボット職員「さあ、避難してください!」

 

戦場カメラマン「待て! ホシノはどうした? 一緒の部屋で寝ていないか?」

 

秤 アツコ「ううん。今日来てくれたのはシロコだけだった」

 

ロボット職員「――――――ホシノ!」

 

戦場カメラマン「俺がホシノを探してくる! あなたは撤退の指揮を執ってくれ!」ダダッ

 

ロボット職員「あ!」

 

ロボット職員「……初日からこんなふうじゃなかったんだけどな、ホント」

 

秤 アツコ「……コーイチ」

 

 

ロボット職員「――――――夜明け前か」

 

 

ロボット職員「こういう状況も想定して、しっかりと入念に準備してきた甲斐があったな」

 

ロボット職員「よし、ギャラクシー・スナイパーライフルと戦闘バギーを配置して、兵員輸送車を使って地域住民の避難誘導だ」

 

ロボット職員「それと、僕はレールガンの準備をしてくる」

 

秤 アツコ「うん、わかった」

 

ロボット職員「これがこの場でできる精一杯の抵抗だ」

 

 

突如として【アビドス】上空の電離層から現れたのは空中棲息生物:クリッターが地上からの電磁波によって突然変異を起こして怪獣化した変形闇怪獣:ガゾートであった。

 

しかし、現れたのは1体だけではなく、闇怪獣の習性か、かつて光の都が存在していた場所に聳え立つサンクトゥムタワーを破壊しようと、もう1体のガゾートが飛来したのであった。

 

今回の夜明け前の攻防においては【キヴォトス防衛軍】の象徴となる多目的無人可変ドローダー:GUTSファルコンがすぐに迎撃に出ており、夜中に叩き起こされたことで怒り心頭の対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸も後から駆けつけた。

 

闇怪獣を倒すためには“光”が不可欠であり、そのために機龍丸が光怪獣:デスドラゴの力と一体化した超無敵鉄鋼機龍丸(ハイパーモード)の時に倒せば その場での復活を封じることができるため、今度はそのことを意識した立ち回りを心掛けていた。

 

ところが、元々が電離層に棲息する空中棲息生物:クリッターというUMAが突然変異で怪獣化したものであるため、空中戦が得意であることから機龍丸の運動性では捕捉することが困難であり、GUTSファルコンの空戦能力が今は頼りとなっていた。

 

そんな時、更にガゾートが1体現れ、別方面からサンクトゥムタワーに迫った時であった――――――。

 

 

バッ        

 

        バッ

 

エイティ!

 

 

シュワ!

 

 

ウルトラマン80がついに姿を現し、追加のガゾートと交戦を開始する。キヴォトス中がホッと一息つくことができた瞬間であった。

 

ガゾートは口から吐くプラズマ光弾と鋭い牙による噛みつき攻撃を得意とするのだが、素早く腕をV字に組んで光線技を無効化(ウルトラVバリヤー)し、身体を鋼鉄以上の硬さにすること(ボディ硬化)ができるウルトラマン80からすれば、突然変異で誕生しただけの野生怪獣など敵ではなかった。

 

恐れることなくガゾートと格闘戦になり、鋭い牙を剥き出しにした顔面に拳を打ち付けてニューヨークのマンハッタン島を思わせる首都:D.U.の水場でウルトラマンが激しく揉み合っていると、

 

圧倒的な空戦能力で地上の機龍丸を翻弄していたところに背後から体当たりを仕掛けたガゾートが首を180度回転させた機龍丸の顔面凶器の一斉砲火によって返り討ちに遭っていた。

 

それを見たウルトラマン80はもう1体のガゾートの方に目の前のガゾートを蹴り飛ばし、2体のガゾートが団子状態になったのを見て、勝機を見出した機龍丸は光怪獣:デスドラゴの力と一体化した超無敵鉄鋼機龍丸(ハイパーモード)となった。

 

そして、間髪を入れずに放たれる光怪獣のデスドラゴ・サンダーが炸裂されると同時に、ウルトラマン80も追い討ちとばかりにティガレットの力を使ったのだ。

 

 

Come on!

 

Tiga-let!

 

Connect on!

 

 

ランバルト・レイランス!

 

 

両腕を胸の前で交差させ、右手を掲げて槍投げのようにウルトラレイランスを発生させると同時に*1、700mにも達する跳躍力で一瞬で夜明け前のキヴォトスの空を舞い、両手を左腰に置いてから右腕から発射された光の槍が5連射されたのである。

 

それらが団子状態に重なり合った2体のガゾートにドスドスと鋭く突き刺さり、最終的に2体の変形闇怪獣:ガゾートはまとめて爆散するのであった。

 

こうして夜明けの太陽に照らされたサンクトゥムタワーと共に【キヴォトス防衛軍】が誇る守護神:ウルトラマン80、機龍丸、GUTSファルコンが勢揃いした光景はキヴォトスの人々に勇気を与えるのであった。

 

その一方、同時刻の【アビドス】では――――――。

 

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! ババババババババ!

 

 

錠前 サオリ「――――――こいつ、まさか人を喰っているのか!?」バキューーーーーン!

 

秤 アツコ「急いで! 急いで輸送車に乗って!」

 

砂狼 シロコ「みんな! 無事でいて!」

 

 

美甘 ネル「このクソがッ! 人を喰うのを止めやがれッ! ふざけるなッ! ふざけんじゃねえ!」バキューーーーーン!

 

一之瀬 アスナ「……こんな空飛ぶペンギンの悪魔なんて聞いたことない!」バキューーーーーン!

 

角楯 カリン「情報が何も無いから、どれくらいの住民を保護できたのかがわからない!」バキューーーーーン!

 

室笠 アカネ「しかも、まだ私たちのことは何も知らされていないので、地域住民の方たちも寝起きで今の状況を理解しきれていません!」バキューーーーーン!

 

美甘 ネル「とっとと逃げろよ! 意地張ってんじゃねえよ、こんな時になっても!」バキューーーーーン!

 

室笠 アカネ「そして、初めて怪獣というものを目の当たりにした不良たちは逃げることもせずに無謀にも戦いを挑んで――――――!」バキューーーーーン!

 

 

ロボット職員「こ、こんなことになるだなんて……」

 

ロボット職員「そんな……、僕が“シャーレの先生”だった時よりも酷いことになっているじゃないか……」

 

ロボット職員「――――――こんな地獄絵図! 【カイザーコーポレーション】でもこんなには酷くはなかった!」

 

秤 アツコ「コーイチ!」

 

ロボット職員「アツコ! もう一度だ! もう一度、僕の中の“光”を――――――!」

 

秤 アツコ「ダメ! それをしたら、コーイチの中にある“光”がどんどんなくなってコーイチが“コーイチ”じゃなくなっちゃう!」

 

ロボット職員「でも、他にどうすることもできないじゃないか!?」

 

 

 

 

 

小鳥遊 ホシノ「何があっても私が【アビドス】を守るんだ!」バシッ! ――――――臨戦態勢!

 

戦場カメラマン「ホシノ!」

 

小鳥遊 ホシノ「止めないで、姫矢さん。私は怪獣が相手でも逃げたりしないから」

 

戦場カメラマン「そうか。それがお前の罪滅ぼしなんだな。それがお前が戦っている宿命なんだな」

 

小鳥遊 ホシノ「………………」

 

戦場カメラマン「俺もそうだった。俺は戦場カメラマンとして地球では死の瞬間ばかりを撮ってきた」

 

戦場カメラマン「だから、お前たちと別れの挨拶もないまま、地球に帰れた時に力を与えられたこと;そのことを自覚した時、それが俺に対する罰だと思ったから――――――」

 

戦場カメラマン「ボロボロに傷つき、一人孤独に死んでいくことが、せめてもの罪滅ぼしに違いないと……」

 

戦場カメラマン「お前が他の生徒と比べて人並外れた力を持っていたことで、そのせいでかえってあきらめがつかずに苦しんでいたことはわかっていた」

 

 

小鳥遊 ホシノ「…………ユメ先輩は私のことを何て言っていたの?」

 

 

戦場カメラマン「たくさんだ。いろいろなことを話してくれていたよ」

 

戦場カメラマン「だから、そのことを話す前に死ぬなんてダメだぞ、ホシノ!」

 

小鳥遊 ホシノ「うん。わかった。約束するよ、姫矢さん」

 

小鳥遊 ホシノ「だから、姫矢さんも早く避難して。あのマウンテンガリバーっていうおっきいロボットの人のことは信用できそうな気がするから」

 

戦場カメラマン「……ホシノ」

 

 

 

戦場カメラマン「――――――!」ドクン!

 

戦場カメラマン「……この俺に生きて戦い続けろと?」スッ ――――――手にしたのは鞘に収められた短剣!

 

戦場カメラマン「ああ、俺は変わらず守ってみせる、この光で。それが俺に与えられた使命だ。キヴォトスであっても」

 

 

鞘を左手で持って左腰に構え!

 

右腕で鞘から短剣を前方に引き抜き!

 

右腕を後ろから前に回して短剣を空に掲げた!

 

 

NEXUS それは受け継がれてゆく魂の絆

 

 

 

ヘルメット団「うわあああああああああああああ!」ババババババババ!

 

ヘルメット団「来るな! 来るな! 来るな来るな来るなああああああああ!」バババババ!

 

錠前 サオリ「何をしている!? お前たち、乗れ!」キキィイイイイイ!

 

ヘルメット団「みんな! 乗れ乗れぇえええええ!」

 

ヘルメット団「お、置いていかないでくれええええええ!」

 

ヘルメット団「は、早く出してくれ!」

 

錠前 サオリ「お前たち、仲間を見捨てるつもりか!?」

 

ヘルメット団「だったら、親切なあんたが助けに行けばいいんだってば!」

 

錠前 サオリ「ううっ!?」ドサッ

 

錠前 サオリ「あ!」

 

ヘルメット団「あばよー! あんたの親切には死ぬほど感謝しているからー!」

 

 

ブブウウウウウウウウウウウウウウウン!

 

 

錠前 サオリ「……呆れ果てたやつらだ! 仲間のことを何だと思っている!?」ギリッ

 

ヘルメット団「うわああああああああああ!」

 

錠前 サオリ「こっちだ! こっちまで逃げてこい! 死ぬ気で走ってこい!」バキューーーーーン!

 

錠前 サオリ「……効いてはいるが、闇怪獣が相手では仕留めることができない!」バキューーーーーン!

 

砂狼 シロコ「ん。こんなところにサオリがいた。援護する」ズバババババ!

 

錠前 サオリ「シロコか!」

 

十六夜 ノノミ「シロコちゃんだけじゃないですよ!」ズバババババ!

 

錠前 サオリ「ノノミ!」

 

ヘルメット団「うわああああああ!」

 

錠前 サオリ「よし! よく頑張ったな!」バシバシ!

 

砂狼 シロコ「――――――『ガゾート、トモダチ、タベル』?」

 

十六夜 ノノミ「どうしたんですか、シロコちゃん?」

 

砂狼 シロコ「ん。あの怪獣の鳴き声がそんなふうに聞こえた。空耳」

 

錠前 サオリ「それで何人も喰らっているんだから、本当だとしたら質が悪いな!」

 

砂狼 シロコ「ついてきて。この辺りのことなら、詳しいから」

 

ヘルメット団「うぅ……」

 

錠前 サオリ「行くぞ! 私が肩を貸すから、絶対にあきらめるな!」ガバッ ――――――要救助者に肩を貸す!

 

錠前 サオリ「――――――!」ゾクッ

 

 

砂狼 シロコ「伏せてッ! 怪獣の口から火の玉が!」

 

 

十六夜 ノノミ「きゃあああああああああ!」

 

錠前 サオリ「くぅううううううううううう!」

 

ヘルメット団「い、いやあああああああああ!」

 

 

ドッゴーーーーーーーーーーーン!

 

 

錠前 サオリ「…………?」

 

錠前 サオリ「……みんな、無事か?」

 

ヘルメット団「」

 

錠前 サオリ「おい!」バシバシ!

 

錠前 サオリ「シロコ! ノノミ!」

 

砂狼 シロコ「うぅ……」

 

十六夜 ノノミ「大丈夫です。まだ生きています……」

 

錠前 サオリ「――――――直撃を免れたのか?」

 

 

小鳥遊 ホシノ「やあ、みんな。おじさんもびっくりしたけど、案外なんとかなるもんだね~」ジューーー・・・ ――――――プラズマ光弾を盾で防いだとしか思えない!

 

 

砂狼 シロコ「あ、ホシノ先輩……」ヨロヨロ・・・

 

十六夜 ノノミ「助かりました……」ヨロヨロ・・・

 

錠前 サオリ「……まったく無茶をする」

 

錠前 サオリ「よし、怪獣の目は別なところに向いたな。今のうちに――――――」

 

小鳥遊 ホシノ「あ――――――」

 

錠前 サオリ「……なっ!?」ゾクッ ――――――ふと頭上を見上げると!

 

 

――――――廃墟となったビルが変形闇怪獣のプラズマ光弾で今まさに頭上で倒壊しようとしていた!

 

 

シェッ!

 

 

その瞬間、紅い閃光(マッハムーブ)となって倒壊したビルを支えて夜明けの光に照らされる銀色の巨人が現れたのだった!

 

我を失って呆然と生徒たちが見上げていると、銀色の巨人がこちらの方を振り向く。

 

ただ、それだけのことなのに、これほどまでに心の中が熱くなるものはない。

 

 

十六夜 ノノミ「な、何ですか、あの巨人は?!」

 

砂狼 シロコ「もしかして、あれが――――――?」

 

錠前 サオリ「――――――ウルトラマン。やはり、【アビドス】にもいたのか」

 

小鳥遊 ホシノ「……あれがウルトラマン」

 

錠前 サオリ「今のうちだ! 行くぞ!」

 

砂狼 シロコ「うん」

 

 

子供たちの無事を見届けた銀色の巨人:ウルトラマンネクサスはこうして変形闇怪獣:ガゾートと向き合うことになった。

 

闇怪獣と化したガゾートは譫言のように『トモダチ』と聞こえるような奇怪な鳴き声を今なお発するが、先程まで何人も捕食してきた証拠となる赤々としたものが口から滴っているのを見て、銀色の巨人は強く拳を握りしめた。

 

次の瞬間、銀色の巨人は赤と銀の巨人:ウルトラマンネクサス ジュネッスとなり、変形闇怪獣:ガゾートの口から連射されたプラズマ光弾を左手のアームドネクサスで完全に無効化し、蓄積されたエネルギーを光に変換して撃ち出すスピルレイ・ジェネレードで反撃を開始したのである。

 

思わぬ反撃に大打撃を受け、それが闇怪獣にとって致命的な光エネルギーであると悟ると恐れをなしてガゾートは夜明けの大空に飛び立つが、それを見逃すはずもなくウルトラマンは一飛びで追撃し、空中で格闘攻撃を繰り出してガゾートを圧倒する。

 

そして、無尽に広がるアビドス砂漠にガゾートを叩き落とすと、両腕を下方で交差させてから力強く広げてエネルギーを生み出し、両腕をL字に組んで放つジュネッス最強の必殺光線:オーバーレイ・シュトロームが放たれるのであった。

 

直撃を受けた闇怪獣:ガゾートは内側から分子分解され、次の瞬間には闇をも呑み込む絶大な光エネルギーによって爆発四散するのであった。

 

そう、光でなければ完全に倒すことができない闇怪獣を【アビドス】に現れた新たな巨人:ウルトラマンネクサスは倒しきったのである。

 

そうして怪獣を倒したウルトラマンは夜明けの太陽に照らされる砂漠の中で光となって砂粒のように消えていったのである――――――。

 

 

――――――オンライン会議

 

ロボット職員「……【アビドス】で闇怪獣を倒したウルトラマンも我々が追い求める光の巨人なのでしょうか?」

 

神代キヴォトス人「いや、あれも“光の巨人”という括りでは間違いないだろうが、我々の同胞ではない」

 

神代キヴォトス人「それどころか、あれは宇宙の神秘に相当するものを内包する上位存在だ」

 

神代キヴォトス人「まさか、こんなところで目にすることになろうとはな。生きてみるものだな……」

 

北条先生「そこまでの存在だったのですか?」

 

神代キヴォトス人「そうとも、光の勢力の祖国である光の星雲でも伝説の存在だった」

 

神代キヴォトス人「しかし、まだまだ上位存在としての神性を殻に閉じ込めたままのように思えるな」

 

ロボット職員「あの強さで?」

 

神代キヴォトス人「要するに、光怪獣の姿が本体の我と同じで、あれも何らかの理由で制限を課した状態で人の世に姿を見せた権現ということだ」

 

北条先生「……ウルトラマンが人間の姿を借りることでコミュニケーションを円滑にするように?」

 

神代キヴォトス人「そういうことだ。人にとって理解できる姿を取れるように千変万化に化身することができるのが上位存在というものだ。それで人を恐れさせて幸せを奪うのが目的なら悪魔の仕業だがな」

 

 

ロボット職員「……キヴォトス人にウルトラマンになる資格はあるのですか?」

 

 

神代キヴォトス人「それは、【アビドス】に突然現れた地球人:姫矢 ジュンを見て、そう思ったのか?」

 

ロボット職員「状況から考えてもそうだし、会った時に何か通じ合うものがあったので……」

 

神代キヴォトス人「ほう。お主がそう感じたのか。そうか」

 

北条先生「………………」

 

神代キヴォトス人「なあ、先生? 我の考えていることがわかるか?」

 

 

北条先生「――――――【アビドス】の防衛をその上位存在のウルトラマンに任せると?」

 

 

ロボット職員「え」

 

神代キヴォトス人「その通り。実際、アビドス遠征が始まったばかりなのに闇怪獣の同時襲撃が起きてしまったからな」

 

神代キヴォトス人「そして、ちょうどよく闇怪獣を倒せるウルトラマンが居合わせたことが、ただの幸運だと思うか?」

 

神代キヴォトス人「なにより、【アビドス】は完全にキヴォトスから切り離された悪意が渦巻いている場所でもあるようだ。それこそ、キヴォトスの頂点に立つ“GUYSの先生”の威光が届かないほどの闇が蠢いている」

 

神代キヴォトス人「先生は信条であるface to faceのために【アビドス対策委員会】と 一度 対面をした後は、今回のことは我とロボット職員(コーイチ)に任せよ。闇怪獣を倒せるウルトラマンは同時に2人は要らん」

 

神代キヴォトス人「それよりも、今回の闇怪獣:ガゾートの誕生のきっかけになった通信障害の原因を外から探れ。きっと、ろくでもない理由で行われているに違いないぞ。我の嗅覚が爛れきった悪意を嗅ぎ取っている」

 

ロボット職員「そのことについてなんですが、例の戦場カメラマン:姫矢 ジュンから有力な情報を得ることができました」

 

ロボット職員「先生、可能ならば【万魔殿】にこれから伝える【“雷帝”の遺産】について訊ねてもらえませんか?」

 

北条先生「わかりました。まずは報告書の提出をお願いします」

 

神代キヴォトス人「そうだな。まずはどんな問題に直面しているかをわかりやすくまとめてくれ」

 

神代キヴォトス人「借金程度で片付く問題なら、我が蔵から金銀財宝をいくらでも持ち出してもいいから、【アビドス】のことに関してはお主が良きに計らえ」

 

ロボット職員「はい!」

 

神代キヴォトス人「これは楽しくなってきたな、先生よ」

 

北条先生「……捕食による犠牲者が出ているんですよ、今回の怪獣災害。不謹慎です」

 

神代キヴォトス人「辛い時だから辛い表情を見せるのは二流のやることよ」

 

北条先生「その気持ちに寄り添うために一緒に悲しんでみせるのが一流ですよ」

 

北条先生「ですが、正確な犠牲者の数もわからないほどに自治能力を失った【アビドス】で暮らす人たちがかわいそうでならないです」

 

 

――――――ウルトラマンは神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。

 

 

夜明けを迎えた【アビドス】では情報封鎖によって初めて怪獣の脅威を知ることになった者が多く、夜明け前に叩き起こされて寝起きでわけがわからないまま輸送車に乗せられて避難をさせられた者がほとんどであった。

 

しかし、初めて目の当たりにした怪獣を前に無謀にも抵抗を選んでしまった者たちのほとんどが学籍を持たない不良たちであったため、どこの公的機関にも登録されていない者たちの死を悼むことは困難であったのである。

 

そのため、日が昇りきった頃に【アビドス高等学校】に人を呼び集めて【キヴォトス防衛軍】の進駐を大々的に宣伝し、そこで今回の怪獣災害の犠牲者のための集団葬儀を 今夜 行うことを決定したのであった。

 

これがアビドス遠征2日目の出来事であり、夜明け前から沈鬱な空気がアビドス砂漠の一部地域を包み込み、ある意味においては これが【アビドス】における怪獣災害の始まりを告げるXデーであった。

 

ただでさえ荒廃した【アビドス】の街並みであったが、怪獣災害による破壊の跡は人々から希望を奪うには余りある衝撃を与えており、どこまでも平等に太陽は燦々と地上のあらゆるものを照らしていた。

 

今回の怪獣災害の被災者を輸送車に載せて【キヴォトス防衛軍】のベースキャンプに一夜でなった【アビドス高等学校】に連れていく懸命の作業が繰り返され、気づけば集団葬儀を行う夜を迎えていた。

 

そして、【アビドス】が変形闇怪獣:ガゾートによる襲撃を受けていた同時刻、【メトロポリス(首都:D.U.)】では2体のガゾートが襲来していたことを大型スクリーンの前に集まった地域住民に見せると、

 

続いて、【アビドス】全域が強力な通信妨害を受けて【連邦生徒会】が事態の把握ができない最悪の状況になっていることを隠すことなく公表することになったのだった。

 

これにより、元から【アビドス】での暮らしが辛いと感じていても頑張って住み続けていた地域住民はいよいよ引っ越しを検討するようになり、

 

【アビドス】に跋扈していた不良たちもまた集団葬儀を目の当たりにして、このままだと自分たちも怪獣に喰い殺されてしまう恐怖から【アビドス】を去ることを決めたようである。

 

 

その様子を臨戦態勢を解けない【アビドス生徒会】小鳥遊 ホシノは拳を強く握りしめて悔しそうに見つめる他なかった。

 

 

ロボット職員:マウンテンガリバーはその様子を見て思わず手を取ろうとしたが、すでにその隣には戦場カメラマン:姫矢 ジュンが居たので、ここでも自分がその役割ではなくなったことへの一抹の寂しさはあるものの、『前回』とはちがう現実を受け容れて避難民のリストの作成に戻るのであった。

 

そして、【アビドス対策委員会】の面々は【アビドス生徒会】の後継組織として正式な生徒会活動に認められるように【アリウススクワッド】実質的には【アリウス準備委員会】錠前 サオリと秤 アツコたちと共に【連邦生徒会】から求められている要項の確認をしていた。

 

しかし、多額の借金を背負っているところに怪獣災害対策の避難シェルターの整備は無理があり、更には安否確認サービスへの登録も自治区全体に行わせることができない時点で【アビドス対策委員会】は不適格の烙印が最初から押されていたのだ。

 

そこで“シャーレの先生”が考えついたのは無理にキヴォトス最大を誇った【アビドス】の版図を維持するのではなく、自分たちが管理できる範囲にまで土地を放棄して【アビドス高等学校】を縮小させてスリム化することにあった。暗に将来性がないので『店を畳む準備をしろ』と言っているようなものである。

 

そこから【アビドス】の広大な版図を【キヴォトス防衛軍】で買い取って射爆場に利用できないかと考えていたのだ。すでに最先端の研究開発は開発特区でもある四次元都市:フォーサイトで行われているので、砂漠のド真ん中に研究施設はそこまで必要としていなかった。思いつかなかったのだ、上手い利用法が。

 

なので、すでにロボット職員:マウンテンガリバーは『前回』のことで知っていることなのだが、“シャーレの先生”が【アビドス対策委員会】を公式の生徒会活動にすることを優先してスリム化を勧めてきたにしても、土地の権利をどこまで【アビドス高等学校】ひいては【アビドス対策委員会】が所有しているかをまずは確認することになり、

 

集団葬儀の後片付けが終わった後、完全に砂が取り除かれてリフォームしたと言っても過言ではない【キヴォトス防衛軍】に貸し出してベースキャンプと化した校舎で寝泊まりするようになった【アビドス対策委員会】はこれからのことを思い浮かべながら、

 

生徒会活動の正式登録を目指す同志とも言える【アリウススクワッド】もしくは【アリウス準備委員会】錠前 サオリと秤 アツコらと共にふかふかの布団の上でパジャマパーティーをして眠りに就くのであった。

 

そんな彼女たちの健やかな寝顔を想像しながら、眠る必要がない上に力持ちで傷一つつかない理想の身体を手に入れた“シャーレの先生”だった彼の者は本業である【シャーレ】の事務仕事をここでもこなしながら、ウルトラマンの心を実践する地球人:北条 アキラが伝えた極意を思い出すのであった。

 

そう、まだアビドス遠征の2日目。まだ2日目なのである。キヴォトスを救うために積み重ねてきた16年間の成果を発揮するのはまだまだこれからなのだ。

 

 

――――――大切なのは最後まであきらめないこと。

 

 

 

*1
本来のランバルト光弾は左右に伸ばしてから頭上にあげてエネルギーを集約させる。




-Document GUYS feat.LXXX No.11-

変形怪獣:ガゾート 登場作品『ウルトラマンティガ』第6話『セカンド・コンタクト』登場
『ウルトラマンティガ』を代表する怪獣であり、平成ウルトラシリーズ初の人食い怪獣。
元となる空中棲息生物:クリッターを怪獣らしいデザインにした結果、ペンギンっぽい要素が入り込むことになり、その上で凶悪怪獣らしい悪人面で非常に印象に残る外見となっている。

「トモダチハ、ゴチソウ! トモダチハ、ガゾートノタベモノ!」

電離層に生息する空中棲息生物:クリッターが電磁波やマイクロ波の影響を受けて群れごと融合して誕生した突然変異の巨大怪獣。
変異前のクリッターからして共食いをする生物なのだが、凶暴化および怪獣化した影響か同族以外でも“トモダチ”と認識し、眼前の全ての生物を捕食対象と見なして手当たり次第に襲いかかる他、自分を激しく攻撃する敵でさえも“トモダチ”と呼んで捕食しようとする。
これだけ凶暴な怪獣ながら言語体系が存在しており、その気になれば会話も可能。劇中では動物の声を人間の言葉に翻訳するホリイ隊員の発明品:サウンドトランスレーターで人類と会話している。

武器は口から吐くプラズマ光弾と鋭い牙による噛み付き攻撃。
また、死んだふりからの不意打ちを得意とし、基本的に非常に高い知能を持っている。


住処にしている雲の中に飛び込んできたクリッター研究者:ミズノ・タカジ博士を含む調査チームを捕食し、彼らを捜してやってきたダイゴの乗ったガッツウイング1号をも繭状に変異した雲の内部に取り込んだまま日本に飛来し、その中から出現する。
逃げる市民を次々と捕らえては食い殺し、それを止めるためにサウンドトランスレーターによる対話を試みたホリイ隊員と会話するが、この時点で人間そのものを自分たちの糧となる“トモダチ”と認識しており、そうだと言ってしまったホリイ隊員に襲いかかった所を現れたウルトラマンティガに阻まれ、激突する。
地上でティガと戦った後、スカイタイプと凄まじい空中戦を繰り広げるが、ウルトラボディーアタックで地上に落とされ、ランバルト光弾を受けて爆発。無数のクリッターに戻り、空へ還っていった。


人類の文明が発展し、大量の電磁波やマイクロ波を電離層に流すようになったことで、その影響を受けて凶暴化した空中棲息生物:クリッターの群れはこうして変形怪獣:ガゾートに変貌して地上で多くの被害を出したばかりか、その後も度々旅客機などを襲撃して人類を脅かすようになっている。
そのため、劇中の台詞から『ティガ』本編中で出てきた個体以外にもガゾートが出現しており、
そのために事態を重く見たTPCは『クリッター作戦』と題し、アートデッセイ号やガッツウイング2号2機を投入し大規模火力で巣ごと殲滅する計画が立てられた。
しかし、電磁波問題でクリッターが変化した為にレナ隊員の「電磁波問題を解決せずにクリッターを殲滅することが正しいのか?」という指摘をし、それに対しホリイ隊員は「現代社会において電磁波の使用の禁止や削減は困難」という解答を行ったため、GUTS内部でも賛否が分かれた。
こうした対立が出るのは単純にクリッターとの共存だけの問題ではなく、戦争や環境問題を乗り越えた『ティガ』の世界が再び旧時代に戻ってしまうという世界観背景が存在する故である。
そして、攻撃計画が発動されるが、巣への攻撃を回避し、世界中のクリッター達が巣ごと自らの意思で大気圏を突破し、地球を去った。
レナ隊員はこれを「人間に愛想を尽かした」と解釈したが、その真意は誰にも分からないままである。少なくとも7年後の『ウルトラマンダイナ』の時代まで地球に戻ってきてはいない様子。






本作では【キヴォトス防衛軍】の出現と活躍によって【アビドス高等学校】を急いで破滅させて利権を得るべく集まった関係団体の策謀によって通信インフラの破壊と独占の一環として強力な通信障害を発生させた結果、
通信妨害に利用した強烈な電磁波が上空の電離層にいた空中棲息生物:クリッターを凶暴化させて怪獣化させたものとして、一度に複数体が夜明け前のキヴォトスに現れることになった。
しかし、闇怪獣になっていたことが判明したことで、更にその裏で闇の勢力の関与が疑われている。

闇怪獣の性質としてサンクトゥムタワーを破壊しようと2体のガゾートと【キヴォトス防衛軍】が交戦し、夜明けの太陽と共に撃破に成功している。
機動力は目を見張るものはあったものの、怪獣化したばかりで洗練された強さではないため、闇怪獣である点以外では超古代闇怪獣:ゴルバーの方が圧倒的に強かったという印象である。
しかし、夜明け前に叩き起こされたことへの不快感から悪い意味で印象に残ることとなった。

一方で、情報封鎖が行われ続けた【アビドス】においては初めての怪獣災害を引き起こし、多数の犠牲者を生み出す大惨事を引き起こすことになった。
アビドス自治区は実質的に無政府状態となって自治能力を喪失して久しく、避難シェルターの整備や安否確認サービスの登録などの基本的な怪獣災害対策が行われていなかったこと、夜明け前でほとんどの住民が眠っていたこと、怪獣相手に無謀にも抵抗することを選んだ不良集団が多かったことなどが積み重なった結果であった。
こうして集団葬儀をその夜に行うことになって、怪獣退治の専門家である地球人:北条 アキラの施策が正しかったことが証明されたのだが、そのことを喜ぶものは誰もいない。
そして、アビドス自治区を襲った闇怪獣:ガゾートは未確認の巨人:ウルトラマンネクサスによって問題なく撃破され、2人のウルトラマンが現れたことにより、アビドス遠征における“シャーレの先生”の役割の変更が検討されることになったのだった。

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