Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX- 作:LN58
後に宇宙忍者:バルタン星人による侵略の激戦地となる怪獣無法地帯:アビドス砂漠に
当然ながら、開園前の運営や警備などの手筈の確認が入念に行われているわけであり、一般公開としては【アビドス高等学校】が初ではあるものの、実際にはプレオープンイベントが“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラのお得意様の【ゲヘナ学園】で行われていた。
つまり、怪獣退治のために必要な科学力を担う【ミレニアムサイエンススクール】が臨時の指揮所と避難所を兼ねる
結果としてグランドオープンで
別に、地球人:北条 アキラが【トリニティ総合学園】を毛嫌いして【ゲヘナ学園】ばかりを贔屓にしているわけではない。
しかし、キヴォトスが天変地異の時代:怪獣頻出期を迎えたことで求められているのは怪獣災害に向けたスピード感のある改革であり、怪獣退治の専門家として失踪した“連邦生徒会長”に喚ばれたとされる地球人:北条 アキラの要求にこれまでどれだけ応えられてきたかで明確な実績の差がつけられているのだ。
そう、意外にもキヴォトス随一の犯罪発生率を誇る【ゲヘナ学園】の方が予想外の展開に見舞われ続ける有事では遥かに頼りになり、逆に派閥抗争や手続きでガチガチになっている 伝統と秩序を重んじる 一見すると品行方正なミッション系のお嬢様学校である【トリニティ総合学園】はいつもいつも肝腎な時に対応が遅いのだ。これでも十数年前のIT革命と並行して進められた学制改革運動で非常に開放的になっていたとしてもである。
そのため、地球人:北条 アキラが次々と繰り出す提案や企画に真っ先に乗っかって即断即決で実施に漕ぎ着けられる【ゲヘナ学園】とその場で即断即決ができずに学内で話し合った末に時機を逸する【トリニティ総合学園】とでは、何か新しいことを試す時は【ゲヘナ学園】でのテストを経てから【トリニティ総合学園】に完成したものをお出しする流れが自然とできあがってしまっており、そのことにまったく疑問を持てないトリニティ生の能天気さに頭を抱えているのが【ティーパーティー】ホスト:百合園 セイアをはじめとする【トリニティ総合学園】を支配してきた派閥の長たちである。
これは言い換えると、【トリニティ総合学園】が新たなキヴォトスの在り方を決める枠組み作りに参加できずに【ゲヘナ学園】の意向が汲み取られたものを事後承諾させられているわけであり、【キヴォトス
事実、今や誰もが“連邦生徒会長”の実質的な後継者と認めている 有能で誠実で信頼できる大人:北条 アキラの適切な指導の下、その信頼を勝ち取るために自重を覚えて余計なことをせずに任務を遂行する【万魔殿】議長:羽沼 マコトによる迅速な対応の数々は次々と【ゲヘナ学園】に功績をもたらすことになり、
結果として、北条 アキラと共に正道を歩んだことで まさかの【ゲヘナ学園】の天下とまで言われており、2年前にキヴォトスを混乱に陥れた“雷帝”の時代とは正反対に【ゲヘナ学園】に対する好感度が過去最高を更新し続けているほどである。
もっとも、それは【万魔殿】議長:羽沼 マコトが凄いのではなく、勝ち馬として全力で乗っかった“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラの絶大な人気と信頼に付随にするものなのは言うまでもなく、これは世間一般では【ゲヘナ学園】と言うキヴォトス最凶の暴れ馬を乗りこなしてみせている地球人:北条 アキラの偉業の一つに数えられていることである。
もちろん、【トリニティ総合学園】の生徒たちの個々人の質と量が全体的に【ゲヘナ学園】の生徒たちに劣っているわけではないのだが、個人の才能よりも集団の能力が何よりも重視される怪獣退治が連続する 天変地異の時代:怪獣頻出期への適性の差が如実に現れたのだ。
そのため、【トリニティ総合学園】では各派閥の代表たちが危機感を持って更なる学制改革運動の展開を思案しているわけであり、これまでの歴史と伝統に固執したままだと乗り越えることができないほどの外部からの圧力が日増しに掛かり続けているわけなのだ。
こうして将来を見越して怪獣退治の専門家:北条 アキラがキヴォトスで始めようとするプロジェクトは、最初に【ミレニアムサイエンススクール】で設計開発をして、次にキヴォトスで一二を争うマンモス校である【ゲヘナ学園】で大規模な運用試験を行い、最後にミッション系のお嬢様学校である【トリニティ総合学園】で最終調整を行う流れができあがっており、
今回の
今回のメインとなる【Ⅱ.
これには【連邦生徒会】の役員たちも日にちをズラして一人も漏れることなく招待しており、【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラからの要請でもない限りは公欠が取れずに働き詰めになっている一所懸命な頑張り屋さんたちを労い、励まし、癒やす目的があったのだ。
もちろん、表向きは【連邦生徒会】で他部署から欠員が発生した時に備えた演習というまじめな理由になっており、
が、そんなことは
今回の
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
羽沼 マコト「どうだ、先生!」キキキッ!
丹花 イブキ「先生、イブキの水着、似合ってる?」
北条先生「ええ、よく似合っていますよ」 ――――――サーフィン用のラッシュガードにうっすらと浮かぶ逞しい胸板!
棗 イロハ「その、わかってはいましたけど、先生もなかなか似合っていますよ」
棗 イロハ「……触ってみてもいいですか?」
北条先生「どうぞ」
棗 イロハ「……これは、本当に、逞しいですね」ドキドキ
棗 イロハ「――――――マコト議長もどうですか?」ニヤリ
羽沼 マコト「な、なっ!?」カアアア!
ブクブクブク・・・
銀鏡 イオリ「騒がしいけど、思ったよりも平和だな」
火宮 チナツ「はい。最新式のウォーターパークなだけあって みんな 大興奮ですが、従業員や一般客に扮した【SRT特殊学園】の生徒たちが目を光らせていることもあって、こんなところで暴れようとする生徒はさすがにいないですよね」
銀鏡 イオリ「ああ。【ゲヘナ】でも有数の危険人物の懐柔に先生が全力を尽くしてきたおかげで、かつてキヴォトス最悪とまで言われた犯罪発生率もぐんと減って、最近は拍子抜けするぐらい平和だもんな」
火宮 チナツ「これも日頃の鬱憤を晴らせる機会を先生に与えられたおかげですね」
銀鏡 イオリ「そうだな。生徒会のくせに私たち【風紀委員会】に無理難題をふっかけて自分で秩序を乱しまくる【万魔殿】に至っては対怪獣兵器:機龍丸を与えられたおかげで、最近だと 機龍丸の強化やら怪獣の研究で忙しいせいか 嫌がらせも少なくなってきたから本当にやりやすくなったよ」
火宮 チナツ「とりあえず、プレオープン初日がこの様子なら、ヒナ委員長も安心して楽しむことができるはずです」
銀鏡 イオリ「ああ。本当はヒナ委員長にこそ最初に楽しんでもらいたかったが、マコト議長と顔を合わせた時に思い出したかのように嫌がらせを受けることなっては困るからな」
火宮 チナツ「本当に先生には感謝してもしきれません。最初にお会いした日のことが本当に懐かしいです」
銀鏡 イオリ「本当にな。私とは最初の怪獣:クレッセントが起こした各地の異常現象の調査のために【ゲヘナ学園】に乗り込んできた時が最初の出会いだったけど――――――、そうか、まだ1年も経たないうちに私たちはこんなにも先生からの贈り物をたくさんもらっているんだなぁ」
火宮 チナツ「気持ちいいですねぇ。
銀鏡 イオリ「うん。日頃の疲れが癒やされるようだ。しかも、南国リゾート風の雰囲気を再現するためにヒノム火山が源泉の温泉水を利用しているらしいから、温泉成分がたっぷり入っているらしい」
スタスタスタ・・・
仲正 イチカ「へえ、これがアビドス遠征を支援するために用意された【キヴォトス防衛軍】が造営する
空井 サキ「ああ。本当にビックリだぞ。グランドオープンになったら、
空井 サキ「今回のプレオープンイベントは【アビドス】でのグランドオープンの激務に備えて前払いの報酬みたいなものなんだ」
仲正 イチカ「まあ、そうっすね。グランドオープンの時にミカ様が代表の【トリニティ総合学園】の友好使節が利用する期間は、所属が【キヴォトス防衛軍】になっている私たちは従業員として交替勤務になるわけっすからね」
空井 サキ「でも、そのおかげでグランドオープンになったら今以上に人で溢れかえっているだろう
空井 サキ「正直に言って、北条先生がキヴォトスに来てくれて本当に良かったよ」
空井 サキ「もし先生が来てくれなかったら、私たち【SRT特殊学園】の生徒たちはいつまでも帰って来る気配がない“連邦生徒会長”のために学園が閉校になるところだったんだ」
空井 サキ「その抗議活動のために学園の装備を奪って野宿生活をいつまで続けることになっていたんだろうなぁ……」
仲正 イチカ「大変だったすね、本当にあの頃は。“連邦生徒会長”が失踪したことが直接の原因かはわからないすけど、サンクトゥムタワーの制御が失われてキヴォトス中がパニック状態になっていたっすから」
仲正 イチカ「つい この間も、第2のXデーとでも呼ぶべき打撃をサンクトゥムタワーが受けて、あの頃を思い出すようなトラブルがキヴォトス中でまた起きたっすね」
空井 サキ「ああ、宇宙怪獣:エレキングによる水面下からの奇襲だな。元から戦力の展開には不向きの首都:D.U.だったけど、水中戦にも対応できる対怪獣兵器の実戦投入が本格的に必要だな、これからは……」
仲正 イチカ「機龍丸やGUTSファルコンが活躍するようになってライナー部隊も御役御免かと思ってたすけど、まだまだ怪獣の脅威は油断ならないっすよねぇ……」
パチパチパチ・・・
北条先生「よし、それじゃあ、オープニングセレモニーの出し物の練習と行こうか、飛鳥馬さん」ボッ ――――――篝火に火を点ける。
飛鳥馬 トキ「はい」 ←バニーガール衣装
北条先生「裏方も気楽にね。本番まで何日もあることだし」
北条先生「では、ご覧になっていてくださいね、七神さん」
七神 リン「ええ。楽しみにしています、先生」
扇喜 アオイ「せっかく公欠にしてまで私たちをプールに誘ってきたのだから、もう少し気の利いた言葉をかけてあげられないものかしらね」
北条先生「みんな、火遊びは厳禁だからね」ボッ ――――――松明に火を点ける!
北条先生「さあ、ファイヤーダンス、ご覧あれ!」
ジュー、ジュー、ジュー!
北条先生「さあ、浜焼きですよ。新鮮な海の幸をご堪能あれ」
北条先生「はい、丹花さん。これ、アワビにハマグリね。バター醤油を掛けて食べるの。包み焼きのジャガイモもホクホクして美味しいですよ」
丹花 イブキ「わーい! 先生、ありがとう!」
北条先生「あと、これはタコさんウインナーの串とイイダコの串だよ。どっちがどっちかな」
丹花 イブキ「ええ? どっちがタコさんウインナー?」
羽沼 マコト「こっちがタコさんウインナーだろう、先生!」キキキッ!
北条先生「では、どうぞ」スッ
羽沼 マコト「へっ」ドキッ
棗 イロハ「ほら、あーんですよ、マコト議長」
羽沼 マコト「あ、あーん……」パクッ
羽沼 マコト「!」
羽沼 マコト「うぐぐっ」ググッ ――――――噛み切れない。
北条先生「残念。ハズレだったみたいですね」
北条先生「はい、こっちは炭火焼きサーモンですよ」
北条先生「これを食べながら甘くない炭酸水を喉に流し込む!」ゴクゴク・・・
北条先生「――――――これが大人の味だね!」プハァ・・・
棗 イロハ「こ、これはコーヒーとはちがった感じの大人の味ですね……」ウッ・・・
北条先生「まあ、無理はしないでください。これはビールに似せた炭酸水ですから、嗅ぎ慣れないビールの臭いもきついでしょう」
北条先生「あ、そうだ。今度、箕面スタウトの黒ビールを再現した炭酸水を用意するからね。コーヒーやビターチョコレートを思わせる焙煎モルトのフレーバー、滑らかでクリーミィな飲み口にこだわった飲み飽きないスタウトってことで世界金賞をとった味わいなら、初心者でも安心だと思うから。日本人と同じ舌でいきなり辛口は無理だと思う」
棗 イロハ「そ、そうですね……」コトッ
七神 リン「あ、先生。焼きおにぎりと野菜類が焼けましたので」
北条先生「お、ありがとう、七神さん。はい、焼き上がった魚介類です」
月雪 ミヤコ「先生、エビとカニも焼けましたのでどうぞ。カニグラタン、できてます」
北条先生「お、いい具合に焼けてますね」
北条先生「さあさあ、いっぱい食べてください、育ち盛りなんだから。キヴォトス中に存在する美味しいもののために【キヴォトス防衛軍】で 一所懸命 頑張ったっていいじゃないですか」
北条先生「そうそう、あっちにはサンドイッチもパスタもありますよ。サラダもフルーツもありますから」
飛鳥馬 トキ「先生、あーん」スッ ――――――アベックストローが刺さったココナッツジュース!
北条先生「あむっ!?」ブフォ・・・! ――――――不意に突きつけられたストローで盛大に咽る!
七神 リン「だ、大丈夫ですか、先生!?」
丹花 イブキ「あ、トキお姉ちゃん!」
羽沼 マコト「ん?」
飛鳥馬 トキ「はい、トキお姉ちゃんですよ。いえーい」
丹花 イブキ「あ、ハートのストローだ! かわいい!」
棗 イロハ「!!!?」
飛鳥馬 トキ「先生、私はウサギなので犬ではありませんが、ここまで待てをされてしまいますと、いたずらをしてしまいますよ?」
月雪 ミヤコ「おお、私はウサギではありませんが、バニーガールの衣装をあそこまで着こなす様は【RABBIT小隊】としては羨望を抱いてしまいますね」
飛鳥馬 トキ「先生は私のココナッツジュースが飲めないのですか。ショックです」
北条先生「あのね、飛鳥馬さん。今、両手が塞がっているのですから、ココナッツジュースを突きつけられても飲めないですから」ゴホゴホ・・・
飛鳥馬 トキ「では、今から私とココナッツジュースを飲みましょう」グイッ ――――――ストローを咥えようとする。
棗 イロハ「ダメですよ、そんなの!」ポイッ ――――――ココナッツジュースからアベックストローを引っこ抜く!
飛鳥馬 トキ「何をするのですか、棗 イロハ?」ゴゴゴゴゴ
棗 イロハ「あなたこそ何のつもりですか、飛鳥馬 トキ?」ゴゴゴゴゴ
羽沼 マコト「お、おい、どうしたと言うのだ、二人共?」
扇喜 アオイ「先生、どうぞ」スッ ――――――ストロー付きのマンゴージュースのグラスが差し出される。
北条先生「ああ、扇喜さん、ありがとう」チュー ――――――それを受け取って自然とグラスを飲み干す。
飛鳥馬 トキ「あ!」
棗 イロハ「…………!」
丹花 イブキ「先生、それ、何? オレンジジュースじゃない?」
北条先生「これはマンゴージュースだね。美味しいよ」
丹花 イブキ「イブキも飲みたーい!」
羽沼 マコト「おお、そうか。それならマンゴージュースを持ってこようじゃないか、イブキ」
丹花 イブキ「うん!」
仲正 イチカ「先生、浜焼き、できたっすか?」
銀鏡 イオリ「おお、たくさん並んでいるじゃないか! 冷めないうちに採っていいよな?」
北条先生「はい、どうぞ、たくさん食べていってください」
北条先生「さあさあ、七神さんも月雪さんも、ほらほら」
月雪 ミヤコ「じゃあ、遠慮なく」
七神 リン「ごちそうになります、先生」
飛鳥馬 トキ「……やりますね。さすがは財務室長です。侮れないです」
扇喜 アオイ「何が侮れないのかはわかりませんが、奇を衒わずに普通に渡せばよかったのではないですか?」
扇喜 アオイ「あまり言いたくはないのですが、先生にちょっかいを出さないでいただけませんか? 【連邦生徒会】の下部組織に当たる【連邦捜査部
飛鳥馬 トキ「まったくもって意味不明です」プイッ
棗 イロハ「それは何の冗談ですか、財務室長?」ピクッ
扇喜 アオイ「言葉通りの意味ですよ。どれだけ先生との関係を主張しようとも、先生が一番に重視しているのは【キヴォトス
飛鳥馬 トキ「いいえ、関係ありません。先生の隣に相応しいのはリオ会長です。リオ会長と先生あっての現在のキヴォトスであることを理解するべきです」
棗 イロハ「そんなことを言って、あなたも先生の隣に居たい一人でしょうに」
扇喜 アオイ「……それは否定しません」
扇喜 アオイ「けれども、先生の隣に立つべきなのは【セミナー】会長でも、【万魔殿】議長でも、【ティーパーティー】ホストでもありません」
扇喜 アオイ「今やキヴォトスの頂点に立つ存在となった先生は常に公正中立でなくてはならないのですから、【連邦生徒会】に寄り添うことでしかキヴォトスの平和は保たれないのです。あなたたちの身勝手を先生は決して許しません」
扇喜 アオイ「わかりますか? 突如として失踪した“連邦生徒会長”の代行として、不本意にもキヴォトスをまとめ上げなくてはならない立場になったリン先輩のことを誰が一番に寄り添って支えて上げられるかを考えたことがありますか?」
扇喜 アオイ「あんなにも堅物で不器用で真っ直ぐだから、先生に寄り添ってもらわないと すぐにでも折れてしまうんですよ! 誰もが“連邦生徒会長”のように超人ではないんです! リン先輩だって私たちと同じで、先生に憧れを抱く普通の女の子なんですから!」
飛鳥馬 トキ「それを言ったら、リオ会長は先生と私がいないと登校時間が自由だからって仕事漬けの昼夜逆転の生活を送る不健全なライフサイクルを続けて、持って生まれた才能以外の全てをドブに捨てる およそ女の子らしくない ダメ人間になってしまいます。先生が居てくれるおかげで、リオ会長も先生のお嫁さんにふさわしくあろうと生活習慣の改善に取り組むことができているのです」
飛鳥馬 トキ「そして、私はリオ会長と先生の専属メイドとして御二方からの寵愛を受けている優秀なエージェントにして完璧メイドとして愛されているので、リオ会長と先生と私の幸せ家族計画の邪魔をしないでください」
扇喜 アオイ「はい? なんですって? 随分とふざけたことを言ってくれましたねぇ?」
棗 イロハ「そうは言ってもねぇ、財務室長? 自分で言ってて、それは高望みだってことに気づいているんでしょう?」
棗 イロハ「本当にこればかりは癪なんですけど、マコト議長の手綱を握ることができるのは本当に先生だけなんです。そのおかげでキヴォトス最悪の犯罪発生率を誇った【ゲヘナ】が天下を掴んだわけですので、ここは【万魔殿】議長に花を持たせて、私はその甘い汁を吸わせてもらうことにしますよ」
扇喜 アオイ「……あなたもそれでいいのですか?」
棗 イロハ「あなたと同じで、いいわけがないですよ、財務室長」
巨大な
お昼時を迎えたことで天窓から燦々と日光が降り注ぐ中で浜焼き大会が繰り広げられ、新鮮な海の幸をはじめとしてワイワイ楽しめる料理で埋め尽くされることになり、その中で本職が小学校の先生である地球人:北条 アキラの炭火で蒸された汗が滴る姿が夏日で照らされて大人の色香を漂わせる。
特に、禁酒を課せられている生徒たちにとっては禁断の大人の飲み物であるビールを再現した炭酸水をジョッキに入れてゴクゴクと一気に飲み干す姿に学園都市:キヴォトスでは影も形もないヒトの成人男性の姿を思い出す生徒が続出し、喉仏に視線が集中していた。
そんなわけで、極めてグレーゾーンな大人の体験をしてみようとジョッキに炭酸水を注ぐ生徒たちが続出したわけなのだが、日本と瓜二つの食文化のキヴォトスの生徒たちはコップに注ぐ飲み物と言えば甘いジュースか、コーヒーか、お茶しか知らないわけなので、再現されたビールの苦味は未知のものであり、誰もが一口飲んで顔を顰めることになった。
そのため、その苦味を伴う液体を美味しそうにゴクゴクと飲み干す姿こそが まさに大人の在り方と生徒たちが感心することになるものの、その様子を見て『今度、アルコール飲料の危険性について講義する必要がある』と北条 アキラは思っていた。なにしろ、このビールテイスト飲料は北条 アキラが監修したものであるからだ。
実は、こうしてビールテイスト飲料の開発に北条 アキラが関わっているのも、学園都市:キヴォトスの支配種族であるヘイローを持つ生徒たちとは別に奉仕種族である獣人族やロボット族の大人たちの飲食にも宇宙に誇れる地球の味を広めていたことで、大人の飲み物であるアルコール飲料の開発や監修は避けて通れないものになっていたのである。
言わば、大人の付き合いのために飲みニケーションを生徒たちに隠れてやっていたわけであり、キヴォトスの食文化を調べ上げるためにも酒造所の見学や試飲会にも時間の合間を縫って通い詰めており、ビールテイスト飲料の開発もこうして地道に築き上げてきた人脈から成り立ったものである。
もちろん、大人の飲み物の宣伝は子供である生徒たちの目の届くところでは絶対にしないのだが、人の口に戸は立てられぬわけであり、遅かれ早かれ【美食研究会】の情報網に引っかかるのは時間の問題であったのだ。
特に、飲みニケーションの場のユーモアで“ビールかき氷”を披露したことがきっかけでネットの海に情報が拡散されたことにより、【美食研究会】の罪状に未成年飲酒が加わる可能性が浮かび上がり、飲酒防止のためのコピー食品の開発を迫られてしまったのである。
つまり、ビールテイスト飲料の開発は未成年の飲酒防止のための苦肉の策として大人の飲み物の味を再現したコピー食品を流通させて子供の舌には合わない味だと浸透させることでアルコール飲料への関心を失わせようとした遠大な教育政策でもあったのだ。
ただし、なぜアルコール飲料が大人の飲み物として生徒たちが口にすることができないものになっているのかを理解できる頭の良いイタズラ好きな生徒たちにはビールテイスト飲料など子供騙しに過ぎないのだが、そこはキヴォトスの頂点に立つ存在として地球の味を広めていく史上最大のインフルエンサーである“シャーレの先生”からの口コミで評判を定着させる力押ししかなかった。
皮肉なことに、先生と生徒の関係とはまったく別の大人の付き合いから未成年の飲酒防止の苦肉の策として開発されたビールテイスト飲料の開発を皮切りにしてシャンメリーなどのノンアルコール飲料も手掛けるようになる地球人:北条 アキラであったが、
やがては学園都市:キヴォトスで支配的地位を確立しているソフトドリンク業界の対抗馬となる新機軸:ノンアルコール業界の旗手を担うことになるとは誰も予想がつかなかったのであった。
そんな風にみんなでガラス越しの夏の日差しの中で開放的な姿になって ちょっといけない気分にさせてくれる グレーゾーンの大人の飲み物を片手に浜焼きを満喫していた時にちょっとした波乱をもたらしたのがバニーガール:飛鳥馬 トキであった。
彼女の存在はキヴォトス中から絶大な信頼と支持を得ている“シャーレの先生”の付き人として常に羨望よりも嫉妬の眼差しを向けられている無愛想なメイドとして知る人ぞ知る知名度を誇っているが、その正体が【ミレニアムサイエンススクール】が誇る凄腕エージェント集団【C&C】の一人であることを知る者は意外にも少ない。
しかし、この場には【キヴォトス防衛軍】の関係者しかいないため、バニーガール:飛鳥馬 トキの正体を知っている者がチラホラいるわけであり、
軍事顧問:北条 アキラの身辺警護を任されている事実を理解できる 各学園から選抜された生徒たちばかりだからこそ、場の空気を読まずに雲上人である地球人:北条 アキラにアタックできる度胸に圧倒されるのである。
そのため、距離の近さで言えば 身辺警護を担当しているバニーガール:飛鳥馬 トキが断トツであり、それだけで地球人:北条 アキラに憧れを抱いてお近づきになろうとする生徒たちの淡い期待を軽く圧し折る力を発揮し続けていた。
テレビの画面では無愛想なメイドにしか見えなかったけれども、テレビの画面からは伝わってこない迫力がそこにはあった。実物を目の前にして ようやくわかる。飛鳥馬 トキは紛れもない強者であった。
それでも、面と向かってあきらめることができない気丈な生徒たちがいるわけであり、それは個人的な想いだけではなく、自分たちが所属している学園や部活の命運のために引くわけにはいかない気概があったのである。
それがこの場では【連邦生徒会】財務室長:扇喜 アオイと【万魔殿】戦車長:棗 イロハであり、組織の代表にとって腹心の部下に当たる有力者同士であったことから、浜焼き大会の裏で密かに激しい火花を散らすことになったのだった。
そこから3人は先生が美味しそうに飲み干していたビールテイスト飲料のジョッキを手にし、自分こそが先生の隣に立つに相応しいと主張するかのようにジョッキを傾けて濃厚で芳醇な大人の苦味に耐えながら、口論を始めたわけだったのだが――――――。
棗 イロハ「先生は 怪獣退治の専門家としてキヴォトスに喚ばれた 本職が小学校の先生なんですよ」
棗 イロハ「だから、本当なら小学生のイブキとは本当に相性がいいみたいで、私たちには決して見せない表情がそこにはあったんです」
棗 イロハ「それでわかっちゃうんですよね、先生が私たちキヴォトス人に向けている隠された感情というのが」
扇喜 アオイ「へえ、それは是非とも聞かせて欲しいわね」
飛鳥馬 トキ「先生の身辺警護が任務ですから先生の表情ははっきりくっきりいつでも見えていますが、それは興味深いです」
棗 イロハ「先生、イブキには絶対に銃を握らせないんですよ、本当は小学生の歳だから」
棗 イロハ「どうしても重ねてしまうんでしょうね、地球で暮らしている同い年の先生の教え子たちと」
棗 イロハ「だから、自分の目の届く範囲でイブキが
棗 イロハ「そういった情操教育のために、上級生の私たちには模範を示すことを先生は暗に求め続けているわけなんですよ」
飛鳥馬 トキ「たしかに、先生は私たち生徒相手には絶対に銃口を向けることはしませんね。たとえ、生徒たちに発砲されたとしても……」
棗 イロハ「つまり、私たちキヴォトス人のことを完全に別の種族と認識して接しているわけなんですよ。私たちはキヴォトス人であって、地球人である先生とはちがうってことで……」
棗 イロハ「まあ、銃を抜く必要がない安全な場所でお役所仕事をしている【連邦生徒会】の役員方には伝わらないことでしょうけど……」
扇喜 アオイ「そんなことはないわ」
扇喜 アオイ「そもそも、先生は人類同士の戦争が完全に過去のものになった平和の星:地球の出身だからこそ、銃犯罪が絶えないキヴォトス人の在り方が嫌いだとはっきり言っていますから」
扇喜 アオイ「でも、だからと言って、先生は私たちのことを見捨てることはないんです。それは失踪した“連邦生徒会長”との契約で“シャーレの先生”をやっているのもあるわけですが、それだけで誰よりも命を張って怪獣退治をしてくれるわけがないんです」
扇喜 アオイ「なぜなら、私たちキヴォトス人にも地球人と共通したものが感じられたから。私たちが持つ可能性にそれだけの価値があると見出してくれたのですから」
飛鳥馬 トキ「先生がイブキちゃんに向ける感情と同じくするのが私たちに課せられた任務というわけですね」
扇喜 アオイ「そのために、第2の政庁となった【シャーレ・オフィス】を中心にして『犯罪ゼロ地区』の目標を達成できたように、キヴォトスに生きる人たちにも理想は決して手が届かないものではないことを示し続ける必要があるんです」
棗 イロハ「そうですよねぇ。それは本当にそう」
棗 イロハ「これまで私にとってはイブキの存在が何よりも大切だった――――――」
棗 イロハ「だから、そう言い包められてしまった以上、先生に手を出すことはイブキへの裏切りに繋がるんです」
棗 イロハ「私だって、先生とイブキと3人で家族計画を夢見たかったですよ……」
棗 イロハ「けど、今は天変地異の時代:怪獣頻出期で、先生は怪獣災害からキヴォトスを救うために怪獣退治の専門家として、山のように大きな怪獣に立ち向かっていく責務がある……」
棗 イロハ「――――――もっと力が欲しい」
棗 イロハ「忘れもしない。Xデーの時に最初の怪獣:クレッセントに戦車部隊が成す術もなく蹂躙され、私は絶望しながら怪獣の姿を見上げることしかできなかった……」
扇喜 アオイ「私も最終防衛ラインを突破された瞬間にはサンクトゥムタワーを脱出するしかなかった……」
飛鳥馬 トキ「私は遠くからサンクトゥムタワーが破壊されるのを黙って見ている他なかったです……」
棗 イロハ「けど、それが今は対怪獣兵器:機龍丸の搭乗員になって真っ向から怪獣と戦うことができるようにはなった――――――」
棗 イロハ「それでも、まだまだ届かないんです……」
棗 イロハ「私たちが弱いから、先生は安心して恋愛に現を抜かすだなんてことができないんですよ……」
棗 イロハ「冗談抜きで、先生の中にあるのは『生きるか死ぬか』なんです。私も機龍丸に乗って『生きるか死ぬか』なんですから……」
扇喜 アオイ「本当に感謝しています、イロハさん。機龍丸のおかげで、キヴォトスは何度も救われてきました」
飛鳥馬 トキ「ですが、イロハさんが言うように敵の戦力は未知数であり、強力無比で、油断大敵です」
棗 イロハ「だから、まずはこの天変地異の時代を生き延びることが第一で、そのためには機龍丸の強化は必要不可欠――――――」
棗 イロハ「それにはマコト議長を上手く煽てて効率的な運営をする他ないんです」
棗 イロハ「けれども、常日頃からマコト議長の思いつきに振り回されてばかりの私たちには、とてもじゃないですが、無理なことです」
棗 イロハ「となれば、本当に癪ですけど、マコト議長のことを上手く扱える先生をあてがう他ないじゃないですか、今は。私たちが生きて明日を掴むためには……」
扇喜 アオイ「そうだったの……」
飛鳥馬 トキ「それに加えて、エデン条約もありますからね、【ゲヘナ】と【トリニティ】は。【ミレニアム】としても余計な災難は起こさないで欲しいです」
扇喜 アオイ「それはそうね。政治的中立を保つべき立場から、エデン条約に関しては先生は干渉しないことを決めてはいますが、新たな騒乱を招くことにならないことを祈るばかりね」
棗 イロハ「まったくです。それもこれも“雷帝”のせいですから」
飛鳥馬 トキ「ええ。現在も進行中のアビドス遠征ですが、その目的の1つに【“雷帝”の遺産】の回収が付け加えられるぐらいには今もなお影響を残し続けています。本当に厄介です」
扇喜 アオイ「本当に厄介よ。こうして
飛鳥馬 トキ「先生は無駄なことは決してしません。全ては怪獣退治に必要だからこそ説明を尽くして同意を得ていることです」
棗 イロハ「まあ、こんな大規模な娯楽施設を大真面目に【キヴォトス防衛軍】に必要な設備だと言い張った時は、さすがの私でも耳を疑いましたけど、アビドス遠征の長期化に直面して現場の疲労や不満のことを考えると、こんな風に思いっきり羽根を伸ばせる場所がないとやってられないですもんね」
扇喜 アオイ「ええ。私たちはまだ恵まれた役職だとか責任ある立場だから、先生に格別に目をかけてもらっているけれど、末端で働く生徒たちに報いるためにはこれぐらい大きなことをして不平不満を発散させないと、これまでのキヴォトスの常識から言って反乱は不可避よ」
扇喜 アオイ「だからこそ、先生にはリン先輩のことをすぐ隣で支えていて欲しいと思うのは、私が【連邦生徒会】の人間で 自分たちの周りばかりで 他のことに眼が行っていないからよね……」
飛鳥馬 トキ「いいえ。今の話を聞いて、私も少し反省すべきだと思うところがありました」
扇喜 アオイ「それはどんな……?」
飛鳥馬 トキ「誰よりも先生の側近くにいる私でも先生が見ているものを完全に共有できていない点です」
飛鳥馬 トキ「ですので、私よりも確実に先生と距離のある人が反省しているのを見て、私も今のままだと先生に完全に置いていかれるような気がしました」
棗 イロハ「なるほど。それも真実か……」
棗 イロハ「現に、私たちは大人の飲み物を似せて作った炭酸飲料を注いだビールジョッキを手にしてますけど、これも先生が教えてくれなかったら絶対に知ることのなかった味ですからねぇ」
扇喜 アオイ「そういう意味では私たちは誰一人として先生のことを知っているようで何も知らない」
扇喜 アオイ「私たちが先生のことで知っていることというのは、先生が私たち生徒の元まで歩み寄って教えてくれたことだけ……」
――――――まだまだ子供よね、私たち。
3人はそれぞれ自分の上司よりも要領よく立ち回っていると自負しているところはあったものの、それは組織の長としての責任がのしかかることのない気楽な立場からの物言いであったことを大人の苦味を再現したビールテイスト飲料と共にようやく呑み込むことができていた。
それこそが飲みニケーションの成果なのか、それぞれの立場から見た先生との距離感を共有し合うことで、他者の意思を尊重することを覚えた彼女たちの間にはたしかな結束が生まれつつあった。ついでに大人の味として持ってきていた浜焼きの美味しさも印象に残った。
そして、実質的に【キヴォトス防衛軍】を構成する組織同士の重要な交流会の現場に相変わらず参加できていない【トリニティ総合学園】であったが、今回はいなくて正解だったのではないかと言うのが当事者の間の認識であった。
なにしろ、【トリニティ総合学園】生徒会長:百合園 セイアが体調不良を克服して他の生徒会長たちと足並みを揃えることができていたとしても、百合園 セイアには七神 リンにとっての扇喜 アオイ、羽沼 マコトにとっての棗 イロハ、調月 リオにとっての飛鳥馬 トキに相当する有能な直属の部下がいないのだ。
いや、名代としては【ティーパーティー】のホストを代行できる他の派閥の代表である桐藤 ナギサと聖園 ミカもいて役割分担を今しているわけだが、あくまでも2人とは他派閥の対等の盟友であって派閥の事情も加味した百合園 セイア個人の意思や心情を代弁していい部下というわけではないのだ。
仮に病弱で有名な【ティーパーティー】ホスト:百合園 セイアが交流会に参加した時に意見交流の場に連れていける同伴者が誰なのかを考えると【救護騎士団】団長:蒼森 ミネぐらいしか候補に挙げられず、3つの派閥が運営している【トリニティ総合学園】の生徒会である【ティーパーティー】の人材の層の薄さが組織同士の交流会でも大きく響いているのは紛れもない事実である。
事実、【救護騎士団】団長:蒼森 ミネにとって【ティーパーティー】ホスト:百合園 セイアは学園を統率する生徒会長ということで目上の人間であり、同時に病弱な患者として救護すべき対象でもあるため、個人的には桐藤 ナギサや聖園 ミカとはちがった大きな繋がりはあっても、そこはやはり別組織の代表同士でもあるため、主従関係というわけでもない。
そのため、腹心の部下を連れ回せることは組織同士の交流会におけるコミュニケーションでも重要な利点になっているわけであり、【トリニティ総合学園】はこれから先も学園内部の派閥の問題が外部とのコミュニケーションの重大な失陥を招き続けることになり、組織力が重要な【キヴォトス防衛軍】の怪獣退治において役割を失っていくことになるのはこうした経験則からして明白であったのだ。
また、キヴォトス中の誰もが憧れる“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラに対する理解についても、キヴォトスの生徒たちの中でも特に接点を多く持つことができている扇喜 アオイ、棗 イロハ、飛鳥馬 トキの3人の重要な証人と意見交流できていないのも恋のレースでは大きな痛手になることであろう――――――。
ロボット職員「………………」
北条先生「はじめまして、僕が地球人:北条 アキラです」
宇宙格闘士の帝王「今更 説明は不要だろうが、オレこそが“宇宙の帝王”! グレゴール星のグレゴリオだ!」
北条先生「これが宇宙船の中ですか。怪獣頻出期が収束を迎えて平和な時代で育った身としては初めての搭乗ですよ」
北条先生「よくはわからないのですが、これはグレゴール星では一般的な内装なのですか?」
宇宙格闘士の帝王「その通りだ。オレのようなグレゴール星人は宇宙格闘士として暗黒宇宙を生身で戦い抜くことに誇りを抱いている」
宇宙格闘士の帝王「そのために基本的に船体には最低限の武装だけで、敵は磨き上げた自分自身の拳で打ち砕くことを信条としている」
宇宙格闘士の帝王「だからこそ、宇宙格闘士として宇宙中の強豪たちと戦うために必要なものを優先的に配置している」
宇宙格闘士の帝王「たとえば、トレーニングマシーンやメディカルマシーンは常に最新式のものにしているし、試合映像の撮影や編集のための通信機材も用意してある。証拠となるものは大事だからな」
宇宙格闘士の帝王「ついでに言えば、グレゴール星人も所属している【宇宙格闘士組合】の活動にはチャリティーイベントなんかもあるわけで、興行のために必要なグッズも倉庫にしまってあるぞ」
北条先生「もしかして一人なんですか?」
宇宙格闘士の帝王「ああ、基本的にグレゴール星人は一人で暗黒宇宙を流離って武者修行をすることになっている」
北条先生「すごいな。気軽に恒星間航行ができるだけじゃなく、一人で運用できるようにオートメーション化もこれだけ進んでいるのか。フードテックも素晴らしい。これと見比べたら、地球の技術はいったい 何世紀 遅れているのだろうね」
ロボット職員「そうですねぇ……」
宇宙格闘士の帝王「そして、これが宇宙格闘士の神聖なる
北条先生「やはり、
宇宙格闘士の帝王「当たり前だ。基本的には屋外に剣で囲って
北条先生「ここで
宇宙格闘士の帝王「これは
ロボット職員「先生……」
北条先生「それもそうですね。僕もいろいろと試したいと思うことがありますから」
北条先生「いろいろと訊かせてください。輝く銀河の彼方からやってきた宇宙人にいろんなことを教えてもらいたいです」
宇宙格闘士の帝王「では、始めようか。好きに仕掛けるがいい。これは
北条先生「では、タイマーとゴングはお願いしますよ、ガリバーさん」
これがキヴォトスの守護神として名を馳せるウルトラマン80に変身する地球人:北条 アキラとウルトラマンティガに変身する能力を失ったコーイチ先生に成り代わって助っ人になったグレゴール星人:グレゴリオの顔合わせであった。
すでに“宇宙の帝王”グレゴリオとしてはアビドス砂漠で神秘の巨人:ウルトラマンネクサスや光の眷属:サーベラスと共闘を果たしており、【
もちろん、アビドス砂漠のみならず、これまでキヴォトスに現れた怪獣の脅威を踏まえて、エキシビションマッチで互いの実力を認め合う好敵手:サーベラスを倒さずして人類の守護神:ウルトラマン80を打倒する功名心を抱くようなことはなく、学生の身分のまま女子供が大人の真似事をさせられているキヴォトスの歪な社会構造に思うところがあって力を貸してくれていた。
それでも、命懸けの怪獣退治で互いを信用するためには互いの実力を正確に把握する必要があり、これは戦士にとっては必要不可欠な通過儀礼であった。
グレゴール星人の宇宙船のリングに等身大で変身を果たしたウルトラマン80を見て、颯爽と銀の光沢を放つフード付きのガウンコートを脱ぎ捨て“帝王グレイ”が勢いよくリング・インとなった。
すると、ゴングが鳴る前に
投げ渡されたウルトラレイランスをグレゴリオが手に掴むと、たちまちのうちにサクシウムエネルギーの光の槍が暗黒宇宙で鍛え上げられた闇に染まってダークレイランスへと変貌してしまうのであった。
その様子を興味深そうに見つめているウルトラマン80だったが、ゴングが鳴る前から予想外のことにビックリ仰天しているロボット職員:マウンテンガリバーに対し、グレゴール星人:グレゴリオはさっさとゴングを鳴らすように促すのであった。
そんなこんなで
観客はタイムキーパーとなるロボット職員:マウンテンガリバーのみであり、かつて『前回』“シャーレの先生”と“ウルトラマンティガ”の二重生活で 早速 疲弊することになったコーイチ先生だった頃、伝説の超古代の巨人との決闘をしにアビドス砂漠に現れた“帝王グレイ”との
それはもう、Xデーから間もなくの【アビドス対策委員会】からの支援要請に応じて長期出張をしていた時の二重生活で疲弊していた以上に基本ができていなかったことで“帝王グレイ”にどう動いても軽く蹴散らされるほどに実力差がはっきりしており、もはや試合にもならなかった。
そのため、遠路遥々と辺境の惑星までやってきたというのに 伝説の超古代の巨人が噂ほどでもなかったことを目の当たりにして あっと言う間に興味を失ってしまった“帝王グレイ”に対して、ネオフロンティア時代に正々堂々とウルトラマンダイナに決闘を申し込んできた宇宙格闘士:グレゴール人と手を組もうと必死に縋り付いた結果、文字通り光るものがあると見込まれて“帝王グレイ”を師匠に迎えることに成功していたのであった。
そう、“帝王グレイ”との
それだけに『前回』はコーイチ先生がウルトラマンティガとして
――――――やはり、地球上で唯一無二の無敗神話を誇る 光の国のエリート戦士である ウルトラマン80に成りきっている
いきなり予想外のウルトラレイランス同士の槍術対決になったわけなのだが、あくまでも互いの実力を把握するための小手調べということで軽く演舞をしているのかと思いきや、
北条先生が変身するウルトラマン80は鍛え上げた総合武術の槍術でキレのある動きを見せて“帝王グレイ”と互角以上の戦いを披露しており、光と闇の剣戟は非常に見応えのあるものになっていた。
それどころか、第1ラウンド終了のブザーが鳴る10秒前にウルトラレイランスを自身の膝で叩き折ると光の二刀流に切り替えて猛攻撃を仕掛けることになり、エンターテイメントとして相手の出方を見て攻撃を受け切る帝王の戦い方に固執するグレゴリオとしては融通無碍で奇想天外で変幻自在の戦い方をする相手が特に苦手であったのである。
そこまで得意でもない長柄の武器を持たされて相手の土俵での戦いを強要された挙げ句にこれなのだから、この容赦の無さに感銘を受けると同時にむしろ安心感があり、情け容赦無用の非情なる暗黒宇宙で拳一つで成り上がってきた“宇宙の帝王”グレゴリオにとってはヒリつくような死闘の高揚感が蘇ってくるものがあったのだ。
もはや、言うまでもないだろう。【アビドス対策委員会】の支援要請を受けてアビドス砂漠に長期出張に出ていた頃のコーイチ先生が変身するウルトラマンティガと北条先生が変身するウルトラマン80とでは比較するまでもない。
最終的にはコーイチ先生は師弟関係を結んで二人三脚で怪獣退治に邁進していった果てに“帝王グレイ”から改めて
一方、ウルトラマンに変身していられる時間は3分程度が限度であるため、第1ラウンド終了のブザーが鳴ると元の地球人の姿を取り戻し、休憩がてら
北条先生「ありがとうございました、“帝王グレイ”。今回の
宇宙格闘士の帝王「変身時間が限られている以上、このオレを相手に遠慮なく練習台に使うとは大した度胸だな。これが怪獣退治の専門家と言うわけか」
北条先生「まだまだ試してみたいことがいっぱいあるので、今夜はとことん付き合ってもらいますよ」
宇宙格闘士の帝王「オレの方としてもウルトラレイランスを使わせてもらう貴重な機会になったことだし、今夜の交流会は大事にさせてもらおう」
ロボット職員「やっぱり先生は強いですか、“帝王グレイ”?」
宇宙格闘士の帝王「……まあ強いな。単純な腕力なら間違いなく暗黒宇宙を拳一つで渡り歩いたオレの方が強いが、傾向としてはサーベラスと同じで勝つためなら何だってする信念があるから、この宇宙で一番恐ろしいものと言える」
宇宙格闘士の帝王「ただ単に手段を選ばない卑怯者の振る舞いというわけではない。自らに課された使命のために己のプライドを捨てられる覚悟があると言うことだ」
宇宙格闘士の帝王「最初からオレに勝つつもりだったのなら、わざわざウルトラレイランスをオレに投げ渡す必要なんてなかっただろう。それだけでもエネルギーを消耗するからな」
宇宙格闘士の帝王「これは将来を見据えて己の戦いの方の幅を広げるための研究熱心さが現れ出たわけだ。将来に対する危機感はあっても、それだけ心に余裕がある戦い方をしていたのだ」
ロボット職員「なるほど。さすがは先生だ」
北条先生「とは言え、太陽エネルギーを補充するために今は雲の上ですけど、怪獣出現の際には真っ先に駆けつけてくださいよ。それが僕に課せられた使命ですから」
宇宙格闘士の帝王「わかっている。第1ラウンドだけしか変身して戦えない者をオレは弱者だと笑うつもりはない」
宇宙格闘士の帝王「よし、先生よ。試してみたいことが山ほどあるのだろう。太陽エネルギーが充填されるまでにできることもあるのではないか」
宇宙格闘士の帝王「そうだな。オレも先生の技を盗むために人間の姿を借りるとしよう。怪獣退治の専門家から学べることがあるかもしれん」 ――――――人間の姿に変身!
ロボット職員「おお!」
北条先生「では、リングに合わせてボクサーパンツの姿になることはできませんが、これも怪獣退治の専門家の戦闘服なので、これでお願いしましょうか」
北条先生「はい。休憩は終了。第2ラウンドを始めましょうか」
ロボット職員「わかりました。両者、リング・インをお願いします」
カーン!
そこから人間の姿のままで半世紀に渡る怪獣頻出期で磨き上げられた
それどころか、同じようにリングに手招きされた機械の身体のロボット職員:マウンテンガリバーも同じように打撃技と投げ技のコンビネーションで容易に体勢を崩されてマットに叩きつけられることになり、地球の
こうした人体構造の弱点を突き詰めた対人格闘術は宇宙格闘士の間でも発展することがなかったものであった。なぜなら、宇宙格闘士たちは宇宙を股にかけるということで重力空間のみならず、低重力空間や無重力空間での
だから、無重力空間でも変わらず威力を発揮するパンチ力やキック力を磨く方がわかりやすいし、取っ組み合いになっても物を言うのは最終的には筋肉であると宇宙中で広く信じられていたのである。実際、筋肉がわかりやすく発達した怪獣は一目見ただけでも威圧されることだし、基本的に見た目通りの怪力を発揮するので、『筋肉は裏切らない』のというのはどこであろうと変わることのない究極の真理であった。
そもそも、投げ技を仕掛けること自体が宇宙全体からすればリスクが大きい行為であり、相手がガス状生命体だの、全身から毒液を吹き出すような危険生物だの、宇宙を股にかける強者ほど そういった能力を持った怪獣や宇宙人と遭遇する確率が上がるため、賢く生き残る術として 尚更 投げ技を磨くのは損というわけである。
が、結果として投げ技に対する経験と理解の差で、
そこからは武装することが当たり前のキヴォトスの生徒相手に発揮する機会が未だにない
もちろん、銃で武装した宇宙マフィアと激闘を繰り広げてきた経験があるわけなので、素手で光線技を放てるからと言って決して銃を侮っているわけではないにしても、面倒になったらダークガルネイトボンバーでまとめて敵軍団を吹き飛ばしていた“帝王グレイ”としては銃を持った相手にこれだけの対抗策があることに感動すら覚えていた。
そう、自分自身がキヴォトスで流通している銃器を実際に握ってみてゴングが鳴ると同時に北条先生に銃口を向けた瞬間に狭いリングの中で一瞬で距離を詰められてヘッドシザースを極められたり、肩関節を極めながら裏回りされて銃爪を奪われたり、銃爪を引く指を鷲掴みにされたりと、銃の素人であることを差し引いても“帝王グレイ”の冷や汗が止まらない展開が続いた。
特に、銃爪に伸ばしていた人差し指を一瞬で反対方向にグイッと引っ張られた感覚は一般人のみならず宇宙格闘士にとっても悪夢でしかなかった。
暗黒宇宙を拳一つで渡り歩いた正真正銘の猛者である“帝王グレイ”ですら
唯一の観客であるロボット職員:マウンテンガリバーにしてみても、これらの技の数々がキヴォトスの生徒相手に発揮されることが一切なかったことを神に感謝するぐらいには、“GUYSの先生”北条 アキラの戦闘技術は卓越しており、これからも生徒相手に銃爪に伸ばした人差し指を反対方向に容赦なく圧し折る神業が使われることがないことを祈るばかりである。
そして、宇宙船を飛ばして雲の上を超えてブライトスティックに地表よりも遥かに濃密な太陽エネルギーが充填され、短時間で再びウルトラマン80に変身できるようになると、真の第2ラウンドの開始を心待ちにしていた“帝王グレイ”もまた擬態を解いて勢いよくリング・インを果たした。
宇宙格闘士の帝王「ここからは 多少 荒っぽくやってもかまわんよな。このオレにあれだけ冷や汗をかかせてきたのだ。今度は先生にたくさん冷や汗をかかせてやるぞ」
北条先生「いいですよ。実質的にこれで最終ラウンドですから、互いに思い残しがないように思い切りいかせてもらいますよ」
宇宙格闘士の帝王「…………やはり恐ろしい相手だ。実力としてはサーベラスに確実に劣るものの、搦め手を使ってきても それを卑怯だと言わせない 正々堂々たる迫力が漲っている」
北条先生「…………極限まで気を練り上げろ。たとえ相手がどれだけ強大であったとしても、気持ちで負けていたら万に一つとして勝利はない。ウルトラマンの勇姿を常に思い出せ」
ロボット職員「では、最終ラウンドとなります。両者、リング・インをお願いします」
北条先生「さすがにお強いですねぇ……」ゼエゼエ・・・
北条先生「真向勝負になったら“帝王グレイ”には敵わないですよ……」ゼエゼエ・・・
宇宙格闘士の帝王「ほ、ほざけぇ! 互いに本気ではないとは言え、このオレを何の躊躇いもなく新技の練習台にして、自分でも使ったことがない思いつきの新技を無責任に放ってくることを信頼の裏返しと言い張ってくるなッ!」ゼエゼエ・・・
ロボット職員「ははは……」
宇宙格闘士の帝王「しかし、サーベラスとエキシビションマッチをしていた時からわかってはいたが、サーベラスほどではないにしろ、ウルトラマン80の機敏さについていけなかったな……」ゼエゼエ・・・
北条先生「そうですねぇ。“帝王グレイ”はエンターテイナーとして相手の攻撃を受けきって反撃で倒すパワーファイターですから、スピードファイターとは相性が悪いかもしれませんね」
宇宙格闘士の帝王「いや、オレ相手に新技を次々と繰り出してくる技のデパートであるだけじゃなく、スピードファイターでもあり、パワーファイターでもあるのは反則レベルだろう」
宇宙格闘士の帝王「まだその力の全てをものにしているわけではないようだが、しっかりと基本となる動きは磨き上げているようだな」
北条先生「まあ、最初の怪獣:クレッセントの出現からアビドス遠征までに怪獣撃破数と経験値はしっかり稼いできましたから」
宇宙格闘士の帝王「これからが楽しみでならないな」
ロボット職員「それでは――――――!」
宇宙格闘士の帝王「ああ、タッグマッチを組む日を楽しみにしているぞ、ウルトラマン80」
宇宙格闘士の帝王「おっと、ここは拳を突き合わせるよりも先生自身が拡めたクロスタッチの方がいいか」
北条先生「では、右腕を」
宇宙格闘士の帝王「ああ」
バシッ!
ロボット職員「これで今夜の
北条先生「いやはや、いろんな技を試すことができて充実した時間だったな」
宇宙格闘士の帝王「うん? 待て、レーダーに何か反応があるようだな?」ピピッ
北条先生「まさか、惑星に侵入しようとしている宇宙怪獣か!?」
宇宙格闘士の帝王「コンピュータ、モニターに映せ。分析データも表示しろ」
ロボット職員「こ、これは銀色の巨人――――――!?」
宇宙格闘士の帝王「なるほどな、これは先生の同胞ではないのか?」
北条先生「ああ、そうか。こうやって見守ってくれていたわけですね、ずっと」
北条先生「じゃあ、ちょっとだけ挨拶をして帰りましょうか」
それから【ゲヘナ学園】での
それまでの数日間、グランドオープンに招待することになっているミッション系お嬢様学校の【トリニティ総合学園】のお行儀の良い生徒たちを饗すにはふさわしくない数々のB級グルメと一緒に大人の飲み物の風味を再現したビールテイスト飲料を注いだビールジョッキを片手にワイワイ盛り上がっていたのだが、
そこに【風紀委員会】委員長:空崎 ヒナがまさかの初等部時代のスクール水着を着てビールジョッキを片手に現れたことで、さすがに本職が小学生の先生である北条 アキラも唖然とする他なかったのであった。なにしろ、高等部になっても『5-A ひな』とデカデカと書かれたスクール水着を未だに着ることができているわけなのだから。
ビールテントで白ビールやヴァイスヴルストを提供する世界最大規模のビール祭り:ミュンヘン・オクトーバーフェストの開催国であるドイツではビールとワインの飲酒は16歳以上、蒸留酒は18歳以上から飲酒が可能になっているわけだが、スクール水着が似合いすぎる高等部3年生:空崎 ヒナがビールジョッキを片手にビールテイスト飲料をゴクゴクと飲み干す姿は日本人にとって犯罪的な絵面であった。
しかも、世界中の紛争地帯を渡り歩いてきた戦場カメラマン:姫矢 ジュンが言うには【ゲヘナ学園】は非常にドイツ的な文化圏であるらしく、流通している銃火器や服装などにその特色が現れているらしいことを聞かされると、【ゲヘナ学園】で思った以上にビールテイスト飲料が好評を博している理由もうっすらとだが納得してしまうものがあった。
どうやら、地球人:北条 アキラが監修したビールテイスト飲料は浜焼きと一緒に提供されたことにより、温かくて苦い飲み物であるコーヒーやお茶とはちがった
ビールがドイツ的であるかどうかはともかく、とにかく最初はコーヒーやお茶以外の独特の苦味と香りのビールテイスト飲料に顔を顰めるばかりの生徒たちが1日のうちにジョッキで何杯も飲み出すようになっていったのには苦肉の策でビールテイスト飲料を広めようとしていた教育者としては危機感を覚えるものがあった。
あくまでも不味いものとして定着させて本物のアルコール飲料に手を出さないようにする計略であったのに、これほどまでに美味しそうに生徒たちにビールテイスト飲料が飲まれてしまうことは大きな誤算であった――――――。
戦場カメラマン「いや、先生。それは先生が悪い」ゴクゴク・・・
北条先生「な、なんでだああああああああ!?」
戦場カメラマン「聞けば、ミュンヘン・オクトーバーフェストのビールテントまで再現していたそうじゃないか。ヴァイスヴルストが並んだのは最終日だけだったそうだが」
戦場カメラマン「先生は地球の文化を宇宙の誇りとして、こんな風に何にでも本格的な作りにしちゃうから、ビールジョッキなんて年頃の女の子にとっては身近じゃないものまで魅力的なアイテムに見えてくるみたいだな」
戦場カメラマン「う~ん! なかなか美味いな、生ビールもどき! ジョッキで一気に飲み干すのが実に快感だな!」ゴトン!
北条先生「え、ビールジョッキに販売促進効果があった?」
戦場カメラマン「いや、これは文化圏特有の問題だな。全体的に【ゲヘナ学園】の文化圏は何と言うのかナチス・ドイツの超兵器を思わせるようなトンデモ兵器を求める傾向にあってだな。それは 神秘によって ただの通常火器が装甲車を破壊するほどの威力を持つキヴォトス特有の環境事情も無関係ではないだろう」
北条先生「それはまあ、ゲヘナ最強と名高い風紀委員長:空崎 ヒナのマシンガン攻撃がビームに見えるぐらいですし」
戦場カメラマン「つまり、女の子が飲むには大き過ぎるビールジョッキにたっぷりと注がれた独特の苦味と香りを持つビールの組み合わせがキヴォトス人の中でもトンデモ兵器を求める傾向にあるゲヘナ生の感性に響くものがあったというわけだ」
北条先生「ええ……」
北条先生「まあ、言われてみれば たしかに全体的に日本の風土にそっくりな学園都市:キヴォトスだし、さすがにビールジョッキを愛用する女子高生なんて見たことがないけれど、それが【ゲヘナ】の臍曲がりの生徒たちに大ウケすることになるだなんてなぁ……」
戦場カメラマン「よく考えてみろ。キヴォトスの女の子たちは無骨に見える銃器に女の子らしく可愛らしいデコレーションをするのが普通なんだぞ。でっかくて飾り付けがしやすいビールジョッキにそういった美的感覚が働くのも時間の問題だろう」
戦場カメラマン「それに2年前にキヴォトスを混沌に陥れた“雷帝”もそうだし、【キヴォトス防衛軍】の中核を担う対怪獣兵器の運用や開発にどこよりも熱心なのは紛れもない事実だろう」
北条先生「あ、それもそうか……」
戦場カメラマン「逆に【トリニティ総合学園】の生徒たちが愛用しているのはイギリス製あるいはイギリスと縁が深いメーカーの銃が多い傾向にあるな。文化圏としてもイギリスだと思えるところがあるし、【シスターフッド】に至ってはイスラエル製の兵器に似たものが多いな」
戦場カメラマン「
戦場カメラマン「それに、イギリスはフランスから『百の宗教があるが、
北条先生「だから、【ゲヘナ学園】はナチス・ドイツ的であると?」
戦場カメラマン「どう見ても【万魔殿】の制服はナチス・ドイツ的だろう? ナチス・ドイツに大量虐殺されたユダヤ人が建国したイスラエルの武器が多い【シスターフッド】とはこう言った面でも不倶戴天の敵と見なされる文化的背景があるように思える」
北条先生「……申し訳ないです。
北条先生「でも、そうなると、ますます学園都市:キヴォトスと地球の繋がりが気になってきますね。仮に学園のモデルとなった地球の国家の文化がそこまで精神的に作用するとなると、キヴォトス人にはやはり創造主が意図した機能が埋め込まれているように思えますね」
北条先生「まあ、だからと言ってドイツの国民食であるジャガイモとザワークラウトに目の色を変えるようには 到底 思えませんがね」
戦場カメラマン「それはそうだろう。オクトーバーフェストの名物であるように女子供でも十分に楽しめるものだからこそ、全体的に日本的なキヴォトスで特にドイツ的なものが受け容れられているわけだからな」
戦場カメラマン「たぶん、シャウエッセンやアルトバイエルンのようなドイツ風の名前で売り出すと【ゲヘナ】では大ヒットするんじゃないかな」
北条先生「そうかなぁ……」
――――――だって、僕が監修して名前をつけたビールテイスト飲料の名前は“
氷室 セナ「本日もおつかれさまでした、ヒナ委員長」
空崎 ヒナ「うん。セナもね」
氷室 セナ「では、学食で待ち合わせでしたね」
空崎 ヒナ「うん。フウカがわざわざ先生の料理を再現してくれたみたいだから、ごちそうになろうと思って。あれ、本当に美味しかったから、また食べられるだなんて嬉しいわ」
氷室 セナ「楽しかったですね、
空崎 ヒナ「うん、本当に楽しかった。先生に水着を選んでもらえたし」
氷室 セナ「あれには本当に驚いていましたね、先生。地球では小学校の先生だったわけですから、ヒナ委員長が本当に小学生に見えて目のやり場に困ってましたし」
空崎 ヒナ「先生の意外な一面が見られて良かったと思う」
ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!
空崎 ヒナ「みんな、今日もおつかれさま。それじゃあ、乾杯」
生徒一同「乾杯!」
空崎 ヒナ「ああ、美味しい。仕事終わりの一杯にこれは最高ね」ゴクッ ――――――ビールジョッキを飲み干す。
氷室 セナ「そうですね。さすがは先生が監修した逸品です。この独特の苦味と香りが妙にクセになります」
愛清 フウカ「どうぞ、ヴァイスヴルストです。スイートマスタードも用意しました」コトッ ――――――沸騰から冷ました鍋に浮かぶヴァイスヴルスト。
空崎 ヒナ「来たわね。それじゃあ、ヴァイスヴルスト、いただくわ」
空崎 ヒナ「相変わらず、ツルンと滑ってフォークが刺さらないわね」ツルン!
氷室 セナ「だから、先生はトングを用意していたわけですよね」カチカチ!
氷室 セナ「他のウインナーは皮ごと食べるのに、このヴァイスヴルストは『本場は皮を剥いて食べる』というのは不思議なものですね」
愛清 フウカ「それなんですが、私もジュリやハルナたちと一緒に食べ比べをしてみたんですよ」
愛清 フウカ「そうしたら、ヴァイスヴルストは皮が中身の鮮度を保つために結構固くて中身はふわふわの触感ということでミスマッチしているみたいなんですよね」
愛清 フウカ「ですから、上から半分に切って皮を剥ぐ食べ方が一番美味しいわけなんです。スイートマスタードもヴァイスヴルストのふわふわとした食感にはベストマッチです」
氷室 セナ「そう聞くと魚肉ソーセージみたいですね。それよりもバナナに近いかもしれませんけど」
空崎 ヒナ「うん。やっぱり、歴史と伝統がある本場ならではの食べ方には敬意を払わらないとね」
空崎 ヒナ「それじゃあ、“バービカン”のおかわりをお願い、フウカ」
愛清 フウカ「はい。お持ちしますね」スタスタ・・・
氷室 セナ「なかなか似合ってますよね、先生が紹介してくれたオクトーバーフェストの衣装」
空崎 ヒナ「ディアンドルね。元々、エプロンが組み込まれた伝統衣装だって話だし、【給食部】のフウカにはピッタリなデザインよね」*3
氷室 セナ「先生には本当に感謝の言葉しかありません」
氷室 セナ「こうしてヒナ委員長やフウカと落ち着いて夕食会を楽しむことができるぐらいには【ゲヘナ】の治安も良くなりました。今でも信じられないようなことです」
空崎 ヒナ「そうね。先生が【万魔殿】の暴走を抑えてくれているからこそ、【風紀委員会】【救急医学部】【給食部】が見違えるぐらいに余裕のある日々を送ることができているわ」
空崎 ヒナ「だからこそ、怪獣退治の専門家である“GUYSの先生”の初期の活動を支えた部活動として誇りに思いましょう」
愛清 フウカ「はい、お持ちしました」コトッ
空崎 ヒナ「じゃあ、フウカもジョッキを持って乾杯しよう」
愛清 フウカ「あ、はい。じゃあ、セナも一緒に」
氷室 セナ「はい」
――――――乾杯!
愛清 フウカ「ああ、美味しい!」ニッコリ!
空崎 ヒナ「本当に不思議と口に合う味よね、“バービカン”」
空崎 ヒナ「いいことなんて何一つないと思っていた日々が楽しく思える時が来るだなんて夢にも思わなかった」
愛清 フウカ「私も」
愛清 フウカ「何だか、先生が来てくれたその日から私たちの地獄に音楽が絶えないみたい」
氷室 セナ「先生。卒業する前に会えて本当に良かったです」
氷室 セナ「いつか先生も怪獣退治の使命を終えてキヴォトスを去る時が来るとは思いますけど」
――――――先生は輝く銀河の彼方にある地球から
羽沼 マコト「なあ、イロハ?」
棗 イロハ「何ですか? ヴァイスヴルストの皮が相変わらず上手く取れない話なら、素直にトングを使えばいいじゃないんですか?」
羽沼 マコト「あ、いや、その話じゃなくてだな……」
棗 イロハ「じゃあ、何ですか?」
羽沼 マコト「その、『私は先生のことをどう思っているのだろうな』って思ってだな……」
棗 イロハ「はあああああああああ!? なんでそんな今更なことを訊いてくるんですか!?」
羽沼 マコト「え?」
本宮 チアキ「あ、マコト先輩! いよいよ先生に告白するんですか? これは過去最高の特ダネの予感!」
羽沼 マコト「へっ?! なにッ!? こ、『告白』だと!?」
京極 サツキ「マコトちゃん、音楽フェスティバルの後の祝勝会でやった王様ゲームの時に先生に玉座までエスコートされて手の甲にキスをされた時からずっと先生のことを意識していたじゃない」
本宮 チアキ「キスされるずっと前から【ゲヘナ学園】のためにあの手この手で尽くしてくれていた先生のことを、マコト先輩、物凄く気に入って先生が望むものは何でも叶えてあげようとしていましたよね」
京極 サツキ「私たち、いつマコトちゃんが先生に告白するのか、ずっと見守っていたんだけど、ちがうの?」
羽沼 マコト「え、いや、それはその…………」
羽沼 マコト「なあ、イロハ? やっぱり、私は先生のことが好きなのだろうか?」
棗 イロハ「いや、そんなこと、私に訊かないでくださいよ。ご自分のことじゃないですか」
棗 イロハ「まあ、私は先生のことが好きですけどね」
羽沼 マコト「な、なにッ!? そうだったのか、イロハ!?」
棗 イロハ「……いったいマコト議長の目には何が見えているのか、逆にこっちが訊きたいぐらいですよ」
棗 イロハ「これでも、私、結構 先生には助けられてきてますから、先生は私の命の恩人ということでXデーの時から私の中で存在が大きくなっていましたよ」
羽沼 マコト「そ、そうだったのか……」
棗 イロハ「いつもいつも私たちを振り回しているのに、何か変に気を遣ってませんか、最近?」
棗 イロハ「別にいいんですよ、先生がマコト議長とくっつくのは、私としては」
羽沼 マコト「え、どういうことだ? こういうのは自分が一番にならないと気が済まないものではないのか?」
棗 イロハ「いや、だって、先生がマコト議長とくっついてくれたら、マコト議長もいろいろと落ち着いて全体的に面倒事が減るかと思いまして」
京極 サツキ「それに、これからのマコトちゃんの人生で先生以上の相手が現れるとは 到底 思えないし、先生がとマコトちゃんとくっついたら【万魔殿】はずっと安泰よね?」
本宮 チアキ「マコト先輩が卒業して【ゲヘナ学園】を去った後も『週刊 万魔殿』を発行し続けてイブキちゃんの成長を見守り続けるためにも、先生がマコト先輩とくっつくのはイブキちゃんの後見人になってもらうためにも重要なことだと思います」
棗 イロハ「逆に、なんで先生に告白しないんですか? いつものように自信満々な物言いでプロポーズしてくればいいじゃないですか? 振られたとしても、【風紀委員会】から仕返しを受けているのに凝りずに嫌がらせを繰り返しているように、何度でも挑戦すればいいじゃないですか?」
羽沼 マコト「……ちがう。まったく ちがうのだ、イロハ」
羽沼 マコト「何か盛大に勘違いしているようだが、私は先生に告白するつもりは毛頭ない。ただ単に今のはこのマコト様が先生のことが好きかどうかを確認したかっただけだ」
棗 イロハ「はあ? 何を悠長なことを言って!? 先生のことが好きな生徒なんてキヴォトス中にたくさんいるんですよ!? 先生と特に接点が多い【ミレニアム】のメイドや【連邦生徒会】の財務室長だって狙っています!」
羽沼 マコト「いや、先生が欲しているのは“愛”などと言う そんなちっぽけなものではない、断じて」
本宮 チアキ「え!?」
京極 サツキ「それはいったいどういう意味なの、マコトちゃん?」
羽沼 マコト「わからんのか? 先生は誰よりも【ゲヘナ学園】の校風である自由と混沌を体現した秩序の破壊者なのだぞ? 普通の人間が望むようなものは先生にとっては何の価値も持たん」
棗 イロハ「………………!」
羽沼 マコト「だから、このマコト様も先生の協力者として相応しくあるように、これまでの全てと決別することを心に誓ったのだ。もちろん、私にとってイブキが全てであることには変わりないが」
本宮 チアキ「それって先生が講義してくれた“
京極 サツキ「そうよ。そこまで変わろうとしているのは先生が言う“
羽沼 マコト「いや、ちがう! 私にとってイブキが全てであるように、先生にとってはウルトラマンが全てなのだ!」
棗 イロハ「それの何が問題なんですか? そのことがわかっていて、なお先生の隣に立ちたいと強く思う気持ちこそ“
羽沼 マコト「イロハ、お前は先生にキスされたり抱かれたりしたいと思うのか? それが普通なのか?」
棗 イロハ「そうですよ! マコト議長のように鈍感じゃない普通の女の子は好きな男性に身も心も委ねたいと思うものなんですよ!」
羽沼 マコト「それを聞いて安心した。やはり、今の私は先生とキヴォトスの半分を支配する者として安っぽい感情に流されてなどいないことをようやく確かめることができた」
棗 イロハ「はあ? どう考えても、先生との未来を強く思い描いているわけなんだから、マコト議長は先生に恋愛感情を抱いているのは明白じゃないですか」
羽沼 マコト「甘いな、イロハよ。先生にとってキヴォトスのことなど究極的にはどうでもいいのだからな。だから、失踪した“連邦生徒会長”に押し付けられた役割に邁進することができるのだ。そのことが私以外誰もわかっていないようだな」キキキッ!
棗 イロハ「え? な、何を言って……?」
棗 イロハ「だって、そんなはずは――――――」
羽沼 マコト「いいか、先生の本質はウルトラマンという絶対者を奉じる信仰者なのだ。それはつまり主の教えとやらを口では信仰していると言い張っている【トリニティ】のやつらと同類ということ」
羽沼 マコト「だが、先生が口だけのトリニティ生とちがうのはその信仰が一定の境地を超えて悟りにまで達して神の視座に到達していることなのだ。地上を這うしかできない虫の視点を完全に超越した考えをものにしたことで、先生は常人では決してなし得ない奇跡をキヴォトスで起こし続けている」
羽沼 マコト「その辺りの考え方は【ゲヘナ】の豊穣の大地を司る ヒノム火山で永き眠りに就いていた“地獄の釜の番人”サーベラスの教えを参考にするといい。世界を統べる真理とは有限を体現する経典の中にはなく、無限を象徴する宇宙の中にあったのだ」
棗 イロハ「………………」
羽沼 マコト「理解してしまえば、こんなにも簡単なことだったぞ、イロハ」キキキッ
羽沼 マコト「少しずつだが、3000万年以上昔の超古代文明の生き証人であるサーベラスの教えの甲斐あって、私にも先生が追い続けている理想が見えてきている」
羽沼 マコト「だからこそ、先生のことが少しずつわかってきた」
――――――先生はずっと輝く銀河の彼方にあるというウルトラの星だけを見つめているのだ。