居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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筆が乗った。これがゴールデンウイークパワーだ


力の価値

「……やっぱり早めに〈颶風騎士(ラファエル)〉もらった方がよかったかな…」

 

その日の帰り道。

ヒーローたちにこっぴどく叱られた出久はとぼとぼと肩を落とし、帰路に着く。

風を操る天使…〈颶風騎士(ラファエル)〉があれば、あの危機は切り抜けられた。

出久がそんなことを考えていると、ミオが苦笑を浮かべる。

 

「五つ目の譲渡は『システムケルブ』の発動条件に引っかかるからね。

時間が取れる時に受け取った方がいいよ」

「システムケルブ…って?」

「私の力が誰か1人の人間に集中した時に発動するシステムなの。

そのシステムが発動した途端、審判をクリアしないと…」

「しないと?」

「ここら一帯更地」

「こわいこわいこわい!!

早めに言ってよそんなの!!」

 

受験も控えてるのに、そちらにも気を配らねばならないのか。

忙しい青春だなぁ、と疲れを吐き出していると。

どどどど、と地響きのような音がこちらに近づいてくるのがわかった。

 

「少年たちがァア…、居たーーーッ!!」

「ぱひゅっ」

 

憧れ、三度到来。

妙な声が喉奥から漏れ、心臓の鼓動が加速する。

完全に硬直する出久に、オールマイトは「HAHAHA!」と笑い声を上げた。

 

「あ、あの、どうしてここに…」

「お礼を言いに来たのさ!」

 

言うと、オールマイトは深々と頭を下げた。

トップヒーローが、ただの中学生に。

そのことに目を白黒させていると、オールマイトの体から蒸気が漏れる。

 

「あの時君が見せてくれた勇気が、私を動かしてくれた。ありがとう」

「あ、いやっ…。勇気っていうか…、彼女のおかげっていうか…」

「それでもだ。私は君に心動かされたのだ」

 

ぶしゅう、と音を立てて蒸気が漏れる。

まるで膨らんでいた風船から空気が抜けるような音だ。

そんなことを思っていると、オールマイトの体が徐々に萎んでいく。

そこに立っていたのは、痩せぎすの男。

骸骨を彷彿とさせる顔を前に、出久は息を呑んだ。

 

「あっ…、ジュースの人…!?」

 

────精が出るね、若人よ!これ、おじさんからの奢りね!

 

────ほら、このトラックに乗せてけ!若い体でのオーバーワークは後に響くぞぉ!

 

脳裏に浮かぶは、つい最近、海岸の掃除を手伝ってくれた痩せぎすの男。

まさか彼がオールマイトだったとは。

愕然とする中、オールマイトは「ああ、時間切れか」と呟いた。

 

「プールでよく腹筋力み続けてる人がいるだろ?アレさ」

「そんなちょっと見栄張るみたいな感覚なんですかあのゴリゴリ筋肉!?」

「いや、あの筋肉は自前だ。若い頃から鍛え上げた私の自慢さ。

ただ、これで衰えちゃってね」

 

見えたのは、凄惨にも程がある傷跡。

痛々しい縫合の跡に、出久は「ひっ」と声を漏らした。

 

「呼吸器半壊、胃袋全摘。

5年前に敵の襲撃で負った傷が響いて、今や一日3時間ほどしか活動できない。

これがNo. 1ヒーローが飛び出せなかった、情けない真実さ」

「な、情けなくなんか…!」

「私が力の温存を優先し、すべきことをしなかったのは事実だ。

己の不手際が招いたことだというのに…!」

 

言って、悔しげに顔を歪めるオールマイト。

違う。情けなくなんかない。

それを言うなら、情けないのは自分の方だ。

そう言おうとするも、オールマイトは先駆けて口を開く。

 

「だからこそ、危険を顧みずに動いた君のことが眩しく見えた。

トップヒーローは学生時代から数々の逸話を残している…。

彼らの多くが話をこう結ぶ!

『体が勝手に動いていた』と!!

君も、そうだったんだろう!?」

「……っ」

 

どくんっ、と胸がなる。

何故かその脳裏で、ミオの笑顔がよぎった。

 

────ありがとう、私のヒーロー。

 

「君はヒーローになれる」

 

トップヒーローからの最高の賛辞が、ミオの言葉と重なった。

思わず泣き崩れそうになるも、オールマイトが続けた。

 

「君なら私の力、受け継ぐに値する」

「………はい???」

 

語られたのは、オールマイトの個性。

何人もの人間が育て上げ、次へ、次へと聖火の如く、後世に引き継がれてきたもの。

その名も「ワン・フォー・オール」。

「1人は皆のために」という格言の名を冠したソレを、出久に授けようと言うのだ。

断る理由なんてない。

出久がオールマイトの提案に頷きかけるも、即座にその動きが止まった。

 

「少年、どうした?」

「………あ、あの…。オールマイト。

受け取る前に、確認いいですか?」

「なんだい?」

「それって、人間じゃなくても受け継げますか?」

「まあ、やろうと思えばできると思うが…、それが?」

「その、実は僕、人間かどうか怪しいというか、なんというか…。

……これならわかりやすいかな」

 

顕現したのは〈灼爛殲鬼〉。

その意匠に見覚えがあることに気づいたのだろう。

目を見開くオールマイトに、出久は告げた。

 

「オールマイトにも秘密があるように、僕にもみだりに話せない秘密があります。

聞いて、いただけませんか…?」

「………オイオイ、マジかよ…」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「以上が、僕の秘密です」

 

全てぶちまけた。

ヴィジランテとしてウェストコットの遺産を処理してきたことも、ラタトスクと協力していることも、ミオのことも、持っている力のことも全て。

全てを受け止めたトップヒーローは、険しい顔のまま立ち、出久に問うた。

 

「君はその力をどう思っている?」

「…正直、めちゃくちゃ怖いです。

でも、力は所詮力でしかない。

大事なのは、人を殺すのにナイフを使うか、人を喜ばせる料理を振る舞うためにナイフを使うかだと思うんです」

「………なるほど」

 

オールマイトは頷くと、ミオへと目を向ける。

と。ミオは心底不思議そうに首を傾げた。

 

「…なんで急にナイフの話出てきたの?」

 

オールマイトがずっこけた。

隠喩はまだ理解できていないらしい。

国語のテストは満点だったよな、と思いつつ、出久は苦笑を浮かべる。

 

「ご、ごめんなさい…。

生まれのせいでちょっと天然入ってて…」

「ああいや…。こちらこそ失礼した…。

……こほんっ」

 

緩んだ空気を引き締めるように、オールマイトが咳払いした。

 

「今の話を聞いて、余計に君しかいないと思ったよ。

緑谷少女の選択は正しかった。

彼は誰よりも『力の意味』をわかっている人間だ」

「………うん」

「…では、緑谷少年。ワン・フォー・オール、受け取ってくれるかい?」

「お願いします…!!」

「なら、授与式と行こう。

そこまで鍛えた体なら耐えられるだろうさ」

 

言って、オールマイトはその髪を抜く。

一本の髪を差し出した彼は、いつも画面で見るような巨躯へと変貌し、出久に告げた。

 

「食え」

「へあっ?」

「いやぁ、別にDNAを取り込めたらなんでもいいんだけどさ!」

「…え、えぇ…?なんか、こう、霊結晶(セフィラ)みたいなの期待したんですけど…」

「………私も今度からそうしよっかな?」

「ミオさん!?!?」

 

次から髪の毛食わされるかもしれない。

オールマイトのはとにかく、ミオのは長いから苦労しそうだ。

そんな気持ち悪いことを思いながら、出久は受け取った髪の毛を飲み込んだ。




システムケルブ…ミオの生誕と共に生まれたシステムの一つ。五つ以上の力が一箇所に集まった時、その器に相応しいかを裁定する。もしも相応しくないと判断された場合、器は周辺ごと消し飛ばされる。

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