居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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生まれた時から好きとかいう告白強すぎん?


万由里ジャッジメント その1

「……一応聞くね?誰の入れ知恵?」

 

翌日。出久は眼前に聳える欲望剥き出しの施設を前に、顔じゅうに青筋を浮かべる。

中学生のデートプランだっつってんだろ。

そう叫びたい気持ちを抑える出久に、ミオは淡々と答えた。

 

「川越」

「よしっ、あとでSMASHしてくる」

「なんで?」

「中学生にはまだ早いからだよ!!」

 

たまたま拾い読んだエロ本でしか知らないが、間違いない。

完膚なきまでにラブホテルだ。

顔を真っ赤にして怒る出久を前に、ミオは不思議そうに首を傾げる。

 

「ここにちょっと入るだけでもデートになるって聞いたし、入るだけならいいんじゃ?」

「入れないよ中学生なんだから!!」

「〈贋造魔女〉で誤魔化せばいける」

「なんで入りたがるの!?」

「ここに入るのは愛の証明だって川越が…」

「あの人それで4回も奥さんに逃げられてんだから信用しちゃダメ!!」

 

早すぎた倦怠期(バッドマリッジ)の異名を持つだけのことはある。入れ知恵が碌でもなさすぎる。

流石に、無垢に付け込んで欲望を叩きつけるほどガッついてない。

据え膳食わぬ男の恥だと罵るがいい。

自分は欲望に忠実な獣ではないのだから。

立ち上がりそうになるシンボルを理性で抑えながら、出久はミオの手を引いてホテルを離れた。

 

「好きなデートプランに付き合うとは言ったけど、年齢的にアレなのはダメだからね。

キスくらいならするから…」

「前にやった時、顔真っ赤にして倒れたじゃん」

「………が、頑張るから…」

 

このデートプランは、キスで終わる。

曰く、それが審判を下すものが納得する最も効果的な手段なのだとか。

女に免疫がついてきたとはいえ、年がら年中ヒーローを追いかけているオタク中学生には厳しいものがある。

そんなことを考えていると、出久はふと、ある一点へと目を向けた。

 

「………アレ、いいの?」

 

出久の視線の先に居たのは、白い学生服に身を包んだサイドテールの少女。

どうにも感情が読み取れないソレを一瞥し、ミオは出久にその体を押し付けた。

 

「み、ミオ…?あの、なにを…?」

「見せつけてやろうかと思ってさ。

私が君に籠絡されてるってわかれば、早めにシステムが止まるかもだし」

「そんなこと絶対ないよね?」

 

ああほら。少女の顔がちょっと強張った気がする。火に油だろ、これ。

そんな心配を巡らせるも、どっちに転んでも同じことかとため息を吐く。

 

「……あの子にも心があるんだよね?」

「…やめといた方がいいよ、イズク。

アレはどう足掻いても消える存在だ。

君がどれだけ強く想ったって、あの子がこの世界に留まることはできない」

 

出久の内心を見透かしたかのように言葉を連ねるミオ。

システムケルブの全ては裁定を終えると世界に解けて消える。

もちろん、こちらを見つめる少女も例外ではない。

出久はそれに「わかってはいるけど…」と顔を歪めた。

 

「……イズク。私とのデート中に他の女のこと考えるなんて、失礼じゃない?」

「はぇっ?」

「審判に引っかかるかもだし、デートに集中しよっか」

「………ごめん」

 

今はすべきことに目を向けるべきか。

こちらを見つめる少女を尻目に、出久はミオに手を引かれるがままに歩き出した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…以上が、ミオちゃんが知る〈雷霆聖堂(ケルビエル)〉の能力です」

 

ラタトスクが保有する空中艦…フラクシナスにて。

広げられたデータを前に、萎んだオールマイトが眉間の皺をほぐし、ため息を吐く。

いつもは欲望を剥き出しにして大暴れをかます神無月も、今ばかりは神妙な面持ちで机を挟んだ。

 

「聞けば聞くほど凄まじいな…」

「破壊するには一点集中の一撃と同時に、霊力の供給を止めなければなりません。

オールマイト。あなたにはその一撃を頼みたい」

「供給を止める…というのは?」

 

オールマイトの問いに、神無月は唇に指を向けた。

 

「キスです。出久くんは精霊の力を、キスで吸収することができる。

これまでの力も、そうやって応用が利く程に強化させてきたそうです」

「……少なくとも4回はキスしてるのか、緑谷少年…。最近の中学生はませてるね…」

「出久くんがあまりにも手を出さないから、ミオちゃんがそういう名目でキスしたいと考えただけだと思いますが」

 

神無月は言うと、広げた資料をまとめ、オールマイトへと手渡す。

変態じみた奇行さえなければ素晴らしい人材なのだがなぁ、と思いつつ、オールマイトは彼に問うた。

 

「…今の私でいけそう?」

「無理ですね、確実に。ただでさえ肉体の衰えが激しい上、肝心の個性は残火のように燻ってるだけ。

これでいけると思うのは些か無謀かと」

「……補えるだけの何かがあると?」

「賭けですが」

 

言うと、神無月は別の資料を取り出し、オールマイトへと差し出す。

「極秘」とわかりやすくデカデカと書かれたソレをパラパラと捲ると、オールマイトは目を見開いた。

 

「………本気かい?」

「ええ。この作戦の全ては、出久くんの頑張りにかかっています」

「…いい大人が揃いも揃って、ただの中学生に重荷を背負わせるとは…。情けない…」

「世界を救うのに年齢は関係ありませんよ。

一人一人に役割があるだけです」

 

言って、珈琲を啜る神無月。

ソレに対し、オールマイトは疑念をぶつけた。

 

「……君、本物の神無月くん?」

「そう言う罵倒はJCになってから言ってください。そっちの方が興奮する。

……平和の象徴がJC化…?ちょっと用事ができたので失礼」

「助けて緑谷少年。変な地雷踏んじゃった」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「疲れたね、イズク。ちょっと座ろっか」

 

時はすぎ、空が赤みを帯びた頃。

ゴミがある程度取り払われ、水平線が見えるようになった海岸にて、ミオがベンチに腰掛ける。

出久は促されるがままにベンチに腰掛け、荷物をその側に置いた。

 

「はぁー…っ。こんなに長いデートは久しぶりな気がするなぁ」

「気がするんじゃなくて、久しぶりなの。

受験期だし、仕方ないけどさ」

「……ご、ごめん」

「謝らなくていいよ。イズクに必要なことだってわかってるし」

 

言って、笑みを浮かべるミオ。

少し前なら駄々を捏ねていそうなものだったが、人の中で生活することで人らしさを得ているのだろうか。

そんなことを思いつつ、出久はミオに問いかける。

 

「…ミオはさ、なんで力を僕にくれるの?」

「……なんでって、言ったでしょ。

私じゃ正しく使えないと思ったから…」

「それだけじゃないよね?」

「…………」

 

見透かすような出久の言葉に、ミオが口をつぐむ。

カマをかけただけなのか、それとも確信に至る何かがあったのか。

ミオは観念したようにため息を吐き、空を仰ぎ見た。

 

「私を殺せる誰かがいて欲しかった。

それがイズクならいいなって思っただけ」

「…僕には殺せないよ?」

「だろうね。だからイズクを選んだ」

 

ミオは言うと、イズクに向き直る。

その顔はどこか儚げで、それでいて力強いものを感じさせる表情に染まっていた。

 

「いつか私が間違えた日、君は何を捨てようとも私を正してくれる。

そう思えたから、私は君のことが…、ミドリヤ イズクのことが、大好きになったの」

「………ミオ…」

「…イズクは女の子にここまで言わせて何もしないなんて、ひどい男じゃないよね?」

「………っ」

 

どばっ、と汗が流れる。

目を瞑り、唇を差し出すミオ。

ナードにこのシチュエーションは荷が重過ぎる気がするのだが。

出久はガタガタと震え、挙動不審になりながらもミオの頬に指を添える。

 

「………ええいっ、ままよ…!」

 

Plus Ultra。更に向こうへ。

雄英の校訓を胸に、羞恥心を振り切る。

5回目のキスは、さっき食べたそばの味がした。

 

「………カツ丼の味する。

今回もレモンの味しないよ、イズク」

「あ、あはは…」

 

キスを終えて文句を垂れるミオ。

それはフィクションの中だけだ、などと野暮なことは言えない。

出久が苦笑を浮かべていると、ふと、視界の隅に違和感を覚える。

 

「あの子…」

 

先ほどまでは物陰に隠れていたはずの少女と目が合う。

彼女は満足そうに微笑むと、彼らへと歩み寄った。

 

「おめでとう。アンタは力を持つに相応しいと判断されたわ」

 

作戦は次の段階へ。

そのゴングが鳴るように、透明な球体が蠢いた。




万由里…システムの意識管理を担う実体を持たない精霊。ミオの力から生じた存在のため、こちらも出久に好意を抱いている。

雷霆聖堂…器を確実に破壊するべく、バカみたいな火力を一帯にばら撒くし、やたらと頑丈。その上に再生能力まであるとかいう鬼畜っぷり。その強さは全盛期マイトでも苦戦するレベル。

神無月…真面目モードならイケメン。平和の象徴相手にも一切ブレることなく弩級のセクハラをかました。過去にエンデヴァーにフルパワーで殴られたことがある。
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