居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア 作:鳩胸な鴨
「オールマイト!!」
飛来したオールマイトに、出久が安堵と喜びを込めた声を漏らす。
オールマイトはいつものように笑みをこちらに向け、サムズアップした。
「無事なようだね、緑谷しょうね…。
なんか、見ないうちにパンクなファッションになってない?」
「一回、腹に穴開きまして…」
「なんて!?!?」
傷は癒せても、服は癒せなかったのだろう。
腹に大穴が空いた服を見て目を見開くオールマイトに、ミオが声を上げる。
「……あー…。オールマイト。
こっち来ずにさっきの一撃で決めてればよかったのに…」
「へっ?」
オールマイトが視線を戻すより先。
〈雷霆聖堂〉が怒号に似た悲鳴を放った。
ごききっ、と骨が折れていくような音と共に、球体が車輪と翼、尾を取り込んでいく。
「【
万由里の声に肯定するように、球体を膜が包み込む。
完成するは、蕾に似た剣。
翼を広げ、角を伸ばしたソレはその先端に光を集め、出久たちに鋒を向けた。
「〈
オールマイトが拳を構えるより先に、出久が右腕を前に突き出す。
と。そこから黒と赤の砲身が展開し、炎と赤の光が迸った。
〈雷霆聖堂〉はソレを待たずして、光を放つ。
出久は溜まったエネルギーに右腕が焼き尽くされる感覚を耐え、引き金を引いた。
「
どっ、と、光芒が周囲の木々を一瞬にして焼き尽くし、【廻焔の剣】とせめぎ合う。
反動無視の100%を乗せた攻撃故に、出久の体が耐えきれなかったのだろう。
砲身に近い箇所から肉が裂け、血が吹き出し、炎で焦がされる。
「ぁああ゛づっ…、ぐ、ない゛…っ!!」
想像を絶する激痛に叫びそうになるも堪え、右腕に力を注ぎ込む。
拮抗する二つの光。
激突を制したのは、〈雷霆聖堂〉が放った一撃だった。
赤の光が霧散し、光が迫る。
ソレを前にオールマイトが立ち、拳を構えた。
「緑谷少年、助かった!!」
オールマイトが叩きつけた拳が、光をいとも容易く吹き飛ばす。
出久の攻撃で威力が削がれていたのだろう。
光を払った風圧が直撃し、〈雷霆聖堂〉の一部が凹んだ。
「本気で殴ったのにあの程度か…!
緑谷少年!作戦第二段階、行けるな!?」
「…はっ、はっ…、はい、ぃいっ…!!」
「かっこいい無茶するなぁ、少年!嫌いじゃないよ!!」
オールマイトは言うと、出久の眼前にコスチュームのガントレットを差し出す。
〈雷霆聖堂〉はしばらく【廻焔の剣】を放てない。
作戦第二段階を進めるなら、今しかない。
出久はオールマイトの腕に治癒しきっていない焼け爛れた腕を乗せ、力を込めた。
(ミオの力じゃ、今のオールマイトが耐えられない…!僕の力の全てを、このガントレットに注ぎ込んで…っ!!)
「2人とも、まだ来る!!」
ミオの声に、2人が視線を空へ向ける。
同時に、〈雷霆聖堂〉の蕾部分に目玉が並び、そこから夥しい雷が降り注いだ。
「やばっ…」
出久が反応するより先。
迫る弾幕に向けてミオが手をかざし、見えない壁を展開した。
「ミオ!?」
「防ぐ程度だったら加減できるよ。
あとは頑張れ、ヒーロー」
「……、うんっ」
出久は頷くと、治癒に回していた力すらも顕現装置へと注ぎ込む。
と。ガントレットから幾つもの色が重なった光が放たれ、辺りを照らし出す。
オールマイトは腕から伝わる熱の凄まじさに冷や汗を流し、空を見上げた。
「あとは、全力で殴り飛ばすだけだな…!」
「………それだけじゃダメ。
霊力の供給を断たないと、〈雷霆聖堂〉は再生してしまう」
「あ、ああ。そうだったね…」
万由里の言葉に、オールマイトが言い淀む。
霊力の供給を断つ。
それは即ち、万由里の消滅を意味する。
力で構築された存在である彼女から力を吸収すれば、彼女が消えるのは道理。
本当にこの方法しかないのか、と出久が悔しげに顔を顰めていると。
万由里が微笑みながら、膝をついた出久へと屈んだ。
「ありがと。怒ってくれて、嬉しかった」
「ま、待って…!再生するまで、時間がある…!君が消えなくて済む方法がきっと…」
出久が言うより先、万由里の唇が重なる。
ミオと同じ、そばの味。
万由里の顔で埋まった視界の端で、オールマイトが飛び上がるのが見えた。
────UNITED STATES OF SMASH!!
七色の光が〈雷霆聖堂〉を穿つ。
爆炎と共に散っていくソレを前に、光に包まれた万由里は笑みを浮かべた。
「頑張ってね。応援してる」
万由里の体が、世界に解けていく。
ダメだ。世界がどう出来ていても、それだけはダメだ。
少女1人を死ぬために生む世界が正しくあっていいわけがない。
出久は痛む体を無理矢理に起こし、胸に手を当てた。
「ミオ、僕に力を!!」
「………本気でやるの?」
「今はこれしか思いつかない!!」
ミオが手をかざすと共に、ぞぶっ、と、出久が胸に指を突き立てる。
〈灼爛殲鬼〉の再生は蘇生とほぼ同じ。
心臓一つなくなったところで、再生して終わりだ。
無論、それだけでは万由里は救えない。
〈贋造魔女〉、【
他の天使を模倣し、その権能を振るう力。
ソレを引っこ抜いた心臓に与えることで、人体を構築。体組織を万由里に近いものへと作り変える。
あとは、消えてゆく万由里をそこに織り込むだけ。
出久は炎を纏う心臓を、解けていく万由里に突き刺した。
「えっ……?」
「間に合えぇえええっ!!」
万由里の体が、広がる炎に解けていく。
間に合え。間に合え。
そんな祈りに応えるかのように炎が人の形を取り、剥がれていく。
「……めちゃくちゃが過ぎるね、イズクは」
炎から解き放たれた少女が、その場に倒れる。
出久が慌ててその体を抱き留めると、生まれ変わった少女はゆっくりと目を開いた。
「………あれ、私、なんで…?」
「……は、ははっ…。よかったぁ…」
情けない笑みが漏れる。
ヒーローとして救えた命の重さ。
腕から伝わる感触を確かめるように掴むと、ふと、ある違和感に気づく。
「…………あれっ?」
服がない。
ナード故か、素早い回転率を誇る脳髄がソレを認識した途端、出久はみるみるうちに顔を赤く染める。
一方で万由里もそれに気づいたようで、一糸纏わぬ自分の姿を見やった。
「あ、あのごめっそんなつもり全く…」
「……………い」
「い?」
「いやぁぁああああああ!!!!」
「へばぶぅっ!?!?」
放たれたのは、見事なアッパーカットだった。
万由里…出久の機転で生物として再生。戸籍はラタトスクでなんとか誤魔化した。検査後は出久と同じ中学に入学。その気になれば〈雷霆聖堂〉の一部を顕現できる。
オールマイト…あまりのパワーに顕現装置がついていけず、破損。アンタやっぱスペックおかしいよ(白目)