居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア 作:鳩胸な鴨
「緑谷!彼女さんについて詳しく!!」
助けて母さん。彼女がいると噂が立って1日なのにクラスメイトがグイグイ来る。
男子からの白い目が飛ぶ中、出久は「落ち着いて」と鼻息荒く迫るクラスメイトの1人…芦戸三奈を宥める。
まだ始まって間もないクラスだが、なんとなくわかる。
彼女は三度の飯より恋バナが好きなタイプだ。
面倒なことになったなぁ、と思いつつ、出久は言葉を選ぶ。
「そ、その、彼女っていうか家族っていうかなんというか…」
「そんなのはいいから!!好きなの!?」
「好きっていうか、大切っていうか…」
「かーっ!!そういうの!!そういうの求めてたんだよ私は!!
んで、どっち!?仲良い子、普通科に2人いるんだよね!?」
どうしよう。どう言っても後が怖い。
しかし、ここまで迫られると濁すに濁せない。
出久は視線をクラスメイトの1人…飯田天哉へと向けるも、彼は「すまない」と小さく呟き、気まずそうに目を逸らす。
どうやら彼も、この勢いの女子高生を止める術は知らないらしい。
爛々と輝く瞳から逃れるように爆豪へと視線を向けるも、面倒臭いものを見る目で一瞥され、顔を逸らされた。
恋に恋する女子高生、恐るべし。
冷や汗を流しつつ濁していると、がらっ、と扉が開く。
「イズク。お昼ご飯食べよ」
「出久ー。早く行かないと食堂埋まっちゃうわよー」
「噂をすれば!!」
今ばかりは来ないで欲しかった。
出久が遠い目をするのをよそに、芦戸の興味はミオたちへと移る。
同時に、クラスメイトの男子数名…特に峰田実…が血涙を流し、ミオと出久を見比べた。
「あ、あんな可愛い子たちと一緒にランチタイムだとォオ…!?」
「緑谷ァア…!!てめェ、地味なツラして勝ち組しやがってェエ…っ!!」
彼女たちの機嫌を損ねるだけで世界が滅ぶと知ってから言ってもらえないだろうか。
そんなことを思っていると、出久に迫っていた芦戸が2人へと駆け寄った。
「ねぇね、お二人さん!
どっちが緑谷の彼女!?」
「はぇ?」
「ん?」
「初対面にぶっこむなぁ、芦戸…」
「中学ン時からあんなだぞ、アイツ…」
いきなりのことで反応が追いついていないのだろう。
2人は惚けた声を放つも、即座に指を同じ方向に向け、答えた。
「私」
「ミオ」
「おーっ!!お名前は!?」
「緑谷 ミオ。養子だから、苗字一緒なの」
「ギャルゲーっぽい!!
で、で、出会いはどんな感じ!?
どんな告白されたの!?」
「した方」
「おぉーーーっ!!」
意外にも喧嘩にはならなかった。
1人盛り上がる芦戸に淡々と惚気を吐き出すミオ。
それに伴い、出久へ向かう視線の圧がより一層強まる中、万由里が口を開いた。
「私は横恋慕中。現在3連敗」
「うぉおおっ!?な、なんか意外にフクザツな恋愛関係が見えてきたぁ!?」
「緑谷ァア!!!!」
「一途なの偉いなー、お前」
「ふ、不誠実なことはできないし…」
醤油差しのような口の少年…瀬呂範太が感心の声を漏らすのに、出久は苦笑を浮かべながら答える。
自分からキスをしたのはミオだけだから、セーフだと思いたい。
胸ぐらを掴み暴れる峰田を宥めていると、クラスメイトの1人…葉隠透が出久に詰め寄った。
「……は、葉隠さん?」
「……あー、だからかぁ。地味目なのになんか垢抜けてるの。
彼女さんこんな可愛いから、背伸びしちゃうのもわかるなぁー」
残念。見た目に関しては、出久自身はほぼ何も工夫していない。
ラタトスクの尽力の賜物である。
そもそも絵に描いたようなクソナードを自覚している出久に、見た目に気を使うなどという発想が出るわけがない。
やたらと男が使っても仕上がりがいい化粧品に詳しかった変態に感謝を浮かべながら、「一応はね」と濁す。
と。今度はまた別のクラスメイト…上鳴電気が出久に迫った。
「な、な、緑谷!八木さん、お前のどんなところに惚れたって言ってた!?」
「ど、どんなところって…」
万由里の場合、「生まれた時から愛してる」が告白でした。
そう言えるはずもなく、出久は「本人にも失礼だし…」と言い淀む。
盛り上がる上鳴には悪いが、他人に目移りするようなことはないだろう。
きゃいきゃいと皆が騒ぎ立てる中、飯田が声を張り上げる。
「そういう事情を根掘り葉掘り聞くのは緑谷くんにも彼女たちにも失礼だろう、皆!!」
「いいよ、別に。私たちも楽しいから」
「むっ…、そうなのか、緑谷くん?」
「ぅえっと…、ま、まぁ、うん」
悪い気はしない。
が。どこでボロを出すかわからない以上、不安というのが正直なところである。
無論、彼女らも誤魔化す気はあるだろうが、どこからバレるかはわからない。
あまり喋らせない方がいいか、などと考えていると。
「えーっ!?キスまで行ってるんだぁ!!」
「うん」
爆弾が投下された。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「わーたーしーがー…、普通にドアから来っ…て、あれ?なんか空気が…」
午後の授業にて。
微妙な空気が漂う教室に入ってきたオールマイトが、思わず決め台詞を切り上げ、困惑をあらわにする。
あの後、出久は生真面目という言葉がそのまま人の形を成したような飯田と、クラスメイトの女子…八百万 百にこっぴどく叱られた。
「間違いを起こしたらどうするつもりだ」だの、「節度を持った付き合いをしろ」だのと散々絞られた結果、気力を一気に削られた出久はグロッキーに。
他のクラスメイトも囃し立てたことを延々と叱られ、数名を除いて同じように机に突っ伏していた。
オールマイトは教室の惨状に困惑するも、即座に切り替え、声を張り上げる。
「オイオイなんだなんだ!?
これから授業だってのにもうグロッキーか、有精卵どもー!!」
オールマイトの声に気力が戻ったのだろう。
皆が一気に背筋を伸ばすのを前に、オールマイトは満足そうに頷く。
「よし、顔が上がったな!
では早速、授業について説明するぞ!!」
午後より執り行われるのはヒーロー基礎学。
ヒーロー科において単位数が最も多い、ヒーローとなる素地を作るべく、さまざまな訓練を行う科目である。
オールマイトはそこまで言うと、「早速だが、今日はこれ!」と『BATTLE』と書かれたプレートを突き出した。
「戦闘訓練!!そして、そいつに伴って…こちら!!入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿って作った
教室の壁から、合計20のケースが並んだ棚が迫り出す。
それが各々に行き渡ると、「着替えたら各自グラウンドβに集合!」と指示を飛ばすオールマイト。
出久は夢への一歩を踏み出した実感を手に、訝しげに眉を顰めた。
「……
これ作ったのラタトスクだしなぁ。
そんなことを思いつつ、出久は更衣室へと向かった。
緑谷出久コスチューム…緑谷引子作のものをラタトスクが改修したコスチューム。強度が上がってるのと霊力を効率よく通せるくらいで、特に優れた機能はない。顕現装置搭載はナガンが死に物狂いで止めた。
爆豪 勝己…描写なしだが不機嫌マックス。無個性と偽り騙してたとかよりも、以前に比べて余裕そうな態度が心底気に食わない。その道端の石っころ、世界救ってんスよ。
道端の石っころ…修羅場を越えすぎて達観してきてる。何回も土手っ腹に穴が開くと人は変わるらしい。