居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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ティア1に輝く幼馴染


面倒くさい爆豪ファン

戦闘訓練はグラウンドβにある模擬市街地に立つビルにて行われる。

真に賢しい敵は屋内に潜む、というオールマイトの経験から組まれた今回のカリキュラムでは、敵の立場とヒーローの立場を経験してもらうべく、2人1組のチームに分かれる。

設定としては、敵は核爆弾を有しており、ヒーローはこれを処理すべくビルに潜入したというアメリカンなものになっている。

組み合わせはランダム。

ヒーローの勝利条件は核に触れるか、敵役の捕縛。

敵の勝利条件は制限時間までの防衛成功か、ヒーロー役の捕縛。

授業の流れを掴むべく選ばれた最初の2組は、次の通りとなった。

 

ヒーローチーム、麗日お茶子と緑谷出久。

敵チーム、飯田天哉と爆豪勝己。

 

因縁を感じざるを得ない人選である。

飯田と爆豪が待ち構えるビルを前に、出久は深くため息を吐く。

疲れや呆れからではない。

これからの闘争に向け、意識を集中させるための一息。

それを終えると、出久はパツパツのコスチュームを纏う麗日へと口を開く。

 

「まずはできることの確認からしよっか。

時間ないから手短に言うけど、僕は肉体を自由に作り変えることが出来て、仕組みがわかれば他の個性の再現もできる…って感じ」

「はぇー…。すごい個性だねぇ」

「調整間違えたら死ぬ」

「死ぬん!?」

「その、調整ミスって真っ黒焦げになったことあるし、なんなら反動に耐えられなくて腕の骨見えたことあるから…」

「骨見えた!?!?」

 

嘘を吐くのは心苦しいが、こう誤魔化す他あるまい。

骨が見えるくらいまで腕を壊したのは事実だし、あながち嘘というわけでもない。

そんな言い訳を浮かべつつ、出久らはビルへと足を進める。

 

「作戦だけど、麗日さんは核のほうに行って欲しいんだ。

予想だと、かっちゃんに振り回されて飯田くんはそこから動けないだろうし…。

かっちゃんをなんとかしてから、そっち行くよ」

「なんでわかるん?」

「めちゃくちゃ仲悪いんだ、僕ら。

かっちゃんは僕のこと敵視してるし、飯田くんが立てた作戦とか諸々全部無視して真っ先に殴りにくると思う」

「……あるね、そんなイメージ」

 

付き合いが浅い麗日にすらそう言わせるくらいには不仲が露呈している。

仲直りできるかなぁ、などと思いつつ、出久はビルへと足を踏み入れる。

今回は徹底的に爆豪を対策する。

氷結傀儡(ザドキエル)〉でビルを丸ごと凍らせるという手も考えたが、一歩間違えれば2人が凍死する。

範囲を絞って使う他ない。

出久は〈氷結傀儡(ザドキエル)〉をベースに両腕を作り変え、麗日の前に立った。

 

「わ、腕変わった。…個性把握テストの時とは違うね。

こっちはなにフォンって言うの?」

「フォンじゃないね。〈氷結傀儡(ザドキエル)〉。氷の個性を再現したヤツだよ」

「おぉー、かっこいいー…。

常闇くんが好きそうな響きだね!」

 

好きそうではない。好きなのである。

以前話した時、「同志よ」と歓迎された。

なんでこんなネーミングになったんだか、と気恥ずかしさに顔を顰めていると。

物陰から飛び出た爆豪が、出久へと襲い掛かった。

 

「死ねェ!!!」

「そう来ると思った!!」

 

麗日を通路の奥へと突き飛ばし、迫る爆破をいなす。

右の大振り。

これまで散々食らった一撃だ。一緒に育ってきて、学んでないわけがない。

分断された状況に心配を見せる麗日に、出久は声を張り上げた。

 

「こっちは僕がなんとかするから、麗日さんは核を!」

「あ、う、うんっ!」

「余裕かましてんじゃねェぞデク!!」

 

やはりというべきか、通路の奥へと向かう麗日よりも自分を倒すことに執心している。

自分が1番。出久は自分よりも下。

その考えが性根の奥の奥にまで染み込んでいるのだろう。

自尊心とプライドが突き動かすがままに、爆豪は顔面に向けて爆破を放とうとする。

出久はそれに向け、指を向けた。

 

「〈氷結傀儡(ザドキエル)〉!!」

「あぁ!?」

 

ぐっ、と何かに阻まれたかのように爆豪の腕が止まる。

〈氷結傀儡〉。その実態は単なる冷気ではなく、『冷気を放つ糸』である。

武器として編むも、防具として編むも自由。

無論、糸のまま使用することも可能で、張り巡らせ、相手の動きを制限するという芸当もできる。

爆豪はそれに気づくと、爆破で糸を焼き千切り、顔を歪める。

 

「てめェ…!そうやって俺ンこと見下してたんか、あァ!?」

「尊敬はしても、見下した覚えはないよ」

「そのスカした顔やめろやデク!!」

 

【廻焔の剣】に比べれば怖くない。

周囲を萎縮させる怒号も、ウェストコットの狂気に比べれば可愛くさえ思える。

いつも受けてきた理不尽への恐怖は、さらなる理不尽への恐怖で消えた。

次々と爆破を繰り出す爆豪の攻撃をいなし続け、出久は言葉を続ける。

 

「僕はずっと見てたんだ。

かっちゃんがどう動くか、かっちゃんがどうやって個性を使うか」

「気色悪ィストーキング自慢なんかしてんじゃねェ!!」

 

爆豪の顔が怒気に歪む。

すごいやつだと思ったから。すごいヒーローになると思ったから。

だから、ずっと憧れを抱いて見てきたのだ。

冷静に、しかして真っ直ぐにぶつかる出久に、爆豪から余裕が消えていく。

 

(かっちゃん、すごい…!これだけキレてるのに、動きの隙は無くなってる…!)

(ッソ、なんで当たらねェ…!?

知らねェ動きも交ぜてんのに…!!)

 

爆豪は知らない。

出久がこれまで、死してなお世界を蝕む悪と戦ってきたことを。

体を焦がし、臓腑を撒き散らしながら拳を握ってきたことを。

圧倒的なバトルセンスで攻める爆豪に、出久が経験と生来の分析力でそれに対応する。

とても一年生の戦闘とは思えない。

互いに決め手もなく進む現状に痺れを切らしたのだろう。

爆豪は距離を取り、籠手を前に突き出した。

 

『爆豪少年、ストップだ!!』

「どうせ当たんねェよ!!」

 

どっ、と膨大な爆炎が襲い来る。

出久が咄嗟にそれを避けると、動きを読んだ爆豪が前に躍り出る。

回避も防御も間に合わない。

確信と共に、顔面に爆破が突き刺さった。

 

「ぶっ!?」

「死ね!!!」

 

怯んだ出久にたたみかける爆豪。

あちこちに爆破を叩きつけられ、激痛が身体中を駆け巡る感触に顔を顰める出久。

劣勢になってなお、真っ直ぐに怯えなく爆豪を見つめる。

その視線が気に障ったのか、爆豪はさらに激しく顔を歪め、怒号と掌を叩きつけた。

 

「反撃してみろや!!テメェがどんな個性使おうが、俺の方が上だ!!」

「じゃあ…、超えてく…ッ!!」

「〜〜〜〜ッ…!!

ナマ言ってんじゃねぇぞ木偶の坊が!!」

 

攻撃に殴打が加わる。

口の中が切れ、肺の空気が抜け、胃の中身が溢れそうになる。

渡されたインカムから「核見つけた」、「五階」などと聞こえるが、気にしてる余裕がない。

あまりに一方的な暴力の嵐。

オールマイトすらも中止を迷う中、出久だけは瞳に光を灯した。

 

(よし、できた…っ!)

「死ィねェェエエエッ!!」

 

トドメと言わんばかりに凄まじい勢いで距離を詰める爆豪。

瞬間。出久の足元から夥しい糸が放たれ、その体を縛り付けた。

 

「ンなっ…!?」

「足も作り変えれるんだよ…!ちょっと時間かかったけど…!」

 

ぱきっ、ぱきっ、と爆豪の皮膚に霜が走る。

このままではまずいと判断したのだろう。

爆豪の掌に光が宿るのを前に、出久は拳を握った。

 

「これで勝ちだ!!」

「がっ!?」

 

ごっ、と顔面を思いっきり殴る。

気を失わないまでも、体力は削げたのだろう。

項垂れ、個性の発動を解いた爆豪に出久は確保テープを巻き付ける。

 

「……さて、と。あとは飯田くんだけど…」

『確保ーーーーっ!!』

『しまっ、足がもつれて…っ!?』

 

麗日の雄叫びと飯田の愕然とした声が響く。

どうやら間に合ったらしい。

出久は指先から伸びる糸の先…核のある部屋へと向かう糸を見やり、ほっと息を吐いた。

 

『ヒーローチーム、WIN!!』

「バレないようにやるって疲れるね…」

 

意地と意地のぶつかり合いを制したのは、緑谷出久だった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「お疲れ様、イズク。

…どうしたの?なんかあった?」

 

その日の放課後。

あまり誰かと話す気になれず、校舎を出ようとした矢先、待っていたであろうミオたちが歩み寄る。

出久は顔に出ていたかと悟ると、苦笑を浮かべた。

 

「……授業でかっちゃんと戦ったんだ」

「結果は?」

「勝ったけど…、ちょっと、その…、目的そっちのけで夢中になりすぎて…」

 

────緑谷さんと爆豪さんの戦いは私情丸出しの私闘。必要のない戦いでしたわ。

 

脳裏に八百万の酷評がよぎる。

彼女の言う通り、初手で拘束できたのだから、そのまま確保テープを巻いてしまえばよかったのだ。

それをしなかったのは一重に、出久が爆豪にぶつかりたいと思ったから。

授業よりも私情を優先してしまったなぁ、と猛省していると、ミオが口を開いた。

 

「それだけ特別な戦いだったんだよね?」

「…そう、かな。うん。そうだと思う。

力を手に入れてから、『本気でぶつかりたい』って思うなんて情けない話だけどさ」

「イズクは私の力を使う前からずっと、あの爆発頭とぶつかってたよ。

今回はちょっと、それが力の方に傾いちゃっただけ」

「………ありがと。そう言ってもらえると助かる」

 

これで何かが変わるといいけど。

そんなことを思っていると、ふと、爆豪の背中が見える。

心なしか、いつもより背中が小さい。

出久はいても立ってもいられず、爆豪に駆け寄り、声を張り上げた。

 

「かっちゃん!!」

「………女侍らせて主人公気取りか、クソが」

「ゔっ」

 

的確なボディブローが入った。

落ち込んではいるが、悪口のキレは変わってない。むしろ増してる。

2人の機嫌が見るからに悪くなるのをよそに、爆豪は言葉を続けた。

 

「見下してんじゃねぇぞ、クソナード…!

ここに来てまで女とイチャつきやがって…!!

遊びてェんならよそ行けや!!」

「やっぱこいつ殺す」

「賛成」

「2人とも、今はちょっと下がってて」

 

この3人、相性が悪すぎる。

出久は呆れ混じりの声で2人を制し、爆豪へと歩み寄った。

 

「……ごめん。でも、騙したつもりはなくて…、無個性だったのは本当だし…」

「一丁前に哀れんでんのか、あァ!?」

「違うよ。僕は、その…。たまたま、他の人たちより恵まれただけなんだ。

力も個性も全部貰い物だし、今回も使いこなせたってよりかは、それに振り回されてたら上手くいってたって感じで…。

かっちゃんみたく、上手に使えてないんだ」

「…………は?」

 

何言ってんだ、コイツ。

そんな困惑が透けて見える。

天使も個性も貰い物だ。ほんの少し、巡り合わせが良かっただけ。

自分は他人とはスタートが違う。

思いの丈を伝えるべく、出久は言葉を続ける。

 

「正直、僕はこの力が怖い。怖いけど、この力でヒーローにならなきゃいけない。

…だから、僕はこの力で君を超えてく」

「……慰めか?喧嘩売ってんのか?」

「どっちも…だと、思う。

負けたくないけど…、僕なんかに負けてほしくない…っていうのが、本当」

 

ああ。面倒臭いオタク部分が出てしまった。

こんなだからクソナードとか言われるんだ、と自己嫌悪に陥っていると。

爆豪がその胸ぐらを掴んだ。

 

「……ごちゃごちゃ言ってんじゃねェ…!俺がてめェに負けたってだけの話、延々と蒸し返しやがって…っ!!」

「かっちゃん…」

「言われなくてもテメェに勝ってやらァ…!

こっからだ…!俺はここから1番になってやる!!」

 

爆豪は言うと踵を返し、帰路に就く。

と。その前に「爆豪少年!」とオールマイトが立ちはだかり、彼の両肩を掴んだ。

「敗北は糧になる」とハウトゥ本のような慰めを吐くオールマイトに「退いてくれ、歩けねぇ」とぶっきらぼうに吐き捨てる爆豪。

それを前に、ミオと万由里は淡々と呟いた。

 

「……メンタルケアも下手、と」

「教えるのも下手、メンタルケアも下手、授業も粗が多い…。

先生として必要な部分が何一つできてないの、逆にすごいわね」

「オールマイトはまだ先生一年目だから…」

「ぐふっ」

 

オールマイトは吐血した。




緑谷出久…バレないように〈氷結傀儡〉の糸をビル中に張り巡らせていた。かっちゃん以外の約1名からめちゃくちゃ敵視されていることに気づいてない。この後、相澤先生に「ガキみたいなことすんな」と苦言を呈された。

精霊2人…やっぱこの爆発頭嫌い。勝つとか云々は一回心臓引っこ抜いてから言ってもろて。
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