居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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敵襲来

戦闘訓練から数日。

多少のトラブルはあったものの、学級委員長も決まり、授業が本格化してきた今日この頃。

出久は校内を移動するバスの中で、新しく得た力を試すように指先を作り変える。

 

「お、またなんか改造してる!

デクくん、それなにフォン?」

「フォンじゃないね。〈颶風騎士(ラファエル)〉。新しく覚えたんだ」

 

風を操る天使、〈颶風騎士〉。

本来は弓矢の形を取る其れの意匠が指先に走るのを前に、出久は軽く頷く。

まだ〈鏖殺公(サンダルフォン)〉と〈灼爛殲鬼(カマエル)〉しか十全に使えていないのに手札を増やすのはどうかと思ったが、選択肢が増えるに越したことはない。

…ミオはしきりに〈刻々帝(ザフキエル)〉を勧めてきたが。

〈刻々帝〉は人前で使うには異質過ぎるしなぁ、と思っていると、飯田が疑問を口にする。

 

「緑谷くん、なぜ再現した個性に天使の名前を付けるんだ?」

「えぁっ、そ、そのぉ…。

み、ミオが考えてくれるんだ…」

「おー!?名前は彼女さんからのプレゼントかー!?」

 

芦戸が「ひゅーひゅー」と囃し立て、峰田が血涙を流す。

名前どころか力もプレゼントなんです、などと言えるわけもなく、出久が苦笑を浮かべていると。

ことを静観していたクラスメイト…常闇踏影が口を開いた。

 

「サンダルフォン、ザドキエル、ラファエル…。この並びから察するに、セフィロトか」

「名前だけで知識出てくるのすげェな常闇。

んで、セフィロトって何?」

「エデンの中央に植えられた樹だ。その実を食せば永遠の命が約束されるという。

樹は10のセフィラから成り、先ほどあげた名前は、その守護を任された天使の一部だ」

「よくわかんねーけど、能力全部揃ったら緑谷不死身になんのか?」

「ならないならない」

 

なります。多分。というか、今もほぼそれに近いです。

常闇の高校一年生らしい知識の広さに舌を巻いていると、爆豪の隣に座っていた女子…耳朗響香が声を上げる。

 

「緑谷の個性ってさ、ウチらの個性の再現とかもできるの?」

「無理かなぁ…。多分、それっぽいことはできるけど、普通に生活してる上でも使える皆みたいにはどうしても…。

僕の個性って一歩間違えたら死ぬから…」

「おまっ…死ぬ!?それならポンポン使うなよ怖ェな!?」

「だ、大丈夫!抑えれば大丈夫だから!」

 

死ぬレベルの大怪我を負うのは、ワン・フォー・オールが絡んだ場合のみである。

何から何まで本当のことを言えないなぁ、と思いつつ、出久は視線を爆豪へと向ける。

爆豪は自分と目が合うことを嫌ったか、ぷいっ、とそっぽを向いた。

 

「…お前ら、談笑はそこまでだ。

降りる準備しろ」

 

結局。爆豪と言葉を交わすことなく、訓練場へと着いてしまった。

また話せるといいな、と思いつつ、出久は荷物を強く握った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「コレガ1番使ウ公式ダ。コレサエ覚エテオケバコノ単元デツマズクコトハ早々ナイ。

マズハ幾ツカ例題ヲ出ソウカ。

5分シタラ当テルカラ、途中式含メテシッカリ取リ組ムヨウニ」

 

C組の教室にて。

午後の授業を受けていたミオがふと、その視線を窓へと向ける。

A組が実習を行なっている施設…ウソの災害や事故ルームことUSJだったか。

確実に何処かから訴えられそうなネーミングの施設だったことは覚えている。

ミオはノートに式をぱぱぱ、と書き殴ると、万由里へと視線を向けた。

 

(イズクの方に変なの来てる。どうしよ?)

(…『私の個性で電磁波見える』ってテキトーに誤魔化してみて、なんか向こうから変な気配するって言う?)

(じゃあ、それで)

 

霊力に言霊を乗せて会話を交わすと、万由里が近くに来た教師…数学担当のエクトプラズムに「すみません」と声をかける。

最初こそは何かわからない箇所があるのかと教師らしく優しく問いかけるエクトプラズムだったが、万由里から飛び出した言葉にその顔が強張っていく。

 

「……八木サン。ソレハ確カナノカ?」

「見覚えのない電磁波があるのは本当ですけど…、あの、来賓とかですか?」

「イヤ、違ウ…。考エラレルトスレバ…。

スマナイ、皆!今日ハ自習シテテクレ!」

 

仮面の奥からでもわかるほどに血相を変え、教室を出ていくエクトプラズム。

生徒らはソレを前に困惑を露わにし、万由里に問いかける。

 

「八木さん。エクトプラズムと何話してたの?」

「アタシ、個性の影響か電磁波…っぽいの?が、見えるんだよね。

それで、見覚えのないのが向こうのほうにあるって言ったら血相変えて…」

「…もしかして、侵入者だったり…?」

「や、流石にないだろ。…ないよな?」

「こないだマスコミに入られたばっかだし、流石にねぇ…」

 

伝播するどよめきに、ドタバタと夥しい足音が響く廊下。

生徒たちの脳裏に悪い想像が膨らむ中、ミオは小さく呟いた。

 

「面倒なのいるよ。がんばれ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「散らして、嬲り殺す」

 

ミオたちが言う「変なの」は、有り体に言ってしまえば「敵」であった。

彼らはヴィラン連合という集まりらしく、オールマイトの始末を目的として襲撃を図ったのだとか。

計画的な犯行から、オールマイトに確実に勝てる算段があるのだろう。

が。出久らはその正体を暴く前に黒いモヤの敵に飲まれ、USJ内のあちこちへと散らされてしまった。

恐らくはワープの個性であったのだろう。

浮遊感が全身を包むと共に目を開くと、そこには。

 

「お、来た来た!」

 

水難被害を想定したエリアに、これでもかと浮かぶ敵たちが見えた。

見た目から察するに、水中で真価を発揮するタイプの個性ばかりが集まっている。

雄英全体が襲われているのか、それともUSJだけに敵が集まっているのか。

ミオたちが暴れていない以上は後者だろうな、と確信しながら、出久は〈颶風騎士〉をベースに脚部を作り変える。

 

「よしっ、足の変形もスムーズになって…」

「うぉわぁぁあああっ!?」

「ぶっ!?」

 

ごっちん、と落ちてきた峰田の頭が、浮遊した出久の脳天に突き刺さる。

あまりに急なことに意識が逸れ、風が霧散すると共に、出久たちの体は真っ逆さまに敵が顎門を開く水へと落ちた。

いくら精霊の力を持とうと、水中で生きられるような体はしていない。

呼吸器が水で埋まった苦しさに2人が顔を顰めていると、その体を細長い何かが攫った。

 

(蛙吹さん…?)

 

蛙吹梅雨。クラスメイトの1人であり、蛙の個性を持つ少女が、その舌で出久を絡め、水面へと向かう。

水中でよく見えないが、峰田は彼女に抱えられているらしい。

彼女は水面に出ると、器用な舌捌きで水難ゾーンの中心に浮かぶ船に彼を乗せた。

 

「げほっ、げほっ…。あ、ありがと…、蛙吹さん…」

「梅雨ちゃんと呼んで」

「か、蛙なのに、なかなかいい弾力が…」

「………」

「づぁっ!?!?」

 

男子高校生の性欲をそのまま人の形に落とし込めたような峰田の言葉に、蛙吹は静かな怒りを叩きつける。

船に強く叩き落とされた峰田に船へと登ってきた蛙吹からの冷ややかな視線が飛ぶ中、出久は船の周囲に集う敵に目を向ける。

 

「………」

「緑谷ちゃん、何か気になることでも?」

「ああいや…、オールマイトを殺すって言ってたから、『ウェストコットの遺産』でも装備してるのかと思って」

「…そんな物騒なものを持ち出されて、私たち耐え切れるのかしら?」

「大丈夫。見た感じ、ソレっぽいのは見当たらない。そもそも持ち出してれば、USJが敷地ごと吹っ飛んでる」

「詳しいのね、緑谷ちゃん」

「中学の頃、何回も見たから覚えた」

「お前よく生きてたなぁ…」

 

自分から倒しに行ってたから、と言いかけてやめる。

危ない。これまでのヴィジランテ活動が露呈すれば退学まっしぐらだ。

後ろめたい過去があるのは疲れるなぁ、と思いつつ、出久は分析を繰り広げる。

 

「それに…、敵の動きが悪いのが気になる。

船なんてさっさと壊しておけばいいのに残しておくなんて、『怖がる学生が見たい』とかいう異常性癖でもない限りは考えないと思う。

蛙吹さ…、梅雨ちゃんがここにいるのも妙だ。彼女の個性がわかってたら、ここに飛ばさない」

「そ、ソレがなんなんだよ…?」

「敵は戦術のセオリーもわかってないチンピラの寄せ集め。

オールマイトと教師ばかり警戒してて、僕たちのことはほとんど警戒してないんじゃないかな?」

「……緑谷ちゃん。結構場慣れしてるの?」

「あひゅっ!?あ、いやっ、そう考えるのが自然かなーって、あはは…っ」

 

────そういう攻め方はナンセンス!もっと情熱的に、相手の動きを一手ずつ潰すことに集中するのです!例えばそう、最初は余裕をかましてたおカタい女の子をちょっとずつ攻め落とす感じで!!

 

やたらとハイスペックな変態に鍛えられた結果である。

脳裏に神無月のだらしない顔面が浮かぶ中、出久がなんとか取り繕っていると。

唐突に、船に亀裂が走った。

 

「さっさと落ちてこいや!!」

「痺れを切らしたか…。峰田くん、頭のソレ、個性だよね?どんな能力?」

「何冷静に聞いてんだよ!?船沈んでんだぞ!?攻撃されてんだぞ!?

オイラは敵に慣れてるお前と違って怖いもの知らずじゃねぇんだよ!!

こないだまで中学生だったんだぞ!?入学早々殺されるとか誰が予想するかよ!!」

 

ガタガタと震え、号泣しながら叫ぶ峰田。

出久はそれに淡々と言葉を返す。

 

「怖いのは怖いよ。僕らを殺せる相手から殺すって言われたんだから」

「嘘こけ!!じゃあなんだよそのスカしたツラはよぉ!?」

「僕が慌てたら、峰田くんは助かるの?

僕が怖がったら、蛙吹さ…、梅雨ちゃんは助かるの?」

「………っ」

「峰田くん。僕たちはヒーローになりに来たんだよ」

 

それだけ言うと、出久は腕を作り変える。

氷結傀儡(ザドキエル)〉では自分たちごと凍らせてしまう。

選ぶべき力は、〈颶風騎士(ラファエル)〉。

出久は風を纏うと、峰田に告げた。

 

「峰田くん。個性は?」

「……しょ、しょぼいぞ…。この頭のが超くっついて、オイラ限定でトランポリンみたいにボムボム弾くくらいで…」

「十分。なら、ありったけばら撒いて」

「は、はぁ…」

「あすっ…、梅雨ちゃん。

これは僕の練度の問題なんだけど…、僕は〈颶風騎士〉だと足と腕を同時に変えられない。僕の回収をお願い」

「わかったわ」

 

出久はそれだけ言うと、ワン・フォー・オールを巡らせ、その場から高く飛び上がる。

世界を穿つ風にその力を乗せ、彼は叫んだ。

 

HOD(ホド) SMASH(スマッシュ)!!」

 

ずばぁんっ、と音を立て、大穴が開く。

飛び上がった蛙吹に抱えられた峰田がそれに「うわぁぁあああっ!」と雄叫びをあげ、頭皮から血を流すのも厭わず頭の球体…もぎもぎを投げ飛ばす。

物理法則に従って収束する水に攫われ、敵が残らずもぎもぎに拘束される。

蛙吹によって体が攫われる感触と、勝利の実感を前に出久は息を吐いた。

 

「やっぱ、普通に使った方が強いね…」

 

いつまでこの苦しい誤魔化しを続けられるか。

オールマイトを殺せる敵がまだいるという現実が頭をよぎり、出久は辟易の表情を見せた。




〈颶風騎士〉…風を操る天使。本来は弓矢の形をしているが、矢を槍として、弦をペンデュラムとして使うことも可能。そこに在るだけで大規模な嵐を巻き起こす程の出力を誇る。
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