居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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緑谷シークレット

「……なぁ、やっぱ漢らしくねーって。

デート中の会話盗み聞きするなんてよ…」

「うっせぇ」

 

出久たちと別れて数分後。

会話を盗み聞こうとする爆豪に、切島がそれをやめるように促す。

爆豪としても別に出歯亀したいわけではない。

嫌っている幼馴染の恋愛事情など、気色悪い以外の感想が出てこない。

そんな彼が出久のデートを尾行している理由はただ一つ。

 

(デクのやつ、あの時計女の個性を知ってやがった…)

 

浮かんだ疑念を解消するためである。

調べたところ、ザフキエルもまたセフィラを守護する天使の一人であるらしい。

これで出久の駆使する力と関連性を疑わない方がバカだ。

時計女こと時崎狂三と談笑する彼らを前に、爆豪は歯が軋む程に顎に力を入れる。

 

「さっさとボロ出せやクソが…」

「お前、ミオちゃんに気ィあんの?」

「ねぇわ殺すぞ」

「否定早ェな…」

 

あんな女のどこがいいのかわからない。

異物。他を隔絶する圧倒的な美貌を差し引いても、人というにはどこか違和感がある。

無論、事細かに説明できるほど具体的な違和感があるわけではない。

漠然と、なんとなく。

爆豪がミオに感じる違和感はその程度のものだった。

 

「……何話してんだろうな、3人とも。なんか真剣そーな顔してっけど」

「…近づくぞ」

「あ、おい…!」

 

切島も気になり始めたらしい。

申し訳なさそうな顔を浮かべながらも、爆豪と共にジリジリと距離を詰めていく。

バレないように物陰に身を潜めながら、二人は全神経を研ぎ澄まし、3人の会話に耳を向けた。

 

「……〈封解主(ミカエル)〉、それか〈鏖殺公(サンダルフォン)〉じゃ無理そう?」

「どちらも可能性はあるにしても、恐らくは天文学的数字になりますわ。手っ取り早いのは、私をこの世界に放り込んだ誰かを縛り上げることですが…」

「ちょっと難しいんじゃないかな。

個性が原因って考えても、割と居そうだし」

「そこなんですのよねぇ…。

個性という異能がありふれた別世界…。

こうも普通の社会構造が保たれてるのが不思議でなりませんわ」

「思ったより人間がしぶとかったってだけじゃないかな」

「……なんかミオが言うと怖いね」

「やらかしかけた方と同類ですから」

 

理解し難い会話が聞こえた。

二人が揃って疑問を浮かべるも、3人は構わず続ける。

 

「じゃあ、どうするの?いつまでもこの世界に居る…ってわけにもいかないよね?」

「焦ったところで何も解決しませんわ。

気長に機会を待ちますわよ」

「……いいの?意中の人、ライバル多いんじゃなかったっけ?」

「あの方は美少女に囲まれてるくせしてこれまで一切手出ししなかった筋金入りのヘタレですので問題ないですわ」

「……だってさ、イズク」

「キスは!!したじゃん!!!」

「向こうもしてますわ。数えきれないほど」

「………ぼ、僕はキスで封印とかはしなくてもいい立場だし…」

「一度死ねばきっと同じ目に遭いますわ」

「イズクが死んだら同じことやるね、私」

「はいっ。死なないように頑張ります」

 

物騒なのか甘酸っぱいのかよくわからないやり取りである。

ただ、このやり取りで分かったことが一つある。

 

「あの時計女、聞いた感じ『この世界の人間じゃねぇ』ってことらしいな。

そして、何故かはわかんねーがデクもそれに絡んでやがる…と」

「……なんかヤベェこと聞いてねーか、俺ら」

「同罪だ。静かにしてろ、切島」

「笑ってんのか怒ってんのかよくわかんねぇツラだな、お前…」

 

怒気がいつもの8割は増してる。

危機感に眉を顰める切島を制し、爆豪は彼らの様子を睨んだ。

 

「にしても、驚きましたわ。

私の世界にあるものと同じ名前の組織が、これまた同じような睨み合いしてるんですから」

「あ、そっちにもあるんだ、DEMとラタトスク」

「というより、そっちから刺激受けて出来た感じだね。

囁告篇帙(ラジエル)〉読んだ限りだと、ウェストコットの前世の記憶って時崎狂三の世界で生きたものみたい」

「………死んでたどり着いた先でまで他人に迷惑かけるだなんて、本当に筋金入りというかなんというか…」

 

無防備にそんな会話すんな。

情報が多分に詰め込まれた爆弾を投下された二人の顔が硬直する。

もしかして、かなりまずいところまで踏み込んでしまっているのではないか。

そんな不安が二人の胸中を巡っているなどつゆ知らず、出久が続けた。

 

「でも、ミオが生まれた時にユーラシア大陸に大穴空いたとか聞かなかったね。

精霊としての規格が違うのか、それとも何かしらの理由があるのか…」

「ただ単にウェストコットたちが被害出ないように宇宙で私を作ったってだけだよ。

個性とかいう不確定要素あったし、なによりオールマイトとかいう規格外がすっ飛んでくるの嫌がってたから」

「……もし地球でやってたら?」

「大陸一つは無くなってるんじゃない?」

 

もうお腹いっぱいである。

ミオが作られた存在というのもそうだが、生誕するだけで大地に大穴を開ける生物など聞いたことがない。

しかも、それを作ったのが死んでまで世界に悪意を振り撒く大悪党。

スキャンダルどころの騒ぎではない。

切島が「な、なぁ、帰ろうぜ…?」とダラダラと冷や汗を流す横で、爆豪はその首根っこを掴み、その場にとどまる。

 

「驚いたといえば、10の天使が同一のものという点もですわ。

やはり、根は違えど同じ存在から生まれた故でしょうかしらね」

「『崇宮 澪』の軌跡は知っていたからね。

私はそれをなぞっただけ」

「では、緑谷さんに霊結晶(セフィラ)を与えたのも?」

「うん。力を扱えるように丈夫に作り直したし、とても内臓をそこらにぶちまけて死にかけてたとは思えないほどタフになったよ」

「ああ、やっぱ僕改造されてたんだ…」

 

────力も個性も全部貰い物だし…。

 

爆豪の脳裏に出久の言葉が蘇る。

なるほど。そういうことか。

デクの言う『力』の出所はあの女か。

女から貰ったプレゼントを見せつけるように、力を振るっていたわけか。

沸々と湧き起こる悪感情に、爆豪の顔が歪む。

と。そんな彼の肩を切島が揺さぶった。

 

「聞かなかったことにしようぜ…!これ、緑谷たちにとってめちゃくちゃ聞かれたくない話題だって、絶対…!」

「無防備に話してる方が悪い」

「オールマイト展の会場から離れてるんだぞ…!?

この場合、わざわざ尾けてきて盗み聞きしてる俺らが悪いって…!」

 

切島が言った、その時だった。

 

「聞かせてるんだよ、爆発頭にキリシマくん」

「「「えっ?」」」

 

ミオが妖しく笑ったのは。

 

「………なんでイズクも驚いてるの?」

「いや、いつ言おうかなーって迷ってたら、なんか取り返しのつかないとこまで話し始めたし、タイミング逃したかもって後悔し始めてて…」

「わざとに決まってるではありませんの」

「あ、そうなの…?」




緑谷出久…尾けられてることには気づいてた。いつ言おうかなーと迷ってたら、狂三たちがなんかヤバいことまで話し始めて大混乱。結果、思考をぶん投げてはっちゃけ始めた。

爆豪勝己…幼馴染の力がミオ由来と聞いて納得したと同時に、屈辱を覚えた。自分が1番じゃなきゃ気が済まないタイプ故に、絶対に超えられない「存在としての壁」を体感することになる。

緑谷 ミオ…爆豪以外の名前はちゃんと覚える。「企画段階でボツ確定レベルのチート」と公式に言わしめるバグの塊。
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