居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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爆豪ロンリー

「…なんか、何から何まで現実味ない話だな」

 

全てを聴き終えた切島がまじまじと3人を見比べる。

一人は片手間に世界を滅ぼせる女の子。

一人は別世界からやってきた元精霊。

一人は見ず知らずの女の子のために体を張ったら人間を辞めてしまった同級生。

その話を聞かされて鵜呑みにする輩が果たしてどれだけいるだろうか。

切島が訝しげに眉を顰めていると、ミオが出久を見やった。

 

「んー…、何すればいいと思う?」

「今6つめ渡そうか?それなら証拠にもなるし」

「……どれがマシ?」

「〈刻々帝(ザフキエル)〉おすすめ」

「…………〈絶滅天使(メタトロン)〉で」

「ちぇーっ」

 

頑なな〈刻々帝〉推しはなんなんだ。

そんなことを思いつつ、出久は差し出された結晶を手に取る。

霊結晶は触れるだけで肉体に溶けていく性質がある。

白の結晶が肌に染み込むようにして出久の中へと入ると、彼の瞳に雫が灯った。

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉」

 

瞬間。王冠を形作るかのように並んだ光の羽が顕現する。

個性と称するにはあまりに異質。

並ぶそれを前に切島が呆けていると、爆豪が口を開いた。

 

「……デク。てめェ、能力増やすばっかで使いこなせてないだろ」

「あ、うん。コツはなんとなくわかるんだけど、長年やってきたイメージと合わないっていうか…、やっぱり普通に肉弾戦特化の方がやりやすいっていうか…」

「自覚があって尚、天使をそのまま使って、火力勝負に持ち込もうとしたのですか?」

「………軽率でした、ごめんなさい…」

 

怒鳴り散らすかと思われた爆豪の意外な態度に、切島とミオが目を丸くする。

その視線に気づいた爆豪は「見んな!!」と聞き慣れた怒号を放ち、これまた見慣れた顔面で威嚇した。

 

「いや、お前のことだから渡された力にいちゃもんつけるもんだと…」

「ムカついてんのはそこじゃねぇ。

力は力だ。女のプレゼント見せびらかすように使おうが、俺は気にしねェ…が」

 

言って、爆豪は出久の胸ぐらを掴んだ。

 

「自分だけ使命抱えてる気になって、こっち見下してるような振る舞いするお前がいっちゃん気にくわねぇんだよ…!!」

「ばっ、お前、そんな言い方…!!」

「…見下してるんじゃないよ。心配だっただけ」

「それがムカつくって言ってんだろうが!!」

「爆豪!!」

 

爆豪勝己の精神構造は複雑怪奇極まりないが、その根底にあるのは異常なまでに膨れ上がった自尊心である。

自分は完全無欠でなければならない。

なぜかと言われても、爆豪自身もその経緯、理由をわかっていない。

ただ、昔からそうだったからとしか言いようがないほどに、爆豪勝己と言う存在は周囲より遥か高みに居た。

それが狭い庭でのことだなんて、思いもしなかった。

沸々と沸き立つ感情のままに怒鳴る爆豪に、出久は申し訳なさそうに顔を歪める。

 

「ごめん…。当時はミオのことを知られるわけにもいかなかったから」

「それがなんだ?

俺が小せェ山で威張り散らしてる横で、自分は世界救ってますってツラして周り見下してたんだろ?」

「………そう見えるって、ことだよね」

「そうにしか見えねェんだよ…!!」

「悪く捉えすぎだろ…」

 

世界を救っていたと言っても、デートを楽しんでいただけである。

ミオのストレス管理という名目でデートをする時間は、出久にとって休息でもあった。

なにせ、無個性というだけで夢を否定され、ストレスの多い環境下にいたのだ。

無垢で世間知らずではあったものの、自分の夢を否定しない人間との触れ合いは楽しいものだった。

あまりに曲がった見方をする爆豪に切島が苦い顔を浮かべると。

 

「はい、そこまで」

 

胸ぐらを掴んだ爆豪を、狂三が出久の首根っこを掴んだことで引き剥がした。

 

「ぐぇえっ!?」

「見ていられませんわ。

秘密を明かせば手を引くかと思いましたが、そんな性格でないことは十分に伝わりました」

「しゃしゃんな、時計女」

「あら?首席合格者様は自分のことを客観視できてないのですか?

あなたたち二人では永遠に話が終わらないから仲裁に入ったのではありませんの」

「………あ゛?」

 

狂三の歯に布着せぬ物言いに、爆豪が凄む。

出久やクラスメイトは慣れているが、付き合いの浅い人間からすれば萎縮してしまう程の圧力。

それに怖気付くことなく、狂三の口元は三日月のような弧を描いた。

 

「緑谷さんの何を怖がっていますの?」

「………は?」

「…わかりやすく噛み砕いていきましょう。

切島さん。例えば、初めて見る虫があなたの肌を這っていたら、どう思いますか?」

「え…?そ、そりゃあビビるぜ。怖ェし…」

 

急に話を振られた切島が困惑気味に返す。

狂三は得たい答えが得られて満足したのか、その笑みを深めた。

 

「それも間違いではありません。

多くの場合は、恐怖と共に敵意を抱くのです。

訳がわからない。早くどこかに行ってくれ。

心の中でそう叫び、排除しにかかる。

爆発さんの緑谷さんへの対応は、まさしくソレというわけですわ」

「……幼馴染なんだろ?なんか、わけわかんないこととかあるんか?」

「ええ。それも精霊の力云々を抜きにした、根深い何かが。

ソレを紐解くために…、私の体に残る〈刻々帝〉最後の残穢、使いますわ」

 

言って、彼女はどこからか銃を取り出し、爆豪を抱き寄せる。

急なことで誰も反応できず、爆豪の側頭部に銃口が突きつけられた。

 

「【十ノ弾(ユッド)】」

 

たぁんっ、と、爆豪と狂三の側頭部を弾丸が撃ち抜く。

傷もなく、脳漿も出ず、ただ銃弾が二つの脳を通り過ぎただけ。

あまりにショッキングな光景を前に切島が「おまっ、今頭撃ち抜いて…!?」と困惑するも、狂三の声がソレを制した。

 

「………なるほど。よくわかりましたわ。

川に落ちた自分に手を差し伸べた緑谷さんを見た時、強く感じてしまった劣等感。

誰よりも優れた自分より、緑谷さんがヒーローらしく見えてしまった。

その理由がわからなくて、そのことを認めたくなくて、遠ざけようとした…でしょう?」

「は………?な、んで……!?」

 

図星だったらしい。

愕然とする爆豪に、狂三は心底おかしいと言わんばかりに続けた。

 

「ええ、ええ。よくわかりますわ、その気持ち。

自分のことを何にも考えてない。

そういう人間が心の底から理解できず、また心の底から眩しく見えてしまう。

怖いですわよね。悔しいですわよね。

自分がそこに立てないと言われてしまっているようで」

「……っ!!」

 

どっ、と狂三の抱擁から抜け出し、距離を取る爆豪。

心の底まで見抜かれている。

これ以上喋るな、と叫ぼうとするも、喉奥から漏れるのは空気だけ。

ぼたぼたと冷や汗を落とす爆豪を前に、出久が狂三に声を張り上げた。

 

「時崎さん、もういいから…!」

「緑谷さん。あなたにも責めるべき点はありますわ」

「……へっ?」

「あなたは無意識に人を遠ざける。

自分だけが重荷を背負ってるつもりでいる。

生来の気質であれど、それは紛れもなく傲慢ですわ。

その態度を爆豪さんが『見下している』と捉えても仕方がないほどに」

 

言われて、出久は言葉をなくす。

沈黙が漂う。

切島がなんとも言えない空気におろおろとしていると、爆豪が口を開いた。

 

「切島、行くぞ」

「あ、爆豪…!」

 

そそくさとその場を去る爆豪。

あの様子であれば、誰かに吹聴して回ることはないだろう。

狂三はその姿を見届け、沈んだ顔の出久へと目を向けた。

 

「緑谷さん。あなたのソレは美点であり、欠点でもありますわ。

取り返しのつかないことになる前に、改善することを勧めます」

 

爆豪とは別方向に去り行く狂三。

ソレを見届けたミオは、出久へと目を向けた。

 

「…仲直り作戦大失敗だね」

「………このデート、そういう目的だったの?」

「うん。…イズクへの説教は私がする予定だったのに」

「…本当に申し訳ございませんでした」

「そう思うなら治して」




時崎狂三…爆豪と緑谷出久の関係に思うところがあって説教。これで完全に〈刻々帝〉を使えなくなった。

緑谷 ミオ…出久の望みはできるだけ叶えてあげたいと今回のデートを企画した。爆豪がオールマイト展に来たのも、出久と目が合うような場所にいたのも全部仕込み。思ったより互いを見る目がひん曲がってたので失敗した。
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