居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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ほんま迷惑やなコイツ


迷惑系転生者のやらかし

ミオの親に会えたらまずなんというか。

 

娘さんを僕にください?

違う。まだ恋愛どころか女への免疫すらないオタク男子がそんな大それたこと言えない。

何故、ミオを作ったのか?

違う。問い詰めたい気持ちはあるが、もっとふさわしい言葉がある。

 

『ご覧ください!これがあの「アイザック・ウェストコット」が遺した空中艦の威力だとでも言うのでしょうか!!

あれだけ栄えていた街は見る影もなく…』

 

くたばれクソ野郎。これに尽きる。

 

…いや、もう死んでるのにくたばれもクソもないんだけど。

僕は画面奥の惨状と、ミオの父の名をくしゃくしゃにするように、強く拳を握った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

アイザック・ウェストコット。

この名前を知らない人間はそうそういない。

 

ヒーロー向けのサポートアイテム開発事業を手掛ける「デウス・エクス・マキナ・インダストリー」の代表取締役社長。

そのシェア率は本社を構える英国を軽く飛び越え、世界の頂点に君臨する。

取り扱うアイテムはどれもが「魔法」としか呼べない利便性を誇るもので、他の科学者たちが再現しようとしても、こぞって頭を悩ませたという逸話があるほど。

社長自身も逸話が絶えず、敵被害に遭った子供のために孤児院を建てたとか、個性の影響で失業した軍人を自らの会社に警備員として迎え入れたとか、彼の社会貢献・慈善活動はあげればキリがない。

 

ここまでが世間から見たアイザック・ウェストコットと、デウス・エクス・マキナ・インダストリーの評価。

その本性は、人命軽視をスローガンに入れてるのかと思うほどのド外道…まさに外道の中の外道である。

 

彼は孤児院の子どもを私兵として運用するため、洗脳じみた教育と、寿命を大幅に縮めるような改造処置を施し。

数々の衛星兵器を秘密裏に打ち上げ、各国首脳陣に脅しをかけて無理やりに意見を通せる確たる地位を手に入れ。

宇宙進出という大義名分で、空中艦なる兵器をも作り出した。

 

ミオが語る…否。ミオの作り出した〈囁告篇帙〉が語るアイザック・ウェストコットは、そこらの敵が霞んで見えるほどの大悪党だった。

これだけでもスキャンダルなのだが、さらに最悪なのがその性癖。

 

なんと彼は他者の絶望で絶頂するという、とんでもなく傍迷惑な異常性癖の持ち主だったのだ。

 

いくら前世の記憶が目覚めようと、往来の性癖が変わることはなかった。

むしろ、過激さを増したと言っていい。

前世の記憶については詳細が塗りつぶされていて読めなかったが、前世の記憶から「タカミヤ ミオ」なる者を参考にしてこの世界でミオを作り出したと書いてあった。

彼が求めたのは、絶対なる力。

正直、外道の中の外道としか言えない彼ですら『最たる悪』とまで吐き捨てる悪人がこの世界には存在し、それに対抗するために生み出したのがミオだという。

 

わかりやすく言うと、ゾーマと竜王が殴り合ってるようなものである。お前ら誰にも迷惑かからない場所で勝手にやってろ。

 

そんな彼の思惑が崩れたキッカケは、四年前に起きたミオの脱走。

意外にも彼は、ミオのことをあっさり諦めた。というより、「もう必要がなかった」と書いてあった。

〈囁告篇帙〉曰く、どうやらミオと同じ存在と成るべく研究を進めていたらしい。

既にミオからデータは取れた、と言わんばかりに、彼の執着はミオから外れていた。

 

それが原因かはわからないが、その『最たる悪』に全てが露呈し、彼は殺された。

 

彼の死後、世界は混乱に陥った。

まるで押さえつけていた蓋がなくなったかのように、次から次へとウェストコットが隠していた闇が世界に噴き出した。

そりゃそうだ。世界屈指の大企業がまさか、こんなドロドロの闇を抱えていたとは誰が思うだろうか。

 

幸いなのは、ミオに関する記録の一切が公表されなかったこと。

後でミオに聞くと、分身を作って揉み消したと聞いた。

まあ、よくてタルタロス送り、悪ければ殺処分もあり得た命だ。

ヒーロー志望としては褒められたことではないが、ホッとした。

 

閑話休題としよう。

アイザック・ウェストコットの死は、世界を大きく変えた。

彼の死によって生じた、持ち主のいない武器の数々。それを求めて、何万もの敵が動き始めたのである。

 

今朝、ニュースで報道されたのもその一つ。

有機的な見た目の空中艦が更地になった街を悠々と闊歩している。

僕はそれを見上げつつ、フードを被り、女児アニメのお面を被ったミオに視線を向けた。

 

「あの中に何人いるの?数百人とかいそうなんだけど…」

「空中艦は少数での運用が前提だから、そこまでいないよ。せいぜい6人…だね、うん。

今はニュースで言ってたお金を待ってるところかな?」

「ヒーローでなんとか出来そう?」

「オールマイトとエンデヴァーがいないと無理かなぁ。

向こうも手をこまねいてるみたい」

「……あの、本気?本気で僕がなんとかしなきゃダメなのアレ?」

 

僕がここに来た理由は一つ。

ミオに連行されたのだ。拒否権なしで。

いや、許せないとは言ったけど。言ったけども、僕が倒すって意味じゃないから。

将来的には相手しなきゃいけないのはわかってるけど、法的資格もない今だと流石に気が引ける。

というかそもそも、僕1人であの戦艦倒せるのか?無理じゃないか?

ぐるぐると頭の中を巡る疑問を集約した僕の問いに、ミオは呆れたため息を吐いた。

 

「そもそも規格が違う。イズクはじゃんけんの3手で銃に勝てるって思う?」

「……………僕ならその規格に対応してると」

「そういうこと」

 

対応してても嫌だよ。解決しても犯罪者まっしぐらじゃないか。

個性の無断使用は軽犯罪である。

それこそ、車がほぼ通らないド田舎の信号を無視するレベルの。

だが、それによってヒーローの職務に支障が出たりすれば話は別。

あっという間にしょっぴかれ、少年院にれっつらごーである。

 

僕には関係ないことだなと思っていた頃の気持ちを返してほしい。

そんなことを思いつつ、僕はフードを被り、正月休みに買ったオールマイトの面を被った。

 

「…これで大丈夫そ?」

「クソダサいよ」

「………わかってる、わかってるから…」

 

オールマイトのお面はカッコいいのだけれど、僕のような細身の人間が被ると必然的にコラ画像みたいになるんだよなぁ。

そんなことを思いつつ、僕は顕現した〈灼爛殲鬼〉の砲身を空中艦に向けた。

 

「ミオ、射線上に誰かいない?」

「いないね。…でも、空中艦のバリアは【(メギド)】程度じゃ落とせないし、もうちょっと盛ったほうがいいよ」

「……これに勝てるオールマイトってなんなんだろうね」

「私が聞きたい」

 

地面から飛んだ勢いと全力を掛け合わせてのスマッシュで空中艦を吹き飛ばしたオールマイトの姿が脳裏に浮かぶ。

あの人も精霊とかじゃないよな?

そんなことを思いつつ、僕は砲身に光を集めた。

 

「そう使うんだ。弾丸に〈鏖殺公〉って、なかなか贅沢だね」

「誰かに当たりませんように…!!」

「当てないようなコースを教えてるし、向こうも脱出装置はあるから大丈夫だよ」

「あ、そうなの…?」

 

心配して損した。

僕が脱力したその瞬間。

 

「ふーっ」

 

ミオが僕の耳に息を吹きかけた。

「ぁふンっ」と声が漏れると共に、轟音と爆風が僕たちを撫でる。

視界の隅に見えるのは、光の帯と、貫かれた空中艦。

ごうごうと炎を吐き出しながら落ちていくそれに、僕は仮面の裏であんぐりと口を開けた。

 

「ナイスショット」

「ナイスショット…じゃないよ!!

何してんの!?」

「昨日見たアニメだと、こうするとよく当たってたじゃん」

「ああ…。暗黒タマタマ大追跡なんて見せるんじゃなかった…」

「それより、イズク。誰か来るよ?」

 

「おぉーーーーい!!」と声を上げながら、誰かが凄まじい勢いで走ってくるのが見える。

目を細めてそちらを見ると、見覚えのあるアーマーが目に入った。

 

「……あ、あれは…、インゲニウム!?

え、嘘!?ここに来てたの!?ちょっとサインもらっても…」

「しょっぴかれるよ」

「前言撤回三十六計逃げるに如かず!!」

 

ああ。こんな状況じゃなかったら最高だったのに。

そんなことを思いつつ、僕たちはその場を後にした。

 

後日、僕とミオは「お面の男女」として大々的に報道された。

母さんからは大目玉を食らった。




アイザック・ウェストコット…生まれながらにして異物かつ前世の記憶による意識の書き換えが起きなかったほどに人格が破綻してる迷惑系転生者。実は無個性。興味の赴くがままに生きてたらAFOに殺された挙げ句、とんでもない負の遺産を遺して逝ったクソ野郎。デアラ未履修の人は、デアラ原作におけるAFOと考えてくれたらOK。
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