居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア 作:鳩胸な鴨
(読み違えたら確実に死んでる…!
耐久力もパワーもスピードも桁違いどころじゃねぇくらいの格上…!)
分析を広げ、自身の顔を掴むべく迫るオールマイトの手を避ける爆豪。
相手の一挙手一投足が死につながる。
試験である以上はあり得ないが、オールマイトが放つ気迫がそう思わせてならない。
いくら瞬間速度で上回ることができても、その軌道を読まれて終わる。
その度に出久によるフォローが入ることにこれ以上なく腹が立つが、そうも言ってられない。
「そらそらそらそら!守ってばかりじゃすぐタイムオーバーだぜ、ヒーローども!!」
「〈
「効かぁん!!」
「は!?!?」
拘束を図るも、凍る前にちぎられた。
仮にも世界を殺す矛なのだが。
ワン・フォー・オールを受け渡し、体に残り火が燻るだけの状態でやって退けるとは、規格外が過ぎる。
これで全盛期が過ぎてると言われても信じられない。いや、信じたくない。
氷、および糸による拘束は無意味。
となれば、取るべき手段は一つ。
(デケェ爆破で隙を…)
「おっと、危ないなぁ」
ばきっ、と音を立てて何かが壊れる。
やけに腕が軽い。
爆豪がその違和感に目を落とすより先、オールマイトの顔が迫った。
「しまっ…」
「かっちゃん!!」
出久がその顔に蹴りを浴びせ、オールマイトの体が吹き飛ぶ。
おそらく、自ら吹き飛ぶことによる受け身。
追撃しようと右腕を前に突き出し、籠手のピンに手をかけようとして、やめる。
ピンがない。それどころか、右腕の籠手の半分がない。
がしゃっ、と音を立てて落ちる籠手を前に、爆豪が悔しげに顔を歪めた。
「ッソが…!火力潰された…!」
「【
明らかに加減ができてない。
が、この場にいる全員、極度の緊張と興奮でそのことが頭からすっぽ抜けている。
「HAHAHAHA!」と豪快な笑い声を上げ、拳を引き絞るオールマイト。
銃口を向けるに等しい動作を前に、出久らは咄嗟にその場から離れた。
「TEXAS SMASH!!」
迫る風圧。
まともに当たれば最後、空の星になることは間違いないだろう一撃。
放たれたそれは、後継者の行く先へと飛んだ。
「〈
風の盾で風圧を防ぐも、その一撃は重く、余波が背後のビルを破壊する。
トップが放つ本気の一撃。
ビルが倒壊する音を背後に戦慄しながらも、出久は全身の神経へと意識を向ける。
「上回るなんて考えるな…!
今は、勝つことだけを考えろ…!」
全身から風が迸る。
コスチュームに拘束具のような意匠が駆け巡り、四肢から翼が伸びたその姿を前に、オールマイトが笑みを深めた。
「いいだろう!2人とも、本気でぶつかってきなさい!!」
「ダブルフルカウル…、35%…ッ!!」
ワン・フォー・オールを巡らせ、アスファルトを蹴り砕く。
精霊としての力と、ヒーローとしての力。
二つを掛け合わせた出久が速度で翻弄するも、その動きを読まれ、繰り出す打撃が打ち消される。
(くそっ…!一発も当てられない…!)
(桁違いに速い…。これが今の全力か…!
教師として…、先代として嬉しく思うよ、緑谷少年…!)
弟子の心、師知らず。師の心、弟子知らず。
テンションの上がったオールマイトが更にギアを上げ、動き回る出久に風圧の弾丸による攻撃を仕掛ける。
何発か掠った。
それだけでごっそりと体力が削られる感覚の最中、出久は声を張り上げる。
「かっちゃぁああんっ!!」
「っせぇわクソがぁあああっ!!!」
「OOPS…!」
出久の動きに気を取られたせいか、爆豪が背後に回り、籠手を構えていたことに気づかなかった。
爆炎がオールマイトを飲み込む。
が。この程度で倒れる平和の象徴ではない。
彼は腕一つで爆炎を払うと、撃ち終わった姿勢の爆豪へと迫る。
「ナイス判断だ、爆豪少年!
私じゃなきゃ倒せてたぜ!!」
ここまでプライドを捨ててこれか。
これなら、負けた方がマシだった。
少し前までの自分だったら、確実にそう吐き捨てていただろう。
(……時計女。確かに滑稽だったわ…!)
そんな理由で捨てられるほど、No. 1からもぎ取る勝利は安くない。
何よりも価値のある勝利を前に、爆豪はオールマイトに吠えた。
「俺はアンタの勝つ姿に憧れたんだ…!流石にそこまで自惚れてねぇわ、オールマイト…!」
「……っ!?」
爆豪の顔が笑みを浮かべると共に、地面が爆発する。
爆破の寸前に見えたのは、破壊した籠手の残骸。
恐らくは、そこに溜まっていた汗を地雷として使ったのだろう。
予想外の爆破を浴びて怯むオールマイトに、爆豪が叫ぶ。
「デク!!」
「りょーっ…かぁい!!」
どれだけ雁字搦めにしても、すぐに破壊され、距離を詰められる。
ならば。拘束ではなく、動けないほどの飽和攻撃を落とせばいい。
出久は〈
生半可な威力では足止めにすらならない。
ワン・フォー・オールを天使の一つ一つに巡らせ、出久は叫んだ。
「
「ぐ、ぅう…!?」
光弾が降り注ぐ。
全盛期ならば問題なく切り抜けられたのだが、衰弱した今ではジリジリと歩みを進めるだけで手一杯。
オールマイトが弾幕に怯んでいるうちに、GOALと書かれた門へと消えていく2人。
その後ろ姿を前に、オールマイトは喜色満面を浮かべた。
「なんだ、仲良くできるじゃないか…!」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「だー…っ。疲れた…」
「お疲れ様。頑張ったね、イズク」
「ミオが見てたし、下手な真似はできないなって思って…」
放課後。
散々な結果で演習試験を終えた面々がゾンビさながらの表情で帰宅するのを傍目に、ミオが出久を労う。
何度死を覚悟したことか。
No. 1ヒーローから敵意を向けられるとはこんなにも恐ろしいことなのか、と出久が試験を振り返っていると、ミオが出久の背をさすった。
「大丈夫?あの筋肉、全然加減してなかったから骨の一本や2本は砕けてると思うけど…」
「あ、うん。それは大丈夫。
喰らわないように立ち回って………待って今なんて言った?」
「ん?骨の一本やにほ…」
「そっちじゃなくて。ちょっと前」
「えっと…、全然加減してなかった」
「全然加減してなかった!?!?」
受け入れ難い現実を前にして、素っ頓狂な声を上げる出久。
道理で何度も死を覚悟するわけだ。
あろうことか、No. 1が学生相手に張り切って本気を出していたのだから。
全盛期だったらどうなっていたのか、と戦慄していると。
その肩を誰かが叩いた。
「おい、デク」
「わっ…。か、かっちゃん…?」
背後に居たのは、同じく疲労困憊の爆豪。
プロにも匹敵するタフネスを誇る彼でも、オールマイトを相手にして気力を使い果たしたのだろう。
爆豪は疲れを顔に滲ませながらも、出久の瞳を真っ直ぐに睨め付けた。
「……がと。勝てた」
「………………へっ?」
爆豪はそれだけ言うと、出久たちを通り越し、駅へと向かっていく。
ぱちくりと目を丸くする出久に、ミオがつぶやいた。
「…ツンデレ通り越してツンドラだった爆発頭がデレた」
「ぶふっ…」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「こんのバカ筋肉!!壁になろうとする気持ちはわかるけど、クリアできない壁になってどうすんのよ!?」
「い、いや、せめて私にできることをと…」
「なら尚更加減しなさいよバカ親父!!グラトリじいちゃん直伝、何やってんだこのバカタレスマッシュ!!」
「ばばぶべっべぼばっ!?!?」
その頃。職員室の中からそんな叫び声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
オールマイト…娘の折檻を喰らい撃沈。夏休み期間中、「すごいバカだけど先生になろう講座」が開催されることとなった。
爆豪勝己…ツンデレ超えてツンドラとか言われた人。凄まじい屈辱を感じながらも、少しずつ自分の弱さを受け入れつつある。