居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア 作:鳩胸な鴨
「……くっ…!
こんな時、トシがいてくれたら…!」
移動する人工島…I・アイランドにある一つの研究施設にて。
個性研究のトップランナーであるデヴィット・シールドが絞り出すように呟く。
彼にとって最大の危機を映し出すモニターを前に、ぽた、ぽた、と冷や汗が落ちた。
そこに映るは、街中で朗らかに笑う愛娘。
が、しかし。それを見やる彼の顔は、苦痛に歪んでいた。
「待っていろ、メリッサ…!
すぐにそこから出してやるからな…!!」
言って、モニターの背後を見やる彼。
その先には、なんらかの機械に包まれるように横たわった愛娘の姿があった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ああもう…!なんで旅行先でもこんなことしなきゃなんないんだか…!!」
上空数千メートル。
雲を乗り越え進む飛行機の『上』に立った出久が吐き捨て、右腕を包み込む砲身を構える。
視線の先に佇むは、忌々しい空中艦。
旅行先へと向かう飛行機の進路上に突如として現れたそれを前に、炎を顕現する。
その炎が砲身へと集約されると共に、出久はワン・フォー・オールを全身に巡らせた。
「フルカウル…、20%…!
どぉっ、と衝撃が走る。
反動と風で体が吹き飛ばされるも、出久はなんとか飛行機にしがみつき、前を見やる。
空中艦の心臓部が光芒に撃ち抜かれ、海へと落ちていく。
どうやら命中したらしい。
ほっ、と息を吐くと、出久は視線を下へと向けた。
「よかった、当たったぁ…。あの空中艦、I・アイランドを襲う気だったのかな…?」
上空からでもその賑わいが伝わるほどに人がひしめく人工島…I・アイランド。
これから向かう島を前に出久が呟くや否や、耳に詰めたインカムから声が響く。
『終わったんなら早く機内に戻りな。ミオちゃん不貞腐れてるから』
「あ、はい。…ナガン、この仕事が板についてきましたね」
『まぁね。世界救えてる実感はないけど、前よか人のためにはなってると……ん?
………中津川ァ!!職場にエロ同人の原稿なんざ持ち込むな!!』
『お許しください!!納期まで日にちないんですゥ!!』
『仕事の時間削んなタコ!!!』
すぱぁん、と乾いた音が響く。
スリッパでも投げたのだろうか。
そんなことを思いつつ、出久は指先を変化させ、宙を刺した。
「〈
空間を『開き』、その穴へと飛び込む。
一瞬、浮遊感に包まれたかと思うと、すぐに衝撃が彼の尻に走った。
「だっ!?」
「うぉうっ!?」
着地に失敗したらしい。
機内の通路で尻を摩っていると、寝ぼけ眼を擦ったオールマイトが出久を見やる。
「な、なに…?どしたの、緑谷少年…?」
「ちょ、ちょっとはしゃぎすぎちゃって…」
「………HAHAHA!きみも子供らしいとこ、あったんだねぇ!」
「あ、あはは…」
馬鹿正直に「外に出て空中艦を撃ち落としてました」とは言えない。
笑うオールマイトに軽く笑みを返し、半目を向けるミオの隣へと座る出久。
新たに〈
そう安堵するのも束の間、機内にアナウンスが流れる。
『皆様。間も無くI・アイランドに着陸いたします』
響くアナウンスの声は神無月。
元自衛隊員がどうしてこんな旅客機の運転もこなせるのだろうか、と疑問に思いつつ、出久らは準備を始めた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「おぉー…。前に行った遊園地みたい」
様々な展示が並ぶI・アイランドにて。
入門審査を終えたミオが興奮を露わにしていると、万由里が不思議そうに呟く。
「私は一回来たことあるけど…、前にも増して賑わってるわね。
いくらI・エキスポが大きいイベントだからって、プレオープン時点でこんな盛り上がるもんなのかしら?」
「え?万由里、来たことあるの?」
「パパの謝罪行脚の一環で」
出久の問いに対し、オールマイトに突き刺すような視線を向ける万由里。
心なしか、戻ってきた胃が悲鳴をあげてる。
オールマイトは彫りの深いマッスルフォームの顔で苦笑を作り、軽く頭を下げた。
「は、ははは…。その節はすまなかったね…」
「すまなかったで済むわけないでしょうが。
試験でもやらかして、ここでもまたなんかやらかしたら、本気で怒るかんね」
「………き、気をつけるよ…」
「アンタと出久のソレは1番信用できない」
「「ゔっ」」
流れ弾が急所に当たった。
師弟2人が罪悪感に顔を歪める横で、万由里はきょろきょろとあたりを見渡す。
「んで、メリッサはどこ?
ミオと出久はアスガルド・エレクトロニクス社から招待状貰ってたけど、私らは彼女から貰ったわよね?」
「それが、ここしばらく連絡が取れんのだよ。
デイヴは『風邪を拗らせて寝込んでるだけ』と言っていたが…」
「めりっさ…?でい…?」
聞き慣れない名前に首を傾げるミオ。
オールマイトはそれに大胸筋を見せつけるかのように胸を張り上げ、高らかに声を上げた。
「デイヴは私の親友の略称で、メリッサはその娘さんだ!
私たち2人はラタ…アスガルド・エレクトロニクス社からではなく、メリッサから招待状を貰っていたのだよ!」
「デイヴ…って、もしかして…、デヴィット・シールド博士のことですか!?」
オールマイトの口から出た名前に飛びつく出久。
ヒーローオタクの中でもずっぷりとその沼に浸かっているタイプの出久からすれば、ヒーローを支える彼らも羨望の対象なのだろう。
「若き日のオールマイトのコスチュームを開発した」、「個性研究のトップランナーとしてノーベル個性賞を受賞した」など、興奮気味にデヴィット・シールドの功績をつらつらと並べる出久に、皆が生温かい視線を送る。
突き刺さるその視線に気づくと、出久は顔を赤くし、「す、すみません…」と蚊の鳴くような声を漏らした。
「…のだが…、彼女からの出迎えがないというのも妙だ。
どれだけ多忙を極めていようが、招いた客に顔を見せないような子ではなかったはず…」
「博士の言う通り体調が悪いんじゃ…?」
「いや、それなら一言入れるはずでは…?」
「あ!オールマイトよ!!」
「えっ、嘘!?オールマイト!?」
被せるように、黄色い声が響く。
そちらを見ると、夥しい数の人がオールマイトへと向かっている。
我先にと言わんばかりの勢いで迫り来るその様は、まるで闘牛の群れ。
どどど、と地響きが鳴る光景を前に、出久たちは軽く身を避けるようにその場を離れた。
「サインください!!」
「握手お願いします!!」
「胸筋触っていいですか!?」
「ンンーーーッ…!聖徳太子…!!」
「私らは先におじさんとこ行ってるわね。
ほら、2人とも。行くわよ」
「万由里、慣れてるね…」
「親子してたら嫌でも慣れるわよ」
ファンに囲まれて困り果てるオールマイトを尻目に、歩みを進める万由里。
あと調子だと1時間は囲まれてるな。
そんなことを思いつつ、出久たちは万由里の後ろに続いた。
『………第二の精霊、ミドリヤ イズク』
「っ…!?」
どこからか聞こえた知らない少女の声が、鼓膜を震わせる。
出久が振り向くも、そこには囲まれて困るオールマイトしかいない。
幻聴か、それとも自分のことを知る誰かが居るのか。
疑問に思いながらも、出久は「早く、早く」と急かす2人に続いた。
ウォルフラム一行…落とされた空中艦に乗ってた。そのまま確保されたので完全に出落ち。
サム…和解したことに加え、娘が危険な状況でかかりきりになってるせいでデヴィッド・シールド博士の芝居云々がなかったので、仕方なく自分1人でウォルフラムを手引きした。なんかいつまで経っても連絡こねぇなぁとか思ってたら捕まっててエネル顔になった。この後、彼も捕まった模様。
???…i・アイランド内のセキュリティシステムに侵入。完全に掌握しようと手をこまねいている。
封解主…本来ならば鍵の形をした天使。鍵から連想される権能はあらかた網羅しており、例を挙げれば、空間を「開いて」その孔からワープしたり、地球を「閉じて」自転を止めることも可能。