居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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着々と詰んでる


或守インストール その3

出久たちが仮想空間に突入した頃。

アトラクションの一つ…敵アタックを終えた爆豪の手に、数枚のチケットが渡される。

 

「仮想空間での敵アタック…?」

「より臨場感あふれる現場での戦闘を体感できる、フルダイブ式アトラクションです!

こちら、敵アタック成績優秀者のみに送られる先行体験チケットになります!どうぞ、お楽しみくださいね!」

 

渡されたチケットに目を落とし、訝しげに眉を顰める爆豪。

そんなアトラクションがあるなど、案内板には表示されていなかったはずだが。

きな臭さに思考を巡らせていると、同伴者としてついてきた切島がその肩を叩く。

 

「お、爆豪!何貰ったんだ?」

「仮想空間での敵アタックの先行体験チケット。

欲しけりゃやる。俺1人こんだけ持ってても紙の無駄だ」

「マジか!ありがと!!」

 

「麗日たちにも渡してくる!」と渡された数枚の先行体験チケットを手に去っていく切島。

いくら成績優秀者だからと言って、1人に渡す枚数ではない。

後で現れた轟の記録に負けた事実すら気にならない程の違和感を前に顔を顰めていると、見覚えのある顔がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「居た、爆豪。お前、この券いるか?」

 

歩み寄って来たのは、先ほどのアトラクションで一位の成績を残した轟焦凍。

困り果てたように眉を顰め、爆豪の手にも握られている数枚のチケットを渡す彼に、爆豪は青筋を浮かべながら同じチケットを突き出す。

 

「もう持っとるわなめんな殺すぞ」

「そうか。…1人で来てるやつにこれだけ渡されても困るだけなんだがな…」

「ばら撒くのが目的なんだろ。

よくあるマーケティング戦略だ」

「そうなのか。よく知ってるな」

 

そんなわけあるかボケ。

そう悪態を吐きかけるも、すんでのところで飲み込む爆豪。

ここは今の今まで一度たりとも犯罪が起きなかった島…I・アイランド。

それがたかがアトラクションを用いた悪事を働くとは思えない。

何かしらの実験なのだろうな、と無理やりに納得しつつ、チケットに記載された施設へと歩みを進める2人。

 

「………横歩くな、下がれ。俺が前だ」

「なんでだ?別にいいだろ」

「よくねぇわ殺すぞ」

 

そんなやりとりを繰り返すこと数分。

ぎゃあぎゃあと怒鳴る気にもなれなかった爆豪の視界に、一つの施設が見えてくる。

確かにアトラクション用の施設らしい。

特に怪しいところもない。

心配は杞憂だったか、と入り口の自動ドアを開く。

 

『ようこそ、敵アタックシミュレーションへ。チケットをお持ちの方はこちらでバーコードをスキャンしてください』

 

ロボットに促され、受付に備え付けられた機械にチケットをかざす2人。

数秒もしないうちに認証を終えると、受付用のロボットがその液晶に矢印を浮かべた。

 

『確認いたしました。どうぞ、最高のヒーロー体験をお楽しみください』

 

人間のスタッフはいないのだろうか。

先行体験なら居てもおかしくないと思うのだが、エキスポ関連で人手が足りなかったりするのだろうか。

…少し無理がある推論である。

違和感に眉を顰め、2人は顔を見合わせた。

 

「…行ってもいいのか、これ?」

「別にいいだろ。違和感はあるが、警戒する理由は少ねェ」

「……まぁ、そうだが…」

 

きな臭さは残るが、敵が潜入してるとかでもない限りは無害だろう。

そして、ここがI・アイランドである以上、敵が潜入している可能性はゼロに近い。

違和感はあるが、危険はないはずだ。

そう判断した2人が歩いていくと、いくつかの機械が並んで見える。

アレが仮想世界にアクセスするための装置なのだろう。

使い方が書かれた電光掲示板に軽く目を通し、2人は装置の中へと向かう。

 

「……なぁ、爆豪」

「話しかけんな殺すぞ」

「今思ったんだが、こんな装置があるなら、もうちょっと大々的に発表してもいいんじゃないか?」

「殺すぞっつったろうが。…エキスポで発表する予定だったんだろ」

「なら、プレオープンにこんなチケット配らないだろ」

「うだうだうっせぇ。判断するのは中身を確認してからでも遅かねーだろ」

「……それもそうか」

 

怪しいのも事実だが、悪い話ではあるまい。

無理やりに納得し、2人はスタートボタンを押した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「緑谷 出久、いい加減に教えてください。

愛とはなんですか?」

「あ、あの、さっきから言ってるけど、僕にもちょっとわかんないと言うか…」

 

雛鳥のようについてまわる少女から飛んでくる質問に、困った表情を浮かべる出久。

記憶がないと主張する彼女の名は「或守 鞠亜」。

事情を聞いたところ、気がつけばこの空間に居て、「愛を学ぶ」という使命と、出久のことだけが体に刻み込まれていたらしい。

出久はミオ以上に感情の起伏が乏しい鞠亜に困惑し、メリッサに問いかける。

 

「……さっきからずっとこの調子だけど、何で僕にばっか聞いてくるんだろ…?」

「ガールフレンドがいるからじゃないかしら」

「それなら、ミオの方が適任じゃ…」

 

愛と言われても、ついこの間まで中学生だった子供に何がわかるのだろうか。

そんなことを思いつつ、鞠亜へと目を向ける。

 

「この子、アレかな…。ほら、ゲームでいうチュートリアルの案内人的な…」

「精霊の反応がある以上、あのメガネおじさんが言ってたイレギュラー…って可能性も捨てきれないけど」

「それだったら、天使を使えなくなった僕に攻撃してくると思うよ」

 

緑谷 出久の強さは、そのほとんどが天使に依存している。

それこそ、今の状態で襲撃されたのならば、ほとんどの敵に苦戦する自信がある程に。

体は鍛えているものの、〈灼爛殲鬼〉の再生すら使えないのならば無茶もできない。

ここで死んだらどうなるんだろうか、と思いつつ、出久は鞠亜に問いかけた。

 

「鞠亜ちゃんは名前と…、その…『愛を知る』ってこと以外はなにか、覚えてたりしないの?」

「あなたのことは知っていますが」

「……ごめん、それもノーカンで」

 

言葉足らずだったのが悪かったか。

そんなことを思いつつ、出久は鞠亜の返答を待つ。

暫しの沈黙が流れたのち、鞠亜は小さく口を開いた。

 

「………空。空を覚えてます」

「空…って、あの?」

「はい」

「ますますわかんなくなった…」

「〈囁告篇帙〉で見ても塗り潰されてるし…。

彼女、本当になんなんだろうね?」

「まさかとは思うけど、メリッサさん以外に閉じ込められた子だったりして…」

「それはないわ。まだ私しかアクセスしてないはずだもの」

 

本人含め、鞠亜の正体が見えず、揃って首を傾げる。

やはり、イレギュラーらしき存在を探すほかないか。

変わり映えのしない現状に辟易していると、ふと、背後から声が響いた。

 

「緑谷…?お前、緑谷か?」

「へっ?」

 

振り向いた先に居たのは、ヒーローコスチュームに身を包んだ焦凍。

その後ろでは、明らかに不機嫌そうな爆豪が唸り声を上げている。

近所の犬もこんな感じで威嚇してたっけ、と現実逃避しかけるも、出久は即座に気を取り直し、叫ぶ。

 

「なんでいるの!?!?」

「こっちのセリフだ。お前も敵アタックやってたのか?」

「え?いや、アトラクションなんて一つも回ってないけど…」

「このメンツが揃ってる時点で嵌められてんじゃねぇかクソが…!!」

 

流石は爆豪というべきか、ミオと出久を前に吠えるように吐き捨てる。

そんな爆豪に向け、鞠亜が不思議そうに首を傾げた。

 

「緑谷 出久。高血圧に悩まされてそうなこの爆発頭とお知り合いですか?」

「殺すぞクソガキ!!」

「…脳細胞まで爆発してるのでしょうか?」

「よしゴーサイン出たな今すぐ殺す!!!」

「かっちゃん、落ち着いて!!

鞠亜ちゃんもあんまり煽らないの!!」

「………?」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる爆豪を羽交締めにし、叫ぶ出久。

一方で爆豪が怒る理由が本当にわからないのか、鞠亜はしきりに首を傾げた。

 

「……なにか怒らせることを言ってしまったのでしょうか?」

「言いまくっとるわ!!」

「ま、鞠亜ちゃん…!頼むからあんまり刺激しないで…って、ん?」

 

ふと、過ぎる違和感。

爆豪 勝己を長年見てきた出久の脳が「かっちゃんの様子がおかしい」と叫ぶ。

ここまで激怒すると、爆豪は冷静さを失い、個性を使う。

多少は矯正されているものの、自分が羽交締めにしていたら余計にそのタガは外れているはずなのだ。

なのに、爆豪の掌からは火花の一つも発生しない。

 

「かっちゃん…、個性は…?」

「………っ」

「俺も爆豪も、仮想空間に入ってから使えなくなった。緑谷は?」

「えっと…、僕は筋力の増強は生きてるけど、天使が軒並み使えなくなってて…」

 

苦虫を噛み潰したような顔で黙る爆豪をよそに、出久は全身にワン・フォー・オールを巡らせて見せる。

仮想空間に入ってから力が削ぎ落とされたことと、何か関係があるのだろうか。

そんなことを思っていると、どこからか声が響いた。

 

「おかしいわね。ここじゃ個性なんて使えないはずだけど」

 

響いたその声に皆が一斉に視線を向ける。

そこに佇むは、鞠亜と瓜二つながら、彼女とは正反対の印象を受ける少女。

くすくすと小悪魔のような笑みを浮かべる少女を前に、皆が怪訝そうに眉を顰めた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ここかぁ…。なんか薄気味悪いとこだな」

「本当ですわね…。人気もないようですし…」

「私、こういうの緊張するタイプだわー…。『入ってもいいのかな』ってならない?」

「超わかる!!」

 

その頃、爆豪たちが眠る施設の前にて。

切島、麗日をはじめとしたA組の面々がチケットを片手に施設を見上げ、思い思いに談笑を繰り広げていた。




???…今のところ敵対の意思は見えない。

或守鞠亜…無自覚ながらかなりの毒舌。爆豪を怒らせる競技があればオリンピックメダリストになれるくらいには口が悪い。使命故か、「愛」に興味津々。

A組メンバー…罠にかかったのは爆豪と轟を除き、切島、飯田、麗日、八百万、上鳴、峰田、耳朗。そのほかのメンバーは各々I・エキスポを堪能中。


ハーメルンの呪い「更新したら数字が減ってく」にかかり始めた。がんばる
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