居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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原作でもそんな感じ


サポートが下世話すぎる秘密組織

「改めて自己紹介といこう。

私は『ラタトスク機関』という組織の長をしている、エリオット・ボールドウィン・ウッドマンだ。

元はDEM社の創設メンバーだが、アイク…、アイザック・ウェストコットとは袂を別ったと見てほしい」

 

立ち話もなんだから、と、促されるがままに公園のベンチに座った出久に向け、ウッドマンが頭を下げる。

随分と仰々しい肩書きと経歴である。

出久は萎縮しながらも、恐る恐るウッドマンに問いかけた。

 

「ラタトスク機関…って、どういう組織なんですか?」

「ざっくり言えば、ウェストコットの遺産に対抗するための組織だ。

主に、そこにいる『精霊』に対してね」

「……自分勝手なんだね。

勝手に産んだくせに、手に負えないとなると殺処分か」

「…ああ。最初はそう考えていたんだ。

睦まじく手を繋いで歩く君たちを見るまではね」

 

ミオの吐いた毒に食ってかかることもなく、正直に語るウッドマン。

とてもではないが、あのウェストコットと共にミオを生み出した仲とは思えない。

何か止むに止まれぬ事情があったのだろう。

そんなことを思いつつ、出久は問いかけた。

 

「その、ミオはこのままでも大丈夫なんですよね?」

「ああ、問題ない。

少なくとも、下手にこちらが手出しするよりは君に管理を任せたほうが安定している。

似合いのカップルを引き裂くほど野暮ではないさ」

「……よかったぁ」

 

ほっ、と胸を撫で下ろす出久。

ミオも似合いのカップルと呼ばれたためか、一瞬だけ顔を綻ばせ、すぐさま膨れっ面へと戻った。

 

「それで、僕に会いに来たというのは…」

「単刀直入に言おう、緑谷出久くん。

君にミドリヤ ミオの面倒を見て欲しい」

「………見てますけど」

「見られてますけど」

「それにもいろいろと不都合はあるだろう?

移動手段が限られていたり、懐だってあまり豊かではないはずだ」

「……えっと、つまり?」

 

話が見えてこない。

いや、正確には見えているのだが、見たくない。

そんな出久の気持ちを無視するように、ウッドマンがにっこりと笑みを深めた。

 

「君たちのデート代は私たちが出す。

言われれば車も出す。だから、彼女の敵意が世界に向かないようにしてくれ」

「それってつまり『デートして機嫌取れ』ってだけですよね?」

「ざっくり言えばね」

「嘘だろおい秘密組織がデートを応援する下世話な集団になっちゃったぞ」

 

それでいいのか秘密組織。

もうちょっとサポートの方法あるだろ、などと思っていると、ウッドマンは「心配ない」と続けた。

 

「職員たちは恋愛経験も豊富でね。

彼らの手にかかれば、君のようにウブな子でも、引く手数多なプレイボーイに大変身することだろう」

「プレイボーイはちょっとヤですけど…、参考までにどんな人がいるんですか?」

「五回の結婚を経験した人とか、夜の女の子たちに絶大な人気を誇る社長さんとか…」

「これ以上なく不安な人選なんですが!?」

 

4回は離婚してる人間と、金と権力にモノを言わせて女を侍らせる人間。

まともな恋愛遍歴があると思えない2人でも、「恋愛経験豊富なエリート」扱いなのが末恐ろしい。

正直なのは美徳だろうが、事実に問題があり過ぎるのなら隠しておくべきなのではなかろうか。

出久はそんな呆れを振り切るように、話題を切り替えた。

 

「と、ところで、なんですけど…。僕の活動はしっかりバレてたり…」

「するね。むしろそれで君に接触しに来た」

「申し訳ございませんでした」

 

それは静観していたカレンですら目を見開くような、流麗な土下座であった。

ウッドマンもまたそれに唖然と呆けたのち、ぷっ、と吹き出した。

 

「安心してくれ。別に突き出そうとか、弱みを握ったとかは考えていないよ。

ただ一つ苦言を呈するなら…、あのクオリティの変装はまずかったね。

世間向けに誤魔化しはしたようだが、相手によっては正体を突き止めることができてしまう。

ちょうど、そこに居る女性のように」

「はい…???」

 

2人がウッドマンが指差す方向へと目を向けるも、女性のような影は見えない。

が。気配はうっすらと感じる。

相当に隠れるのが上手い人間なのだろうか。

そんなことを思っていると、物陰からレディ・ナガンが姿を見せた。

 

「れっ、れれれっ、れっ…!?」

「初めまして、お嬢さん。

長い時間立たせてしまって、申し訳ない。よろしければこちらにどうぞ」

 

ウッドマンがそう促すと、ナガンは猜疑心をむき出しにしながらもこちらへと歩み寄る。

どすんっ、とベンチが傾きかけるほど勢いよく座ると、彼女は出久を睨め付けた。

 

「随分と演技派だったな、ガキ」

「え、演技してたわけではなくてですね…。

あの、無個性なのも本当なんで…」

「だったらあの大砲は?

個性じゃなかったらなんだって言うんだ?」

「天使だよ」

 

ナガンの問いに答えたのは、出久の隣に腰掛けていたミオ。

天使。そこから連想できるのは、イタリアン風チェーン店に飾られた絵画に描かれたものくらい。

なんの脈絡もなく出てきた単語にナガンが首を傾げていると、ウッドマンが口を開いた。

 

「天使は個性ではない。

言うならば、精霊と呼ばれる超存在が生み出す超自然的な『現象』。そう言う災害を、彼ら彼女らは意志を持って使っている。

考え得る限り正しく、ね」

「……災害じみた個性は今の世の中ありふれてやしないかい?」

「それとは規格が違いすぎるのだよ」

 

いくら強大な個性とて、世界の理…概念や法則を好き勝手に書き換えるほどの力は持たない。

ウッドマンは神妙な面持ちで、しかしながら優しげな表情を崩さずに続けた。

 

「天使は世界の意思そのものと言っていい。

敵の殲滅は当たり前。大陸一つを吹き飛ばすことも簡単。果ては歴史の改竄、未来の編纂、使い方によっては惑星どころか、宇宙そのものを破壊することだって可能にしてしまう。

文字通り、世界を好き勝手に弄べる力だ。

ただの個人が持っていい力ではないが…、事実、個人が持っているのだからもうどうしようもない」

「…殺せばどうなる?」

「それこそまずい。意思のなくなった力が誰かの手に渡るだけ。

ならば、悪意を持った者の手に渡るよりは、最も管理しやすい状況である今を続けるほかない」

 

だから下世話にも程があるサポートをすると申し出たのか。

出久がそんなことを思っていると。

ふと、ナガンの横顔に憂いが見えた。

 

「……なんで私にそれを聞かせた?」

「ラタトスクにはプロヒーローも何人か所属しているんだが、いかんせん人手不足でね。

少しでも有用な人材が欲しいと思ったんだ」

「……スカウトならやめときな。

私は公安に首輪をつけられてる。奴らに言われたら殺しだってやる腐れ外道だ」

 

その言葉に、出久が目を見開く。

もうどうでもいいか。

あまりの情報量を前に思考を投げ捨てたナガンの自虐に、ウッドマンが深く頷く。

 

「そう、それなのだよ。ラタトスクが求めている人材は」

「………は?」

 

どういうことだ。まさか、殺しをしろとでも言うのでないだろうな。

ナガンがそんなことを思っていると、ウッドマンは慌てて取り繕った。

 

「ああ、すまない。

私が言ったのは、『唐突に死んでも不自然じゃない立場の人間』という意味なんだ。

君の立場での辞職は死を意味する。そうだろう?」

「……まあ、そうだけど」

 

どこまで知ってるんだ、この男は。

ナガンがそう呆れるのも束の間、ウッドマンは彼女に深々と頭を下げた。

 

「ラタトスクはウェストコットの情報をたらふく抱えてる。

公安に所属し、その闇を飲み込んできた君だからこそ頼みたい。

人を殺せ、とは決して言わない。約束する。

彼の狂気を打ち払うために、ヒーローとしての力を貸してくれ」

「……要するに、死んだふりしてそっちにつけってことね」

 

ナガンはそこまで言うと、顎に手を当てて思考を巡らせる。

簡単に信じていいものか。また、あの時のように騙されているのではなかろうか。

思考を巡らせるのも束の間、ウッドマンが彼女の手に名刺を握らせた。

 

「返事はすぐでなくても構わない。

いい返事を期待しているよ」

 

ウッドマンは言うと、ことの成り行きを見守っていた出久とミオに目を向けた。

 

「さて、と…。そろそろ仕事の時間が迫っているのでね。私はここいらで失礼させていただくよ」

「……あ、あの、ウッドマンさん。

その…、ありがとうございました」

「……ありがとう」

「いやいや。私はただ話をしただけだ。

老人の長話に付き合ってくれてありがとう」

 

言うと、ウッドマンと車椅子を押すカレンの姿が街中へと消える。

残された出久たちは顔を合わせ、ため息を吐いた。

 

「とりあえず、帰ろっか。疲れたし」

「……デート…」

「明日ならしてあげるから…」

「………」




レディ・ナガン…唐突に出た転職の誘いに揺れている。この日、初めて報告を誤魔化した。
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