居候がおやつ感覚でトンデモ能力渡してくるヒーローアカデミア   作:鳩胸な鴨

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ヘドロ事件

「そう言えば、緑谷も雄英志望だったな」

 

人の進路を皆の前で言いふらす教師の顔面をフルパワーで殴っていい法律でも出来ないだろうか。

視線にさらされる中、出久は自身に向けられる視線に肩を震わせる。

「勉強できるだけじゃ無理」だの心無い言葉が嘲笑とともに飛び交う。

それは別にいい。慣れている。

天使の力を人前であまり見せないようにしている弊害が出たか、などと思っていると、机が爆ぜた。

 

「わぶっ」

「こらデク!!没個性どころか無個性のてめェが、なんで俺と同じ土俵に立てるんだ!?」

「ま、待って、かっちゃん…。張り合うつもりとかはなくて…、その、目標だし…、それにほら!やってみないとわかんないし…」

「なァにがやってみないとわかんないだ!てめェが何をやれるんだ!?」

 

世界を滅ぼせます。

そう言えたら気が楽だったのだろうが、ラタトスクから「あまり正体がバレるような真似はしないでくれ」と釘を刺されている。

出久が口を噤んでいると、ふと、その様子を見ていたミオと目があった。

やばい。教室一つどころか、ここら一帯が消し飛ぶくらいには機嫌が悪い。

出久は慌てて「そ、それより早く席着こう!後で話は聞くから!」と不機嫌を爆発させる幼馴染を宥めた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「まだ話終わってねェぞ、デク」

「……か、かっちゃん…」

 

放課後。

中途半端に宥めたのが悪かったのか、それとも致命的に仲が悪いからか。

明らかに「俺、不機嫌」と自己紹介して回るような顔を晒す幼馴染…爆豪 勝己がノートを取り上げる。

将来に活かすための分析をこれでもかと書き溜めたノート。

そのノートを前にして、取り巻きが「マジか!」だのバカにして囃し立てる。

出久はそれを気にすることなく、「返して」と手を伸ばした。

 

「ふんっ」

 

そのノートは、爆豪が引き起こした爆破によってズタボロになった。

まずい。ノートを爆破され、窓から捨てられた怒りよりも先に、出久は心配を背後に向ける。

ミオから表情が消えている。

やばい。確実にやばい。

でも、こっちも放っておけばどうエスカレートするかわからない。

出久の心配事をよそに、爆豪は「箔をつける」というみみっちいにも程がある展望を彼に語った。

 

「つーわけで一応さ。

雄英受けるな、ナードくん」

「〈万象聖(アイン・ソフ・オウ)…」

「わーっ!ストップ!ストーーーップ!!」

 

全方位即死攻撃が飛ぶより先、出久がミオの手を引いて脱兎の如く爆豪から逃げる。

「待てやデク!!」と怒号が響く中、出久は全速力で階段を駆け下がった。

 

「離して、イズク!アイツ殺せない!!」

「殺しちゃダメって言ってるじゃん!!」

「だって、だって…!!」

「上手く付き合うのも人として必要なことなんだよ!!」

「………上手く付き合えてたらあんなに仲悪くなることないよね?」

「急なマジレス!!」

 

全くもってその通り。

そんなことを思いつつ、出久は池に浮いていたノートを拾い上げ、帰路についた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

帰り道にて。

頬を膨らませ、不機嫌を訴えるミオがため息混じりに呟く。

 

「……もうちょっと言い返した方がいいよ、イズク。

増長しすぎてもはやモンスターになってるよ、あの爆発頭」

「爆発頭て。もう4年…、ああ、いや、5年の付き合いになるんだからいい加減名前覚えなよ…」

「あんなのの名前覚えたくない。

リソースの無駄」

「心底嫌われてるなぁ、かっちゃん…」

 

嫌われるような覚えしかないが。

傍若無人な普段の振る舞いを想起していると、ごぽっ、と背後のマンホールから音が響いた。

 

「Mサイズの…隠れ蓑…!」

「っ、ミオ!!」

 

ミオを突き飛ばした途端、出久の体がドロドロとした流動体に覆われる。

ヘドロのような個性の敵か。

そんなことを思いつつ、体の中へと入り込もうとする敵にバレないよう、体を作り変える。

 

(〈氷結傀儡〉を腕に組み込むイメージ…)

「助かるよ、君は俺のヒーローだ。

まさか『あんなの』がこの街に来てるとは思わなかった…」

「イズク…!」

「掴めるわけないだろ、流動的なんだから!」

 

じゃぼっ、と腕を体に通す。

まずは凍らせる。出久が作り変わった腕から冷気を放とうとした、その時だった。

 

「もう大丈夫だ、少年!!」

 

ごぃんっ、とマンホールの蓋が吹き飛んだのは。

 

「私が来た!!!!」

 

永遠の憧れ。平和の象徴オールマイト。

出久は能力を解き、その拳の風圧にさらされる感覚に感動を漏らした。

 

「オールマイト…!!!」

「……げっ。筋肉だるま」

 

ミオからの評価は依然低かった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「いやぁ、家宝になるぞ、このノート!

怪我の功名ってまさにこのこと!」

「イズクならあの程度どうにもなった」

 

ボロボロになったノートを手に興奮をあらわにする出久に、ミオが呆れを口に出す。

ミオはあまりオールマイトのことを好ましく思っていない。

その理由が何かまではわからないが、出久は不機嫌そうに顔を歪める彼女に問いかけた。

 

「オールマイトのことは嫌いなの?」

「見た目が無理なだけ。

筋肉ムキムキのおじさんが必要もないキツいコスプレしてるの、なんか居た堪れない」

「おおうっ……」

 

破壊力の凄まじい全方位攻撃である。

そんなこと言ったら大半のヒーローそうなるんだが。

ミオからすれば、ヒーローのコスチュームは痛々しいコスプレに思えるらしい。

その認識も変えなければなぁ、などと思いつつ、いつもの商店街へとさしかかる。

 

「……なんか集まってる」

「何かあったんだろうけど…、ちょっと見てみる?」

「ん」

 

直後に響く轟音。何かが焦げた匂い。

この社会では珍しくもない破壊の痕跡に導かれるように、2人は人だかりの外からその様子を見つめる。

その奥に見えたのは、先ほどの敵。

オールマイトがペットボトルに詰め込んだソレが隆起するのを前に、出久は息を呑んだ。

 

「え、アレなんで…!?」

「筋肉だるまが落としたのかも。それか、気づかれないように逃げ出したか」

「なら、オールマイトも向かってるんじゃ…」

 

出久は言うと、ある違和感に気づく。

これだけ暴れてるのにヒーローがなにもしない。

現場にまだ来てないのか、と思いつつ周囲を見渡すと、悔しそうに歯噛みするヒーローたちが見えた。

 

「誰か有利な奴が来るのを待つしか…!」

「あの子には悪いが、少し耐えていてもらおう!」

 

誰かが人質にされてる。

その人質が使う個性は、この場にいるヒーローには対処できない。

状況を飲み込んだ出久は囚われた人質を見やる。

 

そこに居たのは、苦悶に顔を歪めた爆豪だった。

 

「馬鹿ヤローーーッ!!

止まれ!止まれ!!」

 

天使を使うことも忘れ、飛び出す。

ヒーローたちの怒号すら置き去りにして、爆豪へと駆ける。

ヘドロの敵が爆豪の腕を操り、いつもよりも破壊力を乗せた爆破を出久に放つ。

 

「爆死だ」

「慣れてる!!」

 

悲しいことに。

そんなことを思いつつ、頭を吹き飛ばされながらも爆破を放った腕を掴む出久。

傷を舐めるように炎が走る出久の顔を見上げ、爆豪は声を漏らす。

 

「デク…、お前…、なんで…」

「わかんない…、けど…!

君が救けを求める顔してた…!!」

 

天使を使わねば。だけど、この状態で正体を晒すような真似はできない。

この再生はミオの個性として登録している。

きっと、爆豪もミオに力を借りた無個性のバカが飛び出したとしか思っていない。

どうやって乗り切ろうと考えていると。

2人の腕を、剛腕が掴んだ。

 

「ナイスガッツだ、少年!

あとは私に任せろォオッ!!」

 

二度目の憧れの声。

拳を地面に叩きつけたオールマイトが巻き起こした暴風に晒される中、ミオは小さく呟いた。

 

「……カッコいい」




緑谷 出久…再生するからと無茶に拍車がかかってる。この後、戸籍上は無個性だとバレてめちゃくちゃ怒られた。

ミオ…その気になれば全方位即死攻撃を放てる規格外。オールマイトがカッコいいと言われる理由がなんとなくわかった。
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