猫耳の生徒が部屋を出てすぐに一発の銃声が校門の方角から鳴り響いた。
教室を出て校門の方に目を向けてやれば、更にけたたましくわざわざ弾薬の無駄遣いまでして、空に向けてアサルトライフルの弾をバラ撒いてるヘルメットを被った不良共。
シャーレが普段仕事場としているD.U.シラトリ区にも一応はいるヘルメット団という連中だ。
というより居た、というのが今のシラトリ区で言える話だろう。
ベイラム系列企業の出向者やら俺がひっ捕まえて入ったレッドガンのメンバーの戦術は単純明快。
数で捻り潰す、ヘルメット団とは数が勝負どころというのは一緒だったがこちらは質も量も揃っているところを相手は足し算のみで挑んできたために、蹂躙されレッドガンに更生という名目で入って規模が更に増えている。
それを繰り返した結果今現在シラトリ区にまともに区別できるような名前のヘルメット団は存在せず、逆にレッドガン稼働から一週間未満ながら構成員四百を超える大所帯となっている。
そんなシラトリ区や有名な学区くらいにいるようなものだと思っていたが…こんな砂漠化が進んでいるところにまで幅を利かせているとは、派閥争いが激しいのか適応力が高すぎるのか。
「ひゃーーっはは!」
「攻撃!攻撃!やつらは弾薬がもうそこまでないからボーナスステージだぜ!」
「世紀末に生きているのかあいつら」
これにはツッコミを入れざるを得ない。
ルビコンも世紀末だったがあそこまで昔地球で流行ったという世紀末漫画に出てきそうな雑魚のような言葉を吐いているやつはいなかった。
「武装集団…ッ!カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら…!!性懲りもなく!」
「毎回あんな感じなのか…?俺の知ってるヘルメット団と相当違うが」
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!ほら寝ぼけてないで、起きて起きて!」
やけに世紀末な襲撃だが、さっきまで姦しくわちゃわちゃしてた奴らも急にキリッとした顔立ちに各々の武器を構えている。
これもこいつらの日常で、悩まされている問題の一つ程度なのだろう。
「むにゃ……まだ眠いよぉ…」
「ホシノ先輩!ヘルメット団の襲撃です!こちらの方はシャーレの先生です」
猫耳娘に連れてこられたのは先輩と言う割に、この中で一番小さい、初見では一年生程度と思ってしまっていただろう。
他のメンツから聞いた話だとこの桃色髪が一番の先輩、恐らく三年生なのだろう。
「ありゃ…そりゃぁ大変だねぇ…あ、先生?よろしくー…ふぁ…」
「欠伸をしている暇があるとは随分といい目覚ましがないと見える。俺が一発いい目覚ましを聞かせてやろうか?」
「んーん、平気だよ。これが終わったらまたお昼寝するからねぇ…」
寝ぼけ眼でこちらを見る目は…寝ぼけて少ししか開けていない目の割に随分と場数を踏んだ戦士の目をしている。
目の下は少しくまが浮き出ていて、それでも周りに悟られないよう値踏みをしつつ一定以上距離を置いて見極めようとしているような、企業に騙された経験のある独立傭兵染みた目だ。
「すぐに出るよ。先生のおかげで弾薬と補給品は十分」
「はーい、みんなで出撃です☆」
カートに積んでいたどんな射撃下手な新兵野郎共でも使い切れないであろう弾薬が詰められたマガジンや、ガトリングガン用のドラムマガジンを掴んで、背中にマガジンを取りつけられる紐につける者もいれば、盾の裏にマガジンを取りつけて外に出ていくたった5人の精鋭生徒たち。
「私がオペレーターを担当します。先生も危険ですのでこちらでのサポートをお願いします!」
「ふむ…奥空、敵の数は?」
「はい?えぇっと…おおよそ二十四名、全員正面から来ています!」
「そうか…こちらでも確認している人数は二十四名!なら俺も攻撃に回ってやろう!」
「え!?前に出る気ですか!?危険です!」
「前には出ん!だがここからでも十分射程だ!」
奥空が心配して前に出るなと言ってくるが問題ない。
校舎の中から頭をぶち抜いてやれば問題は解決される。普段肩にかけているように着ているジャケットの関係で、隠れている両脇辺りにつけてるホルダーから二丁の銃を取り出す。
片方は銀色の美しい銃身を、もう片方は黒鉄の綺麗な色をした長身の銃身をもつ銃が暗く輝いた…そう見えた。
中庭では既に交戦を開始しており、アビドスのメンツがヘルメット団を迎撃しているが、前線を支えているアビドス側は四人、六倍の物量差に少なくない被弾を受けている。
それでもアビドスのメンツ達は服に掠らせている程度でヘルメット団はヘルメットにヒビが入ったり、胴体に何発か食らっていたりなど、練度の差が伺える。
その中で校門の入口を盾にしている二名の頭目掛けて左右に握る銃の銃口を向け、特に照準を見ずに引き金を引き発砲。
左右に握る銃から重厚な音を立てながら排莢されると同時に二名のヘルメットが砕かれて意識を失ったのかぶっ倒れる。
「な…!?ど、どこからだ!」
「驚いている暇があるならさっさと壁際まで連れて行け!貴様らにはまだまだ得るべき教訓がある!」
意識外からの射撃で倒れた二名に驚いて、身を乗り出したバカの頭のヘルメットを追加で黒鉄の方で、さらに撃ち抜いてもう一名亀を生産してやる。
動揺の少なかった一部のヘルメット団からお返しの弾が飛んでくるが柱の影に隠れながら銀色の銃でお返しにもう一人夢の世界に送ってやる。
「え…い、今まともに狙ってなかったわよね…?」
「ん…狙ってないはず」
「うへ〜…先生なんで当たるのさー」
「予習復習実戦!どこの世界でも重要なことだ!貴様らも遠距離射撃訓練を二時間増やせば半年もすればできるようになる!」
「というより、あの威力…どんな銃を使えば出せるんです?」
「知らん!部下のバカどもが俺用にと持ってきたのでな!」
その後、上から遮蔽物に隠れてるやつを炙り出しては慌てて出てきたりしたやつが、アビドスの精鋭に狩られ、ヘルメット団の約六割がやられた頃には逃げ腰になり七割に届く前には夢の世界に旅立っている奴らを守りながら撤退していった。
これによりアビドス防衛戦は無事、5分も経たずに終了した。
「いやぁ…まさか勝っちゃうなんてねぇ。ヘルメット団もいつもより規模大きかったし」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩…勝たないと学校が不良に不法占拠されちゃうじゃないですか…」
「ん、先生の指揮と支援が良かったね。
これが大人の力…弾薬もたくさんだし、それに指揮と支援まで。大人ってすごい。」
「まだ大して知らんがキヴォトスの大人が弱いだけだ。俺の前の仕事場ならマシンガンどころかミサイルも飛び交っていたぞ。」
「外ってそんな世紀末なんです…?聞いてた話とは随分違うような…」
ルビコンも木星も大体世紀末だっただろう。
なんならベイラムが幅を利かせているベイラム経済圏ですら、度々ACを使用したテロも起きているのだから。
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。お爺ちゃんが帰ってきたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「その弄りはさっきやったよ、ホシノ先輩」
「ありゃ、そうなの?まー確かに似てるもんね二人とも」
「どこが?」
「待て、俺の家系に銀色混じりの灰色の髪をしたやつもいなければ桃色髪の奴も居ないぞ。」
「ッ…へ、変な冗談はやめて!先生困ってるじゃん!それに委員長はさっきも床で寝てたしその辺でも寝れるでしょ!」
「貴様今笑っただろ、どこが面白かったか言ってみろ。」
そんなに砂狼とこの桃色頭とのコントが面白かったのかこいつら。視線を他に向けてやれば奥空に十六夜のやつも顔をそらして笑いをこらえてやがる。
ここがレッドガンならラリアットで吹っ飛ばしてやるというのに。
その後、まともにしていなかったアビドス面々の自己紹介と改めてこちらの自己紹介をし、取り敢えず補給路を引くためのグラウンドへのヘリ着陸許可証にサインを求めつつ、これからのヘルメット団への防衛線にレッドガンから数名引っ張ってくるか考え始めた時。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ………!?」
「………大丈夫か?同じ組織の長として悩みを聞いてやるぞ?委員長」
「うへ〜…それはまたの機会にお願いするね〜。けどまさか2人からこんな反応をされるなんてねー。おじさんだって、たまにはちゃんとするのさー」
俺の前だから気の抜けたような仕草で油断を誘っているのではなく、常日頃からこんな調子なのだろう。
…だからこそ一応は相談を今度聞いてやるとしよう。
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんところずっとそういうサイクルが続いてるからねー。だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、やつらの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こっちは資源は潤沢、向こうは一番消耗してるタイミングだろうしね。」
ようは追撃戦だ。
気の抜けたような態度からは判断できない、やはり目から感じ取った歴戦の戦士でありながら相手の嫌がる所を押さえられる切れ者でもあるようだ。
「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」
「小鳥遊。いいだろう、一番現実的な案でもあるというのもあるが…」
「…へぇ?」
言葉を区切る俺に怪訝な目を向けてくる小鳥遊。だがそんなことを気にせず言ってやろう。
「お前たちにシャーレの流儀を教えてやるいい機会だ!
5分で支度を済ませろ!愉快な遠足の始まりだ!」
ミシガン総長の拳銃
ジャッカル&カスール
みんな大好きHELLSINGで出てきた対化物拳銃
の模倣品。
ただし弾は流石に吸血鬼なんているわけがないので某儀礼済みの銀なんて使ってないし炸薬を減らしているため威力はオリジナルよりは下がっている。
この澄み渡る世界観にも外の世界から漫画として流れ着いており
ミレニアムの一部の生徒から熱狂的と言っていいほどの人気を誇っているようで、再現品として作られたものだったがやはりどこまでもリスペクトの精神を忘れない生徒たちな為、やはり【通常の人間】が片手で持つ拳銃としては使える代物ではない。
だがミシガンは強化人間であり、筋力並びに身体機能の大幅な強化を施されている為に片手での使用が可能となっている。
ちなみにこの二丁をミシガンに渡したのはもちろんレッドガン隊員であり、その隊員はたまたま再現品を作った生徒と友人であったため、ミシガンのシャーレの着任と同時にミシガンなら使えるだろうと友人である生徒にミシガンの資料プレゼンし本当に使えるならと半信半疑で提供されたが
もちろんミシガンは扱ってみせた。
使える人が現れるはずがないと埃をかぶっていた拳銃を十全に扱う大人の先生に脳を焼かれた一人がレッドガンの戸を叩いた。
今では更にいろんな銃も再現した模造品を製造しながらもより理解者たちが増え充実した顔で居るという。