あの後残党のならず者どもを地面に転がしまくったあと、いつの間にやらワカモは姿を消していたらしい。
恐らくはクルセイダーⅠ型を撃破した辺りで形勢が悪化したのを理解してとは思うが自身の引き際を誤らない者ほど戦場で厄介なものはない。
それが弱虫の初心者であればただのラッキーボーイだが逆に強者の熟練者であればあるほど敵対した側としては面倒だ。
その後軽くオオサワと話し現在の状況を共有後にクルセイダーⅠ型は重要な戦力となるためビル正面に陣取らせ早瀬等も近辺の哨戒に回し俺は一人ビルに入り目標物の回収を遂行するために事前に言われていた地下に行くための階段を警戒しつつ降りていく。
「うーん…これが一体何なのか、まったく分かりませんね…」
階段を音も立てずにできる限り気配も殺しながら降りていったところ下から声が聞こえる。こちらには気づいていないようだったので階段側に背を向けながらなにかを物色している姿を視認しその服装から狐坂だと理解する。
「ほう、おまけが時間稼ぎしている間に尻尾を巻いて逃げたと思っていたが、どうやら度胸はあるらしいな。」
背後から声をかけつつ自身の対弾コートの下にしまっている殺傷力より相手の防弾チョッキを撃ち衝撃で昏倒させることを前提に開発されているハンドガンを抜き放ち銃口を一瞬でこちらに向き直りながら銃口を合わせてくる狐坂の額に向ける。
「……時間稼ぎにはちょうどいいと思っていましたが、どうやら見込み違いですね」
「あぁ、俺も少し予想外があったが計算は乱数があったほうが面白い結果になると勉強になった。」
実際四人で制圧予定で計算を組んでいたところをオオサワが来たのだ。
乱数もいいところでありこれがテストなら多いに発狂ものだろう、乱数は振れ幅も広いが高点数を引いてやればいい。
オオサワもそう言うだろう。
そういえばオオサワのやつなぜ小娘になっていたのか、小娘にしては俺のほうが先に転んでいたがそれにしては年齢が合わん気がするがと思っているとこちらの顔をじっくりと見たらしい狐坂の握る銃が震え始める。
「あら、あらあらあら………」
震え過ぎてもう銃口が定まっていない。
そのさ迷う銃口とは違い視線だけは俺の顔から外れない。
その腕と顔の状態の違いからなんとも言えない顔に変わっていると自覚がある。
「おい、貴様その腑抜けた腕はどうした」
「あ、ああ……」
「どうした?言いたいことがあればはっきりと…」
「し、し……失礼しましたー!!」
狐坂は急に動き出したと思えば俺が降りてきた階段を壁すら蹴って猛ダッシュで駆け上がっていき姿が見えなくなる。
大声を上げる前にどこかに消えた狐坂になんとも言えぬ感を感じ顎を擦りながらまぁ今作戦での一番の障害がいなくなったのだ。
まぁいいとしよう。
そう頭を切り替えたところで、七神のやつが狐坂が消えていった階段を降りてくる。
特に疲れた顔等もしていないことから狐坂と入れ違いで降りてきたのだろう。
「ここに、連邦生徒会長が残したものが保管されています。」
そう言う七神は、狐坂が先程まで弄っていたものから端末のような物を手に取り俺に差し出す。
「これは…タブレット端末だな?」
ベイラムに移籍したあと弾薬管理や機体のパーツの搬入を苦心しながらもルビコン3に降下させるルートの開拓、必要物資をどこの前線基地に運び込むか指示を出していたナイルの愛用品であった端末に似てもいるがそれより旧式には見える。
「はい。これが連邦生徒会長が先生に残したもの。キヴォトスを救うために必須の一手、【シッテムの箱】です」
旧式のものは嫌いではないがそれでもどこにでもありそうなシンプルなデザインの割に大層な名前の端末を受け取りつつ角度を変えて全体を確認しながら七神の説明を聞く
「それは普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないオーパーツに含まれる物でしょう。
製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組み、材質さえ全てが不明。
連邦生徒会長がこのシッテムの箱は先生の物であり、先生がこれでサンクトゥム・タワーの制御権の復旧が出来るはずだと言っていました。
私達では起動すらできなかった代物ですが…言葉通りでしたら先生なら起動させられるでしょう。」
俺は説明を聞き終えながらシッテムの箱を今一度見る。
俺達の時代に使っていたタブレットとは違い堅牢さ特化のような完全に無骨の言葉が似合うようなものではなく飾りっ気のない白一色のシンプルな一般で出回っているデザインでカメラはついていないようだ。
画面はまだ電源がついておらず黒く塗り潰されたようでどことなく不気味さを感じるがどの世界に行こうとこの不気味さは変わらんと感じてその画面に指を当てなぞる己がいる。
ここから先七神の道案内は無いだろう。
こちらを少し離れ見ている。
これを起動させれば、俺はもうあの赤い空の下で死んだ体に戻れないと、ただ鬼教官ではいられないという予感がする。
だが問題など無いだろう。
ただあの殺伐とした赤い空が支配する世界とこの透き通るかのような空の世界で自分に子がいたのなら孫くらいの小娘どもに世話になる時間は終わった。
歩く地獄、木星戦争の英雄、G1…それこそが自分ミシガンというちっぽけな部下を守れん人間だった。
これからは俺が、俺の選択が未来を変えるのだろう。
死んだ先の透き通る世界は地獄なのだろうか?ならばこの世界で出会った七神や早瀬等は地獄の看守ときく鬼という奴なのだろうか。
あぁ、ならばここは俺が歩こう。
歩く地獄なのではなく歩いた先の地獄をだ。
息を大きく吐いて頭をよぎる言葉を口が勝手に語りだす。
……我々は望む、七つの嘆きを。
……我々は覚えている、ジュリコの古則を
【シッテムの箱】へようこそ、ミシガン先生。
生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムA,R,O,N,Aに変換します。
視覚が暗転する。
その刹那、そう聞こえた気がした。
実は今今後出す為の設定を煮詰めているので投稿が遅れると思われます。
ネタバレになる設定からキャラの設定まで色々煮詰めているので話が次に投稿されるまで時間が空きますがお許しください