MCUの世界にイレイナとして転生したけど、開き直って好きなように生きていきたいと思います 作:ちいさな魔女
イレイナです。私は箒の後ろにバッキーさんを乗せて、一番高い位置にいるヘリキャリアへ向かって飛んでいきました。他のヘリキャリアは海へ落下していますが、一番高いヘリキャリアだけはまだ落下していません。
「恐らくスティーブさんが居るのは、一番高い位置にあるヘリキャリアでしょう」
「………俺は、どんな顔をして会えば良い………」
「知りません。自分でなんとかしてください」
「冷たいな」
何か言われましたが知りません。あくまで自分達の問題です。私が口に出すのは無粋です。
私はあくまで旅人です。旅先で起きている国内の情勢や問題は、自分達でなんとかするべきです。まあ、どうしてもと願うなら、手を貸して上げなくもありません。お金も弾んでくれる事前提ですけど♪
屑?なんとでも言えば良いんです。何事もお金が必要ですから、沢山有っても困る物では無いはずです。
「着きましたよ」
私は墜落するヘリキャリアの傍に寄りました。
すると、ヘリキャリアの下部にある窓縁にしがみつき、落下しないようにしているスティーブさんの姿がありました。
箒の上に乗り、器用に立ち上がったバッキーさんが声を上げました。
「スティーブ!!!」
「ッ!バッキー!!」
スティーブさんが声に気付き、私達の元を向きました。
「スティーブさん!跳べますか?」
「やってみる!」
スティーブさんは窓縁に這い上がり、まだ割れてないガラスの上に立ちました。少し後ろへ下がった後に、このまま私達の元へ走って来ます。
「だあああああっ!!」
スティーブさんが窓縁ギリギリの所で跳んで、私達の元へ向かって来ました。
私は乗ってる箒をスティーブさんの元へ寄せて、スティーブさんとの距離を少しでも縮めました。
「スティーブ!!掴まれ!!」
「バッキィィィー!!」
スティーブさんが、箒に乗りながら片手を伸ばすバッキーさんに向かって、スティーブさんが手を伸ばしてきました。
金属の左手ではなく人としての右腕を伸ばすバッキーさん、中々エモいですねぇ。右手の握手という意味でも、利き手という意味でも、神に仕えるミカエルの意味でも。あらゆる意味で右手を差し出すというのは、とても良い意味がありますから。
そして、スティーブさんの右手を握るバッキーさん。しかし、スティーブさんが重かったせいか箒からずり落ちそうになるバッキーさん。金属の左手で箒を掴みましたが、そのせいで私の乗る箒も落ち始めました。
「定員オーバー過ぎですぅ!堕ちてしまいますよぉ!」
必死に真上に上げようとしますが、前に進めても落下が止まりません。ヘリキャリアを見ると、トリスケリオンに向かって飛んでいきました。機体からは黒煙と炎が上がっているので、いずれ墜落するのも時間の問題でしょう。
しかし、私は箒に乗せたバッキーさんとスティーブさんを運べず、このままでは地面に不時着する前に海へ落下してしまいます。
「そのスーツ、まだ有ったのか!?」
「君に思い出してくれるように着替えたんだ!」
「相変わらずダサいな間抜け野郎!」
「口が悪いぞクソ野郎!」
お互い抱き締め合ってますが、私は箒を上げなければ海に墜落してしまいます。
「お、重い……もう無理……落ちますぅ………」
箒が真下に向きかけた、その時でした。
「大丈夫か!?下から支えてやる!」
下からサムさんの声がしたかと思えば、サムさんが私の前に現れて、箒を下から支えてくれました。
「うがあああああっ!!」
サムさんと協力して、私は落下する事なく港に降り立ちました。しかし、箒から私達は投げ出されて、私達は何度も地面を転がる羽目になりましたが。
「………筋肉は重いですね」
「朝飯食いすぎた」
「食べ過ぎです」
私達は息を切らしながら、その場で仰向けになりました。
「………バッキー……僕を思い出してくれたのか?」
「断片的にだがな。あの魔女が俺の記憶を呼び覚ましてくれた」
「………彼女はイレイナだ。世界中を旅する灰の魔女だ」
「イレイナか………なあお前!」
バッキーさんが私を呼びました。
「………はい?」
私は上半身を起こし、バッキーさんの元を向きました。
「お前………何処かで会ったか?」
「………キモいんですけど?」
「………冷たいな」
私の中でバッキーさんへの信頼が下がる………筈でしたが、私は気になったので尋ねて見ました。
「キモいバッキーさんに質問です。何故私にその質問をしたんですか?」
「君は前に、俺が殺しの任務で殺そうとしたある女にそっくりだった。ウィンター・ソルジャーとして動いていたから記憶は曖昧で、かなりうろ覚えだが、暗殺で失敗したのはそれっきりだった。その女は、お前みたいに不思議な魔法を使っていた。俺の襲撃を感知したり、狙撃を回避したり、天候や天体を変えたりと、とんでもない強さだった」
「………名前はなんと?」
「名前はヴィクトリカ。名字は分からない。だが、かなりの強さだった」
やはり。それ、この世界のイレイナの母親の名前ですね。
「もしかして、イレイナの母親か?」
サムさんが口を挟みました。
「その可能性が高い」
スティーブさんが肯定してくれました。
なら、私の旅の目的が新たに追加されました。
「ありがとうございます。お陰で、新たな旅の目的も増えました。世界中を旅して楽しむ事。そして、私と母のルーツを探る事です」
新たな旅の目的が決まった時、心の底から冒険に出たいという意欲が更に湧いてきました。
「イレイナァー!!」
トッペマの声が響きました。私が空を見上げると、トッペマが空からスカートをプロペラのように回しながら、私の元へ飛んで来るのが見えました。
「トッペマー!!」
私は迫って来たトッペマを正面から抱き締めましたが、トッペマの飛んできた勢いで背中から地面に倒れてしまいました。
「良かったわイレイナ!!無事だったのね!」
「ええっ、勿論です。トッペマも、民間人の避難はどうでした?」
「バッチリよ!ほら!」
トッペマが懐から取り出したタブレットを私に見せて、最新のニュース映像を見せてくれました。
『インターネットに流出した情報に寄りますと、トリスケリオンから放たれたヘリキャリア三機は、テロ組織ヒドラによる大量殺人兵器である事との事でした。しかし、キャプテン・アメリカとファルコンの活躍により、未曾有の国家的危機を、無事に乗り切る事が出来ました。また、空を飛ぶ緑の魔法少女の活躍により、ヘリキャリアの落下付近に居る民間人の犠牲者は居ませんでした。繰り返します。民間人の犠牲者は、一人も居ませんでした』
それは、トッペマがどれだけ活躍したのか物語っていました。トッペマの身体はかなりボロボロで、水に濡れた所も沢山ありました。
「頑張りましたね。トッペマ」
「うん!!」
私はトッペマの頭を、被り物越しに撫でました。
民間人の犠牲者が出なかった事が、何より安心しました。
こうして、S.H.I.E.L.D.は壊滅し、その中に巣食っていたヒドラのメンバーも、全員壊滅しました。
次回でウィンター・ソルジャー編、完結です。浜崎さんは何をしてたのか、少しだけ明かします。