MCUの世界にイレイナとして転生したけど、開き直って好きなように生きていきたいと思います 作:ちいさな魔女
私は目の前の男に杖を向ける。魔力は僅かながら放っているから、余程の実力が無いと私の魔力は見抜けない筈だ。
「っ!お前、もしや魔法使いか!」
「魔法使いと見抜いたのですか。なら、話は早いです。このヘンダーランドが真っ黒な事は一目で分かりました」
目の前の男が魔力を放出する。この男も魔法を使うようだ。
「まさか、メモリ・ミモリ姫の事も気付いたのか!?」
「メモリ・ミモリ姫?もしかして、この中に居た綺麗なお姫様ですか?その反応とレベリオの反応で確信しました。このお姫様は生きていて、更にこのテントの何処かに居る何かと繋がっている」
私はボタンを押して、メモリ・ミモリ姫の姿を出現させた。
「ッ!?そうかぁ!!そこまで知られた以上、生かして帰す訳には行かなくなったぞぉ!!」
すると、男の体が変化していく。全身に青い毛が生えていき、軈て狼のような頭と胴体に変化していった。
「テメェは後悔する事になるぞ!このクレイ・G・マッドを怒らせた事を!」
クレイ・G・マッドと名乗った男は、私に向かって走って来た。
マッドは拳を握り締めて私に振りかざす。私は前転して攻撃を避けた後、杖の先端から魔法を唱えました。
「『メラ』!」
杖の先端から火の玉を放ち、マッドに当てる。マッドの体に当たった火の玉が爆発し、マッドは怯む。
「ごアァッ!?嘗めるなよぉ!!」
マッドは肩に引火した炎を気にしないまま、私に向かって走って来た。両腕を開き、口を大きく開いた。私を捕まえて食べようとしている。
「人肉なんて食べても美味しくありませんよっと!」
私はプロテゴを唱え、全身を魔力の壁で包みこんで攻撃を防ぐ。
「『ステューピファイ』!」
私はマッドに気絶魔法を放つ。マッドは飛んできた魔法を避けて、私に向かって走って来た。私は光弾を連射するが、マッドは光弾を避けて私に殴り掛かる。
「『プロテゴ』!」
マッドの拳が弾かれる。私は魔法を撃とうとしたが、マッドは体勢を立て直して私の腕を掴む。
「ぬぅおおおおおっ!!」
マッドに投げ飛ばされ、私は人形や木材に体を打ちながら、遠くへ投げ飛ばされた。床を転がり、その場で悶える。
「がっ………痛い……!」
痛くて涙も出てきた。肩を上げたら痛みが走る。腕も痺れてきた。此れで杖を手放さないのは流石私と言った所か。
痛いがこのまま黙っている訳にはいかない。
あの男、思っていたより強い。いくら魔法を使えても、避けられたら意味が無い。
「体勢を……ん?」
私は起き上がると、目の前に何かがあるのに気が付いた。
「此れは……人形?」
それは、頬の星型メイクと深緑カラーの道化師風の衣装が特徴的な人形だった。胸にはボタンがある。逆V字のような髪型をしてる。
そして、近くにはゼンマイが置かれている。
痛む体に鞭を打って、人形の側に近寄る。すると、人形の仙骨部に穴があった。もしかして、ゼンマイで動くのだろうか。
「『レベリオ』」
私は呪文を唱えた。すると、人形から生命反応があった。しかも、さっきのメモリ・ミモリ姫から伸びていた糸がこの人形と繋がっている。
「匂いを辿れば………其処に居るなァ!?」
あの男の声がした。
「ッ!!この人形、まさか!?」
私はゼンマイを手にすると、人形を抱きかかえた。人形の仙骨部に差し込んでゼンマイを回した。ゼンマイを回す音が響くが、私はゼンマイを回し続ける。
暫く回した後、人形が動き出した。
「ッハァ!!もしかして、貴女がゼンマイを?」
「ええっ。確信はしてましたので」
「貴女から魔力を感じる………貴女、魔女ね!?」
「ええっ、まあ。さっき狼男に投げ飛ばされましたけど」
「狼男?もしかして、クレイ・G・マッド!?戦ったの!?」
人形の少女は仙骨部のゼンマイを外すと、頭部に設置した。まるでリボンみたいだ。
可愛い。まっ、美しいのは私です。
「戦いましたよ。彼、中々強いですね」
「当然よ!奴はオカマ魔女の手下よ!」
すると、沢山の物を吹き飛ばしてマッドが現れた。
「ガアアアッー!余計な事をしやがってぇ!!だが、自惚れるんじゃあねぇぞぉ!!それで俺に勝てると思ってんのかよぉ!!」
マッドが咆哮を上げて、私達に向かって走ってくる。
「くだらない魔法も使いよう!『スイーツ』!!」
この魔法はくだらない魔法ではあるが、知性ある存在ならば甘い物が食べたくなる魔法だ。牽制になるはずだ。
私は杖をマッドに向けて魔法を唱えると、マッドの動きが止まる。
「ぐぅおおおっ!?チョコレートが食べたい!だが、先ずはお前から――」
「『スイーツ』!」
「チョ、チョコレートがた…た…た………だが!!」
「『スイーツ』『スイーツ』『スイーツ』『スイーツ』『スイーツ』!」
「チョコレートが食いてええぇぇぇぇ!!」
マッドがその場で叫び始めた。ほっといたらこのまま逃げられてしまう。
「よく分からないけど、今がチャンスね!『スゲーナスゴイデス』!!」
少女は胸のボタンからトランプの入った箱を取り出すと、手慣れた手つきで蓋を開き、トランプを一枚摘んでその場を離れようとするマッドに翳した。
その時だった。少女が『スゲーナスゴイデス』と唱えた瞬間、私はトランプから魔力が解き放たれたのを感じた。
その時、逃げようとしたマッドの全身の動きが止まり、全身が石になった。
石にするとは、恐ろしい魔法ですね。
「今のは……貴女の魔法ですか?」
「ええっ。スゲーナスゴイデスのトランプよ。残念だけど、人形の私じゃ倒すには至らないわ。このトランプは、ハートのある人間じゃないと本来の力を発揮出来ないの」
少女は胸のボタンにトランプを仕舞いながら言った。
「成る程。兎に角、此処を離れましょう。テントを出なくては転移が出来…いや………出来ますけど、アレはトイレに……」
「えっ?」
「まあ脱出は出来ますよ。あっ、申し遅れました。私はイレイナです」
「自己紹介ありがとう。私はトッペマ・マペット。トッペマで良いわ」
「ではトッペマさん。私に掴まってください。トイレに転移します」
「ええっ………えっ」
「『ベンルーラ』!」
その瞬間、私達はその場から消えた。行き先は、『トイレ』だ。トイレに転移する魔法のベンルーラなら、屋根があるない関係なく転移が可能なので、もしもの時に便利だ。
まあ、空いてるトイレに転移するけど、汚い便座の前に来る事もある。流されてないトイレが当たる事もある。たまにだが、流されてない水の中にデカいのがある事もある。
何故この話をしたかと言うと、今回は、そういう事である。体が突っ込まなくて良かっただけまだマシだが。
「「………」」
公衆トイレから外に出た私達。非常に気まずい。
私はこの空気を何とかする為に、話を切り出した。
「取り敢えず、S.H.I.E.L.D.日本支部に行きますよ。掴まっててください」
「……もうトイレは嫌よ!」
「今度は大丈夫な転移魔法です!此処は敵の本拠地です!文句言うなら置いていきますよ!」
私は唱えようとした。
「最低!!でも助けて!!」
「よろしい。ではトッペマさん。掴まっててください。『ルーラ』!」
その瞬間、私達の体が宙に浮いた。そして、真上に向かって飛んで行った。前に行った事のある場所なら何処にでも転移出来る魔法だ。
そして、私達はS.H.I.E.L.D.日本支部に向かって飛んで行くのだった。
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夜のヘンダーランド。客も居なくなり、静寂が支配している。
そして、ヘンダー城の中で二人の男女が跪いていた。一人は先程石化したクレイ・G・マッドであり、今は人間の姿に戻っており、シルクハットにタキシードを身に着けている。
二人目は白髪褐色肌のセクシーな美女だ。チョキの髪飾りを頭につけ、水着並に露出の多い黄色いレオタードのような格好をした豊満な魔女である。
彼女はチョキリーヌ・ベスタ。クレイ・G・マッドと同じくオカマ魔女の手下であり、幹部でもある。
二人が跪く先には暗闇が広がっている。しかし、闇の中から二人の男達が姿を現した。スポットライトが二人を照らし、その全容が明らかとなる。
「トッペマの奴が、スゲーナスゴイデスのトランプを隠し持ってた訳ね」
「しかもあたし達と同じく魔法を使える女が、この世界に居たそうじゃない」
「アベンジャーズの警戒を避ける為に、ヘンダーランドを遊園地に改良して開業したのに………」
「早くも見抜かれるなんて思わなかったわ」
彼等は、マカオとジョマ。このヘンダーランドの実の支配人であり、異世界からこの世界へやって来たオカマ魔女だ。
金髪で薄めの頭の方がマカオ、黒髪で団子頭に結っている方がジョマ。二人はバレエの舞台衣装をモチーフとした服装であり、マカオの方は胸と背中にダイヤの装飾が入った全身タイツにスリングショットを身に着け、ジョマの方はレオタード・チュチュ・トゥシューズという女性用の衣装を身に着けており、胸元と股間にハートマークがあしらわれている。
「マカオ様、ジョマ様!私は彼女の顔を目撃しております!必ずや――」
「「お黙り!!」」
「ひっ!?」
マッドが目をつむる。恐怖のあまり目を閉じたのだ。
「油断して誘惑魔法に引っ掛かり、その上石にされた癖に!」
「アタシ達が元に戻して上げなければ、この世の終わりまで石になったままチョコレートの誘惑に惑わされ続けたのよ、アンタは」
マカオとジョマが畳み掛ける。話す間に二人は、バレエを彷彿とさせるポーズを取っている。因みにマカオが先にマカオが先に話し、ジョマが後に話している。
「それにアンタは顔が知られてる」
「今送っても返り討ちに遭うだけ。それにスゲーナスゴイデスのトランプの魔力は半端じゃない」
「トッペマが使っても大した効果は無いけど、クレイ・G・マッドが動けなくなる位よ」
「オマケに魔法を使える魔女も居るなら、尚更油断は出来ないわ」
「良かったわ。ジョーカーだけ取っておいて」
「ええっ、良かったわ」
すると、豊満な魔女が声を上げた。
「マカオ様、ジョマ様。私にお任せください。必ずスゲーナスゴイデスのトランプを回収し、裏切り者のトッペマも、イレギュラーの魔女も、全員始末してみせます」
「待ちなさいチョキリーヌ・ベスタ」
「アンタだけでは対抗出来ないわ」
マカオとジョマがそう言って、動こうとしたチョキリーヌ・ベスタを引き止めた。
「アンタ達の仲間の新幹部よ」
「仲良くしてあげて」
「チョキリーヌと一緒にスゲーナスゴイデスのトランプを回収しに行くわ」
「ついでにイレギュラーのお客も、トッペマも始末してもらうわ」
「「ス・ノーマン・パー!」」
オカマ魔女がそう叫んだ後、その場に雪だるまが出現した。
「だーもう、ヤダねヤダね! 他人のおドジのせいでこの俺が?このス・ノーマン・パー様が、直々に逃げ出した裏切り者やイレギュラーの魔女の相手をしなくちゃいけないとはねぇ~」
手袋のような手で頭を掻くス・ノーマン。
「あら言うじゃない」
「素敵ね。ウフフ」
こうして、イレイナとトッペマを追跡する手筈が整った。敵幹部が二人も襲撃を仕掛ける。
二人の危機は、着実に迫って来ていた。
――――――――――――――――――――――――
時は遡り、S.H.I.E.L.D.日本支部に帰って来た私。私にしがみついたトッペマは、見たことのない施設に驚愕していた。
「ホッ……助かったわ。またトイレじゃなくて」
「だから言ったじゃないですか。それより、貴女やヘンダーランドの事も報告しないと。こっちです」
私はトッペマさんを案内する。出入り口を通って建物に入り、廊下を移動する。多数の職員がトッペマさんに注目している中、私は目的の仕事場の扉を3回ノックした。
「浜崎さん。イレイナです」
『あら、随分速いわね。どうぞ』
「失礼します」
扉の奥にいる浜崎さんの了承を得て、私は扉を開けた。すると、浜崎さんの隣に知らない男性達が居た。外国人だと思うが、強そうな人達だと理解した。
「お帰りなさい。お土産は、どうやら持って来たみたいね。それも特大のお土産ね。フューリー」
浜崎さんはお茶をくれた。
「浜崎長官。彼女が報告にあった魔法使いか」
「ええっ。間違いないかと思います。フューリー長官」
話をしている二人の男性。一人は眼帯を着けた男性で、もう一人は笑顔が素敵な男性だ。
「えっと、始めまして。私はイレイナです。この人はトッペマ・マペットさんです」
「えっと……トッペマ・マペットよ。よろしくお願いします」
私達は簡単に自己紹介を済ませる。
「ご挨拶ありがとう。私はニック・フューリーだ。浜崎アキ長官とは友人だ」
「私はフィル・コールソンだ。よろしく頼む」
男性達も自己紹介を済ませる。
「フューリーとコールソンは私から報告を受け取ってから、貴女に声を掛けたいと思ってたのよ。今から連絡しようとしたけど、帰って来たから手間が省けたわ。それに、土産話もありそうだし」
全員がトッペマさんに注目する。
「トッペマさん。全てお話してください。お願い出来ますか?」
「ええっ。私の知っている事を全て説明するわ。スゲーナスゴイデスのトランプの事、ヘンダーランドの事、そしてクレイ・G・マッドやもう一人の女幹部、そして全ての元凶であるオカマ魔女達の事も」
トッペマさんは全てを説明してくれた。自分達の事を。
それにしても紙芝居形式とは、実に分かりやすい。下手な文章よりも分かりやすくて良い。