MCUの世界にイレイナとして転生したけど、開き直って好きなように生きていきたいと思います 作:ちいさな魔女
トッペマは紙芝居形式で、敵の情報を知る限り教えてくれた。先程のスゲーナスゴイデスのトランプを一枚使用して、簡素な説明の舞台を用意したのだ。凄いとしか言いようがない。
「私はトッペマ・マペット。異世界からこの世界に転移してきた生きる人形で、オカマ魔女達によって造られたの。オカマ魔女というのは、あのヘンダーランドの今の支配者で、名前はマカオとジョマ。手下はクレイ・G・マッドとチョキリーヌ・ベスタ。この4人はとても悪い奴等で、私の住んでいた世界を滅ぼしたの。あのヘンダーランドは元々一つの大きなお城だったんだけど、奴等はこの世界を内側から侵略する為に遊園地に改良したのよ」
トッペマの絵は子供にも分かりやすい絵と説明で、私を含めて、浜崎さん、フューリーさん、コールソンさんを含めた数名の職員にも解説してくれた。
「あのヘンダーランドは異世界の城そのものだったというわけか。君もそのオカマ魔女とやらに造られた人形というわけか」
「そうよフューリーさん。でも私は奴等の手から、このスゲーナスゴイデスのトランプを手に入れたわ。このトランプは『スゲーナスゴイデス』と唱える事で強い魔力を発揮して所持する人の望む事を叶えてくれるわ」
「本当ですか!?」
それは、素晴らしい事を聞きました。
「トッペマさん。それ一枚使って良いですか?」
「ッ?良いわよ」
私はトッペマさんからトランプを一枚受け取る。やることは勿論、一つです。
「スゲーナスゴイデス!」
私がそう唱えた瞬間、手にしていたトランプが消えて、私の目の前には金銀財宝、更に一生使い切れない札束の山が現れた。
ソウ、マサニユメノヨウナコウケイデアル。
「イェエエエエエエエエエエエエエイッ!!お宝がっ!!お金がっ!!これで私は、わたしはははははは!!!」
私は飛び込もうとした。金銀財宝に当たって危ない?そんなの知りません。
「あっ、スゲーナスゴイデスの魔法は正義の為の魔法だから、私利私欲に使ったらすぐに消えてしまうの」
トッペマさんが早口でそう言った後、私が飛び込もうとした夢の山が一瞬で消えた。
私は床に前から倒れた。
「ぞんなあああああァァァ〜っ!!」
此れ以上無い位に泣いた。畜生。
「欲張り者の末路だな」
フューリーさんに指摘された。
「………だったら、トッペマさんがスゲーナスゴイデスで戦えば良いでは無いですか。あの狼男を石化させられたんですから」
私がそう言うと、トッペマさんは首を横に振った。
「それは無理よ。魔法は本来人間の為の技術なの。人形の私の魔法じゃ、雑魚はともかくあの四人には勝てないわ。でも、ハートのある人間がスゲーナスゴイデスのトランプを使って戦えば、オカマ魔女達を倒す事が出来るの」
トッペマさんの最後の絵は、私達がトランプを手にしてオカマ魔女らしき人達を攻撃する絵であった。
「先程イレイナが使った時は短い間ではあったが、それでも願望を叶える力を持つらしい。だがそれを此処に置いておいたら、奴等は取り返しに来るだろう」
「ええっ、フューリー長官。マペット君のお陰で敵の顔は割れました。後は、奴等の襲撃に備えるだけです」
コールソンさんとフューリーさんがそう告げた後、私はトッペマさんにある事を尋ねた。
「トッペマさん。気になった事があるのですが、あの囚われのお姫様は、メモリ・ミモリ姫でしたっけ?貴女は彼女と何か関係があるのですか?」
「一応ね。でも、私はメモリ・ミモリ姫とどんな関係なのか、分からないのよ」
「そうですか。では、あのお姫様は誰かと婚約してるんですか?」
「私達の世界の王子様であり、勇者様よ。名前はゴーマン王子と言って、熱くて勇敢な王子様で、メモリ・ミモリ姫の婚約者だったの。でも今は、何処にいるか分からないわ。オカマ魔女達にやられてから、行方が分からないのよ」
「成る程。もしかしたら、オカマ魔女達に捕まっているかもしれませんね」
すると、浜崎さんがトッペマさんに話しかけた。
「しかしそんな凄いトランプ、私達が管理したいと言いたい所だけど最近嫌な噂があるのよね。噂じゃ、ヒドラという嘗てキャプテン・アメリカが戦った組織の生き残りが紛れ込んでるって。だとしたら貴女達に管理させた方が安全なのだけれど、S.H.I.E.L.D.上層部はスゲーナスゴイデス?のトランプを放って置くはずが無いわ……」
そう。S.H.I.E.L.D.が黙っているはずが無い。かの四次元キューブをアベンジャーズのマイティ・ソーがニューヨーク襲撃の主犯ロキと共に持ち帰る際に、四次元キューブを地球で管理するかどうかで揉めた事がある。S.H.I.E.L.D.の理事が管理すると言って、かなり揉めた。結局はソーが持ち帰った形で落ち着いた。私は浜崎さんからそう聞いていた
何度も言うが、四次元キューブクラスの力を持つトランプをS.H.I.E.L.D.が放置するはずが無い。トランプ一枚で間違った願望を叶えてしまったら、核爆発のような災害発生だってあり得るのだ。
「取り敢えず、二人は暫くこの本部で休んで頂戴。何かあればすぐに報告するわ」
「ありがとうございます。折角の群馬旅行だったのに、まさかこんな事になるとは思いませんでした」
こうして、私とトッペマさんはS.H.I.E.L.D.日本支部で休む事にした。
私とトッペマさんの部屋は同室で、部屋の外には万が一に備えてスタッフが待機している。最早隔離ですね。
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夜の23時。そろそろ就寝時間だ。
「まさかこんな事になるとは思いませんでしたね」
私はトッペマさんと一緒のベッドで眠る事にした。トッペマさんは眠る事は無く、活動を停止するだけ。再びゼンマイを巻けば、もう一度動けるようになるらしい。
「ごめんなさい。貴女達を巻き込んでしまって
「大丈夫です。これからの事を考えると、寧ろ楽しくなってきましたから。トッペマさんの大切な人達を取り戻す為にも、そしてこの世界が彼等に侵略されない為にも、頑張らないといけませんから」
「気を付けて。彼奴等はとんでもなく強いの。奴等は材料さえあればいくらでも雑兵を創り出せるわ」
「一応聞きますけど、オカマ魔女達は何故侵略を?支配するつもりなら、わざわざ私達の世界へやって来る必要ありませんよね?」
「理由?そんなの彼奴等にあるわけ無いわ。強いて言うなら、侵略する事自体を楽しんでる感じね」
それは質が悪いですね。
「スゲーナスゴイデスのトランプですが、もしオカマ魔女達を倒せたらどうするのですか?」
「オカマ魔女達を倒せた奴は居ないわ。奴等の話を少し聞いたけど、近々アスガルドって国も侵略したいとか言ってたわね」
「アスガルド………北欧神話に登場する神々の国ですね。ですが、この世界では宇宙の何処かに存在してるんです。アベンジャーズというヒーロー達の一人であるマイティ・ソーもアスガルドから来たそうです」
「そうなの!?なら、この世界はまだ安泰かしら。それに、オカマ魔女達を倒せたら、私は魔法が消えて元の人形に戻るわ。スゲーナスゴイデスのトランプも、メモリ・ミモリ姫に渡して頂戴。あのトランプの力で滅ぼされた世界も元通りになる筈だから」
………それを聞いたら、少し寂しくなる。トッペマさんが居なくなるのは寂しい。短い間ではあるが、話が出来て楽しかった。
私は布団に入ると、トッペマさんが私の手を握った。なんだか恋人繋ぎみたいで、少し恥ずかしい。
「それに、私はトッペマ、貴女のしもべ。だけど何の役にも立たない。だって私はただのマペット。体温も感じ取れない、役立たずの人形だもの」
人形の体は少し冷たい。
「……役立たずではありません。役に立ててますよ。だって貴女は私達に敵の事を教えてくれて、そしてスゲーナスゴイデスのトランプを授けてくれたんですから」
「ッ!」
「それに、私は貴女に消えて欲しくありません。もし良ければ、一緒に世界中を旅したいと思っています。もし全てが終わったら、私がなんとかしてみせます。この世で1番固い約束の魔法を教えますよ。指切りげんまん」
私は右手を出して、小指を立てました。トッペマさんは少し戸惑ったものの、私の手を握る手を離して、小さな手の小指を私の小指に絡ませました。
「約束します。必ずトッペマさんを連れて、世界中を一緒に旅してみせますよ」
「約束ね……うん。約束よ。私もいつか旅に連れてって。この世界の事よく知らないから、私も見てみたい」
トッペマさんと私は小指を絡め合い、約束し合う。トッペマはその時に笑っていたが、目は哀しそうだった。
ああっ、約束守れないと言いたいのですが、それでも約束してくれたようですね。
それは許さない。
必ずトッペマさんを仲間にしてやる。
私は眠気に身を任せて、トッペマさんと共に眠った。
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「約束か………」
トッペマは隣で眠るイレイナの言葉に、心が揺らいでいた。
イレイナに伝えていなかった事が一つだけある。
それは、自分がメモリ・ミモリ姫である事だった。
マカオとジョマを倒したら、今の自分が囚われている人形の体から心が解放されて、心はメモリ・ミモリ姫の肉体に戻る。
メモリ・ミモリ姫はお淑やかで優しい姫という、正に物語に登場する美しく慈悲深いお姫様だ。しかし、トッペマ・マペットはメモリ・ミモリ姫本人にも関わらず性格が異なっている。
それもその筈。メモリ・ミモリ姫も最初からお淑やかだった訳では無い。子供の頃はヤンチャしていた。勝ち気で活気的な少女であったのだが、その反面真面目で女の子らしい性格もしていた。
トッペマの今の性格は、正にメモリ・ミモリ姫の幼少期を反映したものだった。
トッペマとしてイレイナと居る内に、イレイナと旅をするのも悪くないと思えてきた。
しかし、ゴーマン王子と離れたくない。
なので、イレイナとの約束を破る事になる。
「ごめんなさい、イレイナ。約束を破るわ。ゴーマン王子を裏切れないの」
隣で眠るイレイナの頬に手を添えるトッペマは、起こさない程度に囁いた。
「もし、私とメモリ・ミモリ姫と別人になれたら……なんて出来るわけないわね」
この時、スゲーナスゴイデスのトランプの力に頼る事も考えた。しかし、自分は人形なのでスゲーナスゴイデスを使ってもそこまでの事は出来ない。かと言ってもイレイナにこの秘密を話す勇気が出て来ない。
怖いのだ。役立たずの自分が、イレイナの足手まといにしかならない事に。そんな自分がイレイナと共に居ても、役立たずとして捨てられるかもしれない。
仮にスゲーナスゴイデスのトランプを使って、自分とメモリ・ミモリ姫と別々に分かれる事が出来たとしても、自分ではイレイナの足手まといになってしまう。
そう思うと怖い。イレイナがそういう人じゃないと分かってても、不安でいっぱいになる。
役立たずの自分は、イレイナの側に相応しくない。
クレイ・G・マッドに歌わされた歌詞の通りだ。
自分は何の役にも立たない。イレイナはそんな事はないと言ってくれた。本音を言えば凄く嬉しかった。
「………メモリ・ミモリ姫とトッペマ・マペットが別々に分かれたら……なーんて」
そう言いながら、眠ることの無いトッペマは活動を停止した。
トッペマとメモリ姫の性格が異なる理由は、私の独自解釈です。