MCUの世界にイレイナとして転生したけど、開き直って好きなように生きていきたいと思います 作:ちいさな魔女
私は意識を失い、夢の中である光景を見ていました。それは、私の前で木に背中を預けて寄りかかるように倒れ込んだ、私に良く似た姿をした女性の姿でした。木々の間から見える館は、大層立派な建物でした。もしかして、誰かの敷地内でしょうか?
イレイナ『お母さん!!お母さん!!大丈夫!?何があったの!?』
ヴィクトリカ『うう………油断したわ』
やはり、彼女が私の母、ヴィクトリカなんですね。しかし、怪我をしているのでしょうか?母の足元には血痕が見られました。
しかし、視野は動かせますが、肉体は動かせません。体も言葉も私の自由に出来ません。
ならこれは、私の体にある記憶でしょうか。
???『ワン!!ワンワン!!』
犬の声が響きました。私が犬の鳴き声のした方向を向くと、其処には大型の犬が私達に向かって吠えていました。
イレイナ『ひっ!こ、来ないで!』
幼い私は、魔法陣を掌に展開して、犬の方へ向けました。犬はグルルと唸り、警戒して此方を睨み付けています。
少女『カール!?どうしたのカール………あっ?』
すると、ピンク色のドレスを身に纏った、この身体の頃の私と同い年位でしょうか?さっき助けた女性と顔がそっくりです。まさか、あの花嫁さんの幼い頃でしょうか?
ヴィクトリカ『………誰?』
クラリス『………』
幼い少女は、そのまま走って何処かへ去りました。
ヴィクトリカ『もう………私も此処までかしら?貴女を
イレイナ『嫌!お母さん!行かないで!お願い!』
ヴィクトリカ『私が一緒だと、貴女もいずれカリオストロのカゲに狙われるわ………せめて、貴女だけでも生きて……』
母は私の頭を撫でました。すると、さっきの少女が戻って来ました。
イレイナ『何を……!』
クラリス『お水……そちらの女性に……』
イレイナ『えっ?』
私も驚いていました。見ず知らずの私達に、どうして優しくしてくれるのでしょうか。
ヴィクトリカ『『サーチ:身体を害する性質』』
母が魔法を唱えました。しかし、何事も無かったのか、少女からコップを受け取りました。
そして、母は水を飲みました。
イレイナ『わあ、綺麗な指輪!』
クラリス『これ?私の家に、古くから伝わる大切な指輪なの!』
イレイナ『わあ、山羊さんだ!』
幼い私は少女と話していました。
その手には、銀色の指輪が光っていました。そして指輪には、銀色の山羊が彫られていました。
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私は夢から目を覚ましました。頭の痛みがまだ残っていました。目を覆う白い布巾、いえ花嫁さんが手を腕ごと覆っていた手袋の一つを外して、私は手を頭に添えて回復魔法を唱えました。
イレイナ「『チョイキルト』『ホイミ』」
私は仰向けになりながらホイミを唱え、頭に受けたダメージを回復させました。更にチョイキルトによって回復魔法を強化して、より強い回復魔法へ強化して、回復力を強くしました。
痛みが引いていき、ヒリヒリとした熱さも無くなり始めました。
トッペマ「イレイナ!大丈夫なの!?」
イレイナ「大丈夫です。それより、花嫁さんは?」
トッペマが私の問いに対して、ある方向を指差す形で答えました。其処には、運河を渡る船が見られました。
イレイナ「何者なんでしょうか」
トッペマ「あの防弾の車に船まで……一体何者なのよ」
イレイナ「ん?」
私は手袋の中に、何か硬い物がある事に気付きました。手袋を揺すって、掌にポトリと零れ落ちた物を見て、私は驚愕しました。
イレイナ「ッ!これって、夢で見たあの指輪!」
トッペマ「えっ?どうしたのよイレイナ?」
トッペマの声を無視して、私は指輪を見つめました。あの指輪を女性が持っていたという事は、あの花嫁さん、ネットニュースに載ってた大公息女クラリス・ド・カリオストロだとすれば、夢で見た幼い子供も、そのクラリスさんなんでしょうね。
という事は、あの館も恐らくクラリスさんが住んでた館でしょう。
イレイナ「これを見てください。あの花嫁さんが残した指輪です」
トッペマ「えっ!?それって、結婚指輪でしょ!?なんで結婚指輪をイレイナに?」
イレイナ「トッペマ。信じられないかもしれませんが、私は夢を見ました。幼い花嫁さんの、クラリス・ド・カリオストロさんに私と母が出会った夢を」
トッペマ「どういう事よ?」
イレイナ「詳しくは車に乗ってから話しましょう」
私達は箒に乗って浮上し、崖上の道路に待機していたブルーノさんやアロマの元に戻って来ました。
そして、車の運転席に乗り込むと、今度はトッペマを助手席に乗せ、ブルーノさんを後ろに乗せました。
私は車を運転しながら、夢の内容を説明しました。
アロマ「夢の中で見たお母様と、幼い頃のカリオストロ嬢にその指輪………もしかして、イレイナさんの過去の記憶ではないんですか?」
イレイナ「かもしれません。確かなのは、あの指輪が現実の物で、私は過去にカリオストロ公国へ母と来ていた事です。夢の内容が確かなら、彼女が暮らしていた館がある筈です」
私はハンドルを握り、アクセルを全開にして車を走らせました。
林の中を走り抜けて、漸く目的地へと辿り着きました。
門の前に着いた私は、車を降りて門を見つめました。
ブルーノ「この門……指輪と同じ山羊の紋章が描かれておる」
ブルーノさんの言う通り、門には指輪に描かれていた山羊の紋章がありました。
しかし、門の先に広がる光景に、私は驚きました。
館は草木や苔が生い茂り、見るも無残な廃墟へと変わり果てて居ました。
私は門を潜り、廃墟となった館へ歩いて行きました。
廃墟をよく見ると、焼け焦げた灰や炭もいくつか見られました。火事で廃墟になったんですね。
アロマ「無人になってから数年程かしら?火事になってから、修繕されなかったのかしら?」
トッペマ「ねえイレイナ。この廃墟が、その指輪と関係あるのかしら?」
トッペマが尋ねた、その時でした。
???「誰だ!」
私は声のした方向を向きました。其処には脚立を持った初老の男性が庭に立っていました。
イレイナ「申し訳ありません。私達は旅人です」
老人「観光か」
イレイナ「まあ、そんな所です。勝手に入って申し訳ありません。此処は貴男の館ですか?」
老人「違う。此処は大公様の館じゃ。余所者がウロチョロして良い場所じゃあ無いんだぞ」
ブルーノさんが隣に来ました。
ブルーノ「これが大公殿下の館じゃと?空っぽの廃墟になっておるが?」
老人「………七年前の大火事でな。大公御夫妻が亡くなられてから、このように荒れ放題になってしまったんじゃ」
アロマ「あの、大公殿下は国王陛下の筈です。国王陛下がいらっしゃらなくて……国は、大丈夫なんですか?」
老人「摂政が居るからな。困りはしないそうだ。早く帰れよ」
イレイナ「はい、失礼しました」
老人はその場から立ち去って行きました。私達も急いでその場を去ると、トッペマが改めて私に質問をしました。
トッペマ「イレイナ。その指輪って、やっぱりこの館と関係あるのかしら?」
イレイナ「あるでしょうね。そしてほら、湖に大きな城があるでしょう?」
私達は館から離れて、時計塔近くの堤防までやって来ました。
そして、私達は時計塔から水道橋を伝って続く先に、大きな城の姿を確認しました。
イレイナ「恐らくあれが、摂政にしてクラリス・ド・カリオストロさんの婚約者、カリオストロ伯爵の城ですね」
アロマ「なんて立派なお城………でも、国王陛下は何故館の方に住んで居たのでしょうか?」
イレイナ「分かりません。でも今は、宿を見つけて休みましょう。結婚式まで日はあります。宿を見つけたら、暫く滞在しましょう」
私達はその場を去ろうとしました。すると、上空を飛行する1台の飛行機を見掛けました。
それは、オレンジと黄色を基調としたクインジェットでした。クインジェットと言っても、搭乗人数は見た目では3人程が限界といった小型機サイズのクインジェットでした。
ブルーノ「おおっ、あれはクインジェットじゃないか。この国にもクインジェットがあるとはのう」
イレイナ「恐らくあの機体に乗ってるのが、伯爵でしょう。えっと……フルネームは『ラサール・ド・カリオストロ』。クラリス王女の婚約者ですね」
トッペマ「自家用のクインジェットまで持ってるのね。大層なお城に住んで、まるで王様みたい」
アロマ「そんな権力者の婚約者を追い掛けてた人達を倒しちゃいましたけど……大丈夫でしょうか?」
まあ、少なくともタダで済むとは思えませんね。
カリオストロ公国は国連加盟国ですし、もしかしたら私達もヤバいかもしれません。
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カリオストロ公国を実質統治しているカリオストロ伯爵は、自家用クインジェットを自ら動かし、趣味で国内を回っている。そんな中で通信が入り、クラリスの逃走を聞いて戻って来たのだ。
クインジェットを格納庫に入る発着場へ着陸させ、衛士(この国の警察に当たる組織)にクインジェットを任せ、クラリスの元へ移動する。
伯爵「ジョドー。不始末だな」
隣に立つ初老の執事はジョドー。伯爵の忠実な執事である。ジョドーは伯爵が歩いている間に、伯爵のパイロットスーツを巧みな腕前で脱がしていく。そして、茶色のスーツを伯爵に着せていく。
ジョドー「申し訳ありません。仮縫い衣装を調える最中でして、男共が席を外しておりました」
伯爵「今は北の塔か?」
ジョドー「はい。薬でよくお眠りになっております」
エレベーターに乗り込んだ時には、既にスーツに着替え終えていた。ジョドーの手際の良さが一目で分かる程だ。
ジョドー「連れ戻した男共によると、逃亡を手助けしたのは外国人だそうです」
伯爵「外国人?」
ジョドー「はい。確認出来た限りで、四人の男女が防弾改造を施したハンバー・スーパー・スナイプを撃破したそうです。信じられないかもしれませんが、子供が一人、女が一人、高齢の男性が一人。もう一人は不明で、顔は確認出来なかったそうです」
エレベーターが到着し、北の塔へ続く廊下への扉が開く。
伯爵「見つけ出せ。後始末は任せる」
そして、伯爵は北の塔へ向かう。北の塔は外部から隔離される形で建造されており、向かう際は専用の橋を使わなければならない。その橋も城側から伸ばし、北の塔と繋げなければ意味が無い。
北の塔には、城内でただ一人だけ雇った女性が居る。クラリス専用の召使いだ。
???「お疲れ様です。伯爵様」
伯爵「よい。下がれ、シーナ」
彼女の名はシーナ。クラリス専用の召使いとして雇われた女性だ。クラリスを除けば、城内ただ一人の女である。
しかし、クラリスの部屋に入り、ベッドで眠るクラリスの指に銀の指輪が無い事を確認した伯爵は、執事のジョドーを呼び出したのだった。
ターゲットは勿論、イレイナ達の事である。
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カリオストロ公国の城下町。其処は大勢の人々で賑わっていました。
大公息女クラリスとカリオストロ伯爵の結婚式は、国際的価値のある物であり、それに肖って観光客も多く訪れるものです。
特に高いホテルや食堂、レストラン等は富裕層によって満席になっており、他の食堂すらも観光客の訪れでほぼ満席でした。
勿論その話をしているのは誰でしょうか?そう、私です。私達も、夕食を食べに町のレストランに訪れていました。なにせ何処のレストランも値段が高いか、満席で入れない事が多かったものですから。今回漸くレストランの席が4人分取れましたよ。
トッペマ「ハァ……やっと此処で食べられるわ……」
アロマ「だから『塵歌壺』でご飯作ると言ったのに…」
イレイナ「それはまた今度で」
アロマの料理はホントに勘弁してほしいんです。料理が下手過ぎるんです。食材を無駄遣いされたくないので、料理はなるべくさせないようにしてます。
ブルーノ「しかしイレイナよ。その指輪はどうするつもりじゃ?何時までも持ってておれんぞ」
イレイナ「勿論返しに行きますよ。お宝かもしれませんが、こんなもの今の状況では厄災でしかありませんから。しかしまあ、城へすんなり入れると思えませんけど」
それに、先程から視線も感じます。女性は視線に敏感なんですけど、見過ぎでしょう?まあ、私に対しての視線が強いんですけど。綺麗なのは罪ですね。
すると、私達の席に注文した料理が届きました。そばかすが似合い、髪を団子のように纏めた女性でした。
給仕娘「お待ちどうさま!」
アロマ「あ、ありがとうございます」
トッペマ「わあ、美味しそう!」
それは、大皿に乗った4人分のミートボールスパゲッティでした。ボリュームがあるので、お腹も空いてきそうです。
トッペマが我先にとナイフとフォークでスパゲッティを掬い取り、食べ始めました。
給仕娘「随分熱心ね。何見てるの?」
イレイナ「綺麗な指輪を拾いまして。質屋で売れそうかなと」
そう言った瞬間、ブルーノさんに無言で頭を叩かれました。華麗なツッコミですが、日本ではないのに何処で習ったのでしょうか?
アロマ「フフッ……」
アロマが笑いを堪えてます。
イレイナ「本気で売りませんよ」
ブルーノ「分かっとるわい」
給仕娘「ふふっ。仲が良いのね。でも、この指輪ってクラリス様の紋章が入ってるわ」
すると、私が先程から感じてる視線が強くなりました。
イレイナ「クラリスって、クラリス・ド・カリオストロ王女様ですか?」
給仕娘「そうよ。ほら、カウンターに写真があるでしょ?彼処にある写真は子供の頃のだけど、綺麗でしょ?隣にはクラリス様にしか懐かない犬も写ってるわ。でも、大公夫妻が火事で亡くなられてからは修道院に7年間も入って、人前に出る機会がほぼ無かったの」
給仕さんが指を差した場所、つまり店のカウンターに置いてある写真には、私が夢の中で見た幼いクラリスさんが写っていました。こうして見ると、ホントに市民から愛されているんですね。
給仕娘「でも二日前に修道院から戻られたそうよ。きっと素敵にお成りだわ」
ブルーノ「そうじゃな。それに、クラリス様の結婚式をこれだけの観光客が注目してるなら、市民に愛される素晴らしい女性なんじゃろうな」
給仕娘「そうなの!パパも話したんだけど、子供らしい所もあるけど、その上で大人顔負けの聖人君子な性格をしていたわ」
アロマ「まあ、素敵な王女様ですね!」
トッペマ「ホントね!会ってみたいわ!」
イレイナ「…………」
私はそうは思えません。人々から聖人君子と呼ばれる人は大抵、裏の顔を隠してるものですから。仮に聖人君子だとしても、この国の闇を抱える身である以上、潔白とも思えません。
それに、トッペマ達も気付いてる筈です。人前ではああ言ってましたが、実際クラリスさんが危険な立場にある事も、何か闇を抱えてる事も。
給仕娘「でもクラリス様って可哀想。結婚相手の伯爵ってね、有名な女誑しなのよ?」
給仕さんがウィンクしてきました。
イレイナ「成る程。通りで女性の観光客も多い訳ですか」
私は周りを見渡しました。すると、頭が禿げた黒スーツの男性がそそくさとビールを飲み始めました。私の背後の席に居たので、視線の正体は彼でしょう。恐らく伯爵に私達を探すよう命じられている筈です。
料理人「おーいかーちゃん!次の料理運んでくれー!」
給仕娘「はーいただいまー!じゃ、また何か頼みたかったら言ってね!待ってるわ!」
イレイナ「どうも」
給仕さんがその場を去り、その後に黒スーツの男の人も店から立ち去って行きました。
イレイナ「………伯爵さんの手下ですね」
トッペマ「もしかして、指輪を取り返しに来たのかしら?」
イレイナ「………それだけで済めば良いんですけど」
私はナイフとフォークを取り出しましたが、大皿のミートボールスパゲッティが無くなっていました。
イレイナ「あれ?私の分は?」
トッペマ「あっ……」
トッペマが口を漏らしました。トッペマの皿は食べ終えたような汚れが付いていました。
ブルーノ「すまん…………食べてしもうた」
イレイナ「冗談でしょう!?」
ブルーノさんは既に皿には無く、食べ終えたような汚れがあります。
二人共、酷いです………。
アロマ「あ、あの!もし良ければ、半分分けます」
アロマが自分の皿に乗ったスパゲッティを、半分だけ私に譲ってくれました。
イレイナ「アロマ………貴女が居て嬉しいです……」
アロマ「あ、ありがとう………だって、イレイナさんの花嫁さんですから………///////」
今のは聞かなかった事にしても良いでしょうか?
こうして、私達は夕食を食べ終えて、宿へ戻って行きました。しかし、その日の宿で、あんな事が起きるとは、思いもよりませんでした。
ヴィクトリカの使用した魔法
・サーチ:自分の求めるものを捜索できる。術者の判断基準を用いて捜索されるため、術者が対象を認識できなければ反応しない。有効範囲は約50メートル。魔法名に続けて捜索物名を指定する。何故母は他作品の魔法・魔術を使えるのだろう?
今回出て来た女性は、オリキャラではありません。ある女性が変装した姿です。