公安対魔特異科の“忍“   作:ガンオタ

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チェンソーマンのノベライズを読んで思いつきました!
駄文ですがよろしくお願いします!


第1話

第1話 

 

「あれ……ここは、一体? 俺死んだはずだよな?」

 

 どこまでも続く白い大地に、1人の男が立ちすくんでいた。

 男の名前は、岸本八雲(きしもとやくも)。つい今しがた自分が勤める工場で死んだ男である。

 彼は高校卒業以来地元の製材所に勤めていたのだが、不慮の事故に遭ってしまい、上から落ちてきた材木の束の下敷きになって死んでしまった。

 自分の体重の何十倍もある材木の束に全身の骨を砕かれ、死を覚悟して最後は意識を失ったはずなのだが、再び目を醒ますと何故か一面真っ白の世界にいた。

 

「目覚めましたか?」

 

 自分の身に起こった不可思議な現象に困惑し、キョロキョロと周囲を確認していた八雲だったが、突然背後から声を掛けられ慌てて振り返った。

 そこには1人の綺麗な巫女がいた。

 

「あ、あなたは?」

 

「初めまして、岸本八雲様。私はあなたが生きておられた世界の管理をしている“ヒバリ“と申すものです。以後お見知りおきを……」

 

 ヒバリ、と名乗った美しい黒髪の巫女は綺麗なお辞儀をする。品位を感じさせる彼女の立ち振る舞いを目にした八雲は思わず見惚れてしまう。

 

「八雲様。挨拶もそこそこに申し訳ございませんが、単刀直入に申し上げます。すでにお気づきかと思いますが、あなたは“亡くなっております“」

 

「そう……なんですね。やっぱり……」

 

 死んでます、と面と向かって告げられた八雲。やはり自分は死んでしまい、今立っているこの世界は死後の世界もしくは現世とあの世の狭間のような場所なのだろう。

 

「そうですか……ああ、俺って死んだんですね。でもなんか死んだって感じがしないです。アハハ」

 

 八雲はそう言うと、頬をぽりぽりと指で掻きながら苦笑いする。

 全身の骨を砕かれたはずなのに、目を醒ますと全て元通りになっている。こんなことは現実では起こり得ないはずなのだが、目の前で起きていることが突拍子過ぎて死んだという感じが全くしない。

 

「ヒバリさん。あなたは先ほど「あなたがいた世界の管理をしている」と仰られましたよね? つまりあなたは俺がいた世界の神様ということでよろしいのですか?」

 

「ええ、そのご認識でよろしいです。そしてこの世界は“世界の狭間“という場所になります」

 

「世界の狭間……」

 

「世界の狭間というのは、その名の通り世界と世界の間に存在する空間です。世界というのは、単一のものとして存在するのではなく、複数の似たような世界が並立し、それら互いに日々影響し合って存在しているのです」

 

「あの、それってつまり“パラレルワールド“ってことですか?」

 

「はい。八雲様がいた世界でいうところのそれです」

 

 パラレルワールド、自分が前いた世界で読んでいた小説や漫画などに登場した言葉だ。

 ヒバリは、八雲が自分が言った情報を自分なりに噛み砕き理解していることを感じ取ったのか、一度頷くと説明を続ける。

 

「それぞれの世界は互いに影響を与えていますが、その影響、私たちは『波』と呼んでいるのですが、その波は私のような世界を管理している者たちによってコントロールしているので、通常であればその世界に住む人々が認識することはありません……」

 

 そこまで言ったヒバリは悔しげに、その綺麗に整えられた眉を寄せた。

 

「ん?」

 

 彼女の表情が変わったことに首を傾げる八雲。

 

「どうかしたんですか?」

 

「八雲様。あなたは自分が見た最後の瞬間を覚えておりますか?」

 

「ああ、はい。少しだけなら……休憩中、材木の塊……女の子……」

 

 ヒバリの問い掛けにそう答えた八雲は、こめかみに指を当てると、思い出せる限りの自分の最後を思い出す。

 まず、八雲が死んだ日は、八雲が25歳になる誕生日だった。土曜日でありせっかくの誕生日だったのだがあいにくその日は勤務で、しかも半年に一度地元の人が工場見学で訪れる日だった。とはいえ、彼の仕事はいつもと変わらず、淡々と作業をこなした。 だが、問題は午後の休憩時間だった。休憩時間になり、八雲が資材置き場の片隅で休憩していると、ちょうど見学の一団がやってきたのだが、その瞬間八雲は嫌な胸騒ぎを覚え、ふと視線を上にやると棚の上で頑丈に固定しあるはずの材木の塊が軋みだしていた。

 材木の塊の下には、親に連れられきたのだろう、熊のぬいぐるみを抱えた少女がいた。何トンもある材木が少女を押しつぶす最悪の光景を予感した八雲は一気に駆け出した。想像通り材木の塊を固定していたベルトは引きちぎれ、材木が落下し始めた。

 材木が落下し始めたのに気づいた周囲の人間たちから悲鳴や絶叫の声が上がる。

 ぬいぐるみを抱えた少女は何が起きたのか分からず固まったままだった。しかし、材木に押し潰される前に八雲が少女を突き飛ばした。直後聞こえた耳をつんざくほどの落下音と、全身を襲った衝撃と痛み……。

 

「……はぁ……思い出しました」

 

 最後の瞬間を思い出した八雲は、そこで自分が額に汗をかいているのに気づいた。それも悪夢を見た時とかにかく嫌な汗だ。どうやら、記憶を思い出すというのは身体的に、そして精神的にかなりのストレスを与えるようだ。

 ふと、彼の目の前にいたヒバリがさっと綺麗な白いハンカチを差し出した。

 

「お使いください」

 

「あ、でも……」

 

 神様という高貴な存在であり、しかも女性であるヒバリから差し出されたハンカチを見て、受け取るべきか受け取らざるべきか逡巡する八雲。しかし、目の前に立つ彼女は、そんな八雲の逡巡を察したのか、慈母のような笑みを浮かべると、「お気になさらず」と促した。

 

「ありがとうございます」

 

 彼女に促された八雲は、感謝の言葉を述べると、差し出されたハンカチを受け取った。

 受け取ったハンカチで汗を拭いていると、ヒバリが口を開いた。

 

「あの事故は偶然ではありません。あの事故は……あの事故が起きた原因は、私なのです」

 

「え?」

 

 ヒバリの言葉を聞いた八雲は思わず変な声を出してしまう。

 

「あれは不慮の事故じゃないんですか?」

 

 八雲の問い掛けにヒバリは首を横に振る。

 

「いえ、あれは決して不慮の事故などではありません」

 

 そして、ヒバリはあの事故の真実を八雲に語り出した。

 あの事故が発生する直前、ヒバリは、パラレルワールドのひとつから発生した波に対処していたのだが、波そのものは対処に成功したのだが、そこから漏れ出た波の残滓が不運にも八雲がいた地域に影響を与え、それによって八雲は死んでしまったのだと。

 なのであの事故の原因は、波を完全に処理しきれなかった自分にある、とヒバリは沈痛な面持ちで八雲に告げ、深々と頭を下げた。

 神様が頭を下げたことに仰天する八雲。

 

「ちょちょ! 頭を上げてください! 分かりました。えっと、その、そんなに自分を責めないでください。これもまた運命なんでしょう。……あ、そういやあの少女は大丈夫でしたか? 結構強く突き飛ばしたんで」

 

 自分が死んだ原因を聞いた八雲はヒバリに慰めの言葉を掛けると、自分が救った少女のことを聞く。恨みごとの一つや二つ浴びせられると思っていたヒバリは謝罪が受け入れられたことに驚き頭を上げる。そして、八雲が救った少女について説明する。

 

「はい。擦り傷を少し負っただけで命に別条はありません。今ではすっかり元気になっています」

 

「そうですか。それは良かったです……」

 

 未来ある1人の子供の命が救われた。少なくとも自分が死んだのは無意味なことではなかった。少女のことを聞いた八雲は安堵する。

 

「それを聞けて安心しました。それで、俺はこれからどうなるのでしょうか?」

 

 もう思い残すことは何もない。両親を早くに交通事故で亡くし、それ以来天涯孤独の身である八雲にはこれ以上気になることはなかった。だから、これから自分は一体どうなるのか聞を聞く。

 

「はい。何度も申し上げますが、八雲様が亡くなられたのは私の不手際によるもの。なので、八雲様、あなたには『転生』していただきます」

 

「へ?」

 

 『転生』という単語を聞いた八雲は、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になる。

 

「転生ってあれですか。えっと……別の世界で新しく人生をやり直しましょうってやつですか? 小説とか漫画によくある?」

 

「はい。そのご認識であっております。八雲様にはパラレルワールドのひとつである『チェンソーマン』の世界に転生してただきます」

 

「『チェンソーマン』? どっかで聞いたような気がする……」

 

「ご存知ありませんか? 最近世に出た漫画作品なんですが……」

 

 少し驚きながら八雲にそう言うヒバリ。

 

「すみません。最近工場の繁忙期で……って、漫画!?」

 

 自分が転生するパラレルワールドの世界がまさか漫画の世界であることに驚愕する八雲。

 

「はい。無数に存在するパラレルワールドの中には、八雲様の世界では想像上の架空の世界であるものも存在しています」

 

「な、なるほど……それで、その世界は一体どんな感じの世界なんでしょうか?」

 

「では簡潔に説明いたしますね」

 

 それから八雲はヒバリからこれから自分が転生する『チェンソーマン』の世界についての説明を受けた。世界観は1990年代の現代世界をベースとしており、八雲が転生するのはその世界の日本の首都東京。現代世界ではあるが、八雲がいた世界と違うのは、『悪魔』が存在しているということだった。それも空想上の存在ではなく現実に存在し、人々に危害を加えているのだという。

 その悪魔を駆除するために、官民問わず『デビルハンター』という専門職が存在し、日々悪魔と戦っているとのこと。

 

「以上になります」

 

「悪魔が実際に存在している世界の日本……すみません、それはちょっと転生先としてはハード過ぎませんか?」

 

 説明を聞いた八雲はそう言って苦笑いする。

 悪魔が実際に存在し、人々に危害を加えている。そしてその悪魔を倒すことが出来るのは、同じく悪魔と契約を結んだデビルハンターという専門の人間だけ。そんな危険極まりない世界で生きられる自信は八雲にはない。

 

「安心してください、八雲様。もちろん、その世界で生きて行けるように力を授けます」

 

「それって……」

 

「ええ、いわゆる転生特典というものです」

 

「は、はあ……」

 

「八雲様が望まれる力をおしゃって下さい。私はそれを八雲様に授けます」

 

 ヒバリの説明を聞いた八雲。ひとつの疑問が浮かんだ。

 

「その力というのは漫画に登場する空想のものでもいいんですか?」

 

「ええ、構いません」

 

 しばしの逡巡の後、考えが纏まったのか八雲が口を開く。

 

「では、『NARUTO』に登場する忍術・仙術をください。それと万華鏡写輪眼を。えっと種類は、うちはオビト、うちはイタチ、

うちはシスイので能力を切り替えて使えるように。それと俺の体に、尾獣である三尾の『磯撫(いそぶ)』を入れて下さい。あと最後に転生前に少し訓練する場所が欲しいです。せっかく授けて貰った能力を使えないと意味がないので」

 

「かしこまりました。今から能力を授けますが、なにぶん能力が大きいので少し反動があります。よろしいですか?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 八雲の返事を聞いたヒバリは頷くと、彼の前に両手を差し出し目を瞑る。

 

「え、嘘……こんなことが……」

 

 目を瞑ったヒバリが小さな驚きの声を発した。気になった八雲は彼女に声を掛ける。

 

「あ、あの何かありましたか?」

 

「いえ、その八雲さん。あなたは『木遁』の素質をすでにお持ちのようです」

 

「えっ! 木遁!?」

 

 ヒバリの言葉に衝撃を受ける八雲。

 木遁。それは少年漫画『NARUTO』に登場する水遁、土遁、陽遁の3種類を組み合わせて発動する性質変化の術だ。術者は忍界最強の忍びと謳われた千手柱間(せんじゅはしらま)。その力は巨大な尾獣を縛ることを可能とし、印を結ぶことなく傷を治すことができ、術者が有するチャクラ量も桁外れという先にも後にも柱間以外使えた者はいない特別な術。作中木の葉隠れの忍びであるヤマトと、うちはマダラの2人が使用していたそれは柱間細胞という柱間から抽出した細胞核を身体に取り込んでいたため使用できた。

 

「あの、すみません。全く身の覚えがないんですが……」

 

「これは私の勝手な推論になりますが、八雲様を押しつぶした木材の塊と、波が不可解な現象を起こし、それによって下敷きになってしまった八雲様の身体が変化してしまったと思われます」

 

「な、なるほど、そんなこともあるんですね」

 

「推論になりますが……はい、終了しました」

 

「え、もう終わったんですか?」

 

 雑談をしている間に能力授与が終わったことに驚く八雲。

 

「はい。おや、だいぶ顔つきも変わられましたね」

 

「え、顔?」

 

 ヒバリにそう言われ、ペタペタと手で顔を触る八雲。かつてニキビや髭剃り負けなどでガサガサだった肌は、まるでそれが嘘だったかのようにすべすべでみずみずしかった。

 

「フフフ、鏡で確認した方がよろしいかと」

 

 笑みを浮かべながらヒバリが手鏡を差し出した。それを受け取った八雲は自身の顔を確認する。

 鏡に映るのは、パーマがかった黒髪に意思の強そうな瞳を持った男。

 

「これって、“うちはシスイ“じゃないですか……」

 

 『NARUTO』に登場するうちは一族の中で最も秀でた忍びで、各国の忍びたちから『瞬神のシスイ』と恐れられた作中内でも指折りの強さを持つ忍びだ。

 

「これが反動ですか?」

 

「ええ、どうやら授けた術の以前の使用者の面影が宿ったようですね。ちなみに磯撫もすでに宿っていますよ」

 

「え?」

 

「意識を自分の中に集中して下さい」

 

 ヒバリのそう言われ、意識を自分の中へと向ける八雲。すると幼い子供のような声が聞こえてきた。

 

『ねぇねぇ聞こえる?』

 

「あ、ああ聞こえるよ。君が磯撫かい?」

 

『うん、ボクが磯撫だよ。えっと……』

 

「八雲だ。岸本八雲(きしもとやくも)。これからよろしくな、磯撫」

 

「うん! よろしくね、八雲」

 

 磯撫との初めての会話を終えた八雲は意識を現実へと戻す。

 

「どうやら磯撫とはうまくやっていけそうですね」

 

「はい、これからもっと彼と交流を深めていこうと思います」

 

「それは良かったです。修行についても彼が色々と教えてくれますので。」

 

 ヒバリはそう言うと、片手ベルを八雲に手渡した。

 

「修行はここをお使いください」

 

「え、ここをですか?」

 

「はい。あ、ご心配なさらず。この世界狭間は広さが大体北海道くらいあります。それに多少威力の強い大技を使っても他の世界に影響を与えることはありません。八雲様が納得するまで修行を行えますよ。それともし修行が終わられましたらこのベルを鳴らして私を呼んでください」

 

「分かりました。色々とお手数をお掛けしました」

 

 八雲はペコリと頭を下げた。ヒバリは「なんのこれしき」と胸を張る。

 

「では、私はもう行きますので。終わられましたらベルを鳴らして下さい」

 

「はい」

 

 八雲の返事を聞いたヒバリは頷くと、光の粒子となり八雲の前から姿を消した。ヒバリがいなくなり一抹の寂しさを感じる八雲だったが、両手を頬をパチンと叩き気分を切り替えると、これから行う修行の準備を行う。

 

「まずは先生役の磯撫を呼ばないと」

 

 修行の面倒を見てくれる磯撫を呼び出すため親指を齧り、血が滴る右手を思いっきり地面に叩きつける。

 

「口寄せの術!(あれ、俺なんで口寄せのやり方知ってるんだ?)」

 

 躊躇なく口寄せの術を使えたことに驚く八雲だったが、これもまた転生の反動だろうと結論づける。そして白い煙の中から巨大な隻眼の亀が現れた。

 三尾の磯撫だ。

 

「よろしくね、八雲」

 

「ああ、こっちこそよろしくな、磯撫」

 

「うん、それじゃ早速チャクラコントロールから始めようか。まあ、ボクを口寄せできたからすぐ終わると思うけどね!」

 

「ああ、よろしくな、相棒!」

 

 こうして八雲は自分の相棒である磯部から忍びに必要な忍術・瞳術を学んでいくのだった。

 

***

 

 5年後ーー。

 

「なんなの……これは……」

 

 ベルの音を聞き、再び世界の狭間を訪れたヒバリはすっかり風景が様変わりしてしまったことに顎が外れるほどの衝撃を受けていた。

 かつては真っ白い世界がどこまでも続く変わり映えのない世界だったはずなのだが、それが今では緑豊かな草木が生い茂る自然豊かな世界へと変貌していた。

 

「(まさか、これほどとは……)」

 

 おそらく、八雲が保有していた木遁の術による影響であろうが、目の前の光景は当初のヒバリの想像を大きく凌駕していた。

 

「(やはり、岸本八雲。あなたの潜在能力は桁違いだわ)」

 

 5年前に八雲に能力を授ける際に垣間見た八雲の潜在能力の高さは、能力なしでも十分悪魔を戦えるほどだった。しかし、こちらの不手際であるため謝罪の意味合いを含め、彼の希望した能力を授けたがヒバリだったが今更ながら少しやり過ぎだったのではと後悔する。

 そんなことを考えながら森の中を進んでいると、視界に一杯に広がる巨大な湖に到着した。

 湖の中央では、湖面に向かい合って立つ2人の八雲がいた。だが、次の瞬間2人は姿を消し、直後凄まじい水柱が噴き上げた。

 

「キャ!」

 

 凄まじい轟音と衝撃波が周囲に響き渡る。

 

「ーー螺旋丸!!」

 

「ーー千鳥!!」

 

 片方は手に螺旋丸と、もう片方は手に稲妻を纏わせ互いにぶつかり合う。

 術と術がぶつかり合った衝撃で湖に巨大な波が起こる。

 ヒバリは慌てて空中へ飛翔する。そして目を皿のようにして2人の八雲を探す。2人は再び湖面で向かい合っており、今度は高速で印を結びーー。

 

「ーー火遁・豪火球の術」

 

「ーー水遁・水神壁」

 

 火と水がぶつかり合ったことで発生した水蒸気によって湖面は深い霧に覆われる。視界が全く見えない深い霧に覆われた中、2人の八雲は互いに瞳を写輪眼に変化させ接近戦を行う。刃物がぶつかり合う音と、ぶつかり合った時に散る火花が霧の世界を彩る。

 霧が晴れる。そこには八雲が1人で立っていた。

 

「(まさかこれほどとは……)」

 

 わずか5年間という非常に短い期間で凄まじい成長を遂げた八雲に瞠目するヒバリ。

 地面に着地したヒバリは、湖面に立つ八雲の元へ向かおうとするが、すでにそこに八雲はいなかった。背後に気配を察したヒバリはさっと背後を振り返る。

 すると、空間に渦が広がりそこから万華鏡写輪眼の能力である神威を使用した八雲が現れた。

 

「あ、どうもお久しぶりです。ヒバリさん」

 

「5年という非常に短い期間でよくこれほどまで術を使いこなせるようになりましたね」

 

「へ? 5年? まだそんくらいしか経ってなかったんですね。いやぁ〜、もう10年くらい経ってるかと思ってたんですけど。アハハ」

 

 あっけらかんとそう答える八雲の姿に苦笑いするヒバリ。

 ヒバリは気を切り替えるために咳払いする。

 

「ベルを鳴らされたということは修行は完了したということでよろしいですか?」

 

「はい。もうちょっと修行したかったんですけど、磯撫がそろそろ新しい世界に行きたいと駄々をこね始めたので」

 

 そう言うと、八雲は自らのお腹をさする。

 

「では、磯撫はすでに八雲さんの体の中に戻っているのですか?」

 

「ええ、修行を始めて1年後くらいに戻しました。「あとは好きにやっていいいよ」って」

 

「ふふっ、そうですか。だいぶ彼とも親しくなったようですね。雰囲気からよく分かります」

 

「相棒であり親友です」

 

 5年間の間で八雲は磯撫と兄弟と言えるほど深い絆で結ばれていた。

 

「では、早速転生の儀を始めます。と、その前に」

 

 ヒバリはそう言ってパチンを指を鳴らす。すると、ボロボロだった八雲の服が変わり、原作のシスイが来ていた服装に変わる。背中にはさやに収まった立派な日本刀を背負っていた。

 

「それは私からのサービスです」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「それでは転生を開始しますよ」

 

 ヒバリはそう告げると、両手を八雲の前につき出すと何やら呪文を唱え始めた。すると、徐々に八雲の足先が光の粒子となって消えていく。そして体の半分が消失し始めると、八雲はヒバリへ頭を下げる。

 

「ヒバリさん、色々とありがとうございました。あなたに与えられた第二の人生、俺一生懸命に生きますから! 絶対に無駄にはしません!」

 

 そう言い終えた瞬間、八雲はヒバリの前から完全に消失した。

 1人残されたヒバリは、ふと八雲によってすっかり様変わりした世界の狭間を見回す。

 

「ふふっ、ここはこのままでいいかな……」

 

 最後にそう言ってヒバリもまた世界の狭間が消え去った…

 

 




ありがとうございました。
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