ダンジョンにNINJAがいるのは間違っているだろうか?   作:ニンジャスレイヤー

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長くなってしまったので初投稿です


暗殺をする忍者

 

暗殺ギルドのボールド先輩によると、ガイウス何某は上級冒険者に着いて行って『火焔石』とやらでダンジョンに生き埋めにしているらしい。

ベルが巻き込まれたら大変だ。そうでなくとも、地形破壊は良い迷惑だ。

 

という訳で。

 

「サポーターの……カイニスだ。よろしくお願いします。【ルドラ・ファミリア】所属です」

 

神イケロスによると、都合が悪くなったら「ルドラ」という神様の名前を出しておけば良いのだとか。

その名を出したらガイウス何某はビクッとした反応をした。そう思ったら擦り寄るかのように俺の周りに立ち、肩に手を置いてきた。

 

「カイニスにはオレが付きますよ。サポーターとして歴が違うんで……へへ…」

 

「そうか?ガイウス、ならお前にその子のお守りは任せるぞ」

 

今日同行するのは、どこぞの零細ファミリアのパーティだ。Lv.2の団長で【白き翼(ウイングマン)】というルビがイカれている二つ名を持っているエルフの女剣士を筆頭とした、Lv.1の冒険者で構成された編成だ。

 

「今日、我々は10階層へと潜っていく。気を引き締めてかかれ!」

 

鬨の声があがり、大口を開けるダンジョンへと潜っていく。俺とガイウス何某は最後尾から2番目、後方からの襲撃にも耐えうる隊列だ。

これだと暗殺ができない。なので、適切にタイミングを見計らう必要がある。

 

「隊列組め!ダンジョン・リザードの大群だ!」

 

『おおおおおっ!』

 

戦士たちが盾を構え、数少ない射手が急所を撃ち据えてモンスターたちを魔石に変えていく。ガイウスも震えながら剣の塚を握っている。

全員がモンスターに意識を割かれている───ここだな。

 

「う、うわあああああーっ!」

 

真っ直ぐ来た道とは逆に逃げ出す。静止の声がかかるが、それらを無視して死角まで走る。

 

気配遮断(アサシン)】を使用し、気配を完全に消す。ちょっとでも見つかりにくくするため、ニート神から貰ったローブを着る。

現在はダンジョン4階層。5階層にはまだミノタウロスがいるかも知れないし、帰りのことを考えるとここが一番最適なのだ。

 

「カイニスは?」

 

「逃げたよ。ま、報酬は無しって事でいいだろ」

 

「へっ、腰抜け野郎が」

 

好き勝手言いやがって。となりに俺がいるのに大した度胸だ。……まぁ、俺はいま認識されてないみたいなんだが。

しかし困った。このパーティ、意外と練度が高い。あれよあれよと7階層まで辿り着いてしまった。

 

Lv.2冒険者がいる影響はデカい。基本的に『上層』ではそいつ一人で方がついてしまう。

 

「だ、旦那方!そろそろ休憩にしやせんか?!オレぁちと疲れちまいまして」

 

「そうか、ガイウスはサポーターだったな。すまない、失念していた」

 

ガイウスが「用を足す」と言い、隠れてコソコソやり始めた。当然、トイレなんかの為に離れた訳ではない。下卑えた表情で火炎石をばら撒き始めた。

ここは忍者の作法に則り、始末させて貰おう。

 

「ドーモ、ガイウス=サン。アサシンです」

 

「ッ、誰だ!?どっから話しかけてやがる!?」

 

「お前の数々の所業、見せてもらった。故に殺す!」

 

声をかけている方とは反対方向に移動し、背後から奇襲を仕掛ける。武器は道中で拾った怪物の宝(ドロップアイテム)の『ウォーシャドウの指刃』だ。これに布を巻きつけ、簡易的な短剣にしている。

 

「クソ、舐めんなァ!づあっ……!?」

 

首を防御したガイウスの手を深く切り裂く。動脈あたりが切れていればいいが、そうはいかないだろう。

ニートとは言え、神から貰ったこの身体は身体能力に優れている。ミノタウロスと戦った時に自覚していたが、俺は成人男性よりも強い。

 

「テメェ……ようやく姿を見せやが…なんだ、テメェは……」

 

攻撃を当てた事でステルスが解除される。やはり一撃で決めなければダメらしい、が。ボールド先輩は言っていた。

「一度殺すと決めたのなら、必ず殺すのが暗殺者だ」と。正直な話、俺はまだこの世界をゲーム気分で()()()()()()

 

ミノタウロスに刻まれた痛みや、ヘスティア様やベルから受けた温かさからこの世界が現実であるのはわかっている。

だが、夢見心地なのは未だ抜けない。

 

「血まみれ……テメェ、一体何人殺してきた!?」

 

「さあな」

 

お前が初めてだよ、とは言えない。

舐められたら忍者として失格だからだ。いや、隠密としては舐められていた方が良いのだが。それはそれだ。

 

「今から死ぬお前に、何を言っても無駄だ」

 

「ふざけッ───くそおおおおおっ!?」

 

【気配遮断】をオンにし、まっすぐ跳ぶ。無理やり振り回した剣が俺の胴体を撃ち据える……が、賽は投げられた。

投擲した『ウォーシャドウの指刃』がガイウスの額に突き刺さり、ガイウスは倒れる。

 

剣で撃たれたところはギリギリ折れてはいないが、ヒビは入っている。どこかで治療しなければならないが、ひとまず離脱だ。

 

「何の音だ………ッ、ガイウス!?誰が…これは、『ウォーシャドウの指刃』?…………そうか、哀れな奴め……」

 

ウォーシャドウに無言の感謝をしつつ、俺は痛む身体を引きずってダンジョンを登っていく。こういう時に【気配遮断】があると便利だ。『上層』に限り、自分から殴らない限りは気付かれることはない。

 

「………あれは、ベル?」

 

ダンジョン3階層を歩いていると、ベルが一人で何かを探すように歩いていた。

 

「ティア、どこー?僕はここだよー!」

 

恐らく、俺がベルを探しに行ってそのまま暗殺ギルドへと足を運んでしまったので心配を掛けてしまったのだろう。

 

「ベル、私はここ」

 

「あ、良かった!見つけた!どうしてここに?」

 

「ベルを探してた。ダンジョンで迷ってないか不安だったから」

 

「そっか、ありがとうね。それじゃあ戻ろっか!」

 

今日はまぁ、色々あったが、ひどく疲れた。

帰ったらじゃが丸くんの肉味を食べて寝るとしよう。

 

 

 

 ──────────◇──────────

 

 

 

「なんやて?助けた子供を攫われたぁ?」

 

【ロキ・ファミリア】の拠点(ホーム)、『黄昏の館』。その主神ロキと、そのお気に入りである【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが向き合って話していた。

 

「うん。突然剣がベートに飛んでったと思ったら、消えてたの」

 

「その場の誰にも気づかれんで子供を攫う……そんなんできる訳ないやろ。ウチのリヴェリアママ、ベート、アイズたんがいて逃げられる方がおかしいわ」

 

「次は見逃さない」

 

「ま、おもろそうやないの。ウチら神の大好きな"未知"な訳やし」

 

道化師は笑う。細い目を見開いて窓の外を見て……一人の少女に目が留まった。それは、黒い長髪を靡かせ、黄金の瞳を持っていた。ロキは自分の眷族(こども)を見遣ると、アイズもまた少女を見ていた。

 

(あの子やな。Lv.5から逃げたっちゅう子は。今度ちょっかいかけたろ)

 

「ロキ、どうしたの……?」

 

「なんでもない。それより!『遠征』お疲れさんやで〜!いつもんとこでパーッとやろや!」

 

その夜。【ロキ・ファミリア】の面々は『遠征』からの帰還を祝うべく、祝杯を挙げていた。皆が酒に酔い、浮かれている中で一人の灰髪の狼人───ベート・ローガが声を張り上げた。

 

「そういえばアイズ、あの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話……?」

 

「あれだ、五階層まで逃げやがったミノタウロス!お前が取り逃がしたやつ!そんで、ほら、そん時のトマト野郎の事だよ!!」

 

「ミノタウロスって、17階層で返り討ちにした?」

 

「そォだ!居たんだよ、駆け出しの!ひょろくせぇガキが!」

 

ゲラゲラと笑いながら他者を貶すベートの発言に、多くのものはクスクスと笑い、ある者は品性がないと嘆いたりしたが、あるテーブルの雰囲気だけは地獄そのものであった。

一人は下唇を噛み、拳を握り締め、俯き……もう一人は()()()()()()()()()()

 

「そんでよ!ミノの血をそのガキが浴びてよぉ!!まさにトマトみてぇだったぜ!?腰抜けトマトだ!」

 

その発言を皮切りに、酒場にいた殆どの人々が吹き出し、ベートによる嘲弄を目を輝かせて聴いていた。

それを見てか、青年の煽りはどんどんとエスカレートしていく。

 

「なあ!お前もそう思うだろ、アイズ!?」

 

気配を消した少女の隣で、白い髪の少年がビクリと震える。それと同時に白い髪の少年からも少女は認識されなくなる。

 

「自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしている雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねェ。他ならないお前がそれを認めねえ!」

 

「──────雑魚じゃ、アイズ,ヴァレンシュタインには釣り合わねェ!」

 

ガタン!という音を立てて少年が立ち上がり、店から逃げ出す。

 

「ベルさん!?」

 

残された嘲弄者と聴衆たちは、その様を黙って見ていることしか出来なかった。

 

「……ンだぁ?食い逃げか?バカな゛っ!?」

 

青年は再び口を開こうとして、顎に強い衝撃を受けた。そこにはいつの間にか拳を振り抜いていた少女──────ベルティア・カイネウスがいた。

 

全員が驚いた。この場にいる殆どの人間が酔っているとはいえ、少女が上級冒険者に一撃を入れるまで誰も認識できなかったのだ。

 

「テメェ………誰、だ……ってお前、五階層の……!」

 

殴られて酔いが醒めたベートは認識する。正しく、自分を殴ったのは自分が嘲笑した少年の仲間である少女だったからだ。

 

「訂正しろ」

 

場が冷えていく。怒りと涙に目を潤ませた少女が、『第一級冒険者』を殴るという自殺行為。しかしそれは、正当なものであり、諌められるものはいなかった。

 

「私の仲間への侮辱、訂正しろ!」

 

「っ、テメェ…!オレにかすり傷一つ負わせれねェ癖に、生意気なことを……!」

 

青年が少女に牙を剥こうとしたその時、緑髪のハイエルフが立ち上がり、ベートの手を掴んだ。

 

「………やめないか、ベート!仲間を侮辱されて憤るのは当然の事だ。酔いすぎだ、頭を冷やせ!」

 

「あ、この子ロキが言ってた……」

 

「ウチの目ェ付けた子にちょっかい出したんかー!?吊るせー!ベートを吊るせー!」

 

「おわっ!?ちょ、離せクソアマゾネス!ばっ、どこ触ってんだテメェは!?おい!ちょっ、離せコラ!やめろぉ!アイズゥ!」

 

【ロキ・ファミリア】の団員たちがこぞってベートを吊るす中、その主神ロキは瞳に好奇の目を浮かべながら黒髪の少女に近づく。

 

「いやあ、ウチの子が悪いことしたなぁ、代わりに謝っとくわ。ごめん」

 

「………」

 

「にしても凄いなぁ、神のウチ以外だぁれも気づいてへんかったで?自分、どこの派閥(ファミリア)なん?」

 

「…私は、ヘスティア様の眷族(かぞく)。さっき出て行った子もそう。ベルは死にかけの私を助けてくれた。戦力分析と人を見る目はちゃんとしてるから、あそこで逃げたのは……たぶん気の迷い」

 

「おおう、めっちゃ庇うやん……にしてもドチビん所か、ええ拾いモンしたやんか、アイツ…」

 

ロキは目の前で首を傾げる少女をまじまじと見る。神々(じぶん)達にも引けを取らない容姿、まるで()()()()()()()()()()()()見た目に、若干の気味悪さを覚えた。

 

「自分、今度二人だけでお話しよや。名前は?」

 

「ベルティア。ベルティア・カイネウス」

 

「ベルティアたん、三日後にウチの拠点(ホーム)おいで。ロキに呼ばれたって言えば大丈夫やから」

 

「は、はぁ……私はベルを追いかけます。…おそらくダンジョンに」

 

ベルティアが「仲間を助けに行きます、お勘定つけといて!」と言い放ち、外に出ていく。その姿を、ロキは楽しそうに見ていた。

 

 

 

 ──────────◇───────────

 

 

 

 

夜のダンジョンは危険だ。理由は様々あるらしいが、エイナが教えてくれた事はこれまで実感はなかった。

だが、ベルを追って夜のダンジョンに潜っている現在……その恐ろしさを、実感している。

 

「殺しても、殺しても、湧いてくる……!」

 

俺の基本戦術は奇襲(アンブッシュ)からの一撃必殺だ。剣で心臓を突いて、首を掻き切って、ようやく倒せる。死体から拾った直剣で二階層を進むが、一向に前に進める気がしない。

昼間には大量にいた冒険者たちが、ここにはいない。つまり、この階層の殆どのモンスターは俺にヘイトが行く。

 

「これが、迷宮(ダンジョン)……!」

 

昨日、ヘスティア様に更新してもらったステイタスで多少は成長したはずだが、それでも尚キツい。ベルはこんな所に一人で突っ込んで行ったのか?

早く助けにいかなければ、ベルが嬲り殺しにされてしまう。

 

「ベル、ベルっ!どこだっ!どこにいる!」

 

【気配遮断】を使う暇もなく戦いながらベルを探す。この時ばかりは背丈が低いことを呪う。ゴブリンと同程度しかない身長では、探そうにも一苦労だ。

 

『グギャギャア!』

 

「ダンジョン・リザード……!?ふざけろ、二階層だぞ!」

 

ダンジョン・リザードは甲殻があり、剣で相手するのは厳しい相手だ。Lv.1下位の並大抵の武具では弾かれてしまう。

であればどうするか。それは──────

 

『ギャオオオッ………カッ!?』

 

「口の中に剣をぶち込む……これが最適解!」

 

間抜けな声をあげて絶命するダンジョン・リザードがやられると、魔石を落としていく。気がつけば、周りのモンスターは全滅していた。

急いで魔石を回収し、先へと進む。ベルはいない。一切戦わずに5階層まで降りても、そこには誰もいなかった。

 

「……………ん?これは…」

 

6階層の入り口に差し掛かったところで、聞き慣れた声と剣戟の音が聞こえてくる。やっと見つけた人の気配。それに、この声は。

 

「ベルっ!」

 

階段を駆け下り、声の方に走ると、そこには『ウォーシャドウ』に囲まれたベルが闘っていた。たった一人で、傷だらけになりながら、涙を流して闘っていた。

さっき言われたことがあまりにもショックだったのだろう。そりゃそうだ、恋した人の仲間から「釣り合わない」なんて言われたら、男なら奮起するに決まってる。

 

「……左に避けて、ベル!」

 

「っ!攻撃が……ティア!?」

 

「無駄口。3時方向からもう一匹!」

 

「うん、わかった!せあっ!」

 

ベルの背後につき、迫ってくるウォーシャドウを切って、叩いて、貫く。塵となって消える影を、ベルと一心同体になって作り上げる。前世で聞いた格言に、こんな言葉がある。

『戦友の絆は夫婦よりも固い』と。なるほど、真理だ。

 

朝まで戦い通し、俺たちはたくさんの塵と、多くの魔石の上で雄叫びを上げていた。俺もベルも傷だらけで、装備はボロボロ、剣は折れかけ、肩で息をしているが、この達成感が俺たちを立たせていた。

 

「────キミ達はっ!ホントに!何をしてるんだぁぁぁ!!!!」

 

「う………」

「すみません………」

 

【ヘスティア・ファミリア】の拠点(ホーム)に戻るや否や、ヘスティア様からの怒号が飛んだ。そりゃあそうだ、食事をしに行くと言ったきり、一晩中帰って来ず、帰ってきたと思ったら傷だらけだったのだから。

 

「……まったく、いいかいベルくん、ベルティアくん。キミ達はボクの大切な眷族(かぞく)なんだから、あんまり無茶をしないでおくれよ」

 

『ごめんなさい……』

 

「……まったく。ベルくんは傷を癒したらステイタスの更新をするよ。ベルティアくんの方は傷が浅いし、ポーションを使ったみたいだからステイタスを更新しちゃおうか」

 

ベルが離席し、ステイタスの更新が行われる。

全ての工程が終わったのを確認すると、にっこりと微笑んだヘスティア様に共通語に翻訳された俺のステイタスが渡された────が、俺はこの時、肝心なことを見落としていた。

 

 

俺は、この世界の字が読めないのだと。




名前:ベルティア・カイネウス
性別:女
年齢:12(19)
レベル:1
《基礎アビリティ》
「力」  H 134
「耐久」 G 214
「器用」 F 301
「敏捷」 I 59
「魔力」 I 0

《スキル》
【気配遮断】
・主神とその眷族を除く全ての者に対する気配遮断。
・自身が攻撃するまでモンスターからの感知不可能。
・静音補正

【戦友懸想】
・共闘時、成長補正。
・仲間を思う心が続く限り永続。
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