皆ーー!投票者が増えたぞッ!囲え囲えーーーッ!
はい、すいませんでした。
「私は『新生評議院 第四強行検束部隊隊長』ラハールと申します。」
と、クソ長い肩書きやこの状況にうんざりしながらも現状をマズイと感じていた。正直もう本当に魔力が無いのでこの数を制圧するのは厳しい、かといって逃げるのは恐らく…
「だよなぁ…」
「…まさか…」
「そのまさか。閉じこめられてるぞ、俺ら。」
案の定というか何というか、逃さないための(聞いた話によれば)『術式魔法』というもので閉じ込められていた。
「我々は法と正義を守るために生まれ変わった。如何なる悪も決して許さない」
「オイラ達何も悪い事してないよ〜!」
「お、おう…?」
「言い切ろうぜそこは」
ウェンディが不安からか俺の服の裾を掴んで、後ろに隠れる。…ウェンディを怖がらせた時点で万死に値するが、その上キッとこちらを…いや、隣にいるジェラールを睨むラハールにこれから起こる事を察し、刀に手を掛け…またジェラールに止められる。
「評議院への潜入及び破壊、エーテリオンの投下。世界に名を残す大犯罪者、貴様だ、ジェラール!抵抗する場合は抹殺の許可も下りている!」
やはり、と顔を顰める俺の頭に手を置き、そっと落ち着かせるように撫でるジェラール。その手つきは、あの日居なくなってしまった兄貴とは違う慣れてないような手つきだが、そこには確かな優しさがあった。
「その男は危険だ。二度とこの世に放ってはならない。絶対に!」
ジェラールは諦めたかの様に、しかし迷いなく、部下に指示を出すラハールの元へ歩いていく。…それでもまだ、俺には迷いがあった。評議院を敵に回す意味を、俺はしっかり理解していたから。最悪の場合ウェンディにすら危害が及ぶから…と。その迷いを打ち消したのは…
辛そうな表情を浮かべるエルザとウェンディだった。
「ジェラール・フェルナンデス。連邦反逆罪で「黙れ」!?」
ラハールの言葉を遮るように、『縮地』で近づき刀を突きつける。
「な!?」
「「ルクス(殿)!?」」
「相手は評議院よ!?」
大勢のルーンナイト共が慌てて武器を構えるも、攻撃はしてこない。…そりゃそうだ、こっちには人質がいる。
「な、なんの真似だ!これは明確な「黙れ、って言ったよな?」…ッ!」
「言っとくが、此処に居る全員くらい一息で殺せるんだぞ?」
これはハッタリだ。もう魔力はほぼ無いため、一息では殺れない。…時間と俺自身を度外視にすればあるいは…くらいだろう。
しかしハッタリの効果があったのかルーンナイト共から戦意が失われていく。…言ってみるもんだなぁオイ。
「俺はキレてる。巨大闇ギルド『六魔将軍』倒した俺達を無断で拘束した挙げ句、その仲間を逮捕ォ?舐めんな!」
「その通りだ!気に入らねぇぜ!」
「筋は通っておらぬな」
俺達の圧に気圧されたように慄く評議院共。
「俺はぶち切れてる。過去悪事を働いた事しか見ず、今善い事したジェラールを!記憶を失ってしまったヤツを!こんなに優しいヤツを捕まえようとするその精神に!」
「そうです!ジェラールは記憶が無いんです!」
「そーだそーだ!良心は痛まないのかー!」
思うところはあったのか顔を顰める一部評議院共。
「そして何より、俺が一番切れてるのはァ…!」
刀をしまい、右拳を力いっぱい握り締め、この上ない踏み込みから放つ右ストレートは…
「テメェだジェラールゥッ!」
ジェラールの左頬へ吸い込まれていった。
「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」
「何でだーーー!?」
「ルクス何してるのぉ!?」
吹っ飛ぶジェラールと驚く周りの方々。
「お前ふざけんなよ!?お前はエルザを泣かせたんだろ!?たくさん傷つけて、たくさん泣かせたんだろ!
ついでにその
「私怨入ってね?」
「あい」
「いいか!?1回しか言わねぇから良く聞けよ!?
「…ッ!それでも!俺は罪を償わなければならない!」
「捕まったら罪を償った事になンのかよ!なァ!?お前の
「…!捕まえろ!早く!」
ラハールの声に正気を取り戻し、一斉に俺を捕らえにくるルーンナイト。激情に身を任せていた為に気づくのが遅れたものの、いつの間にかここまで来ていたナツに助けられる。
「ルクスの言う通りだ!ジェラール!お前はエルザの側に居ないと駄目なんだぁ!」
「右に同じく、俺も腹に入らねぇなぁ!」
「うむ、正しき行いには相応の報いが無ければな」
「こうなったらヤケよぉ!」
「あいさー!」
「お願い!ジェラールを連れて行かないで!」
「ちょっと!ウェンディから離れなさいよ!」
各々がジェラールを、仲間を助ける為に動く。一気に乱闘となる。一人、また一人と確実に意識を奪っていくが数が多くてキリが無い。倒すのはやはり現実的では無い、そこまで考えた俺は再度ジェラールに呼びかける。
「ジェラール!ここでお前が捕まればエルザはまた涙を流すぞ!お前も!自分の罪だって償えない!だから、心に従え!ジェラールッ!」
「来い!ジェラール!お前はエルザから離れちゃいけねぇ!ずっと側にいるんだ!エルザの為に!!」
身体はとうに限界で、それでもと声を張り上げ四肢を動かす。
「オレ達がついてる!仲間だろ!」
「全員捕らえろォォォ!公務執行妨害及び逃亡幇助だーー!」
不味いと思ったのか魔法も使い出すルーンナイト達に、こちらも焦り更に呼びかける。
「「ジェラーール!!」」
「もういい!そこまでだ!!」
まるで鶴の一声の様に、ほぼ全員の動きが止まる。
「エルザ!」
「座ってろ!」
「あい!」
凄まじい早さで正座するナツ。
「待てよ…!俺は、まだ…ッ!?」
フラつく身体を支えるように、あるいは"これ以上はやめて"と訴える様に腕を掴まれる。
「ルクス…!」
「ウェンディ?」
「無理しないでって…!言ったでしょ…!」
「あぁ…悪かったって、頼むから泣くな…」
あーあ…これじゃ、人の事言えねぇな…
「騒がしてすまない、責任は全て私がとる。」
本当は言いたくないのに、捻り出すようにその
「ジェラールを…つれて…ぃけ…」
くそ…
「そうだ…おまえの髪の色だった。さよなら、エルザ。」
「…ああ」
満足そうな面しやがって…
――――――――――――――――――――――
それから、エルザが落ち着くまで待った後、今回の作戦の報告に最も近い魔導士ギルド『化猫の宿』に来ていた。
「わぁ!かわいい!」
「私の方がかわいいですわ」
「ここは集落全部がギルドになってて、織物の生産もさかんなんですよ。」
「ニルビット族に伝わる織り方なの?」
「今思えばそういう事…なのかな?」
「あなた、ギルド全体がニルビット族の末裔って知らなかったんでしたわね」
「私達だけ後から入りましたから…」
「ところでウェンディ、『化猫の宿』はいつ頃からギルド連盟に加入してましたの?
私…失礼ながらこの作戦が始まるまでギルドの名を聞いた事がありませんでしたわ。」
「そういえばあたしも!ルクスがあれだけ強いんだからもっとギルドの名前広まっててもいいのにね!」
「えっと…ルクスはギルドの依頼を受ける時は私と一緒に採取系とか、お使いしか行かなかったんです。」
「え!?何で!?」
「それは…えっと、その…」
「この子が討伐に着いて行って危ない目に遭ったからよ」
「あっ(察し)」
「愛!ですわね!」
「あの時は小さかったんです…!」
「さ、お話はそこら辺にしましょ。みんな待ってるわよ。」
―――――――――――――――――――――
時は遡り『化猫の宿』広場の見張り台にて。ルクス・セレストは仰向けに空を見上げていた。
これからどうすっかな〜。マスターはたぶん全部ゲロっちまうだろうし、そうなると『化猫の宿』は解散…といか、消滅するだろう。そうなると働き口が無くなる分けで、貯金があるとは言えあまり保たないだろう。
ていうか、ここの集落毎消えるのか?だとしたらここからの眺めも見納めか…
等と考えていると、何者かが見張り台に登ってきた。
「なんだ、ヒビキか。」
「ウェンディちゃんの方が良かったかい?」
「…いや、今はお前の方がいいな」
登ってきたのはヒビキだった。どうやら下から俺が黄昏ているのが見えたらしい。…ちょうどいいし聞いてみるか。
「なぁヒビキ。お前は"これからどうするか"っていう…人生の方針?を考える時どうする?」
「それは人生相談というヤツかな?それにしても急だね…」
「急なんかじゃないさ。むしろ少し遅いくらいだと思うね。」
「?よく分からないけれど、僕なら原点に戻るかな。」
「原点?」
「あぁ、自分の生きる目的というか、根底にあるものがハッキリしていれば分かりやすいだろ?」
根底…俺の原点、目的はいつだって『ウェンディのため』である。先の戦いで、ウェンディは攻撃魔法を使えるようになった。心の方も強くなっただろう。彼女の成長に、『俺』は必要だろうか。『俺』が彼女の成長を妨げてはいないだろうか。
「具体的にどんな意図故の質問かは知らないけれど、今の君の考えはやめておいた方が良いだろうね。」
なんで分かるんだよ、こっわ…
「僕はホストだからね。今まで沢山の人の人生相談を受けて来たけれど…
ソレはきっと、誰も幸せにはならない。何より、君だって辛いはずだ。」
俺の事はこの際どうだっていいのだが…
「君が君自身を蔑ろにして彼女が喜ぶと?」
…ぐぅの音もでねーぜ
「まぁ、あまり思い詰めない事だね。でも、君が言った泣かせた女の責任は取れ"だっけ、アレは響いたよ。だから君も、責任を取りなよ。」
「お前の『泣かせた』と一緒にすんなよ」
「等しく『女性の涙』さ」
「さいですか…」
「僕から言えるのは後悔しないように、とだけ。居なくなってからじゃ遅いんだからね。」
その言葉に、どこか経験から来るような重みを感じたものの、ヒビキは気にした様子も無く立ち去っていった。
それから、どれくらいそうしていたのか…数瞬か数分か、は俺にも分からないが、ともかく思考の渦に陥っていた俺の意識は、この世で最も大切な人の声に呼び戻される。
「ルクスーー!もうみんな集まってるよーー!」
「おーう!すぐ行くー!」
あぁ、やっぱり…離れたくないな…なんて、俺は女々しくもそう思ってしまうのであった…
急に寒くなったので皆サン風邪引かないようにお気をつけて!